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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第3章 転生勇者と奴隷少女

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第67話

ラグナード南部――森林地帯。

ベルナス周辺と違い、こちらの森はまだ自然が色濃く残っています。

木々は高く、葉も青々としていて、風が吹くたびに枝葉が揺れます。


「今回の依頼はクインビーとアシッドビーの討伐です」


先頭を歩きながら、依頼書を確認して共有します。

クインビー。

巨大蜂系魔物の上位個体で、肉食。

ラグナードは現在進行形で復興作業中。

そんな中、街の近くに危険な魔物がいると確認されたため、討伐の依頼が出されているそうです。

また、取り巻きのアシッドビーはそこまで危険ではないものの、問題は酸性毒です。

物を腐食させる性質があるため、放置して街の復興に悪影響を及ぼす可能性があります。

そして、クインビーは群れを統率して、その数をどんどん大きくしていきます。


「数は?」


ミアが短く聞く。


「目撃情報では十数体ですね。まだ初期段階のようです。ですが、巣が見つかればもっと居る可能性があります」

「……多い」

「ですが、今の私たちなら問題ありません」


私はそう言って微笑む。

その言葉に、誰も異論を挟まなかった。

アステリアは、もう以前とは違います。

シャードッシ戦を超え、ラグナード侵攻を生き残り、実戦経験も積みました。

以前なら慎重に進んでいた依頼も、今ではある程度余裕を持って挑めています。


「……でも、蜂か」


ミアが少し嫌そうに呟いた。


「嫌い、なの?」


ルナが聞く。


「……刺されると痛い。あと、あの音が嫌」

「それはそうですわね」


セラが苦笑する。


「ですが、今回はご主人様もいませんし、しっかり役割分担していきましょう」


その言葉に、フィアが小さく頷いた。


「ゼロ様、最近かなりお疲れでいらっしゃいますからね……」

「ええ。だからこそ、私たちがしっかりしないと」


私が静かに答える。

その流れのまま、セラがふと笑います。


「そういえば」

「?」

「皆さん、ご主人様のこと、どう思っていますか?」


一瞬、空気が止まる。

ミアが真っ先に反応した。


「……急に何?」

「気になっただけです。最近、ゆっくり話す機会もありませんでしたし」

「……それ、今必要?」

「まだまだ目撃場所までは遠いでしょ?なら、お話するにはいい機会ではないですか。恋愛話に必要も不要もありません」


セラがどこか楽しそうに笑う。

すると、ルナが少し困ったように首を傾げた。


「でも、今さら、かな?」

「今さら?」

「みんな、好き、と、思ってた」


その言葉に、フィアが吹き出しかけた。


「ルナちゃん、それをそんな自然に言うの凄いよね……」

「違う、の?」

「違わなくはないですが……!」


フィアの顔が赤くなる。

ミアは腕を組みながら小さく息を吐きます。

真剣に考えることでもないでしょうに……


「……好き、だとは思う」

「ほら」

「……でも、そういうの、よく分かんない」


ミアは少し考えながら続けます。


「一緒にいるのが自然で、隣にいて安心できる。ご主人様いないと落ち着かないし」

「それを好きと言うのでは?」

「……多分?」


セラが満足そうに頷く。

すると今度はフィアへ視線が向いた。


「フィアさんは?」

「わ、私ですか!?」

「はい」


フィアは慌てたように視線を逸らした。


「えっと……頼れる人、だとは思っています」

「頼れる人?」

「私はご主人様に買われるまで、エルフで長命種だからこそ、愛玩具として長い時を生きるものと思っていました。でも、ご主人様と出会って、この人なら頼れると……」


少しだけ笑う。


「色々不思議な経験をしましたが、気付いたら、“この人についていきたい”って思ってました」

「……フィアらしい」


リリアがぽつりと呟いた。


「リリアは?」

「……好き」


即答ですね。

これには全員が少し黙ります。

リリアは平然と続けた。


「……隣、落ち着く。抱き締められると安心する。頭撫でられるの好き」

「……リリアちゃん、時々直球だよね」


フィアが苦笑する。

すると、セラが小さく咳払いした。


「ちなみに、私は普通に男性として、ご主人様を意識していますよ。帝国を救ってくれるかもっていう打算が最初ありましたが、今はそれだけではありません」

