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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第89話

サクレを保護した応接室には重い空気が流れていた。

サクレが見つけた羊皮紙は机の中央へ置かれている。


「……サウスノーランド、な」


その地名を無意識に小さく呟く。

聞き覚えのある地名だった。

前にエレナなら教えてもらったラグナードの北にある街であり、帝国でも南の交通、流通の主要都市だったはず。


「……ご主人様。やっぱ気になるか?」


ディナが気を使って尋ねる。

今はラグナードのギルドを信じてピレネに対処しようと思っていた。

ここでその名前が出るとは思っていなかった。


「……状況次第だな」

「ま、そうだよな。で、メモにはなんて書いてあったんだ?」


ノクスに抑えられ多少は落ち着きを取り戻したサクレが答える。


「……取り乱してすまん。書いてあったんは、その街のことを調べてたみたいやね」

「……それだけでそんな顔になるか?」

「なんか嫌な予感がするんよ……」


即答だった。

普段の軽い口調ではない。


「……ここまでの話を考えると、叔母様は何かに関わっとんねやろ?やけど、叔母様のことやから、叔母様自体も途中で裏切る気でいると思うんよ」

「……なるほどな」

「やから、叔母様を止めんと。絶対失敗するやろ、こんなん」


裏にいるのがこちらの考えている連中だとしたら、サクレの叔母様が逆に利用だけされる可能性もあるだろう。

だが、叔母のことまで構っていられる人員はいない。

まして、今は帝国が魔王に攻められ混乱している最中だ。

第三勢力としてその場に現れるとしたら、敵と認定する他はないだろう。

アズラが羊皮紙を手に取る。


「サクレさんの言うことも分かります。が、気になる点はもう一つ」

「何かあったのか?」

「ここにある印は、記憶が正しければ、確かピレネの領主のものですよね?可能性だけですが、ともすれば、ピレネ領主も関わっている可能性があります」


アズラは指先で羊皮紙をなぞる。


「帝国のノーランド伯爵は過去に武功をあげて伯爵にまでなった、いわゆる成り上がりです。結構政敵も多い人物とお伺いしています。ピレネ領主は男爵でしたから、もし、サウスノーランドが危機的という情報を入手していたら、この機会を逃すとは思えません。」

「……つまり?」

「……可能性ですよ?でも、ここでサウスノーランドか墜ちれば、伯爵の地位は揺らぎます。こちらの街に注意を引かせて、本丸はサウスノーランドの可能性もある、ということです」


全員が黙った。

確かに現状を考えればありえない話ではない。

街はロックドラゴンのお陰でなんとか防衛はできている状態。

もし、そこに冒険者も加わるとなると、魔物も群れを退治することは幾分か早くなる可能性もある。

が、その冒険者達は全員拘束され、動けない状況を作ってあり、均衡が保たれている。

偶然では片付けられない。

頭の中で情報を整理する。

全てが一本の線で繋がり始めている気がした。


「……行くしか、ないな」


ここでこの言葉を言うのは気が引ける。

まだ、街は叔母様の手中にあるのは確かで、サクレも追っ手がかかってる状況。

そんななか、ピレネを放置するのは、それもまた危険な賭け。

その言葉にサクレが顔を上げる。


「旦那様?行くってどこや?」

「……サウスノーランドだ」


部屋が静かになる。

ユズはそういうだろうと思っていたのか、静かに頷く。

アイリは悲しそうな表情をしたものの、状況理解はしているようで、特に意見はなさそうだ。

だが、ディナだけは眉をひそめている。


「ピレネはどうする?」


現実的な質問が投げかけられる。

このまま放置はできない。

案としては、アズラに残ってもらいサクレへの支援を取り付けることができればと思うが、そもそも戦闘力に自信の無い魔族ばかりで当てにはできないだろう。

しかも、最悪なのは、アズラでも対処できない相手がいる可能性も秘めていることだ。

問題はそこだ。

正体不明の黒スーツ。

逆に全員で離れるという選択もあるが、それはラグナードが危険になる可能性もある。

ここで全員が街を離れるのは危険だった。


「私たち、ノクスを残しますか?」


キューリーが提案する。

戦力的にはその方がいい。

しかし、相手が魔王ですら敵わないのであれば、今のノクスでは太刀打ちできないだろう。


「……駄目だ。アズラ以上の相手がいて、危険すぎる」


アズラでさえ負傷した相手。

可能性として、異世界人の場合も想定しなければならない。

となれば、相手をするのは――


「……俺が残るという手段もある」


そう言った瞬間。

ユズが即座に否定する。


「ご主人様」

「……なんだ?」

「却下です。ご主人様こそ、お一人では危ないです。何かあった時にサポート出来ません」


珍しく強い口調だった。


「また一人で無茶をするつもりですね?」

「……」


否定できない。


「そもそもサウスノーランドまで距離があります。その叔母様もまだ辿り着いてはいないはずです。後手後手になる可能性はありますが、急いで取り返しのつかないことになるよりマシです」

「その通りですね」


アズラも頷く。

ユズとアズラに諭され、少しは冷静さを取り戻した。

確かに後手後手になっても、叔母様がサウスノーランドに着くにはまだ猶予はあるはずだ。

どちらも捨てない、そんな欲張りが許されるのだろうか。

ピレネも、サウスノーランドも。

そんな中、今まで黙って話を聞いていたサクレが口を開いた。


「……旦那様」

「……旦那様じゃない」

「このやり取りおもろいやん?やなくて、ゼロ様」


サクレが声のトーンを落として話を続ける。

その声から今までのおちゃらけた雰囲気は感じない。


「うち、ひとつ聞きたいことあるんやけど」

「……なんだ?」

「ノクスの皆、みんな奴隷なん?ゼロ様はまだ隠していること、あるんやないの?」


部屋の空気が少し変わった。

ふざけていないが、それが何か関係するだろうか。


「……そうだな」

「もう大体察してるんやけど、ゼロ様って転移者やろ?何か特殊なスキルでも持ってんちゃうの?」

「……なぜそう思う?」

「一つは魔王アズラが親しげに話していること、一つはさっき見せてくれたものがそのスキルである可能性、最後に、この世界の人と雰囲気がちゃうねんもん」

「……そうか。ここにいるノクス、そして、ラグナードにいるアステリアは奴隷だ。そして、スキルで強くしている途中ではあるな」


サクレはその言葉を聞いて考える。

アズラは何かを察したのか、ちょっと困った顔になった。


「うちを、仲間にしてくれへんか?」

「……は?」


ディナが吹き出した。


「うちのスキルは奪われてもうたけど、ゼロ様ならそこからでも何とかできる思うねん。それに、この街を守るんなら、うちの力は必要や。スキルはないなっても、ロックドラゴンとは会話できんねん」

「……一人でどうする気だ?」

「メンバーは探せばええんやろ?そうすれば、サウスノーランドもピレネも救える思うねん。どやろ?」


サクレはそう言い、机の上の羊皮紙を見る。

帝国南部を二箇所同時に救い出す。

そんな夢物語を達成するために、サクレは自身にできることを申し出てくれた。



会議は深夜まで続いた。

そして誰も気付いていなかった。

持ち帰った資料の中に、サウスノーランドへの地図が混じっていたことに。

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