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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第2章 新たな出会いと奴隷少女

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第37話

奴隷商を出た頃には、すでに日が高くなっていた。

街の空気は変わらない。

人の流れ。露店の声。焼けた肉の匂い。

だが――


(……人数、増えたな)


自然と視線が後ろに向く。

ミア。リリア。エレナ。

そして――セラ。

さらに、新しく加わった二人。

エルフとヴァンパイア。

二人は黙って付いてくるだけで、まだ距離はある。

だが、それも時間が解決してくれるだろう。


「……まずは服、だな」


短く言う。

セラの服はここまで逃げてきたままでボロボロ。

二人は奴隷服だ。

呟いたことに反応してミアが頷く。


「……必要」


リリアも続く。


「……このままは、目立つ」


前にミア達を連れてきた街の中央通りにある衣服店へ入る。

前回来た時はあまり気にしてなかったが、店内は明るく、新たしい布の匂いと、柔らかい空気。


「いらっしゃいませ!」


店員の声に軽く頷き、奥へ進む。


「そこの三人に服をお願いしたい。ほら、好きなのを選べ」


エレナが静かに動いた。


「ご主人様はこういった方なので慣れてください。セラ様、こちらに」

「……あ、はい」


自然と空気が回り始める。

エレナはセラ、ミアがエルフ、リリアがヴァンパイアを案内する。


(……任せるか)


視線を移す。

エルフの娘。

静かに服を手に取る。

だが、どこか遠慮がある。


「気にするな。聞いた通り、着飾って欲しいだけだ。金の心配はするな」


そう言うと、わずかに目を見開いた。

そして、小さく頷く。

ヴァンパイアは――動かない。

リリアも精一杯声を掛けているが、ただ、ぼんやりと立っている。


「……お前も選べ」


声をかけるが、反応は良くない。

だが、ゆっくりと棚へ歩き出した。


(……感情が薄いな)


数分後。

それぞれが服を決める。

奥から出てきた三人は――明らかに空気が違っていた。

まず目を引くのは、セラ。

淡いクリーム色を基調としたドレス調の装い。 だが、ただの貴族服ではない。

裾は動きやすいように軽く調整され、 胸元には簡素ながらも気品のある刺繍。

腰には細いベルト。 装飾ではなく、実用も兼ねている。

長い金髪は後ろで軽くまとめられ、 首元には小さな紋章のペンダント。


「……どうでしょうか」


どこか不安そうにこちらを見る。


(……王女、か)


着飾っているわけではない。 だが、その佇まいだけで分かる。

“守られる側”ではなく、 “背負う側”の人間だと。


次に――エルフ。

銀髪が光を受けて淡く揺れる。

選んだのは、深い緑を基調とした軽装。

体に沿うような細身の作り。 無駄な装飾はない。

肩には薄いマント。 森の中での隠密を意識した色合い。

腰には細剣。 軽く、速さを重視した武器。


「いかがでしょうか……」


静かな声。

背筋は真っ直ぐ。 視線はぶれない。


(……芯があるな)


ただの“売られた子供”ではない。

長く生きる種族特有の、 落ち着きと覚悟があった。


最後に――ヴァンパイア。

黒。

それだけで空気が変わる。

選んだのは、シンプルな黒のワンピース。

だが、どこか異質だ。

布は光を吸うように深く、 輪郭を曖昧にする。

袖は長く、指先が隠れるほど。

首元はやや開いており、 白い肌との対比が際立つ。


「……」


言葉はない。

だが、赤い瞳がこちらを見る。

感情は薄い。 だが、完全に無ではない。


(……似合うな)


一歩引いた場所に立つ。

それでも――存在感だけは、消えない。

三人が並ぶ。

王族。 森の民。 夜の種族。

色も、雰囲気も、全てが違う。

だが――


(……悪くない)


むしろ。


「それでいいな。それじゃ会計を」


自然と、そう思えた。

会計を済ませ、店を出る頃には――見違えていた。

そのままギルドへ向かう。

扉を開けると、ざわめき。


「……おい、増えたぞ」


そんな声が聞こえる。


(……そんな反応になるわな)


