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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第1章 始まりの事件と奴隷少女

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第14話

大学を出ると、朝の空気がそのまま流れ込んできた。

通学する学生と、出勤する社会人が混ざる時間帯。

同じ歩道を、異なる生活リズムの人間が行き交う。

見慣れた光景。


だが――頭の中だけは、そこから切り離されていた。


「……で、次どうします?」


隣を歩く鴨志田が、少しだけ声を落として聞いてくる。


「高橋の足取りを追う」


短く答える。


「三日前までは確認できている。飲み会以降が分からないなら、その間に何かがある」

「……教会、ですね」

「ああ」


サークルでの飲み会。

異常なし。

その後、失踪。

その間に存在する、唯一の共通点。


「本を受け取った場所ですしね」

「朗報は、髙橋以外の六人全員が無事な点か」

「今のところは、ですけど」


一拍。


「……その前にメシにすんだろ」

「助かります」


即答だった。


「腹減ってると頭回らないんで」

「言い訳が早いな」

「事実です。朝飯食う派なんで」


小さく笑う。


(……まあ、間違ってはいない)


角を曲がると、赤い看板が目に入る。

24時間営業の牛丼屋。


「ここでいいか?」

「最高です。おごりっすよね?」


店に入る。

自動ドアが開くと同時に、出汁の匂いが広がる。

カウンター席に並んで座る。

朝の時間帯。

客は少なく、静かなものだ。


「並二つ」

「はいよ」


数分もかからず、丼が運ばれてくる。

湯気が立ち上る。

味噌汁の香り。


「……久々に来たわ。出てくるの早いな」

「これがいいんですよ」


箸を割る。

一口。


(……普通だな。だが、悪くない)


だが、それでいい。


「整理するぞ」

「はい」

「三日前、サークルで飲み会」

「その時点では異常なし」

「ああ。高橋も含めてな」

「そのあと、失踪」

「はい。高橋は基本、大学を家の往復だったと聞いてますし」

「大学以外で関係ありそうなのが――」

「教会」


自然と、言葉が重なる。


「本を受け取ったのもそこですしね」

「高橋以外は全員無事」


箸を止める。


「一人だけ消えてるってことですよね?」

「そうなるな。まぁ、理由があるはずだ」

「それを教会が知ってるかどうか、ですね」

「確認、だな」


食べ終える。

会計を済ませ、店を出る。

住宅街へ向かう。

人通りが、少しずつ減っていく。

その一角。


「……ありました」


鴨志田が指を差す。

白い建物。小さな尖塔。

目立たない。

だが、確かにそこにある。


「……聖ルクス教会」


表札を確認する。


「ここで間違いないです」

「……行くぞ」


門をくぐる。

砂利の音が、やけに響く。

周囲は静かだ。生活音はある。

だが、この敷地だけ、少し切り離されているようにも感じる。


扉の前で止まる。


コンコン。


軽くノックする。数秒。

内側から、足音。

扉が開く。

現れたのは、四十代ほどの男だった。


柔らかい笑み。整った物腰。


「いらっしゃいませ。どのようなご用件で?」

「大学生が失踪していた件で、この周辺でも聞き込みをしていまして……よろしいですか?」


柔らかく切り出す。

男は一瞬だけこちらを見て、すぐに頷いた。


「そうなんですね。捜査、お疲れ様です。何なりと聞いてください」


自然な対応。

違和感は、ない。

中へ案内される。

静かな空間。

木製の椅子が整然と並び、奥には簡素な祭壇がある。

装飾は少ない。

清潔で、整っている。


「妻を呼びますね」


男が奥へ向かう。


「……普通ですね」


鴨志田が小声で言う。


「……ああ」


短く返す。

確かに、普通だ。

少なくとも、表面上は。

足音。

女性が現れる。

三十代後半。

男と同じく、穏やかな表情。


「こんにちは」


軽く頭を下げる。


「今日はどのようなご用件でしょうか」

「以前、この近くの大学の学生に本を渡しているそうだが、そのときのことを覚えていないだろうか?」


視線が交差する。

男と女。

ほんのわずかな間。


「……ええ。覚えていますよ」


女が答える。


「希望された方にお渡ししました」

「何人に?」

「いろいろな方にお渡ししていますが、最近ですと、見学にいらっしゃった大学生の七人です」


(……一致)


「目的は?」

「民俗学を勉強されているとおっしゃっていたので、知識の共有です」


迷いのない答え。


「どこから入手した」

「古くからあるものです。お渡ししているものはコピーしたものですよ」


曖昧。


「受け取ったあと、変わった様子は?」

「特には」

「他の学生も?」

「はい」


(……影響が出ない場合もあるのか?)


「今も配布しているのか」

「ええ」

「今後も?」

「希望があれば」


迷いがない。自然すぎる。


「……そうか」


小さく頷く。


「協力感謝する」


踵を返し出口へ向かう。

鴨志田が先に外へ出る。

その瞬間。


「――あの」


背後から、声。

足を止め振り向く。

女性――エリナが、すぐ近くまで来ていた。

声は、わずかに落とされている。


「もしよろしければ、今夜、少しお時間をいただけませんか?」


一瞬、間が空く。


「……何の用件だ」

「今日お話ししたこととは別にお伝えしたいことがありまして」


視線が、わずかに揺れる。


「ここでは話せないことか?」

「ええ。この場では……」


迷いなく頷く。

さらに、わずかに近づく。


「……できれば」


囁くように。


「おひとりで」


外から声。


「先輩ー?」


一瞬。


「……分かった」


短く答える。


「時間と場所は?」

「後ほど、夜になりましたら教会に来てください。」


柔らかく微笑む。

すぐに距離を取る。

何事もなかったように。

外へ出る。


門の外。


「遅いっすよ」


鴨志田が振り返る。


「少し追加で聞いてた」


自然に返す。


「何かありました?」

「特にない」


短く切る。


「そうですか」


歩き出す。


(……夜、か)


思考が、静かに回る。

これは――別の線だ。

2026.04.26 文章を修正しました

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