表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第1章 始まりの事件と奴隷少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/55

第13話

案内された宿は、町の中心から少し外れた場所にあった。

大通りの喧騒から外れ、一本裏に入っただけで空気が変わる。

人通りは減り、代わりに落ち着きがある。


「この辺りは、比較的安価で安心して泊まれる宿が多いですよ」


受付の女性が、地図を指しながら説明をしてくれた。


「……助かる」


礼を言い、地図を受け取る。

示された通りに進む。

やがて、目的の建物が見えてきた。

二階建ての木造。

看板はやや古びているが、手入れはされている。


「……悪くない」


木製の開き扉を押し開ける。

すでに宿泊客は部屋に籠っているのか、中は静かだった。

カウンターの奥にいるのは、年配の女。


「いらっしゃい」


落ち着いた声。


「一泊できるか?」

「銅貨五枚だよ。食事付きなら七枚」


(……こんなもんか)


袋から銀貨を一枚取り出す。


「銀貨しかないんだが、細かいのはあるか?」

「あるよ」


銀貨を差し出す。


「銅貨九十三枚だ。部屋と飯で七枚、もらうよ。部屋は2階だよ」

「分かった」


銅貨を受け取る。


(……銀貨は日常で使うには重いな)


鍵を受け取る。

軋む階段を上がる。

廊下を突き当たりまで進む。

古いが、掃除は行き届いている。

部屋の前で足を止める。

鍵を回し扉を開ける。

中は簡素だった。

ベッド。机。椅子。

それだけ。

日本でいえば、ビジネスホテルみたいな簡素さ。


「……十分だな」


扉を閉める。

ようやく、一人になれた。

ベッドに腰を下ろす。


「……」


静かだ。

戦闘の余韻が、まだ体に残っている。

だが――


(……悪くない)


袋を取り出す。

金貨。銀貨。銅貨。

重みを確かめる。


(……色々買うには十分な余裕はあるな)


靴。通行税。

そして――三人。


「……明日だな」


小さく呟く。

そのまま、ベッドに倒れ込む。

疲労が、一気に押し寄せる。

意識が沈む。暗転。


――次の瞬間。


目を開ける。

見慣れた天井。


「……戻ったのか」


体を起こす。

カーテンの隙間から、光が差し込んでいる。

朝だ。

机を見る。


――何もない。


(……そうか)


あの本は、ここにはない。

最初に見つけたとき、すでに“案件”として処理されていた。

現場から回収され、そのまま証拠品として保管。

当然、自宅にあるはずがない。


(……当たり前だな)


だが――


(……夢じゃない)


感覚だけが残っている。

あの場所。あの戦闘。あの“何か”。


手を見る。

変わらない。

だが、確実に違う。


(……時間は、こっちとズレてないか)


小さく息を吐く。

向かう先は決まっている。


だが、その前に。

スマホを取り出し連絡先を開く。


「……鴨志田、起きてっかな……」


コール。

数回の呼び出し音。


『……はい』


眠そうな声。


「今日、時間あるか?ちょっと寄りたいところがあるんだが、来れるか?」

『……え? あ、はい。大丈夫です』

「明誠大学に来い。正門前で集合な」

『何分後っすか?』

「三十分」

『了解です』


通話を切る。

大学に行くのだから目立たないように私服に着替える。


シャワーを浴びて外に出る。

朝の街。

通勤する人の流れ。車の音。信号の切り替わる音。

いつもの日常がそこにある。


大学へ向かう。

正門前に着いた数分後。


「すみません、お待たせしました!」


振り向く。

鴨志田。

息を整えながら走ってくる。


「……早いな」

「近かったんで」

「行くぞ」

「はい」


二人で歩き出す。

今日は平日。行き交う学生の中を抜けて、サークル棟へ向かう。


歩きながら、鴨志田が言う。


「高橋、民俗学研究会に所属してたようです」

「じゃあ、そこに向かうか」


建物に入る。

サークルの掲示板から目的のサークルを探す。

いくつものサークル名。


「……あれだな」


“民俗学研究会”


階段を上がる。

目的の部屋の前で立ち止まる。

中から、話し声。


コンコン。


軽くノックする。


「……はい?」


ドアを開ける。

数人の学生がこちらを見る。

見知らぬ大人が入ってきたためか、一瞬、空気が止まる。


「警視庁刑事部捜査一課の小澤です」


手帳を軽く見せる。


「ちょっと話が聞きたいんだが……」


ざわつき。


「……何の件ですか?」

「失踪していた高橋の件だ」


空気が変わる。


「……え?」

「このサークルの所属と聞いてね」

「……はい」

「三日前、このサークルで飲み会をやっているな」


視線が揃う。


「……はい」

「そのときの様子を教えてくれ」

「普通……でした」

「普通?」

「はい。いつも通りっていうか……騒いで、飲んで……」

「高橋も、特に変わった様子はなかったです」


(……異常なし、か)


「途中で席を外したやつは?」

「いません」

「トラブルは?」

「特段ないです」


(……事前兆候なし)


そのときだった。

視線が、部屋の隅へ向く。

机の上に一冊の本。

黒い表紙。

装飾はない。


「……それは?」


足を向ける。

無造作に置かれたその本を手に取る。

冷たい。


(……同じだ)


ページを開く。

読めない文字。


「これ、誰のだ」

「……サークルの共有です」

「どこから持ってきた」

「……もらいました」

「誰から?」

「大学の近くにある教会です」

「その教会の名前は?」

「“聖ルクス教会”です」

「誰が行った」

「その場にいたメンバーで……七人です」

「全員、同じ本を?」

「はい。それぞれ一冊ずつもらいました」

「無料配布か」

「はい」

「渡したのは誰だ?」

「教会にいる夫婦、だと思います」

「名前は?」

「神父がルクスさん、奥さんがエリナさんです」

「受け取ったあと、何か変化は?」

「特には……」

「高橋も?」

「はい」


(……影響が出ない場合もあるのか?)


本を閉じる。


「他に変わったことは?」

「ないです」

「分かった。協力ありがとう」


部屋を出る。

しんと静まっている廊下。


「……どう思います?」


鴨志田が小声で聞く。


「とりあえず本を配った教会も行ってみるか。何かしら有益な情報があればいいが……」

「……先輩、その前にメシにしません?腹減ったんですが……」

「……緊張感ないな」

「いや、張ってますよ?でも頭回らないと意味ないじゃないですか」

「……」


(……確かに)


「分かった。手早く済ませるぞ」

「了解です!」


二人で歩き出す。

次に向かうのは――教会。

その前に、腹ごしらえだ。

2026.04.04 文章を修正しました

2026.04.26 文章を修正しました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