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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第3章 転生勇者と奴隷少女

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第65話

「では、お昼も食べましたし、次の目的地へ向かいましょうか」


昼食を終えた後、お姉ちゃんがそう言って歩き出します。

ソラマチを出て、私たちは再び人混みの中へ戻っていきました。

平日にも関わず、人の数はかなり多いです。

仕事をしている人もいれば、暇な人もいる。

それでも生きることに自由で居られる。

不思議な世界です。


「次はどこ行くんだ?」


ディナが聞きます。


「アイリさんの事もありますので、ルクス様のところです」


その言葉に、ノクスのみなさんは戸惑います。

それも当然です。

ルクス様は、私たち、アステリアとは面識がありますが、ノクスの皆さんとは初対面。

ルクス様について説明はしていても、こちらの世界で初めて会う元アストラディアの住人と聞けば緊張するものです。

電車を乗り継ぎ、しばらく歩くと、住宅街の一角にある、アステリアメンバーには見慣れた教会へ到着しました。


「ここが……?」


キューリーが小さく呟きます。

外観だけなら、かなり普通です。

ですが、教会の周囲だけ空気が静かでした。

喧騒から切り離されたような感覚があります。

入口へ向かうと、扉の前で掃除をしていた女性がこちらへ気付きました。

金髪を後ろでまとめ、柔らかな雰囲気を纏った女性。


「あら、いらっしゃいませ」


エリナさんです。


「あら、今日は大人数ですね」

「お邪魔します。本日は新しいメンバーのノクスを連れてきました」

「まあ。小澤さんたら、どんどん増やしているのですね。賑やかになりそうですね」


エリナさんは微笑みながら、お姉ちゃんに紹介されたノクスのみなさんへ視線を向けます。


「外は暑いでしょう?どうぞ中へ」


教会の扉が開かれ中へ入った瞬間――


「……涼しい」


ユズがぽつりと呟きました。

確かに、外とは空気が違います。

ひんやりとしていて、どこか落ち着く雰囲気があります。


「冷房……ではないんですよね?」


サーシャが不思議そうに周囲を見ます。


「残念。冷房ですよ。全館空調というやつです。いつでも過ごしやすい温度にしてくれて便利ですよね。一般家庭のとは違って吐き出し口が見えないだけです」


エリナさんが自然に答えました。

このままエリナさんを喋らしていると、日本の科学技術が誰だけ素晴らしいか語りだしそうです。

……前に来た時は、その話で二時間消費させられました。


「エリナさん、こちらを」


エリナさんが暴走する前に、セラは持っていた鞄から、小さな袋を取り出します。

中には宝石の原石。

アストラディア側から持ち込んだものです。

エリナさんは中を確認し、小さく頷きました。


「あら、またお持ちくださったのですね。分かりました。また換金しておきますね」

「お願いしますわ」


現在、私たちが日本で生活できている理由の一つがこれです。

アストラディア側の宝石や貴金属を、ルクス様側のルートで売却していただいています。

なんでも、宝石商に仲間がいるそうで、こうして持ってくると買い取ってくれます。

もっとも、日本側であまり大量に流すと問題になるので、定期的に少しずつです。


「それで、今日はどういったご用件ですか?」


エリナさんが宝石を受け取りつつ聞いてきます。

すると、アイリが少し緊張したように前へ出ました。


「……ルクスさんに、聞きたいことがあって」


エリナさんはアイリの表情を見て、少しだけ真面目な顔になります。


「分かりました。少々お待ちください」


そう言って、教会の奥へ消えていきました。

待っている間、ノクスのみなさんは教会の中を静かに見回しています。


「……不思議な場所だな」


ディナが天井を見上げながら呟く。


「神殿なのに、威圧感がない」

「こちらの世界では、宗教は自由ですからね。権力と直結しているわけではありません。それにここはルクス様とエリナ様が運営している小さな教会なので、修道女とかはいません」

