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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第3章 転生勇者と奴隷少女

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第80話

あれからギルド内から動くことなく、夜を迎えた。

遠くでは、獣の咆哮が聞こえてくるが、特段、街に危機は迫っていない。

ノクスには先に眠ってもらい、眠れない中、アズラに晩酌を付き合ってもらう。


「……ゼロさんは、この状況をどう見ますか?」

「……巫女の思惑次第だとしか。一見、街を守っているように見えて、逆に街に閉じ込めているようにも捉えられる。ロックドラゴンだけでなく、冒険者も協力すれば、魔物への対処はもっとスピーディにいっているはずだ。とすれば、魔物の群れを引き付けておく必要があるのか、それとも、別の思惑があるのか……」


まだ、調べたりないことが多い。

ラグナードでの研究施設、アイリの故郷にいたとされる勇者、そして”勇者の雫”。

アズラと静かな街を眺めながら、夜は更けていった。



今日は休日ということもあり、アステリアが購入した部屋にお邪魔している。

部屋を購入したと聞いていはいたが、部屋に上がるのは今日が初めて。

部屋の中は綺麗に掃除されており、インテリアも凝った物が揃っている。


「……綺麗にしているな」

「ご主人様は初めてですから。でも、ノクスもいると手狭には感じますね」


エレナが出迎えてくれ、リビングを見ながら愚痴をこぼす。

今日はラグナード側とピレネ側での情報共有の場に参加してくださいとエレナから申し出があった。

確かに多少手狭には感じるものの、ワンルームに七人で住んでいたころよりは広々としている。


「ご主人様はお好きなところに座ってください」


エレナに促されどこに座るか考える。

テレビ前のソファ横に座る。

ソファではノクスが何か調べ物をしている。


(……不動産の情報ばっかりだな)


