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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第3章 転生勇者と奴隷少女

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第66話

「……さて、こちらの世界だな。色々確認したいことはあるが……」


小さく息を吐く。

日本で聞いた事が未だに処理しきれず頭の片隅に残り続けている。

―――勇者の雫。

藤堂が継続して飲んでいたものであり、そのことから魔王ボロスが作っているだろうもの。

であれば、ヴェルデナは何をしているのか……


(……ガルディアスは何かをしていると言っていたが。また別なところで日本に影響を与えているのだろうか……)


対応しなければならないことが増え続ける一方だ。

ラグナードの戦後処理もその一つだ。

ラグナードの街は少しずつ復興しているとはいえ、崩れた建物はまだ多い。

しかし、帝国へのボロス軍侵攻は未だに続いていると仮定していい。


(……一人でいるとマイナスな方向に考えがちだな。そろそろ合流するか)


まずは目の前のタスクをこなすことだ。

エレナたちは既にギルドで待機している頃だろう。

今日は、今後の方針についてギルドと話をしたいと思っている。

ラグナード冒険者ギルドは、以前より冒険者は増えていた。

それも依頼が多く張り出されており、復興支援の依頼、瓦礫撤去、食料運搬といった初心者でも安心して働けるものが多いからだ。

ギルド内部も完全に機能停止していた頃に比べれば、かなり活気が戻ってきている。

そんな中、二階の会議室にはアステリアとノクスの全員が集まっていた。


「おはようございます、ご主人様」


最初に声を掛けてきたのはエレナだった。


「……早いな。依頼はもう選んだのか?」

「ご主人様の方が朝早くからお散歩されてましたよね。依頼はまだこれからです」


ノクス側を見る。

ディナは腕を組みながら椅子へ座っていて、ユズは依頼書を眺めている。

アイリは眠そうに欠伸を噛み殺していて、サーシャは既にメモ帳を開いていた。


「おはようございます」


キューリーが元気よく頭を下げる。

その後ろではカリンが小さく会釈していた。


「……おはよう。少しは冒険者にも慣れてきたか?」

「まだ、ですね。それでも少しずつ皆さんと歩んで行けたらと思います」


ディナが肩を竦める。


「キューリーはお堅いんだよ。冒険者なんだからもう少し楽にしたらいいのに」

「……いいんです。これが私の性格なので」


少しは仲良くなってきているようで安心した。

すると、部屋の扉が開いた。


「お待たせしました」


ギルド長デンネだった。

以前より顔色は悪くない。

だが、疲労が抜け切っていないのは明らかだった。


「今日は忙しいところ申し訳ない。あまり時間は取らせないようにする」

「いえ。ゼロ様は最優先です。忙しいといっても、復興に関する仕事の斡旋なので、本格的な再開はまだまだですね」


苦笑する。

だが、ギルドが機能しているということは、それだけ街が戻りつつあるということでもある。

デンネは席へ着くと、小さく息を吐いた。


「それで、本題ですが」


空気が少し引き締まる。


「今後について、ですね」


俺は頷く。


「北へ向かう時期の話だ」


ボロス側が動いている以上、こちらも止まってはいられない。

ラグナード侵攻が失敗した今、あちらも慌てて編成を調整しているはずだ。

そのためのパーティも集めた今、擦り合わせをしておきたかったのだ。


「この街の防衛にノクス、アステリアはサウスノーランドに同行するとして、いつならいいと思う?」


その言葉に、ノクス側が少し緊張する。

するとエレナが静かに口を開いた。


「アステリアのパーティリーダーとして発言します。現状のノクスではまだ力不足かと」


即答だった。


「私たちとご主人様で前線を押し上げても、不意を突かれてラグナードを攻められたら、ノクスでは不安が残ります」

「そうだな。では、防衛にアステリア、同行をノクスとしたら?」


この案に対してはユズが反応を示す。


「確かに光栄なことですが、我々で前線に出ても足を引っ張ると思います」

「ご主人様の考えは分かります。今は戦線を押し上げるいい機会です。ただ、メンバーや街等、周りの状況が整っていません。」


エレナの言葉は正しい。

正しいからこそ、どうするのがいいのかきちんと議論しておきたい。


「ここ二週間、ラグナードで滞在している。サウスノーランドの状況が入ってこない以上、何か手を打ちたいところだ」

「……何かいい手があればいいのですが」


すると、デンネが苦笑しながら割って入った。


「……なんとも茶番劇を見せられている感じですが」

「そんなわけないじゃないか。真剣に話し合いをしたいんだ。ギルド長は何かあるか?」

「……そうですね」


デンネは静かに続ける。


「ギルドとしては、できるだけ早く動いていただきたいのは本音です」


その言葉に、エレナが少し眉を動かした。


「現在、周辺地域との連絡が断絶している場所も多いです。北部の状況も不透明。冒険者ギルド本部からも、“可能な限り情報収集を進めろ”と通達が来ています」

