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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第91話

ご主人様が仕事へ向かったのを遠めに見つつ、私たちはリビングへ集まっていた。

今日は朝からノクスの面々を呼んで、お互いの情報共有を図る予定です。

ピンポーンとインターホンが鳴る。

ミアとリリアは朝食の準備で忙しく、セラが対応してくれます。


「おはようございます」

「おはようございます、セラさん」


今日はノクスの皆さんにご主人様のお見送りを任せました。

ご主人様の見送りを終えたところで、ノクスの皆さんがやってきます。


「皆さん、お揃いですね」


私もリビングから声をかけ、微笑みます。

アストラディアでは離れ離れでも、日本ではこうして会えるので元気にしている姿を見るのはほっとします。

ノクスの皆さんをリビングに案内し、それぞれ思い思いの場所に座ったところで私が切り出します。


「まずはピレネの件ですね」

「まず、昨日からの進展としては、巫女様が通っていたとされる家の捜索と、ご主人様が連れ帰ってきた人物の話です」


ノクスのリーダーとしてユズさんが説明を始めます。

すると、キューリーさんが机の上にメモを並べ始めました。

早起きしてこれらをまとめたのでしょう。

内容を見ると、捜索した家では『大量の羊用紙』『魔王アズラを圧倒する黒いスーツの男』『サウスノーランド』といった言葉が並んでいます。

次にご主人様が連れ帰ったという人物の方に目を移すと、『サクレ』『当代の巫女』『能力が失われている』といった文字が書かれています。

私含めアステリアのメンバーとしてはいきなりの情報量の多さに驚いてしまいますが、ユズさんが「一つ一つ説明します」と前置きしたうえで。


「まず、私たちノクスとアズラ様で巫女様が通っている家に潜入してきました」

「……これ、魔王アズラが圧倒されたように書かれているけど」


ミアが書かれている内容を指さして質問します。

これに対してはディナさんが頭を掻きながら説明してくれます。


「なんだ、その、まあ、こっちを見逃してくれたって感じか?かなり強い奴だったのは確かだぜ」

「……怪我は?」

「ノクスは全員無事だ。アズラ様は、だいぶ手酷くやられちまった。正直、勝てる気がしなかったぜ」


歯切れの悪い言葉ではありましたが、とりあえずは魔王アズラ様含め、全員無事に拠点に帰ってきているとのことで、一安心です。

ですが、ユズから「これから、この黒いスーツの男には注意が必要でしょう」との発言はアステリアとしても重く受け止めます。


「……この、サウスノーランドは?」


黒スーツの件が終わると、今度はリリアが質問します。

サウスノーランドはラグナードの北にあり、少し前までの私たちの目的地であり、現在、ギルドの諜報部隊が情報収集に向かっている場所です。


「これを話すと長くなるのですが……」


ユズがその話をする前に、ご主人様が連れ帰った人物の説明を始めます。

なんでも、ご主人様は単独で街を散策し、『当代の巫女』を思わしき少女を保護したようです。

その方の名前がサクレ。

今までのピレネの状況からすると、この巫女という人物が権力を振るっているように感じていましたが、現在ピレネで指揮しているのは、このサクレの叔母ということ。

その叔母がノクスが潜入した家に出入りしており、そこに叔母の字で『サウスノーランド』と書かれていたとのことでした。


「……なんで、叔母、サウス、ノーランド?」

「そこはまだ判明していないことが多いんです。推測でなら色々と話題に出ましたが……」


ルナの疑問にアイリさんが答える。

ここでルナが首を傾げてアイリさんを見る。


「……故郷が近くて心配してくれているんですよね?そっちに向かいたい気持ちもありますが、近場の村はピレネに避難しているそうなので、大丈夫だと信じています。それよりも、今、ピレネを放置するほうが後々恐ろしいことになりそうです」