ちらりと見たところ、住むところを探しているようだが、みんな真剣に話し合っているので、テレビを見て会議が始まるのを待つことにする。


「みなさん揃いましたので、そろそろ始めますよ」


エレナの号令でみな、意識をこちらに向けた。


「では、情報共有を始めましょう。今日はご主人様もお休みなので来ていただきました」

「……それで何から話すんだ?」

「でしたら、ピレネ側から報告します」


ユズが手を挙げて発言をする。

ユズが語ったのはピレネにいた側からするとしゅうちのこと。

岩龍に会ったこと、岩龍とアズラが旧知の仲であったこと、巫女の様子がおかしいこと、そして、街にもその影響が現れていること。

巫女の今の立場はかなり危ういと思っている。

独裁者になった人物なら歴史を学んだものからすれば、ほとんど上手くいくはずがない。

このままではいずれ巫女はクーデターにでも合いそうな未来が見える。

特に今回厄介なのは、巫女は正気ではなく、かつ、街を守っているという事実があることだ。

巫女が変わってしまった原因究明もさることながら、巫女の原因を究明することで巫女の不在を招いてしまえば街の防衛はままならなくなってしまう。


「……私としては、巫女様には申し訳ないのですが、原因究明は緊急性が高いと思っています」


ノクスの面々はユズの結論に概ね賛成なのか、頷いていた。


「……次代の巫女はいるの?」

「今、私たちはギルドから外に出ていないので、探さないといけません」

「……放置するのは?」


ミアが言いたいことも至極当然だ。

今、街を守れているという事実は変わらない。

街への影響が出ているとはいえ、実害は冒険者が動けないこととロックドラゴンが酷使されていること。

もちろん、このまま放置はいただけないことだが、ラグナードを襲ったボロス軍がいないことをきちんと確認してからでも遅くない、とでも言いたいのだろう。


「……あの、ちょっといいですか?」


意見が二分されそうな雰囲気の中、アイリが申し訳なさそうに手を挙げる。


「私、巫女様が正気でこんなことをするとは思えなくて。なので、巫女様が会っていたという男を探したいです」

「……でも、危険、かも?」


アイリの意見にルナが返す。


「……ですね。ただ、男が元凶な気がするんです」

「まぁ、そうなるよな」


ディナが頭の後ろに手を回しながら続ける。


「なんせ、それから巫女が変わったんだって話だからさ。でも、男に近ずこうとすると、多分、巫女様の邪魔が入るぞ?なら、巫女様からじゃないか?」


そんな中、エレナが一度話をリセットする。


「答えはすぐに出せません。では、ラグナード側の話をします」


そう返すと、全員の表情が少しだけ真面目になる。


「ラグナード側は至って平和です。復旧も順調です」


ギルドもサウスノーランドへの偵察部隊を派遣して、いよいよ北へ迎える準備を整えてくれているそうだ。


「加えて、例の研究所から救出した方が何名が目を覚まされました」

「……いいニュースだな」

「そうですね。これだけを聞けばいいニュースなのですが……」

「何かあったのですか?」

「……一人、逃亡しました」


アステリアの面々が苦笑いしている。

なんでも、アステリアがその場に訪問しており、ギルド職員と会話が弾んでいた隙に居なくなったらしい。


「……どこに向かったんだ?」

「それが、分かりません。しかも、救出された方々はこれから話を伺うところだったので。ただ――」

「ただ?」


エレナが言いずらそうに逃げた人を容姿を告げる。


「黒髪のヒューマンだったそうです」

「……まさか?」


そこで藤堂のことが頭を過ぎる。

ボロスは勇者を研究していたと言っていたが、同時に有能なスキルを取り込む術も研究していたと。

そこにいた、黒髪のヒューマン――


「名前は分からないのか?」

「……現在、ギルド職員の数名で研究資料から名前を調査しています。また、私たちで行方を追っているところです」


何となくだが嫌な予感がする。

藤堂がボロス軍にいて、有能な能力を持ちながら、彼自身は研究対象になっていない事実。

それは――藤堂以上に有能なスキルを持つ何者かを捉えていたからではないか。


「……何か無くなったものはないのか?」


アステリアは顔を見合せ、セラが手をポンと叩く。


「確か、長剣がなくなっていましたね」

「……研究所から回収したものか?」

「はい。なんでも、青色の柄に凝った装飾をされていたらしくて特徴的だったので覚えていた職員がいました。それがなくなっていたみたいです」

「……っ!!」


アイリがその言葉を聞いて驚いている。

次第にプルプルと震え出す始末だ。

ユズが落ち着かせようと背中を摩り、なんとか落ち着かせようとする。


「……ユズさん、ありがとうございます。ちょっと驚いてしまって」

「いいけど。どうしたの?」

「……カイドウさん、かもしれません」


重い空気が流れる。

その空気を破ったのはエレナだった。


「それは、何故、ですか?確証があるのですか」

「……青色の剣は、カイドウさんのもそうだったので」

「装飾はついていたのですか?」

「……三年も前なので、曖昧で。ただ、もしカイドウさんだとしたら、向かう先は――」


アイリの言いたいことは分かる。

もし、カイドウさんその人だとしたら、こちらに向かっている可能性があるということだ。

しかし、カイドウさんだとしても、何故こちらに向かってくると言い切れる?


「……そう考えるのは何故だ?」

「カイドウさんのスキル、というか、称号を一つだけ教えてもらったことがあって。それが――」

「それが?」

「――龍姫騎士、です」


新しく聞く言葉に全くピンと来ないが、キューリーだけは驚きの表情をしている。

皆の視線がキューリーに集中すると、キューリーはあくまで伝記の中の話ですが、と前置きした上で。


「龍姫騎士は、仕える龍が危機に陥ると、それをどんなに遠くにいても感じることが出来るそうです」

「……現状と似ている、と言えなくもないわけだ」

「加えて、ボロス軍がもし龍姫騎士のスキルを研究▪️会得しているとしたら、巫女様もそれを欲しがるかもしれません」


おとぎ話の中では、龍姫騎士は龍を使役し、龍の能力を大幅に上昇させ、自身も龍から力を得ることができるらしい。

逆に、龍巫女は龍と会話ができ、龍と共に生き、龍に願いを祈り、力を貸してもらえる。


「……それで、何故、巫女様がその能力を欲しがるんだ?」

「巫女の能力の上位版ですから。もし、そんな人が現れたとしたら、巫女様にとっては目の上のたんこぶですよ。自分の地位を揺るがしかねない、ですから」


キューリーの言いたいことは分かる。

確かにそうかもしれないが、それを信じたくない。

巫女様がどんな人物かは知らないが、もしそれが事実だとしたら、そんなのは害悪でしかない。

もし、そこに魔王ボロスが漬け込んだとしたら……

この時間稼ぎのようなピレネの防衛が、黒髪のヒューマンをおびき寄せる為の罠だとしたら……


(……やることは決まったな)


アステリアとノクスをぐるりと見回し、宣言する。


「明日、巫女様の調査を開始。アステリアも黒髪のヒューマンがピレネに向かっている可能性を考慮して合流を。ラグナードの状況的に無理なら待機だ」


全ての答えは、まだ見えていなかった。

窓の外では、穏やかな日本の朝が続いている。

その平和な光景とは裏腹に。

異世界では確実に何かが動き始めていた。

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