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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第88話

サクレを連れ、ギルドへの帰路はできる限り人目につかないよう道を選んで進んできた。

本降りだった雨も今は小降りになっていた。

倉庫で出くわした連中はそのまま放置してきたが、【ゼロ】が効いている間は身動きできないだろう。

雨の音に耳を澄ませながら、センチメンタルな道中であればよかったのだが……


「だ、ん、な、様!」

「……少しは静かにできないのか?追われているんだろう?」

「せやで?でもな?うちの旦那は強いんや。心配いらへんやろ?」

「……何回も言うが、旦那じゃないぞ?」

「そんなん分からんやん。口ではそう言うても、照れ隠しかもしれんし。それに、うち、美少女やで?長命種やから、外見も衰えへんし、お得やん?」

「……そもそもノーサンキューだ」

「そない強情やったら、既成事実ちゅうもんを作ったるさかい。うちやってもう十五やで?傷物にされたら誰ももらってくれへんくなるな~」


と、ずっと賑やかな道中となっている。

とはいえ、サクレは嬉しそうに俺の隣を歩いているのは喜ばしいことだ。

口調もあった当初と同じくらいのトーンまで戻っていて。さっきまで命を狙われていたとは思えない回復力だった。


「なあなあ?」

「……なんだ。少しは大人しくするか?」

「せえへん。って、ちゃう。うちな、旦那様のこと知らんやん?まだギルドまでは距離もあるし、教えてくれへんかなって。」

「……何が聞きたい?」

「せやな……旦那様はピレネの冒険者やないよな?どこ出身なん?」

「……冒険者ならベルナスが所属みたいだな」

「王国出身なんや。こない遠いとこまで何しに来たん?」


サクレは帝国で起きていることを知らないのか、純粋な質問を投げかけてきた。

今後サクレにとっても他人事ではなくなる可能性もあるため、ここまで来た経緯と現状を簡単に説明する。

ベルナスでのヴェルデナ強襲、帝国への魔王軍進軍の知らせとラグナードでのボロス襲撃、そしてピレネからの救援要請。

大雑把に今までの出来事を話すと、サクレが大袈裟に肩を落とす。


「……なんや。うち、何も知らんねんな」

「お前はその時大変だったんだろうから、しょうがないだろ。ただ、今後はここも戦場になる可能性はある。きちんと身の振り方は考えておいたほうがいいぞ?」


その言葉にサクレは一瞬だけ黙り、考えるそぶりを見せる。

そして、小さく笑う。


「……決めたわ。旦那様の嫁になったる!」

「……もう一回叩いてほしいのか?」

「暴力反対!って、ちゃうわ。今のうちやとあんまり力になれんかもしれんけど、力さえ取り戻せれば旦那様の力になれる思うんよ。せやったら、旦那様に面倒見てもらわんとあかんやん?それって、一生添い遂げるしかないやん!」

