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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第82話

日本での情報共有、そしてその後の付き合いを終え、せっかくの休日が一日潰れてしまった。

またこうしてアストラディアに来ている今、やるべきことはただ一つ。

岩龍の巫女に会いに行くーー

その目的を果たすため、冒険者ギルドの一室に集まったノクスとアズラ、そして冒険者ギルドのナーレと共に簡単な打ち合わせをしていた。


「……今日は巫女に会いに行こうと思う」

「では、予定通りですね」


ユズが確認する。


「冒険者が不自由を被っていることも確認しなければいけないが、まずは巫女がどういう人物かこの目で見ておきたい」


このことは昨日の時点で決まっていたことだ。

物事の中心にいるのが巫女なら、まず本人に話を聞くのが一番早い。


「普通に会えると良いのですが」


キューリーが少し不安そうに言う。


「会えない気もするけどな。俺たちが街に入ったことは知っていそうだしな」


ディナが腕を組んで外に視線を移す。

そこには怯えたように移動する住人の姿があるが、時々、ギルドに対して視線を向けるものもいる。


「……多分だが、目はつけられているんじゃないか?」


オルディスの話を思い出す。

今の巫女は正常とは言い難いと言っていた。

街を守っているという結果だけ見れば英雄だが、その過程に問題がある。

加えて、ナーレから聞いた話も加味すれば、現状、放置できるような状態ではない。

しかし、追われていることを知っている人物が素直に話を聞いてくれるとは思えない。


「行ってみれば分かりますよ」


アズラは相変わらず穏やかだった。

巫女の社は街の中心から少し離れた高台にあった。

白い石で造られた建物は神聖な雰囲気を纏っている。

だが、その周囲には武装した者たちが配置されていた。

兵士というより護衛だろう。


「我々はラグナードのギルドから来た冒険者パーティ、ノクスです。巫女様に面会をお願いしたいのですが」


ユズが代表して声を掛ける。

すると護衛の男は迷う様子もなく答えた。


「巫女様はご不在です。今はピレネ防衛に尽力されていますので、またお越しください」

「一日中防衛をされているわけではありませんよね?少しでもいいのでお時間いただけませんか?」

「……それはお答えできません。お帰りください」


護衛の男は表情を崩すことなく、淡々と答える。

これでは取り付く島もない。

キューリーが何か聞こうとしたが、それ以上会話が続く気配はない。


(……ゼロさん。ここはいったん引きましょう)

(ーーアズラ?)

(彼は先ほどからハンドサインでこちらに離れるよう、忠告しています。それを信じましょう)

(……分かった)


アズラはほかの誰も聞こえないほどの声で告げてきた。

確かに注意深くみると、男の指が曲げられたり開いたりしている。


「帰りましょうか」


アズラがあっさり言った。


「いいのか?ここで待っていたっていいんじゃ……」


ディナが眉をひそめる。

事情を知らないディナが食って掛かるがここは頷いてアズラに従うよう促す。


「無理に押し通る理由もありません」


ノクスの面々は納得いっていない様子だが、一度街へ戻ることにした。

社を離れてしばらく。

アズラが不意に立ち止まった。


「どうした?」

「……いえ」


そう言いつつ、周囲を何気なく見渡している。

その様子を見て、ディナも僅かに表情を変えた。


「……ああ。そういうことか」

「ディナさんは優秀ですね。気付きましたか?」

「なんとなくだけどな。違和感はあるな」


そんな二人の会話にユズも反応する。


「……魔法かスキルで気配を消していますね。ここまで完璧に消しているとなると、暗殺系の職業のものでしょうか。とはいえ、アズラさんたちのものと比べると拙いので分かりました」

「昨日、そのお話を熱心に聞いていらっしゃいましたものね。それでも、この方たちも十分優秀だと思いますよ?」


アズラは苦笑した。

立ち止まっていると不審がられるとアズラに助言されたので、普通に歩いている風を装いながら現状の確認に努める。


「……どのくらい前からだ?」

「ゼロさんはあまり気配察知が得意ではないのですね。社にいた時も数人いましたが、今はその倍以上ですね」

「ご主人様よ……ここは住人にも被害が出るからよ。あっちも表だっては動いてこないぜ。まずは、様子見ってこった」


ユズも頷いたことから、相手に動きはないのだろう。

聞くと、街中を歩く人々に紛れているらしい。

しかも、同じような気配が一定距離を保ってついてきているとのこと。


(……ネロ戦を思い出すな。気配察知か。これだけ人が多いと、さすがに判別は無理だな……)