「……セラは分かりやすい」


ミアがぼそっと呟く。


「だって格好良いではありませんか。普段は頼りできますし、私たちには弱い所を見せないようにして。でもいざという時は絶対前に出る」


セラは少しだけ視線を遠くへ向ける。


「最初は恩人として見ていました。でも、今は違います」

「違う?」

「出来れば、結婚したいと思っています」


その瞬間、空気が止まります。

私からは確認できませんが、ルナが目を丸くして、フィアは咳き込んで、ミアの歩みが止まります。


「……け、結婚?」

「はい」


セラは当然のように頷く。


「一生一緒にいたいと思う相手なら、自然なことでは?」

「自然かなぁ!?」


フィアが赤くなりながら叫んでいます。

まだまだ子供なので、ちょっとしたことに反応しているようです。

ミアは少し考え込んでいます。


「……結婚」

「ミア?」

「……ご主人様とずっと一緒にいれるなら、嫌じゃない」

「嫌じゃないって言い方……」

「……でも、多分好き」


リリアも小さく頷く。


「……リリアも」


ルナは少し悩んでいた。


「私は……まだ、分からない。でも、ご主人様、他の女の人、いると、ちょっと、嫌かも」

「それは十分では?」

「そう、なの?」


セラが楽しそうに笑う。

そんな中、私は、会話へほとんど入っていけませんでした。

後ろで繰り広げられる話を聞きながらも、依頼達成のため先頭を歩きながら、周囲を警戒します。

フィアが少し気になったように声を掛けてきますが――


「エレナさんは?」

「……え?」

「だから、ご主人様のことです」


動きが少し止まります。

こんな所で吐露するようなことでもありませんが……


「私は……」


言葉が続きません。

普段なら、もっと綺麗に返せるはずなのに。

すると、セラが優しく笑った。


「エレナさんは、ご主人様の右腕ですものね」

「……そう、ですね」


私は小さく視線を落とします。

好きか嫌いかで言えば、答えは決まっています。

でも、それを口にしてしまうのが怖いのです。

自分は奴隷。

ご主人様には出自のことやそれに関する部分で隠している事もある。

そんな自分が、“幸せ”を望んでいいのか。

未だに分からない。

だから、言葉が出ない。

そんな空気の中――


「……止まって」


リリアが静かにメンバーに体勢を整えるよう目配せをします。

途端に空気が切り替わり、全員の視線が前方へ向きます。

木々の隙間。

そこに、大型の蜂型魔物が見えます。

黄色と黒の縞模様。

羽音だけで威圧感があります。

クインビー、さらに周囲にはアシッドビーも飛んでいる。


「いましたね」


相手にはまだ気付かれていない模様です。

私の声が自然と低いものへと切り替わります。

自然と戦闘モードに入れたようです。


「フィア、先制を」

「はい!」


フィアの矢が放たれる。

風を切り裂き、一直線にクインビーへ突き刺さった。


「ミア、リリア!」

「……任せて」

「……うん」


二人が同時に飛び出す。

ミアが地面を蹴り、クインビーを引き付ける。

その横をリリアが駆け抜け――斬る。

羽が切断され、クインビーがバランスを崩した。


「ルナ!」

「フレイムアロー!」


炎が炸裂。

さらにセラが横からくるアシッドビーを迎撃します。


「私も出ます!」


残ったアシッドビーへディナではなく、今回はミアが踏み込む。

高速で接近し、短剣で針を弾く。


「……遅い」


そのまま首元を裂いた。

数分後。

地面にはクインビーの死骸が転がっていました。

不意を狙ったとはいえ、圧勝といっていいでしょう。


「……よく動けていましたね、私たち」


セラが小さく笑う。

以前なら戦うことを躊躇っていた相手。

でも今は違います。

色々な経験をちゃんと積み重ねてきました。

その実感が私たちにはあります。

そして――


「それで、エレナさん」


セラが再び笑う。


「答え、聞いてません」

「……まだ続くんですか?」

「当然です」


全員の視線が集まる。

私は困ったように小さく笑います。

メンバーだけの秘密として、言ってもいいかもしれません。

そして、本当に消え入りそうな声で。


「……私も、したいです」

「え?」

「……結婚」


その瞬間、私の顔が一気に赤くなるのを感じます。

ミアは驚きがないようですが、フィアは固まり、リリアは静かに頷いました。


「……知ってた」

「リリア!?」


森の奥で、アステリアの笑い声が小さく響いた。

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