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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第2章 新たな出会いと奴隷少女

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第39話

巨体が踏み込んでくる。

こちらは瞬間的に後ろへ距離を取ろうとするが、それでも距離は一瞬で詰まる。


(――これで終われ。【ゼロ】)


だが。


「――効かぬな」


巨体は、微動だにせずそこにいた。


(……何が?)


確かに発動した。

だが、手応えはなかった。

巨体は一度こちらを見定め、距離を取る。

その間に呼吸を整える。


「今のは……面白い力だな」


巨体が低く笑う。


「だが、我には通じぬ」


(……)


視線を逸らさず、様子を見る。

龍は、わずかに顎を上げた。


「その力、即死系であろう。我々魔王軍に所属しているものは、敬愛する魔王様から加護を受けると即死に対して耐性がつくのだ。我の場合、魔王ルクス様の加護を受けておるのでな」


低い声が、静かに響く。


「であるから、もう少し力を見せてみろ」


巨体からブレスが吐かれ、それを横っ飛びして避ける。

なるほど、と内心で頷く。

前にも同じことがあったが、通らない理由は分かった。

なら――


(……やり方を変えるだけだ)


相手の間合いにいたのではこちら側が不利になる一方だ。

まずは間合いを取り、安全圏からの攻撃を模索する。

だが――


「お主は魔法系の術者であろう。それに付き合うのも一興だが、お主のためにならん。間合いが簡単に取れると思わんことだ」


巨体を生かし、せっかくの間合いをつぶしにくる。

巨体もさることながら、スピードも同格以上だ。

間合いを取ろうとして潰され、接近戦では勝てる見込みがない。


(……なら、即死じゃなきゃ、効くわけだな。【ゼロ】)


今回の【ゼロ】は相手のスピードをゼロにするよう発動した。

その結果ーー


「ほう。その術、即死以外にも使えるのだな。なるほど、我のスピードを殺したのか。であれば……」


相手もブレスや魔法攻撃主体の戦法に変更してきた。

ここからは移動砲台vs固定砲台。

全く移動できないわけではなさそうだが、さっきまでのスピードがなければこちらが有利に戦況を進められる。


「移動しながらの魔法攻撃か。随分と小賢しい戦法であるな。なら、これは避けられるか?」


巨体の周りに複数の魔法陣らしきものが複数浮かび上がる。

このまま発動させてはまずい、と思っていても、こちらの攻撃は意に関せず詠唱が紡がれていく。


「ーーヘル・アシッド」


詠唱が完了した瞬間、巨体の足元以外の場所が毒の沼へと変貌する。

何とか飛んで回避したものの、一瞬がだ沼に触れた靴の先が溶けてなくなってしまった。


(……思いっきりジャンプして正解だった。だがーー)


こちらは浮遊できる魔法を覚えていない。

このまま落ちれば溶けてジ・エンドだ。


「ーーなら、魔法創造、”拳銃”」


落ちる前に倒せばいいだけ。

パン、パン、パン。

それぞれの頭を狙って三発放つ。

スピードがなくなった相手はそれを回避できる能力はなく、そのまま受けるしかない。


「……いい…攻撃…だ」


生物であれば頭も急所の一部と信じて放ってみたが、その理屈あ通じたようだ。

着地するときには魔法で作られた毒沼は解除され、普通に歩行できるようになっていた。


(……なんとか、勝てたのか?)


この戦いに勝利したのか確認するために巨体に近づいてみる。


「……ふむ。お主なら先に進んでも問題ないかもしれん」

「まだ、生きていたのか」

「さっきも言ったであろう。ここは”追憶のダンジョン”。我々のような魔王様の加護を持つものは、その存在のコピーがここで試験するためにおる。お主は十分合格だ」

「……ありがたいが」

「なんだ、不服か?」


巨体はさっきまでの戦闘モードから一変、普段の状態に戻ったようだ。

戦闘での傷もすでに無くなっている。


「まあよい。このままでは話ずらい。ちょっと待っておれ」


そういうと巨体だった姿が人間の姿へと変わっていく。

見た目はダンディな優男。

それでも、この男に喧嘩を吹っ掛けたら無事で済まない雰囲気は感じることができる。


「それでさっきの続きだが、不服か?」

「いや、さっきの戦いで疲れたから今日はここまでにしようかと」

「そういうことか」

「いや、誤解を与えたのであればすまん。それで、いくつか質問してもいいか?」


この世界のことはエレナから聞いているものの、それは人族側から見たものに過ぎない。

少し話ができるのであれば、魔族側の情報も聞いておきたい。


「構わんよ。何が聞きたい?」

「この世界の魔王って何人いるんだ?」


現状、ヴェルデナとボロス、二人の魔王の名を知っている。

加えて、元魔王のルクス。


「そうだな。魔王は複数いる。というか、魔族自体を説明した方が早いか……」

「すまない」

「いや、知っておくべきだろう。魔族は一括りにした言葉で、デーモンやサキュバス、インキュバス、ゴブリン。色々な種族が混ざっておる」


ダンディな男は魔法で魔族のホログラムを手の上に映し出す。


「その多種多様な種族をまとめるトップが魔王だ。だが、種族によって意見は違うからな。多くの魔王が乱立している」

「ルクスはどんな魔王だったんだ?」

「ルクス様は戦争を好まず、人族との共存を目標としていた。だから、人族を滅ぼそうとする一派や人族を従えようとする一派と対立することになった」


ダンディな男の目線は遠くを見つめている。

過去にあったことに思いを馳せているのだろう。


「……なるほどな。お人好しなわけだ」

「今の我にダンジョン以降の記憶がないが、ルクス様のことだ、お主を寄越したということは争いに負けたものの、目標は達成したのであろうな」

「……どういうことだ?」

「お主、異世界人であろう?」


一瞬ギョッとしたが、ガルディアスもあの能力を使って気付いていたぐらいだ。


「ああ」

「無事にあちらの世界に行かれたのだな」

「奥さんと二人で教会を切り盛りしているよ」

「ほう。他の我らが同胞も行っていると思うぞ?」


ダンディな男はニヤッと笑った。

絶対的な核心があっての言葉であったので、今度ルクスに合った時にでも聞いてみることにする。


「さて、長く話してしまったな。今度来るときは酒を用意してくれると口が軽くなるかもしれんぞ?」

「分かった。次来たときは用意しておく」

「そうそう。我は、ヒュドラのケーヒス。覚えておくがよい」


最後に握手を交わし、ダンジョンから出るためのゲートへと向かう。

初めての四十階層ということもあり、かなり精神的に疲労困憊となっていた。

そのまま別途に寝そべるとすぐに睡魔が襲い掛かってくる。


(ーー日本に戻ったら仕事、だな)


そのまま睡魔に任せて眠りについた。

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