試しに気配察知を試してみるものの、人が多すぎて違和感すら掴めない。

ユズとディナ以外の四人も、なんとか気配を探っていいるようだがうまくいってないようだ。


「……巫女の部下か?」

「分かりません。こればかりは見てみないと」


アズラは首を振った。


「ですが、試してみる価値はあります」


そう言うと、小さく手を叩いた。


「少し遊びましょうか」


数分後、俺たちは三手に分かれた。

ユズ、キューリー、サーシャがまず初めに街の露店通りにあった小道へを入っていく。

続いて、アズラ、ディナ、カリン、アイリが同じように小道へ。

しかし、相手には今の俺の周りにはノクスとアズラがいるように見えているはずーー

それこそアズラが言っていた"遊び"、幻覚魔法。

だが実際は全員別行動。

本当にここにいるのは俺一人だった。


「便利なもんだな……」


思わず呟く。

すると背後からアズラの声だけが聞こえた。


「お褒めに預かり光栄です。さて、追手は皆さんゼロ様に釣られていますので、ご注意を」


最後に注意だけしていくとは……

この作戦はアズラの申し出であったが、最後に残る役目は譲らなかった。

ノクスの面々はもちろん除外だが、アズラにしてもルクスの友人ということもあり、ここは危険を冒してほしいところではなかった。

残されたのは俺だけ。


(……あとは色々と聞けたらいいのだが)


そして――尾行者たちを罠にはめるために行動を開始する。

この街の道は基本的には単純で、現在魔物に襲われていて閉ざされている正門から巫女のお社までが大通り、この大通りの左右に露店通りと商店通りが作られている。

商店通りのほうは綺麗にに区画整備されているため、この街でいえば富裕層が多く住んでいる。

逆に露店通りの方は狭い路地も多く、行き止まりになる道も多い。

その目的の路地に入り、少し進むと予定通りに行き止まりになっている。

来た道を戻ろうと振り返ると、どこからともなくナイフが飛んでくる。


「……さて、出てこい。相手してやる」


静寂。

誰も出てこない。

これも予想通りだ。

相手は追い詰めたつもりでいるはず。

なら――


「……ここなら人も少なくて気配が見やすい。いくぞ」


右手を前へ出す。


(……【ゼロ】)


ネロ戦で鍛えた察知能力で相手にかかっている魔法を【ゼロ】にする。

周囲に展開されていた魔法が次々と消滅していく。

そして――


「なっ!?」

「馬鹿な!」


路地のあちこちに人影が現れた。

黒装束が十人以上。

全員が驚愕している。


「魔法が……見えているだと!?」

「そんなはずが――」


今までの戦いから、魔王の加護持ちでさえなければ、【ゼロ】は通用する。

しかも、魔王の加護持ちは経験からすれば少数精鋭、魔王の腹心たちにしか与えられていない。

なら、この黒装束たちは【ゼロ】が効くということ。

その後の戦闘は短かった。

短いというより、一方的だった。

一人目が飛び込んでくるが、ステータス任せに腕を掴み、地面へ叩き付ける。

二人目は茫然と立ち尽くしているところを腹に一発蹴りを入れ、壁に激突。

三人目は拳で顎下をフックして脳震盪を起こさせる。

他の連中も同じように、体術だけでノックダウンさせたが、相手は決して弱くない。

むしろ機転が利いたものもいたので精鋭だろう。

だが――相手が悪かった。

数分後、立っているのは一人だけ。

その最後の一人を壁へ押し付ける。


「…誰の差し金だ?」


男は答えない。

顔も黒の仮面で隠れていて読むことができない。


「巫女か?魔王ボロスか?それとも――」


そこで男が笑った。

何に対して笑ったのか理解できなかったが、嫌な笑みだった。

感じ取れたのは、相手は話す気は微塵もないようだ。


「……なるほど」


俺は相手の首元をつかんでいる手の力を緩めてしまった。

その隙に、ガリッと何かを嚙む音が聞こえる。

止める暇はない。

相手はそのまま口から血を吐いて倒れてしまった。


(……胸糞悪い。自決すら厭わない相手なのか……)


それから、気を失わせ仮面を剥ぎ、手足を拘束した追手たちを荷車に乗せ、ギルドに帰還する。

既にギルドに到着していたアズラたちが合流する。


「どうでした?」

「……一人、自決した。他の奴らは外の荷車に乗せてある。口の中まで検査したのは初めてだ。とりあえず、自決する術はないはずだ」

「そうですか。あとは彼らが答えてくれるかどうかですね……」


答えが出ないことは予想していたらしい。

ユズが周囲を見回した。


「収穫は?」

「……ほとんど無い」

「その手に持っているものは?」


正確には少しだけあった。

これは奴らが身に着けていたネックレス。

アズラの表情が僅かに変わった。


「何か知ってるのか?」


俺が聞くと。アズラは答えるべきか悩み、数秒黙る。

そして静かに答えた。


「……見覚えはありますが、何なのかは……でも、嫌な予感がしますね」


その言葉だけだった。

だが、その表情を見ていると、ピレネの件は思った以上に根が深いのかもしれない。

巫女には会えなかった。

だが、確実に何かが動き始めていた。

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