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キミボク  作者: きつねさん
中立都市へ
34/51

イレギュラー

11/14 誤字訂正

夜も真っ盛り、今日は空に月は浮かんでいない。

月のない日は気をつけな、というのは人気がないうえに明かりもないような夜は人を狙いやすい、

といった事から生まれた言葉であるが、この西町に至っては別だ。

歓楽街、色町、娼婦街、などと言われている西町は夜こそが一番活気づく時間帯だ。


その通りを一人の筋骨隆々な男性が歩いている。

肌の露出の多い女性、色町とはいえさすがに出し過ぎだろうと思う女性たちが客引きをしているのだが、

その男に話しかける者はいない。

その男の向かうところが決まっていることを娼婦たちは知っているからだ。

娼婦たちは男が金持ちであることを知っているが、どれだけ誘おうが行き先を変えないならば時間の無駄だと割り切って少し悔しい思いをしながら男を見送るのだった。



少し歩き、西町のほぼ中心部まで来た男はある一つの娼館に入る。

その娼館を目指しているなら迷う事はない。

歩いていればおのずと目を引くような大きさと存在感を放っているからだ。


男が入るととっとっと、と女が駆けてくる。

「お兄さん、また来てくれたんすね。

 今日もわたしでいいんすか?」

それに男は頷く。

「じゃあ、一名様案内っすー。」

軽快な足取りで女は歩いていき、それに黙って男はついて行く。


「ふぁー」

部屋に入ると女がベッドにばふん、と飛び乗る。

「おっにいさん、ほんと変わってるっすよね。」

ずるずるとベッドから降りて、お酒の用意をしながら女が話しかける。

「そうですか?」

「そうっすよ。言葉遣いもそうっすけど、

 この娼館にまで来て女を買うだけ買って抱かないなんてむちゃくちゃ変わってるっすよ。」

「あー、まあ変わってますね。私も自覚してます。

 だから外ではあんまりしゃべらないようにしてますし。」


その後もいろいろと会話した後女は切り出した。

「おっにいさん、こういう事言うのも変っすけどお酒飲んで女の人と話すだけなら

 キャバクラとかそういう店に行った方が安上がりっすよ。

 私はここにいるのが不思議なくらい高級娼婦でござい、っていう感じはしないですけど

 それでも割高っすから。というよりおにいさんがこの頃結構指名してくれてるから

 裏方に回ってないっていう程度ですし、私レベルだったらキャバクラにも結構いるっすよ。」

「いや、むしろタリーさん様なあけっぴろげな人はそうそういないですよ。」

「まあ、それがあんまり客をとれてない要因なんすけどねー。

 あといつも言ってるっスけどタリーでいいすよー」

とか言いながら女は苦笑する。

女があんまり客をあんまり取れてないという娼婦としては微妙な独白をするが、

そこに困ったというような感じはしない。特に気にしてなのだろう。

それに苦笑で返してから答える。

「少し裏切られまして、信頼できる人をまだ見つけれてないんですよ。

 こういう高級店なら裏切られることもないと思いまして。」

「まあ、裏切るなんてことは絶対ないっすね。

 お客にそんなことしたらボス直属のハンター(狩猟犬)にひどい目に合わされそうっすし。」

「ハンター?」

聞きなれない言葉に聞き返すと女が明らかにやばっ、ていう顔をした。

「あー、あー、おっにいさん?お願いがあるんすけど。」

普段やりなれてないのだろう。

ちょっと変な感じの上目づかいで頼みごとをする。

「はいはい、黙っていればいいんですよね。」

「そうっす、恩にきるっす。」

すこしいじわるな顔をして男は続ける。

「で、ハンターってなんです?」

「あー、まあ、そうなりますよねー。

 秘密にしといてもらえます?」

「大丈夫ですよ。私口硬いですから。」

男はにっこり笑った。






「・・・・っていう事なんすよ。正直私は下っ端の方なんであんまり知らないんすけどね。

 これで秘密にしといてもらえるっすか?」

少しげんなりした感じの女が男に問いかける。

「いえ、別に元から教えてもらえなくても黙って置くつもりでしたけど。」

「うー、性格悪いっす。そんな事分からないっすよ。」

「ふふふ」


笑う男に女が反撃する。

「そういうおっにいさんは結構女言葉で話すっすよね。

「あー、そうですね。それも事情があるんですよ。」

「私は娼婦っすからおにいさんが話したいなら何でも聞くっすよ。

 ただでさえおにいさんに買われてるのに抱かれてないっていう事があるんすから。」

と女は包容力のある笑顔で男に話しかける。

先ほど男と一緒に食べたパフェのかすがついてなければ完璧であっただろう。

男は少し迷っていた。

それでも男は話すことにしたようだ。

「あー、実はですね」

「おにいさん実は女なんっしょ。」

男の言葉を女が食い気味に女が台詞をはさむ。


