表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第3章 転生勇者と奴隷少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
75/115

第69話

ラグナード冒険者ギルド――

西日が差し込み始めたギルド内は、昼間とはまた違う騒がしさに包まれて。

依頼を終えた冒険者たちが戻り始め、酒場スペースでは早くも酒を飲み始めている者も。

ベルナスからの支援により食料の他、嗜好品も多少は入ってくるようになったからと言って、このように騒いでいたら復興にも時間がかかる。

そんな中、受付前には私たちノクスの六人が並ぶ。


「ホーンウルフ六体、討伐確認しました。街道の見回りご苦労様です」


受付嬢が驚いたように顔を上げる。


「単独依頼、初成功ですね。おめでとうございます」


その言葉に、アイリが少しだけ嬉しそうに目を丸くした。


「ほ、本当に大丈夫でしたか……?」

「十分すぎる成果ですよ。しかも被害なしですし」


討伐証明の角を渡しながら受付嬢が笑う。

ディナが肩を回しながら口を開いた。


「まあ、余裕だったな」

「……あの程度で崩されてたら、この先、思いやられます」

「うるせぇな」


私たちが報告をしているとアステリアも丁度入ってきたようです。

ミアの横槍にディナが眉を寄せます。

でも、その表情はどこか嬉しそうです。


「……ノクスも終わり?」

「こちらは無事に報告完了しました。アステリアも無事でなによりです」

「……問題ない」


リリアが静かに言います。

そんな空気の中――ギルドの扉が勢いよく開かれ。

バンッ!!

突然のことに中にいた人の空気が変わりました。

酒場スペースの冒険者たちも一斉に入口を見ると、そこに立っていたのは、一人の男性です。

ここまで急いできたのが分かるほど、泥だらけ。

服は破れ、肩から血が流れています。

息も絶え絶えで、今にも倒れそうです。


「た、助けてくれ……!」


男性はそれでもギルドの受付に向けて、歩いて向かいます。

傍から見ていても、今にも倒れそうなほど、足を踏ん張っているのが分かります。

受付嬢もこの男性が危ない状態と判断して、慌てて飛び出します。


「ど、どうしました!?」


男は荒く息を吐きながら叫んだ。


「東だ……!東の街が……!」


その言葉に、アイリが反応する。


「……東……?」

「ピレネ方面ですね……何かあったのでしょうか」


ギルド内がざわつく。

男性はなかなか声が出てこないのか、受付嬢が水を少しずつ飲ませて落ち着かせます。

ギルド内の騒ぎを聞きつけて、ギルド長のデンネが奥から飛び出してきました。


「落ち着いてください。何があったのですか。」


男は水を少しずつ飲み、落ち着きも取り戻してきたようだ。

それでも足の震えは止まっていなかった。


「魔物が……急に増えたんだ……!今まで見たこともねぇ数で……!」

「スタンピードか?」

「わかんねぇ……!でも……」


男が首を振る。


「もうひとつ、気になることが……旗が見えた。あれは魔王軍の……」


その瞬間、ギルド内の空気が重くなります。

この街の防衛に成功して、東の街には向かっていないと思っていましたが……。

それが何を意味するか、この場にいる者たちは理解しています。


「ラグナード周辺は安全ですが、ピレネ付近の街道は魔物の大量発生で混乱しています!私の他にも早足を遣わしていたのですが、私以外は……護衛の冒険者も何人かやられました……!」

「……今は休んでください。早急に対処します。ちなみに、旗のマークは見ましたか?」


ギルド長が少しでも情報を聞き出そうとします。

あまりショックな事を思い出して、ギルド内で暴れられても困るからでしょう。

男は震えながら続ける。


「逃げる途中、俺が見たのは蛇みたいな柄が書いてあった。あとは、街とか村は空から攻撃を受けたぐらいしか……!」

「分かりました。では、最近、街で何かおかしな事はありませんでしたか?」

「……わかんねぇ。でも、色々物資を運び込んでる家があるって聞いた。基本は農民だけだから、珍しかったみたい、だな」


その言葉に、エレナとミアの表情が変わる。


「怪しさ抜群ですね?」

「……ラグナードの隣町……怪しいのは同意」


デンネが真剣な顔で聞く。


「……場所は分かりますか?」

「ピレネの中心とは聞いてたが、それ以上はわかんねぇ……そもそもピレネは岩竜様の街だから……俺ら農民が近づくことなんか出来ねぇよ」


男の顔色がさらに悪くなる。

村でのことを思い出しているのか、はたまた別のことなのか。

たた、それでも男は話を続けてくれます。


「……それから。見たんだ」

「……何をですか?」


男はゆっくり顔を上げた。


「黒髪の人を」


その瞬間、アイリの肩が震え、顔色も変わったように思います。


「……え?」

「俺は逃げてる最中に見た。磔にされてた……あんなもん見て、冷静でなんていられねぇよ」


ギルド内が静まり返ります。


「見せもんみたいな……もしかしたら死んでるかもしれねぇけど……」


男は唇を震わせる。

男は身体も震わせながら、伝えるべきことを頑張って伝えようとしてくれてます。


「……それを持って街に向かっていたのは確かだ」


アイリの顔色が変わりました。

街に向かったことに対してもショックでしょうが、磔にされている人にも心当たりがあるのでしょうか……


「アイリさん。大丈夫ですか?」


私はアイリに声を掛けます。


「……ユズさん、磔って、見せしめですよね?」

「普通なら、そうですね」


アイリは何かを考えているようです。


「……そしたら、普通、街の人たちも知っている人が一番効果ありますよね?」

「……そうですね」

「カイドウさん……?でも……あの人は何年も前に村を出たはずじゃ……」


アイリの声は小さく、私たちにしか聞こえていないでしょう。

男が語る内容には誰も言葉を返せません。

男は続けます。


「……昔、村にいたヒューマンに似ていた気もするけど、遠かったからわからねぇ。でも、黒髪は珍しいから、その光景が目に焼き付いちまってる……」

「……くっ」


ディナが眉をひそめ、アイリは困惑している。

まだ、その人物について確定した訳ではないし、きちんと確認をする必要はあるものの、アイリにとっては故郷が襲われていることになる。

だが――


「……村が……助けたい」


アイリが小さく呟く。


「……できるなら、みんなを」


エレナが静かに目を閉じた。

嫌な予感が現実味を帯び始めている。

そして、そのタイミングで。

ギルドの扉が再び開いた。


「……なんか騒がしいな」


ご主人様だった。

いつものように軽く入ってきたものの、ギルド内の異様な空気に気付き、眉をひそめる。


「何かあったのか?」


誰もすぐには答えられない。

だが、アイリがゆっくり振り返った。


「ご主人様」


その声は、少し震えていた。


「……私の故郷を救ってください!」


ご主人様の表情が静かに変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