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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第3章 転生勇者と奴隷少女

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第70話

一階での騒動で落ち着いて話し合いもできないため、ギルド長の計らいで二階の会議室を使わせてもらえることになった。

夕方になり、窓から差し込む西日が部屋を赤く染めていた。

外はこれから夜に向かうため静かになるだろうが、会議室の中の空気は静かとは程遠いものになっている。

東部・ピレネ方面から届いた救援要請に起因する大量発生した魔物。

旗が見えたとのことから、何かしらの黒幕がいるのは間違いない。

そして――磔にされていた黒髪のヒューマン。

会議室にはアステリア、ノクス、ギルド長デンネ、デンネが指名したギルド職員が集まっていた。


「……移動していただきありがとうございいます。落ち着いて話がしたかったもので。まず、状況を整理しましょう」


最初に口を開いたのはデンネだった。


「現在判明している情報は三つです。一つ、東の街ピレネ周辺で魔物が大量発生していること」


デンネが発言したことを後ろにあるボードに職員の人が書いていく。


「二つ、旗が見えたということから、魔王軍が魔物たちを操られている可能性があること。三つ、黒髪のヒューマンが磔にされていたこと」


その言葉に、アイリが小さく俯いた。

エレナが手を挙げて発言する。


「……ヒューマンを磔にして何がしたいのでしょう?」


部屋が静まり返る。

確かに一定の恐怖を示すことはできても、誰とも知らない人を磔にしたところであまり効果は薄いだろう。

となると、東の街に関係する誰か、ということになるのだが……


「……相手の目的は不明ですね。ただ、考えられるのは東の街の関係者であるということでしょうか。とはいえ、あそこの領主は黒髪ではありません。岩竜様の巫女様も黒髪ではなかったはず。では、いったい誰なのか……」


黒髪と言われて思いつくのは、やはり日本人だ。

だが、この世界にも黒髪の人族はたくさん居る。

まだ断定はできない。


「ご主人様」


腕を組んで考え事をしているとエレナがこちらを見る。


「……異世界人という可能性はないのでしょうか?それであれば、見せしめにしている意味は、ご主人様に対しての可能性もあります」

「エレナさん。それは些か考えすぎではありませんか?旗が蛇だったということは、ボロス軍ではありません。蛇の魔人といったらアズラです」


デンネがエレナにクールダウンするように伝える。

それにしても、蛇の旗=アズラという魔王で正しいのであれば、こちらとの接点がない以上、目的が分からなくなる。


「……でも、ご主人様なら、助けに行くでしょ?」

「魔王同士で取引をしている可能性ですね……確かに可能性はゼロではありませんが、アズラは穏健派で有名な魔王です。配下の多くがサキュバスやインキュバスで。戦闘能力は低いのですよ。なのでわからないのです。」

