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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第3章 転生勇者と奴隷少女

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第76話

アズラとの話ですっかり夜になったこともあり、天幕を一つ借りて休ませてもらえることになった。

不思議なもので、アズラとその取り巻きは食事まで用意してくれ歓迎してくれた。


(……ピレネへの同行をお願いされたが、どうするか)


慣れない馬車の旅で疲れていたのか、いつの間にか寝てしまっていた。



朝。

ご主人様を見送った後、私は小さく息を吐きました。

お仕事がある以上、ご主人様は自由に行動できない。

お見送りの際には、ノクスから事情を聞いて共有しておいてほしいと言われたが、いったいなんのことでしょうか。

アストラディアではラグナードで、不本意ですが、別行動となったのに、こうして日本でお話できるのが不思議に感じれます。


「それでは、始めましょうか」


リビングへ集まった皆へ声を掛ける。

アステリア、そしてノクス。

こうして集まったのは、昨日のピレネに向かう道中で起こったことについて情報共有を行うためです。


「ユズさん、お願いします」

「うん」


ユズさんは頷くと、静かに話し始めた。


「まず道中は特に問題なく進んでいます。ご主人様から共有するよう言われていることは、私たちは魔王アズラ様と接触しました」


部屋の空気が変わる。

アステリアの面々にとっては初耳だ。

これまで魔王軍とは二回戦闘になっている。


「戦闘にはならなかったのですか?」


しかし、ユズさんは道中問題なしとの報告です。

アステリアの面々はみんな頭の上に疑問符が出ているので代表して尋ねます。


「ならなかった、というか……」


ユズさんは少し苦笑した。


「向こうから降参された。戦闘の意思はなかった、かな。今は同じ野営地にいて、休ませてもらってる」

「……ホントに?」


ミアが眉をひそめる。

ミアは信じられないのか、続けざまに質問します。


「……魔王軍が?」

「はい。友好的ですよ」

「……意味、分かんない」


私も同じ気持ちです。

ユズさんはアステリアの面々の反応から、順を追って説明を続けくれました。

農民との邂逅とその後の偵察部隊との遭遇。

戦闘態勢を取ったものの、話し合いを希望され事情を聞くことになったこと。

そして、アズラという魔王との対面。

話が進むにつれ、全員が真剣な表情になっていく。


「それで、黒髪のヒューマンの件ですが……」


ユズさんがそう言うと、私たちは自然と視線がアイリさんへ向く。

アイリさんは静かに首を横へ振った。


「私の知っているカイドウさんではありませんでしたが、農民さんの話と魔王アズラの話だと村のために最後まで戦っていた人のようです」


部屋が静かになります。

アイリさんの事を思えばカイドウさんではなかったことへの安心と、異世界人への手がかりが無くなったことへの喪失感。

アストラディアでも黒髪のヒューマンは珍しくもないですが、日本に来ているとどうしても期待してしまうところではありました。


「アズラ様が保護し、魔法による治療も行ってくださっていますが、現在も意識は戻っていません」

「アズラ様にはお礼が必要ですね。それで今後はどうされるのですか?」


セラの返答は未だに帝国の姫なんだな、と感じるとともに、彼女を動かす原動力でもあるので無理に否定する気もありません。

それに対して、アイリは淀みなく答えます。


「魔王アズラが継続して保護します。現状は《聖癒十字》という魔王アズラのオリジナル魔法で治療していますが、黒髪さんの傷が酷いと思われますので、私たちでは対処しないのが一番だとご主人様が」

「聖癒十字……オリジナル魔法ですか」


私が呟くと、サーシャが補足してくれるました。


「……あれは属性魔法ではないと思います。魔族なので聖の属性は扱えませんし。考えられるとしたら自然治癒力を底上げしている感じでしょうか」

「……なら、サーシャが、治せば?」


それに対してルナが尋ねます。

しかしサーシャは首を横に振りました。


「……多分、私がやっても助かりません」


即答でした。


「ご主人様の力で回復魔法も多少使えるようになっていますが、黒髪さんを助けるのであれば上級治癒魔法の"ハイヒール"が使えないと……」

「……今、使える、魔法は?」

「プチヒールと回数はあまり使えないヒールです」


サーシャが申し訳なさそうに顔を伏せてしまいますがそれはしょうがないことなので、何とか励まします。

しかし、魔王軍に黒髪さんを任せたままというのも気がかりです。


「……ご主人様は任せる意向なのですね?」


サーシャは真面目な表情で頷く。


「はい」


それを受けて、ユズさんが話を続ける。


「魔王アズラは元々ピレネへ向かう途中なので、ここからは私たちに同行を申し出ています」

「ピレネへ同行?」


セラが聞き返す。


「岩龍様に会うため、だそうですよ」


その瞬間、アステリアの面々が固まった。


「……岩龍、様?」


ルナが思わず声を漏らす。

ユズがまた苦笑いしながら答えてくれます。


「ご友人らしい、です」

「友人……」


フィアが呆然と呟いた。

確かに、魔王であれば神話に出てくるような存在を友人と呼ぶ可能性もあるでしょうが、それにしては突飛過ぎます。


「あと……」


ユズさんの話は続き――


「ルクス様の話も出ました」

「ルクス様ですか?」

「はい」


ユズさんが頷く。


「アズラ様はルクス様を知っていました。なんでも、ルクス様の配下のネロという方が定期的に手紙を運んでいるらしいです。ご主人様はネロという名前を聞いて、なんだか悩まれていましたが……」


