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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第1章 始まりの事件と奴隷少女

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第15話

時間は夜九時過ぎ、住宅街にある教会の周りも静かになる夜。

約束の時間になった。

再び、聖ルクス教会へ向かう。

昼とは違う静けさが、街を包んでいた。


門をくぐる。

砂利を踏む音だけが、やけに大きく響く。

正面の扉の前に立つ。


ノックしようとした、そのとき――


「どうぞ」


内側から声が返る。


(……待っていたか)


扉を開け中へ入る。

灯りは落とされている。

必要最低限の明るさ。

奥で、男と女が並んで待っていた。


「お待ちしておりました」


エリナが微笑む。

その隣で、男が一歩前に出る。


「ルクスです」


短く名乗る。


「……小澤だ」


名乗り終わると椅子に座るよう促される。

向かい合う形。


「話の続きだな」

「ええ」


一拍。


ルクスが口を開く。


「私たちは――異世界の存在です」

「……なるほど。あっちの世界は何て呼べばいい?」

「アストラディア」


静かに告げる。


「そして、私はかつて魔王の一人でした」


空気が、わずかに張る。


「彼女が妻のエリナです」


エリナが軽く頭を下げる。


「……魔王が何しに日本に来た?」


小さく呟く。

反射的に重心がわずかに落ちる。

目の前の男は穏やかに笑っている。


「私たちは争いを望んでいません。平和主義者、というやつです」


ルクスが苦く笑う。


「だからこそ――こちらに来ました。静かに暮らすために」

「……逃げたわけか」

「ええ」


否定はしない。


「私は魔王でしたので、勇者と呼ばれる異世界から来た人々と幾度となく戦いました。ただ、戦うための存在になりたくなかった。そのために転移魔法を完成させました」

「……あの本か」

「はい」


ルクスは堂々と、隠すことなく話し、頷く。


「あの本には、その転移方法が記されています。基本的には、本人の意思に応じて転移します」


(……同意?俺にはなかったが…)


「ではなぜ、それを配っている」


問いを投げる。

一瞬の沈黙。

エリナが、静かに口を開く。


「異世界を、救いたいからです」

「……逃げたのにか」

「ええ」


目を逸らさない。


「アストラディアでは、争いが絶えません」


ルクスが続ける。


「人間同士、魔族と人間、そして、魔族同士ですら」


一拍。


「その結果――神すら、分かたれました」


空気が変わる。


「善と悪に」

「……神が割れたのか」

「ええ」


頷く。


「現在、勢力を拡大しているのは、悪の神――ヴァルディウス」


その名が、静かに落ちる。


「善の神は」

「まだ、存在します。ですが、押されています」


一拍。


「その善の神が」


エリナが言う。


「私たちを助けてくれました。この世界へ来るための最後の一押しを」

「……貸しがあるわけか」

「そうです。だから、助けたい」


静かに言う。


「これまでにも」


ルクスが続ける。


「多くの人間を送りました。この世界から」

「結果は?」


分かっていて聞く。


「……全員、失敗しています」


静かに。


「すべて、ヴァルディウスによって排除されました」


沈黙。


(……ゼロか)


「……高橋は?」


問いを落とす。

エリナが目を伏せる。


「死にました。アストラディアで」

「……そうか」


短く返す。


「申し訳ありません」


静かに続ける。


「私たちが関わった結果です」


沈黙。


「……高橋の件はどうする?いや、どうすればいい?」


ルクスが答える。


「これまでと同じ、不審死で処理願えませんでしょうか?」

「……警察じゃ調べられないからか?」

「はい……こちらの世界の手段では、届かない領域です」


沈黙。


(……分かってる)


だが――


「……割り切れる話じゃないな」


小さく呟く。


「話を戻しますが、転移にはエネルギーが必要です」


ルクスが続ける。


「無限ではありません」

「……エネルギー?残りは?」

「多くありません。アストラディアは、もう見ていると思いますが、地球でいうところの「剣と魔法の世界」です。「マナ」と呼ばれる自然発生するエネルギーを利用しています。ですが、アストラディアは徐々に弱ってきているため、これ以上の消費は避けたいところです」

「……俺が問題を解決できずに、放置したらどうなる?」


問いを投げる。


「アストラディアは崩壊します」


即答だった。


「完全に」


一拍。

エリナが続ける。


「そして、それで終わるとは限りません」

「……どういう意味だ」

「転移は繋がりです」


静かに言う。


「片側が壊れれば――もう片方にも影響が出る可能性があります」


沈黙。


(……地球も巻き込まれるか)


「……なぜ俺なんだ?」


問いを変える。


「あなたは」


エリナが言う。


「本に“選ばれた側”です」

「……何が違う」

「通常……」


ルクスが続ける。


「地球とアストラディアを頻繁に行き来することはできません。ですが、あなたは違う」


一拍。


「本が、あなたに同調したのだと思います。この本は意思を持っているので、あなたの思想や信念に本が同調しているのだと思います」


沈黙。


「……つまり?」

「あなたはアストラディア、最後の希望です」


はっきりと言い切る。

空気が止まる。


(……重いな)


そのとき、ルクスが、懐から何かを取り出す。

小さな金属。鍵。


「……これは?」

「私たちが、あちらに残してきたものです。どうぞ」


ルクスは得体のしれない鍵を差し出す。

ただ、ルクスの言葉に嫌な感じは受けなかったので、素直に受け取る。

受け取ったものはひんやりとして冷たい。

だが――


「これを使えば力を得ることができる」


エリナが続ける。


「生き残るための。そして――救うための力を」


沈黙。

鍵を見る。

軽い。

だが――意味は、重い。


「……分かった。ありがたく受け取る」


短く言う。

それだけだった。

ルクスが頷く。

エリナも静かに頭を下げる。

夜は、まだ続いている。


(……戻るか)


もう一度、あちらへ。

2026.04.26 文章を修正しました

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