「……飛躍しすぎな!」


そんなやり取りをしながら冒険者ギルドへ戻る。

すると入口で待っていたナーレがこちらに気付き、駆け寄ってきた。


「ゼロさん!ご無事――」


そこまで言って固まる。

視線の先は当然、腕に抱き着いて離れないサクレだ。

サクレはナーレに気付き、軽く手を振る。


「ここがギルドなんや。で、誰?」

「……ゼロ様、さすがに少女誘拐は……」

「……違う。保護だ、保護。それと、彼女の名前はサクレ。自称、本物の巫女だそうだ」


ナーレが固まる。

巫女は危険人物と言われていて、いきないその巫女を連れてきたら誰でも固まるだろう。

しかしナーレが固まった原因は別にあった。


「え?巫女様?……人違いではないのですか?」

「……そういう反応になるよな」


ノクスも含めて報告しようと思っていたが、ナーレも知らないとなると、サクレは表に出ていなかったことになる。

サクレのほうを向くと、「多分知らん人のほうが多い」とのことで、ナーレには先に説明することにした。

サクレの一族の話、サクレが巫女になった話とその後の叔母の話。

簡潔に説明すると、ナーレはうんうん唸りながらも理解はできたようだ。


「確かに巫女様のお姿を見る機会は少ないのですが、そんなことがあったのですね」

「今は巫女ちゃうけどな。今は旦那様の奥様やし」

「……え?」

「……誤解だからな。違うからな」

「嘘いうてへんもん。一生守ったるいうてたもん」

「え?」

「……ナーレ。こういうやつだから」


ナーレもサクレのノリに疲れたのか、既にノクスとアズラも戻ってきているとのことで、二階の応接室に案内してくれる。

しかし、部屋に入るとアズラが護衛の仲間から回復を施されているところだった。


「……アズラ?」


思わず声が出た。

だいぶ傷は治したものの、アズラの口元には傷があった。

服は新しいものに着替えられていることから、何かしらの戦闘が起こったことは容易に想像がつく。


「ゼロ様。お帰りなさい。すみません。ちょっと油断してしまいました」


本人は平然としている。

だが平然としているから余計におかしい。


「……何があった?」

「私の油断ですね。もう少し緊張感をもっていたら別の結果だったかもしれません」


そう言うアズラの隣で手持無沙汰で腕を組むディナが申し訳なさそうに報告してくれる。


「油断はあったかもしれねえけど、相手が規格外だった。俺たちは例の家を調べてたんだ」


ディナがあったことを簡潔に教えてくれる。。

家を調べ、隠し部屋を発見し地下室へとたどり着く。

そこには大量の資料があったので持ち帰った。

ただ、そこに黒いスーツの男が現れたーー

その単語を聞いた瞬間、俺の思考が止まった。


「……黒いスーツ?」

「日本でご主人様が来ているようなジャケットだな」

「……何か話していたか?」

「いや、『時間だ』とか言っていなくなったぞ」

「……ご主人様、もしかして異世界人の可能性を?」


ユズが呟く。

黒のスーツを聞くと渋谷でのことを思い出すが、ディナの話だとそこまでおしゃべりではなかったようだ。

とすると、違う人間の可能性もーー


「……黒いスーツは一度日本で会ったことがあるんだ。だが、性格が違いすぎる……」

「じゃあ、その仲間ってことか?」


その可能性が一番高いだろうと頷く。

しかも、奴から貰ったものは”勇者の雫”。

これらが繋がり始めているといっても過言ではないだろう。


「……強かったぞ。アズラでも勝てなかった」

「皆さんは悪くありませんからね。私が出しゃばったのです。怒らないであげてくださいね」


アズラならそういうだろうと思っていたが、アズラでも対応が困難となるとどうしたものか。

すると、その言葉にサクレが反応した。


「え?アズラさんって魔王のアズラさん?」


全員の視線がサクレへ向く。


「なんや。どないした?」

「ご主人様、この人は?」


今までアズラやノクスは目の前のことに集中していて、サクレに気付かなかったらしい。


「……保護した」

「ども。サクレです。皆様のご主人様の奥さんなります。どうぞよろしゅう」

「!!??」


サクレがまた爆弾発言をするものだから、場の空気がおかしくなってしまった。

サクレは無い胸を張ってドヤ顔だが、ノクスの面々は怪しい人物を見る目でサクレを見ている。


「……ご主人様?」

「……倉庫で保護した自称本物の巫女様だ」

「え?」


ノクスの面々も巫女という部分に驚いたようだ。

逆にサクレへの警戒心を高めてしまったかもしれない。


「そんで?その黒い服の人族はどないしたん?」

「あ、さっきディナが言ったように消えました。その人に心当たりでも?」

「ごめんやけど、ないわ。うちもずっと捕まってたし。もしかしたら叔母様関係かもしらんけど」


商人の家での話は後回しとなり、今度はサクレの話になった。

ナーレには事前に話したものの、まだ説明を受けていないノクスからすれば突然現れた少女なのだから。

ノクスの質問攻めにサクレは最初こそ緊張していたが、話し始めると止まらなかった。

叔母、巫女の継承、能力の強奪。

全てを話したところで、聞いていた話と相違ないと頷く。

だが、話が終わった後、ナーレは困ったような顔をしていた。


「……巫女様がそんなことになっていたとは、知りませんでした」

「それはしゃあないやん?叔母様も隠しとったんやろし」

「でも、確かに巫女の継承は三年前に発表されていました。大きなお祭りもありましたし。でも、そんなことが……」


街の住人からすると信じられない事態だろう。

サクレの話したことが本当であれば、だが。

ただ、倉庫で襲われた件、そして、腕の傷は何かしらの事件に巻き込まれている証拠ではある。


「……とりあえずは保護する。それでいいな?」


ノクスの面々もその意見には賛成のようで頷いてくれた。

サクレもその光景を見て苦笑した。


「ありがとうな。うち、いい奥さんになるからな」


ーーパコン


「何するん?」

「……また誤解が生まれるだろ」

「ええやん。うち、ハーレムでも構わへんで?」


ペロっと下を出したことから、わざと空気を軽くしようとしているのは感じ取れた。

アズラの負傷と巫女の話で場が暗くなりすぎるのを防ぎたかったようだ。

少しは場の空気が明るくなったところで、今後の方針を決める。

すると、アズラがノクスに合図すると出てきたのは、書類の山。


「ゼロ様。これが持ち帰った書類です。内容は確かめずに全部持ち帰ってしまったのですが、何かしら手掛かりになるようなものがあれば前進するのでは?」


確かにこれだけの大量の資料が地下室から持ち帰ったものだとしたら、何かしらはありそうな気がする。

地図に魔物の研究資料のようなものから、魔法陣が書かれたものと、そして意味不明な文字が羅列されたもの。


「……あ」


サクレが固まった。

一枚の羊皮紙を見ている。


「どうした?」


サクレは震える指でその紙を指差した。


「これ……」

「……なんだ?メモか?」

「叔母様の字や。あの人、字下手くそやから特徴あるんよな」


空気が変わった。

サクレは紙を手に取った。

そして、ゆっくり声に出さずに読み始める。

だが、読み終わると、サクレの表情から血の気が引いていく。


「……嘘やろ」

「分かったのか?何が書いてある?」


ディナが興奮気味に聞く。

サクレはしばらく答えなかった。

やがて、震える声で呟く。


「サウスノーランド……」


全員が固まる。

何故いきなりその街の名前が出てくるのか。


「あかん……叔母様を止めな!」


サクレは今にも飛び出しそうだった所をノクスの面々が抑えてくれた。

誰も言葉を発しない。

今までバラバラだった話が少しずつ一つに繋がり始めていた。

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