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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第3章 転生勇者と奴隷少女

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第57話

ラグナード冒険者ギルドの一室。

そこには第二部隊として選ばれた六人と、俺とアステリア、奴隷商の男と仲介人のギルド長が集まっていた。

ディナ、アイリ、ユズ、サーシャ、カリン、キューリー。

立候補者の面々は緊張した面持ちで佇んでいる。

今日から突然、“魔王軍と戦う側”になるのだから。


「まずは奴隷契約をしてもらう」


この瞬間は何度やっても嫌な感じがする。

この世界では当たり前に存在する制度だといっても、日本には無い制度なので慣れない。


「勘違いするな。俺はお前たちを道具扱いするつもりはない」


六人の視線がこちらへ向く。


「契約する理由は二つ。まず、俺の配下になることが条件になるスキルがある。裏切り行為は即除名となるから、それを防ぐためにも奴隷契約とする」

「……スキル?」


アイリが不思議そうに呟く。


「まあそれは後でエレナにでも聞いてくれ。二つ目にさっきも言った通り、裏切り行為を抑止するためでもあり、衣食住をきちんと保証するため。奴隷の所有者はにはそれらを保証する義務があるからな」


現実は厳しい。

ラグナードは復興途中。

生きるだけでも精一杯の人間が大半だ。


「だから、俺の管理下に置く。衣食住は保証する」

「……なんでそこまで?」


今度はユズだった。


「……奴隷は使い捨てでは?」

「そうとは考えていない。奴隷になった瞬間から家族同然だ」


するとディナが小さく笑う。


「変わった主人だな」

「よく言われる」

「……たぶん、褒めてる」


ミアがぼそっと呟く。

その空気のおかげか、部屋の緊張が少しだけ和らいだ。

契約自体はすぐに終わった。

ギルド立ち会いの下、正式な奴隷契約書へサインを行う。

もちろん、名前を書いたのは俺だ。

アイリたちは文字を書けない者も多かったため、指印で代用された。


「これで皆さん、正式にご主人様の所有になります」

「その言い方、どうにかならないのか?」

「事実なので」


エレナが涼しい顔で返してくる。

するとギルド長のデンネが申し訳なさそうに頭を下げた。


「……すみません。本来ならギルドで保護を続けるべきなんですが、今のラグナードには余裕がなくて。帝国側からの支援もない状態なので、ギルドの資金で復興支援するのもギリギリで」

