表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
119/120

第106話

朝日が窓から差し込み、ゆっくりと目を覚ます。

日本に戻ったら会議の一日で精神的に疲れた。

ただ、こちらの世界に戻ってきてもその憂鬱な気持ちは続いている。


(……一つ一つ、片付けるか)


頭を切り替え、周りを見回す。

昨夜の戦闘が嘘のように静かだった。


「……朝か」


身体を起こしリビングに向かうと、既にエレナたちは起きてた。


「おはようございます、ご主人様」

「ああ、おはよう」


テーブルには簡単な朝食が並び、アステリアのメンバーは日本でリフレッシュ出来たようで普段通りだ。

ルナはまだ少し眠そうに目を擦り、リリアは無言でパンを頬張っている。


「お疲れですね」

「……会議でな。こればかりは何度やっても慣れん」


ゼロは頷きながら窓の外を見る。

昨夜、あれだけの数のアンデッドと戦ったというのに、外は妙なほど静かだった。


「……昨日の戦い、ですか?」

「……ああ。皆は大丈夫そうだな」

「怪我はないです。思うところはありますが……」

「そうか。少し外に出てくる」


朝食を食べ終え、そう告げると、家を出る。

エレナたちも後に続いた。

村の中は、昨日村に着いた時と何一つ変わらない。

畑では農民が鍬を振るい、子どもたちが笑いながら走り回る。

井戸端では女性たちが世間話をしている。


「……変ですね」


エレナが小さく呟く。


「……昨日の、騒ぎ、無かった、みたい」


ルナも首を傾げる。

昨夜、家を取り囲んでいた黒装束たちはどこにもいない。

倒した場所へ行っても、死体は残っていなかった。

地面には戦闘の跡だけが残っている。


「ご主人様」


フィアが膝をつく。


「……あれはなんだったのでしょうか?夢、ではないですよね?」

「……それを聞きに行こうか」


全員が頷く。

昨日の戦いの後、村長の身柄は拘束して村長の家で拘留している。


「……入るぞ」


中から返事はない。

ゼロが扉を開けると、昨日拘束した村長が椅子へ腰掛けたまま窓の外を眺めていた。

逃げる様子もない。

暴れる様子もない。


「おはようございます」


村長は穏やかに笑う。


「昨夜は大変でしたな」

「……他人事だな」

「ええ。私にはもう何もありませんから。もう何もする気が起きません」

「……その事で聞きに来た」


村長の真正面へ立つ。


「昨日のあれは何だった?」


村長は答えない。

黙秘をする気のようだ。

が、それでは何も解決しない。


「……お前は何者だ?」

「……」

「……どうして村は普通に暮らしてる?」


やはり返事はない。


「……黙秘、ですか」


エレナが静かに言う。

予想していたことではあったが、残念でもある。

きちんと本人の口から聞きたいが、今は一分一秒でも惜しい状況。

やりたくはないが、これに頼るしかない。


「……なら、仕方ない」


村長を見る。

本人はニコニコしている。


「――【鑑定】」


その言葉を唱えると、村長のステータスが浮かび上がり、本人もニコニコしていた顔が少し強ばる。

視界に文字が浮かび上がる。


名前:ガレス

種族:ヒューマン?