「つまり?」

「ギルド本部が動きます」


デンネが真っ直ぐこちらを見る。


「ギルド本部が主体となって周辺調査を行います。北部へ向かって生存者、避難民、各支部との連携。できる限り情報を集めます」


そこまで言って、小さく頭を下げた。


「ギルドの諜報員を使うそうですが、戦闘力は期待できません。あくまで情報収集ですが、数日だけ時間をください」


まさかの回答に驚く。

確かにギルドで何かしら行動を起こしてほしかったところだが、期待以上の回答が得られた。


「……分かった」

「ありがとうございます」


デンネが安堵したように息を吐く。


「その間、アステリアとノクスの皆さんには、通常依頼を受けていただければ助かります。街の外はまだ危険ですので」

「了解しました」


エレナが頷く。

するとユズが静かに手を上げた。


「ノクスも単独依頼、受けてもいい?」

「その方が効率がいいでしょう。あまり危ないのは受注しないでくださいね」


エレナが答える。


「最初は一緒に依頼を確認しますが、次からノクスで話し合いながら足元を見て決めてください」


ディナも頷いた。


「賛成だな。ノクスとしても早くアステリアに追いつきたいしな」

「……頑張ります」


アイリが小さく拳を握る。

そんなノクスを見て、少しだけ安心する。

その後、アステリアとノクスは依頼受注のため一階へ向かった。

ギルド内部はかなり慌ただしい。

復興関連の依頼が山積みになっている。

初心者には危険がない優しい依頼が多く、完全に復旧支援だ。


「では、こちら受けます」


エレナが依頼書を選ぶ。

横ではユズも別の依頼を見ていた。


「……こっちはノクス向き」

「どれですか?」

「街道警戒。ホーンウルフ討伐込み」

「悪くないですね」


少しずつ、“パーティ”になってきている。

そんな様子を見ながら、俺はデンネへ声を掛けた。


「それで?呼び止めたってことは、彼女たちに内緒にしたい別件があるんだろ?」

「はい。ゼロ様であれば問題ないかと思いまして」


デンネの表情が少し曇る。


「例の研究施設の件です」


その空気だけで、大体察した。



ラグナード冒険者ギルドの地下保護区域。

以前よりさらに警備が増えていた。

ギルド職員だけではない。

冒険者の警備も配置されている。


「……物々しいな。何かあったのか?」

「……中を見れば分かります。我々ギルド職員は全員知っていることですが、あまり外に漏れるのはよろしくないと判断しました」


デンネが低い声で答える。

地下奥へ進む。

以前、奴隷たちが保護されていた区域とは別方向。

そこには、簡易医療施設のような空間が作られていた。

薬品の匂い、消毒液の匂い、そして、ベットに横たわっている多くの人。

その瞬間、日本の病院を思い出した。


「……」


並ぶベッド。

そこには、研究施設から救出された者たちが寝かされていた。

獣人。 ヒューマン。 エルフ。

そして――


「……ゴブリン?」


思わず足が止まる。

小柄な緑色の身体に包帯が巻かれていて、所々、赤色のシミができている。

さらに奥には、角を持つ魔族――デンネ曰くデーモン――までいた。


「ボロス側の研究対象です」


デンネが苦々しく言う。


「ここにいるものは研究施設から連れてきたものです。見てわかる通り、対象に種族は関係ありませんでした」

「……狂ってるな」

「ええ」


デンネは静かに頷く。


「共通していることは、全員血液を多く失っていること。たぶん、血液から種族的な力を研究していたのでしょう。可能性があるなら、何でも使う。そういう研究だったのでしょう」


ベッドの横を歩く。

誰も目を覚まさない。

まだ胸が上下していることから呼吸はあるし、生きてはいる。

だが――


「今のところ意識が戻った者はいません」

「……戻りそうなのか?」

「分かりません。血液を多く失っているので、時間経過で治せるのか……他にも精神か、魂か、肉体に干渉していたら最悪です。原因究明を進めていますが不明です」


一人の獣人女性の前で足を止める。

痩せ細った腕に浮き出た血管。

その姿は、“生きている”というより、“生かされている”に近かった。


「……これ、全部ボロス軍が?」

「おそらく。小さな村に住んでいたものもいると思いますので、身元確認も進めています」


デンネの声が低くなる。


「実験記録も一部回収していますが、解読できない部分が多くて」

「……内容は?」

「読み溶けたところで言いますと、肉体強化、魔力増幅、スキル吸収……他にも色々です」


……スキル吸収。

その言葉で思い出すのは戦ったギガンテス、シャードッシ。

やつは色々なスキルを所持していたと記憶している。

それがこの研究の成果だとしたら。

そして、万が一勇者も捕まっていて、スキルの複製が完成していたらとしたら――


「……まずいよな」


自然と声が漏れた。

デンネは何も言わなかった。

その沈黙が、逆に重い。

ベッドの並ぶ部屋を見回す。


「……急がねぇとな」


小さく呟く。

その言葉だけが、静かな医療区画に溶けていった。

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