「……わかった」


ルナもアイリさんに魔法を教えている立場上、弟子の心配をしていたようです。

ここまで聞いた部分を考えると、サウスノーランドとピレネの双方に対応が必要と判断できますが……


「……ご主人様の判断は?」

「ピレネ、ラグナード、サウスノーランド。この三つの街を死守したいという意向です」


私の質問にユズが力強く答える。

ご主人様ならそう答えると思っていたが、それにしてはメンバーが足りない。

私たちアステリアはラグナードギルドからの要請でまだ街から離れることができずにいる。

その現状は、たぶんご主人様も想像していると思うので、ノクスを連れラグナードへ帰還すると考えられる。

すると、ピレネは魔王アズラに任せる形になるが、街にはその魔王アズラを圧倒するような黒いスーツがいるとなれば、ガラ空きも同然です。


「ご主人様は、その当代の巫女を仲間にする方向を考えています」

「……当代の?」


サーシャの発言にフィアが反応します。


「当代の巫女は力を奪われているのでしょう?何ができるというのですか?」

「……ご主人様のスキルで強くなってもらうしかないかと」

「つまり、もう一部隊作るお考えなのですね……」


その言葉にここにいる全員が考え込んでしまう。

確かにご主人様と『奴隷契約』を結び、スキルの恩恵により強くなっている。

ただ、ご主人様のスキルの全容を私たちが知らない以上、それに頼り切ることも作戦としては不確実性が高くなる。

そして、たぶん、ご主人様との『奴隷契約』は必須だと思われます。

これに対してどう思うか……ここにいるメンバーとは境遇が違いすぎます。


「……それと、手負いの魔王アズラと当代の巫女だけでは、戦力不足になるのでは?」


セラの的確な指摘もその通りだと思います。

ただ、可能性があるとすればーー


「……ピレネに向かっている黒髪のヒューマン」


私の呟きにノクスが頷きます。

もし、そのヒューマンが無事にピレネに辿り着けば、同じくパーティに加ええてもいいのではということでしょう。

ピレネに向かっているヒューマンもラグナードの研究施設にいた人物。

現代の巫女同様、能力が奪われている可能性も考えると、ご主人様の力で蘇ることは可能でしょう。


(ーーにしても、能力を奪う、ですか。ラグナードを襲っていた魔王軍の大将はその結果なのでしょうね)


あの時の戦いを思い出し、私の中で寒気がします。

あの時は、たまたま、研究施設にあった薬を飲ませたことで勝てましたが、あの薬は今後も必要ということになります。


(ーー探しておきましょうか)


私の中でやるべきことリストに追加しておきます。

ある程度の情報共有は済んだところで、ミアの耳がピンと立ち上がります。


「……そういえば、ちょっと前に黒いスーツの男、見たね?」


ミアの言葉を思い出してみますが、いつのことを言っているのでしょう。

すると、私の隣で座っていたリリアが袖を引っ張って「……秋葉原」と囁いてくれます。


「……あの時、ですか」

「……です」

「……同じ、かも?」


ルナの仲間を襲ったと言っていた黒の集団。

まさか、こんなところでも繋がってくるとは……

リリア、そして、ルナも同じことを思ったのか同意してくれます。


「どういうことですか?」


今度は逆にノクスが知らないことのため、私の口から説明します。

セラ、ルナ、フィアが加入した直後、日本の案内をしている最中に怪しい人物を見つけたこと。

ノクスが見た人物と同じか分かりませんが、ルナの仲間を襲った集団によく似ていること。

その仲間も、もしかしたらーー


「……能力、奪われ、てる、かも?」

「現状ではなんとも。今のところ、憶測に過ぎません」


そう、黒スーツについての情報がないのです。

能力を奪う、そして、他の者に与えるということは、ラグナードを襲っていた大将から明白でしょう。

それが、魔王ボロスに所属していたということから、魔王の関与も確実です。

そして今回、ピレネの件を考えると、巫女がその能力を奪うという技術を入手したことは証明できるでしょう。

ただしーー


(黒のスーツはどれに対しても直接的に関与しているとは言い切れない、ですね……)


それでも、魔王アズラを圧倒する能力を持っているという人物。

万が一にでも敵であるなら、戦うしか方法はなくなる。


(……魔王が勝てない相手にどう戦うか、も考える必要がありますね)


窓の外を見る。

日本の平和な街並み。

今は信じるしかない。

ご主人様が見つけ出してくれることを。

そして私たちは、私たちに出来ることをやるだけだ。


(……秋葉原。一度、調べてみる価値はあるかもしれませんね)


そんなことを考えながら、私は湯気の立つお茶を静かに口へ運んだ。

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