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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第2章 新たな出会いと奴隷少女

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第28話

朝の空気は、どこか澄んでいた。

石畳の通りに差し込む光。

元気に呼び込む露店の声。

行き交う人の足音。

二週間前の騒ぎが嘘のように、街はいつも通りの顔を取り戻している。


(……平和、か)


街は少しずつ以前の状態に戻りつつある。

そんな様子を部屋から眺め、宿を出る。

後ろから足音が三つ。


「ご主人様、今日の依頼ですが――」


エレナがいつも通り資料を手にしている。

もう、この光景にも違和感はない。


「ゴブリン討伐に加えて、フォレストウルフの間引きですね。どちらもEランク帯ですが、数が多いので昇格にはちょうど良いかと」

「……ちょうどいいんじゃないか。任せる」


短く返す。

ミアが隣で剣を軽く振る。


「……昨日より軽い」


リリアも続く。


「……うん。動きやすい」


(……慣れてきたな)


あの襲撃から二週間。

短いようで、長い時間だった。


突然訪れた魔族の侵攻。

ガルディアスとの戦闘。

そして、日本での連続殺人。

異世界に来て、激動の四日間を過ごした。


そこから、ようやく落ち着いた時間が流れている。


(……とはいえ)


何も解決していない。


日本側の事件。

異世界の“実験”。

ブルガルド帝王国。


どれも、進展はない。


(……焦っても仕方ないか)


情報が足りない以上、動けない。

だから今は――


(……地力を上げる)


冒険者ギルドに入る。

朝の時間帯はクエスト受注のため、相変わらず人が多い。


「おはようございます。依頼ですね?」


受付嬢が慣れた様子で声をかけてくる。


「昨日の続きだ。間引き、やらせてもらう」

「承知しました。現在のランクは――」


一拍。


「ゼロ様がCランク。ミア様、リリア様、エレナ様がEランクとなります」


(……上がったな)


先の襲撃。

あの規模の戦闘は、例外的な評価対象になったらしい。

結果――試験を免除されての昇格。


「最近、意欲的にクエストこなしていますね。あと数回クエストこなせば、ミアさん達はDランクですよ」


クエストの受付を済ませギルドを出る。

街はまだまだ復興途中だ。

先の襲撃で高ランク冒険者は別の安全な街に移った。

現在この街は、初心者冒険者が復興支援のために多く滞在しており、冒険者ランクはCが最上位となってしまった。

その影響がーー


「おや、ゼロさん。今日はいいリンゲが入ってるよ。1つどうだい?」


こういった声の掛けられ方にも慣れてきた。

適度に受け流しながら街の外の草原へ。

風が流れる。

草が揺れる。


(……気持ちいいな)


さっそく三人は魔物の間引きを始める。

三人とも二週間前とは、明らかに動きが違う。

ミアが前に出る。


「……来る」


視線の先。

ゴブリンが三体。

以前なら、構えるだけで精一杯だった。

だが――


「行く」


踏み込む。

剣が振られる。

一撃。


(……速い)


明確に、動きが変わっている。

リリアが横から入る。


「……今」


隙を突く。

正確な一撃。

エレナが後ろから声を飛ばす。


「ミア、左。もう一体来ます」

「……分かった」


即応。

連携に無駄がない。


(……形になってる)


俺は一歩引く。

必要なところだけ介入する。


(【ゼロ】――)


一体。

瞬間的に処理。

あとは任せる。

三人が動く。

戦う。倒す。

短時間で終わる。


「……終わり」


ミアが息を吐く。


「……うん」


リリアも頷く。

エレナが周囲を確認する。


「追加はありません。問題なしです」


(……十分だな)


確実に強くなっている。

個々も。

そして――


(……連携も)


歩き出す。

次のポイントへ。

その途中。

エレナが口を開く。


「……ご主人様」

「なんだ?」


少しだけ間を置いてから、続ける。


「この二週間でお話しした周辺国のご説明ですが、改めて整理しておきます」


頷く。


「このノーランド王国の北にはサザラント帝国があります」


淡々とした口調。


「約半年前まで戦争状態でしたが、現在は動きなし。停戦状態が続いています」


停戦になった理由は分からないが、現在拠点にしているノーランド王国スリトアナ領ベルナスが近い街になる。

ただし、国境付近は高い山に囲まれている。

帝国の主要戦力は航空戦力とのことだ。


「西はウルガ共和国。小国ですが海に面しており、ノーランド王国とは友好的で海産物の流通が盛んです」


ノーランド王国は農地が多い。

畜産も盛んに行われているが、海のないノーランド王国にとっては海産物を輸入できるのはありがたい。

こちらは、西の森を抜ける必要がある。

西の森は魔物も頻繁に目撃される危険な森として有名で、貿易の際には護衛が雇われることが常識となっている。


「東にはオンダーベ教国とツンダリア連邦国」


オンダーベ教国はオーマヤ教の本部教会が置かれている国で、この世界で一番信者のいる宗教が治めている。

聖地巡礼で訪れる人も多く、本部が一般客にも開放しており観光名所になっている。

ノーランド王国は信仰の自由がある国なので、特にオンダーベと対立しているわけではない。

そして、ツンダリア連邦国は元五つの国が他国に対抗するために樹立された国家。

基本的な方針は中立で、お金を出せば戦争に傭兵を貸し出すこともしばしばあるという。


一拍。


「そして、そのさらに東に――ブルガルド帝王国、南にはランザード騎士国があります」


ブルガルド帝王国。

陸路で行くとしたらオンダーベ教国もしくはツンダリア連邦国を経ることで入国できる。

海路もウルガ共和国から交易のため定期便があるので、こちらも選択肢に入る。

更に不気味なのがランザード騎士国。

ブルガルド帝王国の南側に位置する小国ではあるものの、帝王国の侵攻に何度もあっていながら全て撃退しているという。

騎士王が国のトップらしいのだが、詳細は不明。


(……政治、か)


視線を前に戻す。


「現状、帝王国にもっとも簡単に行く方法はウルガ共和国です。友好国であること、冒険者者を護衛として雇うこともプラスに働きます」

「そうだな」


短く返す。


「まずは国境を越えられるように冒険者ランクをCに上げること」


エレナが静かに頷く。


「頑張ります」


再び歩き出す。


(……まだ遠いな)


日本の事件。

異世界の実験。

帝王国。

点は、ある。

あとは――


(……一歩一歩地道に進んでいこう)


風が吹く。

草が揺れる。

その中を、四人で進む。

まだ、終わっていない。

だが。

確実に、一歩ずつ前に進んでいる。

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