「気にするな。こっちも人員が欲しかったし、利害一致だ」

「ありがとうございます……」


ギルド長はキューリーに対しても「申し訳ない」と頭を下げる。

仲間になったキューリーは元々ラグナード支部の受付嬢だった。

侵攻時にギルド壊滅を避けるため最後まで残り、今は人手不足の関係で避難民対応もしていた。

だが、ギルドの運営完全再開は当分先であり、今はお役御免と言われていた。


「それで、ご主人様」


エレナが話を切り替える。


「次は装備ですね」

「あー……だよな」


今の六人の格好は正直かなり酷い。

服もボロボロで、見るからに今の状態で生活するのは困難な感じに感じ取れる。

今すぐにでも服を新しくしてやりたいことろだが……


「今のラグナードで買えるのか?」

「……流通もままならない状態なので、そういったものは厳しいですね」


キューリーが苦い顔をする。


「現在、鍛冶屋も復旧作業を優先しています。在庫の武器、防具類も在庫不足です。今は食料や建材を集中的に搬入してもらっていますね」

「服屋も休業中……」


リリアが付け加える。


「……だよな。さて、どうするか……」


そこでデンネが静かに口を開いた。


「でしたら、ベルナスへ向かわれますか?」

「ベルナス?」

「ギルド支部間の緊急転移陣が使えます」


その場の空気が止まる。


「……そんな便利なものあるのか?」

「緊急時と全冒険者ギルド長会議でギルド本部に赴くときに使うようなものです。古代の遺物なので普段使いできるような代物ではありません」


デンネは苦笑する。


「ゼロ様は北進されるのでしょうから、装備の補充という緊急な案件だとベルナスに連絡を入れれば使用することは可能かと思われます」

「なるほど……」

「加えて、ラグナード支部では現状、冒険者登録もままならない状態ですので、戻って登録されてくるのがよろしいかと思います」


そんなものがギルドにあるとは知らなかった。

デンネの補足としては昔の技術で作られた物で、現代では再現することができない物で、つい最近ようやく復旧したらしい。


「……試運転に使おうとしていないか?」

「試運転は既に行っています。ギルド本部に帝国の緊急事態を伝えるために使っています」

「それでサウスノーランドには行けないのか?」

「あちらの応答がない状態なので、陸路で向かうしかないですね」

「……なるほど。エレナ、どう思う?」

「ベルナスに行きましょう」


即答だった。


「今後を考えると最低限の装備は必要です。それに早めに冒険者登録はしておかないと、その期間の働きが無駄になってしまいます」

「……異論なし」


ミア、リリアも頷く。

ベルナスへの連絡、装置の準備をするとのことでギルド長は部屋を出ていく。

待っている間、メンバー同士の交流を図ってもらいつつ、こっちは編成を考える。

アステリアはバランスの良いパーティだと自負している。

新しいパーティも同じようにバランスの良い編成にしていきたいところだ。

それぞれが時間を潰していると男性のギルド職員が準備ができたと呼びに来た。

ラグナード地下にある転移施設へ移動すると、巨大な魔法陣があり周囲には大量の魔石が配置されている部屋に通される。

今もギルド職員たちが慌ただしく動いている。


「……すごい」


アイリが呆然と呟く。


「では、皆さん。魔法陣の中心にお進みください」


ギルド長に促され、魔法陣の中心まで進むと、次の瞬間。

視界が白く染まり――


「ゼロ様。無事のご帰還、喜ばしい限りです」


ベルナスのギルド長ハセルが笑顔で迎えてくれた。


「……こんなにあっさり移動するもんなんだな」

「初めて体験されると驚かれますよね。お戻りになる時にお声がけください」


久々のベルナスは新鮮に感じるもので、人の活気がある街だと気持ちも上向きになる。

ギルド出て洋服の店や武器、防具の店を回る。

まずは服屋でそれぞれの私服を購入する。

新しいメンバーは新品の服を見て動揺するが、エレナたちが説明してくれたのでスムーズに買い物を進めることができた。


ディナは真っ先に動きやすそうな服を選んでいた。

黒のズボンに、袖をまくれる灰色のシャツ。

下半身は革ベルトにブーツ、完全に傭兵スタイルだ。


「……もっと女っぽい服とかないの?」


ミアが遠慮なく聞く。

するとディナは肩を竦めた。


「戦場で可愛いは死ぬぞ」

「……でも、ちょっとくらい」


一方、アイリは隅でずっと困っていた。


「どうした?」

「わ、私、こういうお店初めてで……」


視線の先には白いワンピース。

見るだけで手を伸ばせないらしい。


「着てみればいいだろ」

「こんなの、私には……」

「似合うと思う」


リリアが静かに言う。

アイリは驚いた顔をした後、恐る恐る服を受け取った。

