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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第90話

昨日と言っていいのか分からないが、夜遅くまで作戦会議をして疲れていても、いつもと同じ時間に目を開ける。

帰ってきたという実感、見慣れた天井、そして、静かな部屋。

窓の外から聞こえてくる車の走行音。

異世界と日本を行き来する生活にも慣れてきたが、それでも目覚めた直後だけは少しだけ感覚が混乱する。

頭の中を切り替えようにも、サクレの話、サウスノーランドという問題、黒スーツの男。

頭の中に残っている情報量が多すぎる。


「……面倒なことになったな」


少し気怠さを感じながらも、小さく呟きながら起き上がる。

時計を見るといつも通りの午前六時半。

顔を洗い、着替え、簡単に朝食を済ませる。

部屋を出ると、ノクスのメンバーが待ち構えていた。


「おはようございます、ご主人様」


ユズが頭を下げる。


「……おはよう」

「ご主人様、お仕事ですか?」


アイリが聞いてくる。


「……そうだ」


異世界で魔王だの勇者だのを追っていても、日本では警察官だ。

そちらを疎かにはできない。


「昨夜は遅かったですから、今日はゆっくりされるのかと思いました」

「……そうしたいのは山々だがな」


気怠さを感じ取られたのか、ユズに心配そうな顔をされてしまったため、苦笑する。

キューリーが朝作ってくれたお弁当を手渡してくれながら「気をつけてください」と声をかけてくれる。


「……今日はどうするんだ?」

「アステリアの皆さんと情報共有を行います。朝、エレナさんが来られたので」

「……そうか。もし、話をして危ないことをする気ならやめておけよ?」


こっちの世界では、多少は運動能力にあっちの世界での能力が影響しているとはいえ、それでも女の子に変わりはない。

何か事件にでも巻き込まえようものなら、何も出来ないのは明白だ。

その言葉にノクスが頷いた。


「ご主人様こそ、あまり無茶するなよ?エリナとサラが怒り狂っちまう」

「……気をつけるさ」

「あまりその気はなさそうだな。警察ってのは危ない仕事ってのはドラマとか見てるから分かっけど」

「……それが性分だからな」


ディナも心配してくれているようだ。

だが、立ち話していると近所の人達にも目立ってしまうし、そろそろ職場に向かう時間だ。


「それじゃあ、後はよろしく」

「かしこまりました」


ノクスと別れ、地下鉄の駅へと向かう。

その道中に考えるのは、黒いスーツを来ていたと思わしき男の話。


(……前にエレナたちが出会ったと言っていた。その辺も洗い直したいところだが)


まだ、解決していないことも山積みだ。

例えば、海藤智則。

色々と聞き込みをした結果、勇者候補として性格的に最も怪しい人物。

そして、現在解析中のベッドの下から発見されたノートパソコン。

中身が分かれば何か見えてくるかもしれない。


「まあ、期待はしすぎない方がいいだろうな」


そう独り言を言って、駅に向かう道中で自販機から買った缶コーヒーを飲む。

頭が冴えない時はコーヒーが飲みたくなる。


(……捜査で最も危険なのは思い込みだ。まだ見えてない部分もある。慎重に行こう)