雑音は無視して受付へ。


「おかえりなさい。あら……メンバー増えました?」

「ああ、登録を頼みたい。それとパーティ登録も」

「分かりました。まずは、新規登録ですね」


手続きを進める。

セラの登録は順調に進む。

エルフの番になるが、少しだけ迷う。


「名前をお願いします」


受付嬢が問いかける。

少しの沈黙。


「……フィア、です」


小さく答えた。

そこからは順調に進み、次はヴァンパイアの番。

視線が揺れる。

だが――


「……ルナ」


かすれるような声。


(……よし)


全員の登録が終わる。

三人の冒険者ランクはFで始まることになった。

これもギルド長が許可したことだそうだ。

受付嬢が顔を上げる。


「続きまして、パーティ登録です」


視線をエレナに流す。

それぞれが違う場所から来て、ここにいる。


「パーティの名前はいかがします?一度決めると解散するまで変更できませんので、慎重に決めてください」


その問いに――エレナが口を開いた。


「“アステリア”で。星、という意味です」


静かな声。

ミアが頷く。


「……いいと思う」


リリアも小さく。


「……きれい」


セラも微笑む。


「素敵です」


受付嬢が記入する。


「パーティ“アステリア”ですね。登録完了です。パーティランクはEとなります。それでは、何か受注されますか?」


パーティ登録も終わったので、いつもの討伐クエストを受注し外に出る。

外に出た瞬間、腹の虫が鳴る。


(……そういえば)


空を見上げる。


「昼、過ぎてるな」


鴨志田がいれば茶化してきそうだが、今はいない。


「飯にするか」


ミア、リリア、エレナが頷く。

新しい三人は遠慮がちだ。


「エレナ、三人に説明よろしく」

「はい」


エレナが三人に決まり事を説明をしている間に食事処に到着した。

やはりというか、三人はエレナに説明されたことに驚きながらも、席につき、それぞれ好きな物を食べている。


(……これから慣れてくれると良いが)


食事も終わり、クエスト消化に街の外へ移動する。

今回は新しく加入した三人は見学だ。


「まず、色々思うところはあるだろうけど、今日のところは見学だ」


新メンバーに告げる。


「……はい」


セラとフィアが頷く。

ルナは無言。

今回は増えすぎたゴブリンの討伐。

巣が大きくなると街にも悪影響があるので、小さい内に潰す必要がある。

そのため、巣がありそうな草原でも隠れることが出来る岩場を探索していると魔物が現れる。

ゴブリン三体。


「行くよ」


ミアが踏み込む。

撃ち漏らしをリリアが追撃。

エレナが指示を飛ばす。


「右、来ます」


ゴブリンは仲間を呼んだようで、増援が来る。

それでもこの三人は崩れない。


(……見せるには十分だな)


【ゼロ】は使わない。

あくまで、三人の戦い。

増援も多くなく、短時間で終わる。


「……終わり」


振り返る。

セラの目が見開かれている。


「……これが」


フィアも静かに見ている。

ルナは――わずかに、視線が動いた。


(……ここから、だな)


街に戻る頃には、日が傾いていた。

ギルドにより、クエストの報告を済ます。

そこから宿へ移動する。


「おかえりなさいませ。あら、人数増えましたね」

「申し訳ないが、部屋、増やせないか?」


店主が頷く。


「六人かい。なら二部屋だな」


結果――ミア達六人で一部屋、俺は前と同じシングルの部屋に分かれる形になる。

宿屋の一階で軽く食事を済ませ、部屋に戻る。


「あまり夜更かしするなよ。明日もあるからな」


出来れば仲良くなって欲しいところだが、過度な期待はできないだろう。


(……さて、ダンジョン潜るか)


帝国に行くには山越となるようだ。

流石に山越では、時間もかかるだろう。


(……別の手段は用意しておきたい、よな)


窓の外を見る。

街の灯りが、静かに揺れている。

仲間は増えた。

戦力も、確実に上がっている。

だが――


(……まだ、足りない)


ゆっくりと息を吐く。


(……やることは、決まってる)


手の中の鍵を、軽く弄ぶ。

ルクスから渡された鍵。

使い方は、もう分かっている。

ダンジョンには、何度も潜ってきた。

だが――


(……今回は、少し深く潜る)


視線を落とす。

いつも通りで終わらせるつもりはない。

静かな部屋で鍵を回す。

わずかに空間が歪む見慣れた感覚。

何度も潜ってきた、あの入口。


(……今回は――)


一歩、踏み出す。


挿絵(By みてみん)

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