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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第2章 新たな出会いと奴隷少女

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第46話

渋谷。

昼を過ぎても、街は平日であっても人が多い。

だが、目的地はその喧騒とは無縁の場所。

雑居ビルの一角。

昨夜、強制捜査が入ったクラブ。


「……ここっすね」


鴨志田は周囲を一度見回してから、中へ入る。

店内への規制線はまだ残っている。

とはいえ、見張りの警官はいなく、店内の押収も終わり、現場としての役目はほぼ終えている。

だが――


(……とりあえず現場百回っすね)


中に入ると、昨日の痕跡だけが残っていた。

倒れた椅子。

動かされた机。

空になった棚。


「……大体、持ってかれてるっすね」


ぼそりと呟く。

押収されるべきものは、もうない。

普通なら、ここで引き上げる。


(裏はどうっすかね……)


倉庫や事務所にも足を運ぶが薬銃で押収済み。

これだけ押収すると仕分けが大変そうだ。

裏にも何もないことを確認して再度ホールに戻る。


(……警部がいた場所)


自然と足が向かう。

カウンター席。

あの時、警部が座っていた位置。

そこに腰を下ろす。


「……ここで男と会ったんですよね」


何も考えず、店内を眺める。

音はない。

人もいない。

昨日までの騒がしさが嘘のそうな光景だ。


(……あれ?)


ぼーっと眺めていると、視線が止まる。

カウンターの奥にある酒の棚。

酒類は押収されなかったのか、そのまま残っている。

その残され並んだボトルの中に――違和感。


(……位置、ズレてる?)


一本だけ、微妙に奥に引っ込んでいる。

暗闇の中では分からないズレ。

昨日の騒動で少し引っ込んだだけかもしれないが、念のため確認しておく。

カウンターを回り込み、棚の前へ。

見た目は普通のボトルに手をかける。

軽く手前に引く。


――カチッと小さな音。


(……当たりっすね)


何かのレバーだったのは確か。

ただ、どこが開いたのか分からない。


(……確か音は右からしてたっすけど)


右側を小さな棚を一つ一つ調べていく。

中にはフォークやスプーン、あとよく分からない調理器具が入っている。


(下の大きな棚は、たぶんお皿系っすよね……)


わざわざこんなトリックになっている家具を使っているということは何かを隠そうとしているはず。

小さな棚に入っている物を全て取り出してみる。

隙間、底板が浮いている棚があり、指を差し込むと――紙。

小さく折り畳まれたメモ。


「……住所?」


手書きの文字。

筆跡的には男性っぽいと思う。

雑だが、読めないほどじゃない。


(……場所、か)


一瞬、どうするか悩んだものの、スマホを取り出す。

どんなことでも「報・連・相」。

まだ確実の決まったわけじゃなくても、怪しいこの紙は知らせておいたほうがいい。


「警部」


数コールで警部が応じ、電話の向こう。

小澤の声。


「どうした?」

「ちょっと、面白いもん見つけたっす」

「どこで?ってか、何を?」

「今、渋谷っすけど――」


メモを見る。


「東村山市のサンライズってアパート。住所が書いてあるメモを見つけたっす」


沈黙。


「……渋谷ってことはクラブか?ほとんど押収してるはずだが。どこで見つけた?」

「警部が座ってた席から眺めてたら、棚の一部が怪しくって。いじってたら見つけました」

「……マジか」

「マジっす」


即答。

警部の声はなんかトーンンが下がっていたように感じた。


「……それをどうする気だ?」

「そりゃ、確認しに現調しますよ?」

「……だよな。そういうと思ったよ」


どんどん警部の声のトーンが下がっている気がする。


「薬銃に悟られないように動けよ。見張りの警官に出会ったら適当にごまかせ。クラブに入ったことはこっちでもごまかしておく」

「了解っす」

「それはこっちで見つけたものだ。動いてよし。俺も仕事が片付いたら向かう」


(……やっぱそう言うっすよね)