「へっ、なっなんで分かったんですか!?」


男が心底不思議そうに話す。

女はどや顔である。すっごく得意げである。

「ふっふっふー、たまにいるんっすよ。おにいさんみたいな人。」

「そんなにいるんですか?いや、いる事は分かっていましたし、

ここに集まってきてるのも分かってたんですけどここに来る人そんなに多いですか?」

「以外にいるんすよ。そんなわけないって否定してどうにか否定できないかと娼館に来る人が。」

「そうですか、そんなに現実逃避する人が多いんですね。」

「そりゃ現実逃避するっすよ。なんたって体は男で心は女なんてめったにいないっすからね。」


「それでその性転換したプレイヤーの人たちって、どこにいるか分かります?」

「性転換したプレイヤーっすか?プレイヤーってなんすか?」


「え?」

「あれ?」


「あの、タリーさん?プレイヤーの人たちを見たわけではないのですか?」

 このごろこの世界に来た人たちなんですけどとっても強い人たちなんですけど。

 知らないですか?」

「ああ、イレギュラーどもの事か。」

女が不機嫌そうな顔で答える。それを見て男が微妙な顔をしてるのを見て慌てて取り繕う。

「あっ、おにいさんが悪い人だって思ってるわけじゃないっすよ。

 おにいさんの人となりは知ってるし、ごく一部だけっす。

 ごく一部のイレギュラーどもが面倒なんっす。」

「その話聞いていいですか?」


「いいっすよ。そうっすね、大雑把にいうと最近、人族の国にちょっかい駆けられて困ってる、

 っていう感じっすよ。中立都市だっていうのに困るっす。

 支配されて戦争に与したって判断されたらいろいろ面倒っすし、

 支配下に置かれるた時の体制が結構窮屈そうなんす。

 昔の人族の国が持っていて戦力だけならよかったんすけど、

 今はイレギュラーどもがいるからそう簡単に国のちょっかいをはねのけることができないんす。」

「あー、戦争に参加してるという事ですか。

 あの会合に来た人たちか。いや、来なかった人も結構いたはず・・・・。」

男が女の話を聞いて何事かつぶやきながら考える。

しばらく考えていたが、女が見ていることに気付きはっとする。


「あーあー、ところで私ってそんなに元が女だったって分かりやすいですか?」

「言動は結構女っぽいっすね。

 あー、けどここで初めて私を指名した時は結構取り繕えてたっすから、

 私に慣れてぼろがでてるだけかもっす。

 ところで元が女だったってどういう意味っすか?性別でも変わったんすか?」

「はい、そうなんですよ。元は女だったんですけど、今は見ての通り男のお体になってしまいまして。」

その答えに女は驚いたような顔をする。

「本当に性別が変わったんすか。てっきり冗談かとおもってたんすけど。

 けどなんで性別変わったんすか?」

「あー、実は私達プレイヤー、あなたが言うイレギュラー達はみんな元は違う体で生活してたんですけど、

 この世界に来させられたとき違う体に変わりまして。」

「はぁ。」

よく分かってないのか女は生返事をする。

だが男は相手が理解してなくとも聞いてほしかったのか話を続ける。

「それで同じ性別の人は良いんですけど、私みたいに性別が変わってる人は結構苦労しているんですよ。

 まあ、比重的には男性が女性に変わったっていう事の方が多いんですけどね。」

「はあ、苦労してるんすね。

 あっ、そうだ。性同一性じゃないなら男の人のように取り繕う技術を教えるっすよ。」

「いいんですか?」

「大丈夫っす。お客の接待のうちに入るっすから。

 という訳でまた来て指名して欲しいっす。」

と客商売らしく自分の売り込みをする。

男はそれに苦笑で返した。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


明りが一切ついてない部屋があった

窓もなくその部屋は真っ暗であった

そんな場所に二人の人影があった


「アサシン01(ゼロワン)報告を」

「予定通り推定イレギュラー、ネーム、チヨダに情報を渡したっす

 コンタクトも継続する口約束もしたっす

 今回手に入れた情報は四つっす

 一つ目、ネーム、チヨダは裏切られ少し人間不信

 二つ目、イレギュラー達の会合が過去に開かれた事

 三つ目、イレギュラー達は自分の事をプレイヤーと呼んでるらしいこと

 四つ目、イレギュラーは別の世界からきて性転換が起こってるものもいるらしいという事

 この四つで以上っす

 詳しいことは報告書を見て欲しいっす」

と言いながら人影の一つが丸めた書類を手渡す

「相変わらず優秀ですね

 それはいいのですが私と話すときはそのバカみたいな口調はやめなさい」

「いやっすー

 一番権限で拒否っすー

 これぞまさに権力バリアっすー」

片方が不機嫌その物と言った声で言ったのだがもう片方はふざけた声で返すだけだった

01(ゼロワン)