試着室から出てきたアイリは、完全に“普通の町娘”だった。

白いワンピースに薄いカーディガン、小さな髪飾り。

その姿を見た瞬間、本人が一番固まる。

鏡を見ながら呆然としていた。


「……かわいい」


ミアが素直に呟く。

アイリの顔が真っ赤になる。


「こ、こんなの初めてです……」


その様子に、自然と空気が和らいでいく。

ユズは逆に迷いがなかった。


「これとこれ」


選んだのは白と青を基調とした厚手の服。

フード付き。

しかも少しモコモコしている。


「……それは、暑くないか?」

「好きに選んでいいのですよね?であれば、モフモフこそ至高です!」

「まだ秋だぞ……」


サーシャはかなり慎重だった。

値段を見ては戻し、見ては戻し。


「もっと良いのを選べ」

「ですが、回復役は汚れることもありますので……」


完全に実用品思考だった。

そんな彼女に、リリアが緑色のロングスカートを差し出す。


「……こっち」

「え?」

「似合う」


サーシャは目を丸くした。

そのまま試着室へ入り、戻ってきた瞬間。

全員、少しだけ言葉を失う。

エルフ特有の整った容姿もあって、異様に映えていた。


「……綺麗」


アイリが思わず漏らす。

サーシャは耳まで赤くしていた。

問題はカリンだった。


「す、すみません……」


何故か謝っている。


「何がだ?」

「……その……サイズが……なくて」


店員まで困っていた。

ドワーフ特有の骨格なのか、彼女の個性なのかヒューマンに比べて小柄なので、このお店に置いてある服ではサイズがないようだ。


「……でしたら、直してもらいましょう」


助け舟を出したのはエレナだった。


「ドワーフはヒューマンの子ども服が一般的なので、しょうがないことです」

「すみません……」


カリンは少しだけ安心したように肩を下ろす。

最後に残ったのはキューリーだった。

だが――


「……選ばないのか?」

「え?」

「ずっと見てるだけだろ」


キューリーは困ったように笑う。


「受付嬢時代は制服ばかりでしたから……こういう服、よく分からなくて」


するとエレナが自然に数着選ぶ。

淡いベージュの上着に紺色のスカート。

シンプルだが落ち着いた服装。


「こちら、似合うと思いますよ」

「……私に?」

「はい」


出てきたキューリーを見て、全員少しだけ納得した。


「あー……受付嬢っぽい」


ユズが呟く。


「い、いい意味ですよね!?」

「多分」

「多分って何ですか!?」


そのやり取りに、小さな笑いが起きる。

次に向かったのは武器、防具屋。

これは本人たちの命を預けるものなので、それぞれ好きなように選ばせる。


「……これ、本当に買っていただけるんですか?」

「問題ない。きちんとした物を買っておけよ」

「ですが……」

「遠慮して死なれても困る」


その一言でキューリーは黙った。

夕方。

全員の最低限の装備が揃った頃。

ベルナス冒険者ギルドにて第二部隊の冒険者登録が行われていた。


「パーティ名はどうされますか?」


受付嬢が聞いてくる。

全員の視線がこちらへ向く。


「俺か?」

「……私ではないですから」

「いや……そう言われてもな」


エレナはアステリアのリーダーなので当然の話なのだが、俺がパーティー名を決めるのも違う気がする。


(……頃合い、かな)


「この第二部隊のリーダーはユズだ。リーダーとしてパーティー名を決めてくれ」


ユズをリーダーにした理由は服選びの時に考えていた。

このパーティーを引っ張っていくのであれば、きちんとした芯のある人物がいい。

指名したユズにパーティーの視線が集まる。


「ノクス」

「ノクス?」

「夜って意味。アステリアは星でしょ。なら、次を守る部隊ならこれかな」


エレナが小さく微笑む。


「いい名前だと思います」


こうして、第二部隊“ノクス”が正式に誕生した。

その後、ノクスはギルド依頼を受けることになった。

アステリアも同行しての依頼となる。


「パーティノクスはランクFからスタートです」

「登録ありがとう。エレナ、まずは連携確認だ。無理はするな」

「了解です」


それぞれがクエストの準備をしているなら、エレナがこちらに向かってくる。


「ご主人様は?」

「俺は別行動だ。色々見ておきたいからな。夕方になる前には帰ってこいよ」

「……分かりました。無理はしないでくださいね」


全員が出発したのを確認して人目につかない路地に入る。

新しい仲間が入ったとはいえ、今のままでは足を引っ張ることが多くなるだろう。


(……ルクスのダンジョンに潜るか)


俺は再び、戦いの準備を始めるのだった。


挿絵(By みてみん)

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