「了解っす。なら、先に着いて様子見てますね」

「鴨志田」


警部の声が低くなる。

さっきまでの面倒事に対するトーンとは別のーー


「絶対、単独で動くな」

「分かってます。ただの確認っすよ」


軽く言う。


「様子見るだけっすから。何もなければ、それで終わりっす」


一拍。


「……無茶するだろ?住所を送れ」

「了解っす」


通話を切る。


(……怒られるな)


見つけたメモを頼りに電車を乗り継ぐ。

都心から離れた住宅街。

目的の場所は、駅からバスに乗る。


「……ここか」


見るからに古いアパート。

外壁は色褪せ、ひびが入り、外階段は錆が目立つ。

住人はいるようで、駐輪場に自転車が数台置かれている。


(……いかにも、って感じっすね)


目的の部屋は二階、201号室。

端っこの部屋は明かりが点いていないので、帰宅前と思われる。


(念のため、部屋の位置を調べておくっすかね)


階段を上がるときに靴の音が響く。

階段をあがったところの部屋番号を確認すると、右手側に行くにつれて番号が増えている。


(……部屋は左端っすね)


必要なことを確認できたので、家主が戻るまで少し離れた位置に身を隠す。

時間が流れる。

昼に雨は止み、今は空はどんよりと曇っている。


(……何か、飲み物勝ってくればよかったっす)


ずっと同じ場所で張り込みをしていると不審者として通報されることもあるので、怪しくない程度に移動しながら張り込みを続ける。

数分。十数分。

そして――


「……来たっすね」


一人の男が小走りに二階へ上がり、例の部屋に入っていく。

遠目から見た感じ、170cm中盤のやせ形。

服装は長袖のジャージでフードを被り、特に周りを気にしている様子はない。

部屋に入る際に耳元で何かしていたので、音楽でも聴きながら帰ってきたのだろう。


(……さっきのが関係者っすかね?このまま乗り込んでもいいっすけど……)


状況の報告をするため、スマホを取り出す。


「警部。今、大丈夫っすか?」

「どうした?今そっちに向かっているところだぞ?」

「心配性っすね。なら、いいタイミングかもっす。今、一人入りました」

「……気づかれたか?」

「見られてないっすよ。もし、まだ着くまで時間があるならーー」

「……待て。すぐに向かうから焦るな」


そこから数十分。

警部が来るまで部屋の出入りを警戒していたが、なし

辺りはもう日も暮れ、星空が綺麗に見える時間になっている。


「鴨志田」


振り向く。


「来るの遅いっすよ?」

「こちとら書類仕事片付けてきてんだ。それにここまで電車で来ても遠いしな。で、あのアパートで合ってるか?」

「そうっす」


短く返す。


「状況は?」

「一人、部屋に入ったきりですね。まだ出てきてません」


小澤が視線を向ける。


「……行くぞ」


部屋の前まで来ると緊張する。

逮捕するときが一番危ない。

呼吸を整える。


ピンポーン。


数秒の間。

中から返事があるとともに、扉に向かって歩いてくる音が聞こえる。


ガチャ。


ドアが開く。

男。

若いと感じていたが、20歳前後に見える。

すらっとした体型で、茶髪の髪の毛。

だが――どこが生気を感じれない。


「……何ですか」


警部が手帳を見せる。


「警察だ。少し話を――」


その瞬間。

男の表情が変わる。


(……まずい)


男の動きを制止しようとした、その時。

男の手が口元へと動く。


「っ――!」


何かを――飲み込む。


「――は?」


目の前で男がーー消えた。

音もなく。

気配もなく。


「……消え、た?」


空間だけが残る。

沈黙。

驚きのあまり碌な言葉が出てこない。


「……マジ、っすか」


警部は動かない。

ただ、その消えた場所を見ている。


(……警部が見たのは、これっすか)


確信。


「……警部、これは関係者っすね」


低く呟いた。

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