人影が先ほどまでと違う声質でいう

「序列はわかってるっすよ

 でもキャラ作りは大変なんっすよー

 そこを分かってほしいっすー」

しかしもう一方の口調は変わらない

二つの人影の間に少しの間沈黙が続く

人影の片方が渋い顔をする

それを見えたのかどうかは定かではないがもう片方はひらひらと手を上げて部屋から出ていく

「それじゃ、お先に失礼するっスー」

人影は去って行った

「はぁ」

残った人影は人知れずため息をついた







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


タリーは仕事の休憩時間なので娼館のバックスペース(休憩室)に向けて歩いていた。

するとバックスペースの方から姦しい声が聞こえてきた。

普段であれば仮眠をとったり、そこまで行かなくても休憩をしているだけなのだが。

タリーはドアを開けた。

するとそこには他の娼婦仲間からもらったであろうお菓子を食べている少女の姿があった。

休憩中である娼婦仲間たちはその食べる姿を見て和んでいる。

この頃恒例となっている光景であった。


「おー、お嬢っすー。お嬢、今日こそ撫でさせてもらうっすー。」

お嬢が娼婦たちの間に紹介されてから十日ほど。

絶対に体に触らせない、おさわり禁止というキャバクラ的な状態のお嬢を

タリーいつか撫でまわしてやると心に誓っていたのだ。

だが、なかなかタイミングが合わず、タリーはお嬢に会う事が出来ていなかったのだ。

少女の方がタリーの休憩時間を微妙にさけていたという事もあったりするが。


少女は慌ててタリーから距離を取る。

タリーが詰める。

そんなことの繰り返しでタリーと少女は部屋の中を走り回った。

「まてまてー」

もちろん大人であるタリーが本気で少女と距離を詰めようとすればあっという間につまるのだが、

タリーはそんな事はしない。

無理やり少女を撫でくりまわして嫌われては元も子もないからだ。

だからこうやってスキンシップを取って撫でても大丈夫なぐらい懐いてくれるのを待っているのだ。

そのことを分かっているから少女はタリーの休憩時間を微妙にしか避けてないのだ。


と、今までソファの周りをぐるぐる回っていた少女が進路を変えてドアの方に向かった。

タリーは追いかけっこも終わりかなー、と思いながらちょっと速度を落としながら追いかけていると、

ガチャリ

ドアが開いた。


少女はそれを知っていたかのように綺麗にドアを避けてドアを開けた人物の足に抱き着いた。

ドアを開けた人物は内心驚いているのだがそれを表に出さず少女に聞いた。

「どうしました?」


その状態の二人、正確にはドアを開けて入ってきた人物を見てタリーは声を上げる。

「げっ、冷血乙女」


その声を聴いて、そちらを見、ドアから入ってきた人物、フォンは状況を悟った。

「またあなたですか、タリー。

 いつも言っているでしょう。この子が嫌がることをするな、と。」

フォンから目をそらしながらタリーは答えた。

「だから本当に嫌がることはしてないっすー。

 そもそも何なんすか、そんなにお嬢に懐かれてうらやましいっす。

 どうやってお嬢の心をひらいたんすか?」

それには周りにいた娼婦仲間たちも同様にうなづいた。

タリーほどあからさまではないが、他の者達も少女を撫でまわしたいのだ。

少女が嫌がるうえに触ろうとすると少しの恐怖と共に少女が大きく避けるのだ。

その様子に心が痛み、触ることをあきらめた者は少なくない。


それが冷血、ゴーレム、堅物、などと散々言われ、表情がほぼ変わらずとっつきにい、

とても子供が懐きそうにないフォンに少女は懐いているのだ。

今もフォンに頭を撫でられ気持ちよさそうにしているのだ。


娼婦たちの視線が強くなるのは避けられない事だった。


タリー一人だけであれば無視して怒るだけなのだが、部屋全体(少女、フォンを除く)の総意となった今、

そうするだけでは済まない感じになっていた。

だからフォンは答えた。


「人徳です。」

「「「・・・」」」


沈黙とジト目が続いた。

その場にいた娼婦たちの心が一致した瞬間であった。それはない、と。

その空気を感じてフォンは言い直した。

「この子と一緒にいる時間が違いますから。

 それと人徳というのはこの子にとって私がとっつきやすい性格であったという事でしょう。」

今度のフォンの言い分には皆が納得した。そして期待した。

時間が解決してくれるなら自分たちもいずれは少女を撫でることができるかもしれない、と。


そうと決まればもっとお話ししたり、お菓子で餌付けしたり、スキンシップを図らねば、

とその場にいた娼婦たちの目線が一層強くなった時だった。

無慈悲にもフォンが宣言した。


「そろそろ寝る時間です。」

フォンがソニアに向けた言葉であった。

ただでさえ、今は夜そこそこ遅い。

普通ならば子供はとっくに寝ている時間であった。

だが、少女の起きている主な時間はリーの空き時間や、娼婦たちの起きている時間、といった時であるため

昼に寝ていたからこんな娼館営業中の真夜中でも起きていられるのである。

しかしそれにも限界がある。

少女自身は大丈夫と思っていても周り(主にリーとフォン)が時間を区切るのである。


という訳で少女は休憩室から連れて行かれる。

それを分かっているから娼婦たちのフォンを見る目線は恨みがましくなる。

少女がくわぁ、と小さくあくびをする。

娼婦たちの目線がほんわりと和らぐ。

少女が小さく手を振りながら休憩室から出ていく。

娼婦たちも手を振りかえして見送る。










「あっ、お嬢。しまったっす。ついつい見送ってしまったっす。

 絶対明日こそ撫でてやるっす。」

一人闘志を燃やしている人がいた。




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