自分に言い聞かせることで、焦っていた自分を落ち着かせる。

一度、何かあると決めつければ、見えるものも見えなくなる。

電車に揺られながら着いた駅。

霞ヶ関にある警視庁本部。

いつもの通りに警備している警官に見守られながら入り、所属する刑事課のフロアへ足を踏み入れる。

そんな中、席へ向かう途中で声を掛けられる。


「警部」


呼びかけかれたので振り返ると、そこには鑑識課の田辺がいた。

このフロアにいるのは珍しい。

いつもは総合庁舎に詰めているはずだ。


「おう。どうした?」

「どうした?とは挨拶だな。例のノートパソコン、調べがついたみたいだぞ?」


その一言で足が止まる。

田辺がわざわざこのフロアまで来ていた意味を理解する。


「……どうだった?」

「こっちも今さっきその話を聞いたんだ。今から回収しに行くんだが、来るか?」


確か情管の詳しいやつに頼んだと聞いていたが、予想よりも早く終わったようだ。

見れば、田辺はうっすらとドヤ顔をしている。

今度、奢れ、とか言われそうだなと覚悟する。


「……行こう。にしても、早いもんだな」

「だろ?腕がいいやつに頼んだからな……にしても、これ行方不明案件だろ?情管のやつに何て説明したと思ってる。貸し一つだぞ」


田辺が笑う。

が、田辺の声のトーンが落ちる。


「ただな、聞いた話だが妙らしいんだよ」

「……妙?」

「詳しくは会った時にって話でな。でも、本当に高校生なのかしきりに聞かれだぞ?」


その言葉から、ベッドの下に隠していたわけが分かる気がしていた。

だが、そうなると――


「……で、報酬はなんだ?」

「お!聞いてくるってことはいいんだな?じゃ、今度飲みな。鶏が美味いところがいい」

「……分かった。鶏だな」


警視庁情報管理部。

業務としては、警察のシステム開発や通信網の整備が主な仕事で、警察活動を裏から支えてくれる縁の下の力持ちだ。

最近はインターネットの犯罪が横行するため、解析ができる専門チームができていたりする。

田辺が部屋に入ると奥の部屋に通され、担当者がパソコンを起動する。

画面には海藤のユーザーアカウント。

既にロックは解除済みだった。


「見てください」


担当者がマウスを操作する。

デスクトップは何の変哲もない風に見えるが、階層の奥には海藤が見せなくなかっただろうフォルダ一覧が表示される。

特に目を引くのは剣道について。

型の研究からトレーニング方法、指導法まで、インターネットで調べたことが集められていた。

また、友人との写真も保存されていた。

こっちはスマホで撮ったものを保存していたと思われる。

そこまでは普通だった。

問題はその下にある『未解決事件』というフォルダ。


「これです」


担当者がフォルダを開く。

中には大量のテキストファイルとどこからか入手した画像の数々。

そして――【キョウヤ】【ハルカ】【トモヤス】

それぞれのフォルダが作られていた。


「……」


これからの名前には覚えがある。

榊原恭也、水瀬遥、そして、藤堂元康。

前者の二名については未だ調査中ではあるが、鴨志田の捜査によって浮かび上がった行方不明の三人。

最後の藤堂だけは見つけ出す事ができたが、他二名は未だに足取りが掴めていない。

そして、なんとも怪しげなホームページのアドレスがメモとして残っている。

海藤は、名前から行方不明となっている人物を絞っていたようで、完全には絞りきれていないものの、十分その事象について興味があったのが伺える。

ここまで調べあげるとは、高校生の趣味の範囲を超えている。


「すごいですよね。この人物たちがなんなのかは知りませんが、執念の強さを感じます」


担当者も感心している。


「それと最後のこのフォルダ。『アストラディア』ってのはよく分かりません」


担当者がそのファイルを一つ開く。

そこには海藤自身のメモが残されていた。

『異世界は存在としたら』『この世界よりも自由に生きられる』『夢のような世界』……

海藤がアストラディアに夢を抱いていたのは分かる。

さらに下へスクロールする。


『聖ルクス教会は何かを知っている』


そこで目が止まった。

元魔王が運営している聖ルクス教会。

海藤と高橋が繋がっていたことからも、やはり調べていた。


「警部?どうしました」

「……いや、続けてくれ」


さらに読み進める。

『行方不明者は他にもいる可能性』『聖ルクス教会が配布している本の謎』『異世界転移には別の方法でも――』


文章は途中で終わっていた。

最後の更新日時は失踪の三日前。


「……」


偶然とは思えない。

海藤が聖ルクス教会にまで辿り着いていることにも驚きだが、本にまで行き着いていたことに驚く。

全てが繋がり始めている。


(……だが、海藤は何がしたくて異世界に興味をもったんだ?)


担当者が別のファイルを開く。

そこには画像データが保存されていた。

ただし、それは見たくもない、いや、まさかと思うもの。

"勇者の雫"――

前後のファイルから色々と調べているうちにこのドラッグまで辿り着いのが垣間見える。


「……これについては調べさせてもらいました。これ、ドラッグなんですよね?」


なんでこんな画像が保存されていたのか、担当者は分からず、首を傾げる。

そして、別の写真に写っていたのはメモ帳だった。

海藤自身の手書きで短い文章が綴られている。


『このパソコンを開いた者がいたら――』


その文字を見た瞬間、背筋が冷えた。

画面を凝視する。


『僕はもうこの世界にいないだろう』『でも、悲しむ必要はない』『俺は超越したのだから――』


部屋が静かになる。

担当者は事前に写真を見ていたからか冷静さを保っているが、これをどう捉えるべきか。

俺はゆっくり息を吐く。

海藤は行方不明者を調べるうちに何か起こったのだろう。

そして――


「……警部」


田辺が小さく声を掛ける。

田辺としてもこんなことになるとは思っていなかったのだろう。


「……これ、どうするんだ?」

「どうもこうもあるか。捜査するしかない」

「……それはそうだが」


目線がパソコンに戻ったところで田辺が別のフォルダを指差すして、肩を叩いてくる。

そこに表示されていた名前を見て、思わず目を細めた。


そこに書かれていたのは『X』の一文字。


「……エックス、ね」


思わず呟く。

偶然にしては出来すぎている。

画面を見つめながら、俺は静かに椅子へ腰を下ろした。

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