「……なるほど」


ディナは少しだけ納得したようでした。

しばらくして、奥の扉が開きます。


「お待たせしました」


ルクス様が姿を現しました。

いつも通り穏やかな笑みですが、こちらの人数を見て少し驚いたようです。


「これはまた、大所帯ですね」

「お邪魔してます。新しいメンバーのノクスの皆さんです」

「なるほど。第二部隊ですか」


ルクス様は優しく頷きます。


「それで、本日はどうされました?」


エレナが一歩前へ出ました。


「確認したいことがあります」

「はい。私に答えられることならなんでも」

「今までアストラディアへ送ったヒューマンを覚えていますか?」


その瞬間、ルクス様の表情がわずかに変わりました。

ですが、すぐ苦笑します。


「……正直に言うと、覚えていません」

「そう、ですか」

「これは小澤さんにもお話していますが、私は不特定多数へ転移魔法の書かれた本を送っていましたので。一人一人を把握できているわけではないのです」


ノクスのみなさんが少しざわつきます。


「そんなことしてたのか……」


ディナが呆れたように呟く。


「当時から悪神が力を増大させていて、善神様の力が弱まっていました。私は善神様に助けられた身。少しでもお力になれるなら、巻き込まれた方々には申しありませんが、賭けるしかありませんでした」


ルクス様は静かに続けます。


「それで、どなたか気になる人物でも?」

「……昔、村へ来たヒューマンです」


アイリが口を開きました。


「黒髪で、“カイドウ”って名乗ってました」


ルクス様は少し考え込みます。

ですが――


「申し訳ありません。全て覚えていたらお答えできるのですが、判断できません。何か特徴でもあれば思い出せるかもですが……」

「……ですよね」


アイリが小さく肩を落とす。

すると、そこでエリナさんが静かに口を開きました。


「そう落ち込まないでください。見分ける方法は他にもあります」


全員の視線がエリナさんへ向く。


「本による転移が成功した場合、その人物には善神様の加護が与えられます」

「加護……?」


キューリーが聞き返しました。


「神の権限の一部譲渡。皆さんも小澤さんのお仲間であれば、この言葉で思う所があるのではないでしょうか」


空気が少し張り詰めます。

確かにご主人様には仲間の職業を設定できたり、スキルを取得させたりできます。

普通ならありえない能力が加護の一部と言うことであれば納得できます。


「本来、神は世界へ干渉できません。唯一、転移や転生の際に"たまたま"が重なることはありますよね?」

「……つまり?」


ディナが眉をひそめる。


「正規な転移者や転生者は規格外の能力を持っている可能性があります」


ルクス様が補足しました。


「小澤様の場合、善神様は残っていた力の大半を使って最大級の加護を与えたと聞いています」


その言葉に、ノクスのみなさんが息を呑みます。


「……ご主人様はやっぱり勇者?」

「勇者にも二通りあります。異世界勇者と現地勇者です。小澤様は勇者有り得る能力はお持ちの可能性もありますが、ご本人は否定されているのでは?なら勇者にはなりえません」


ミアの呟きにルクス様が回答します。


「小澤さんには最後の希望とお伝えしてます。小澤さんの性格であれば、必ず善神様の力を少しずつ回復してもらえると期待していす」


ルクス様は静かに続けます。


「悪神勢力が強くなれば、その分だけ善神様の力は弱まります。逆に、悪神側の勢力を削れば、善神様の力も少しずつ戻っていきます」

「今まで転移した人たちは……?」


サーシャが恐る恐る聞く。


「悪神勢力を弱めるところまでは至っていません」


その言葉に、空気が重くなりました。

つまり、勇者として転移しても、多くは途中で消えている。


「……じゃあ、カイドウさんも」


アイリの顔が曇る。


「こちら側の勢力だった場合、最悪の事態は考えておかねばなりません。ただ……」


ルクス様が言いかけた時。


「あ……」


アイリが小さく声を漏らしました。


「どうしました?」

「そういえば……カイドウさん、よく分からない技を叫んでいました」


その場の空気が止まります。

先ほど見た映像のあれのことでしょうか。


「そしたら、剣に光がまとわりついて、魔物を一掃してました。ただ、一日一回が限界でしたけど」

「それは、こんな光でしたか?」


ルクス様が徐に取り出したのはスマホ。

そのスマホをいじって背面のライトを付けます。


「……光の色は似ています」

「それであれば"聖魔法"で間違いなさそうですね。白色の光を剣に纏わせるのは、魔法付与ですね」


ルクス様とエリナさんが視線を交わしました。

そして。


「……なら、可能性はかなり高いですね」


ルクス様が静かに頷きます。


「善神系統の加護を持っていたのでしょう」


アイリが小さく拳を握る。


「……生きてる、でしょうか」


その問いに、ルクス様はすぐには答えませんでした。

少しだけ考えてから、静かに口を開きます。


「分かりません。ただ、あなたの話を聞く限り――」


ルクス様は穏やかに笑いました。


「そのカイドウという方は、“勇者とあろうとした者”だったのでしょうね」

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