職業:アンデッドマスター

スキル︰屍人使役、屍人生成……

状態︰不明


浮かび上がった文字に眉をひそる。


「アンデッド……マスター」


村長の表情が僅かに変わる。


「人物鑑定持ちでしたか……やれやれ。困りました。それなら早く言って欲しかったですね」

「……なんだ、これ?」

「見えているんですね。それだけでなく、それ以外も全て」


種族に?が付いている上に、状態は不明。

何かがあったのは確かだろう。

村長は苦笑した。


「……鑑定は珍しいので気にしていませんでした。こうなっては私も黙秘するのは止めましょう」


諦めたようにこちらに顔を向け、真剣な表情になる。

村長の諦めにも似た発言に部屋の空気が変わった。


「この村は……魔物に襲われました」


村長は静かに語り始める。


「ラグナードが襲われる少し前のことです」


突然現れた大量の魔物。

衛兵も冒険者も間に合わず、多くの村人が命を落とした。


「私は一部の村人と地下の避難所へ逃げました」


その地下は村長宅にあるらしい。

助かったのは女子供と老人ばかり。

男は魔物を追い払うため、ほとんどが外に残り、戦える者はほとんど死んだ。


「このままでは村は終わってしまいます。この村は農業しかありませんから」


村長は懐かしむように天井に視線を逸らす。

話している村長の声色はとても優しい。

村のことを大切に思っていたのは本当だろう。


「そんな時でした。一人の旅人が現れました」

「……旅人?」

「ええ。黒い服を着た、不思議な男でした」


セラが村長の発言に反応する。

村長の続けた言葉に、未だに掴みきれていない相手を連想して、アステリア全員の表情が変わる。


「その男は言いました。『力になりましょうか』と。

そして、瓶を渡されたのです」

「……何が入ってたの?」


ミアが聞き返しますが、村長は「中身は分かりません」と答えるのみ。

ただ、色は黒かったと――


「……それで?強要されたのか?飲め、と?」

「いえ。選択は任されました。ただ、このままでは村は飢えて無くなる。その事態を避けるには選択肢はありませんでした」


村長曰く、飲んだ瞬間、身体を焼くような熱な襲われたそうだ。

しかし、数日後、身体の底から力が漲ってきたと。

そして、その力を自覚した時、悟ったそうだ。

アンデッドマスターになったと。


「……村を守れる。そう思いました」


死んだ村人を操り、村の日常を取り戻した。

ただ、村人の意識改変も行うことで、騒ぎを起こさないようにして。


「……でも、心はざわつくものですね」


村長は天井を見ていた視線を、今度は床へと向け、今にも泣きそうな声で続ける。


「取り戻したつもりでした」


毎日、笑顔で話しかけてくる村人。

返事をする子ども。

食事を作る母親。


「……皆の意識を改変して、アンデッドを使役して、それでも村だと言い張る」


村長の拳が震える。

村長は既に心が限界だったのだろう。

次から次へと言葉が溢れ出してくる。


「私は毎日、自分が死者を冒涜していることを理解していました。あの時、あの液体を飲んでいなければ、と何度後悔したことか」

「……それでも、村を捨てれなかった?」


セラが優しく問いかける。


「そうですね。ここに居る者たちは開拓民なので、長い付き合いでしたから。でも……」


村長は笑う。


「……私の選択は、間違っていたのでしょうね」


村長が顔を上げ、こちらを見てニコリとしている。

が、その目から涙が流れている。


「液体を飲んだ直後、黒い男は言いました。『秘密が知られない限り、この村は生き続ける』と。私は、その言葉を信じました」


もう村長には隠す意図も感じれない。

十分に反省も感じられる。

であれば、これからをどうするのか――

静かに尋ねる。


「……どうするんだ?」

「もう終わりです」


村長は穏やかだった。


「正直、ほっとしています。皆さんのような人に会えてよかった。こんなことは……もう続けたくありませんでした。ありがとう……」


その瞬間だった。

村長の足元に黒い魔法陣が浮かび上がる。


「っ!」

「全員下がれ!」


声と同時に全員が飛び退く。

村長の身体から黒い靄が噴き出した。


「……やはり、ですか!」


村長自身は覚悟していたようだ。

村長は最後に口を動かして何かを伝えようとしているが、こちらには聞こえない。

ただ――エレナを見ると、静かに頷いた。

村長は黒い靄が全身を包み込む。

次の瞬間、力が抜けるように椅子から崩れ落ちたかと思えば、その場で黒い炎なより消滅した。


「……ここまでするか」


村長がいた椅子に駆け寄る。

しかし、その場にいたはずの村長は消え、一枚の黒い羽だけが残されていた。

近くに来たエレナがそっと拾い上げる。


「……羽?」

「……いや――」


嫌な予感がする。

椅子の後方、そこから魔力の流れを感じる。

同じようにルナも杖を構え戦闘態勢に入っている。


「来るぞ」


空間が歪む。

部屋の中央に黒い亀裂が走る。

そこから、一人の男がゆっくりと姿を現した。

黒いスーツの整った身なり。

顔の全体像は見えないが、感情の読めない瞳からは危ういものを感じる。

男は村長がいた椅子を一瞥すると、僅かに口元を緩めた。


「……おや、ダメですね。約束を破っては」


なんの感情もない、淡々とした口調。

冷たく、人がどうなってもいいと考えていそうだ。

その視線がゼロへ向く。


「あなたが、ゼロさんですか?」


部屋の空気が一瞬で張り詰めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