私は少し考え込む。

魔王アズラとルクス様に、ネロさんという配下。

ルクス様は信用に値すると思っていますが、ここは一つ――


「エレナ?」


セラがこちらを見る。

私は頷いた。


「確認しましょう」

「ルクス様に?」

「はい」


これ以上は推測しても仕方がない。

本人に聞くのが一番早い。

私たちは家事を素早く終わらせて、昼前には聖ルクス教会を訪れます。

扉を開くと、いつものようにエリナさんが迎えてくれる。


「あら」


私たちを見るなり微笑んだ。


「今日も大人数ですね。どうしました?」

「少し確認したいことがありまして」


私がそう言うと、エリナさんは何か察したように笑った。


「……なんでしょう。ルクスは呼んでくる?」

「お願いできますか?」


エリナさんがルクス様を呼んで来るまで協会の椅子に座り待たせてもらう。

そんなに時間もかからず、ルクス様が現れます。


「こんな暑い日によくお越くださいました。それでお話とはなんでしょうか?」

「不躾で申し訳ありませんが、魔王アズラはご存知ですか?」

「あら、アズラ姉様に会ったの?」


エリナさんがすかさず反応します。

というより、聞き間違いでしょうか?

"姉様"――


「……姉様って?」

「ミアちゃん、驚かせちゃいましたかね。魔王アズラは私のお姉様なんです。かれこれ二十年は会っていませんが、元気でしたか?」


エリナさんが首を傾げる。

私たちは会っていないので、代わりにディナが答えてくれました。


「元気そう?だったぞ。まぁ、厄介事に巻き込まれているけどな。それにしても、まさかエリナさんが妹だったなんて……」

「ノクスの方々とはあまりお話していませんでしたものね。それでも、安心してください。姉様はお優しい方なので」


ノクスの面々は納得したような感じを受けますが、私は未だに理解が追いついていません。

魔王アズラがエリナ様のお姉様で……魔王?

フィアが再度同じ質問をぶつけます。


「エリナさんのお姉さんが、あのアズラ様なんですか?」

「はい」


エリナさんはあっさり頷いた。

ミアが頭を抱えています。


「エリナさんだったんですか……」


アイリさんが呆然と呟きます。

昨日会った魔王と、そして日本で会ったことのある女性。

その二人が姉妹だったとは誰も思いません。


「確かに少し似ていた気はします」


キューリーさんが納得したように頷く。


「言われてみれば、ですが」


ユズが私たちにした出来事の説明すると、ルクス様は納得したように頷いた。


「……なるほど」


そして静かに話し始める。


「まず姉上についてですが、人族との共存を強く望んでいる方です」


ノクスから聞いた話と一致する。


「岩龍様とも昔から交流があります」

「……本当に、友人?」


ルナが尋ねる。


「ええ。私も面識ありますよ」


ルクス様は笑った。


「オルディスとは長い付き合いですよ」


まるで旧友の話をするような口調だった。


「それからネロ様?についてですが」


私が尋ねる。


「ああ……」


ルクス様が笑う。


「それも姉上が話したのですね。私の配下で日本にいますよ。まだ、皆さんにはお会いしたことはなかったですかね」

「……そうですね」


なんだか驚きの連続で疲れてきました。

対して、アイリからも質問があったようです。


「あの、定期的に手紙を貰ってるって言っていたのですが……」

「彼女はちょっと特殊なので、私の説明だけだと分からないと思います。今度、呼んでおきますので、その時に能力を見せてもらった方が早いでしょう」

「どのような方なのですか?」


ユズさんが聞く。

ルクス様は少し考えてから答えます。


「自由人ですね」


その一言でした。


「私でも何をしているのか把握しきれない時があります」

「……私たちはご主人様の影響と聞いているので特殊なのでしょうが、その方も同じようなことを?」


キューリーさんが聞く。

するとルクス様は苦笑した。


「それはできません。私も原理を見せてもらっていますが、言葉で表すのは難しいのですよね。ちなみに、行き来できているのはあなた方だけですよ。正規な方法では、ね」


そして小さく肩を竦めます。

ルクス様が言語化できない、それだけで十分です。

一通り話が終わった頃、アイリさんが静かに口を開きます。


「ルクスさん」

「はい」

「異世界人がアストラディアで子供を作った場合、何か影響はあるんですか?」


これは黒髪さんのことだろう。

聞いた話であれば、戦闘力はかなり高いと思われる。

が、ヒューマンの農村にそんな傑物がいるなら、有名になっていてもおかしくない。

ただ、サラ曰く、帝国の農村で剣術に優れたヒューマンの噂は聞いたことがないそうです。

ルクス様の表情が少しだけ真面目になる。


「一般的な回答で申し訳ないのですが、加護そのものは受け継がれないと言われています。私も元魔王として勇者と呼ばれる異世界人と面識がありますが、その子どもが同じ加護を持っている例は珍しいですね」


全員が静かに耳を傾ける。


「――ですが」


ルクス様は続けた。


「固有特性の影響は残ります」

「固有特性?」

「例えば、小澤さんのゼロ、とかですね」


エリナさんが補足する。


「異世界人の魂は、この世界の人々とは少しだけ性質が異なるのです」


アイリさんが息を呑む。


「それって……子供や孫にも?」

「可能性はあります。お聞きしたところによると黒髪なのですよね?そして剣術に優れていると」


ユズさんは頷いた。


「稀ではありますが、隔世遺伝のように強く現れることもあります」


部屋が静かになる。

アイリさんは何かを考えるように俯いた。


「もしかして、カイドウさんも……?」


小さく呟く。

ルクス様は少し考えた後、静かに答えた。


「異世界人の子孫の可能性はあります」


その答えに、アイリさんの肩が僅かに震える。


「ですが、異世界人である可能性も否定できません」


答えは出なかった。

けれど。

昨日までとは違う可能性が一つ増えた。

カイドウという人物。

そして、アズラが保護している黒髪のヒューマン。

二人を繋ぐ糸は、まだ見えていなかった。

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