「……難しく、考え、過ぎ」


ルナの発言にセラも頷く。


「今考えることは、東の街を救いに行くのかどうかです」

「……ん」


ミアが短く同意する。

すると、アイリが顔を上げた。


「……わ、わたし、は、助けたいです」


その声は震えていた。


「故郷が近くにあるんです……お世話になった人もたくさんいます。どうかお願いします」


アイリは深々をお辞儀をしてそのまま止まり、ノクスの面々も黙る。

アイリにとって、とても重要な場所なのだろう。

しばらく考えた後、デンネにアイコンタクトで「ごめん」と伝え、デンネがうなずいてくれたので口を開く。


「……ピレネには向かおう」


その瞬間、空気が少し変わる。


「ただし、全員では行かない」

「ご主人様?」


フィアが首を傾げる。


「魔王軍が違うということなのであれば、ラグナード防衛も必要だ。いつまた襲ってくるかわからない」


今のラグナードは復興途中で、ギルド機能も、街の防衛設備も完全じゃない。

しかも冒険者は初心者だらけで戦力としては考えられない。

相手の思惑が、もし戦力を総動員した状態で別方向から攻める、であった場合、ラグナードは終わる。


「なので、アステリアはラグナードに残れ」


その言葉は意外だったのかデンネの顔が驚きに満ちていた。

その言葉に、ミアが真っ先に反応した。


「……留守番?」

「すまないがお願いできないか?ノクスでは能力不足だろう。防衛戦力としてはお前たちが一番信頼できる」

「……む」


説明をしてもミアは頬を膨らまして少し不満そうだ。

だが、ノクスだけでは防衛できないとわかっているので反論はしない。

エレナも静かに考え込んでいた。


「……理由は理解できます」

「悪いな」

「いえ……」


エレナは小さく息を吐いた。


「ラグナードは、ご主人様が守った街です。でしたら、不在の間は私たちが責任を持って守ります」


その言葉に、アステリア全員が頷く。

リリアが静かに呟いた。


「……帰る場所、守る」

「……ん」


ルナも続く。

セラは微笑みながら言った。


「ご主人様が安心して動けるよう、こちらはお任せくださいませ」


アステリアは本当に頼もしい。

俺はノクスへ視線を向ける。


「というわけで、ピレネへはノクスと向かう」

「……私たち、ですか?」


ユズが静かに聞き返す。


「ああ。アイリは土地勘がある。それにいい経験になるんじゃないか?アステリアに追いつきたいんだろ?」


ディナがニヤリと笑った。


「なるほどな。その機会をもらえるってわけだ」

「そんなところだ」

「だったら問題ねぇ。できることをやるだけだ」


その言葉に、アイリも小さく拳を握った。


「……故郷を、助けたいです」


デンネが静かに頷く。


「セロ様にはご負担ばかりおかけします。何より、ギルドとしても助かります。現在、東部との連絡は完全に途絶えていましたので。流通が復活すれば、山の資源も使えるというものです」

「……なるほどな。今はベルナスに頼りきりだからな。なら、出発は明日でどうだ?」

「明日?」


デンネは至急馬車を手配しますと職員を走らせ、突然のクエストにキューリーが少し驚く。


「今日は準備と休息だ。焦って動いても意味がない」


情報整理はまだしも、装備の確認や物資の補給。

何日で帰ってこれるか分からない中、やることはいくらでもある。

それに――


(……頭を整理したい)


考えることが多すぎた。



――日本。

見慣れたワンルームの天井を見上げ、小さく息を吐く。


「……朝か」


身体は問題ない。

あの後もデンネやノクスと作戦会議を続けたが、しっかり寝れているようだ。

疲労感もなければ睡眠不足でもない。

だが、考えることは山積みだ。

顔を洗い、スーツへ着替える。

ネクタイを締め、スマホを見ると通知が一件。


『お気をつけて。行ってらっしゃいませ』


エレナからだった。

思わず苦笑する。


『ああ。そっちも頼む』


短く返し、家を出た。

電車に揺られ、霞ヶ関へ。

警視庁本部へ入ると、既に鴨志田が出勤していた。


「おはようございます、警部」

「早いな」

「警部ほどじゃないっすよ」


鴨志田は腕にしている腕時計を示して、缶コーヒー片手に笑う。

朝の七時半。

まだ出勤までは早い時間だが、早く来てやりたいことがあった。

自席へ座り、昨日確認していた行方不明者資料を再度開いた。

候補は二件。

まずは社会人女性。

職業は営業職、会社での付き合いも問題なく、大学時代の交友関係も極めて良好。

そんな中、失踪は一年前。


「……唐突な失踪だな。これだけ見ると何かしらの事件に巻き込まれている可能性を疑うな」

「ですねぇ。とはいえ、一年前の事件をひっくり返しても未解決事件もなければ、それらしい事件もなかったっすよ」

「……認知していない事件化も知れないだろうが」


鴨志田も反応は薄い。

次に、高校生男子。

時期は社会人より前の三年前に失踪。

当時は剣道部所属でインターハイに進んだほど実力があった。

勉学のほうも成績優秀で、部活動の後輩への面倒見が良いこともあり推薦確実だったらしい。

当時の写真を見ると、短髪の黒髪で真面目そうな顔立ち。

そして何より――


(……優しい人柄、か)


アイリの話と重なる。

インターハイ出場を果たしているので弱くてもという部分には疑問が残るが、正義感の強い生徒であったようなので、苦しんでいる人を見捨てて逃げない人格の持ち主に違いない。


「……こっち、かなり怪しくないっすか?高橋の件もありますし、なんとなくっすけど男子のほうが転移してそうじゃないっすか?若いし、アニメも好きだったみたいっすよ?」


鴨志田が隣から覗き込む。


「……あっちの件に関係しているんっすよね?彼の高校、ルクスさんの教会、訪ねているみたいっすよ」

「……そうか」


少なくとも、現時点ではそう見える。

資料を閉じ、小さく息を吐いた。


「まずはこっちを詳しく当たるぞ」

「了解っす」


静かな刑事課で、時計の針だけが音を立てていた。

最近遅くなってしまい申し訳ありません。

これからも継続して更新していきますので、何卒よろしくお願いいたします

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