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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第101話

ラグナードを出発してから半日ほど経過しました。

早馬を走らせながら街道を進み、さすがに馬にも疲れが見え始め、日が傾き始めた頃、一つの村へと辿り着きました。


「……今日はここまでだな」


ご主人様が手綱を引くと、後ろを走っていた私たちアステリアも次々と馬を止めます。


「そうですね。ご主人様、お疲れ様です」


私がすぐに周囲へ視線を巡らせます。

馬の疲れもありますが、ここからもまだサウスノーランドまでは距離があると思われます。

一度、現在地の確認と今後の作戦の確認をしたいところでもあったので好都合です。


「ここはラグナードとサウスノーランドを結ぶ街道沿いの村のようですね。とりあえず、中に入って聞いてみましょうか?」

「……ああ。サウスノーランドの状況が分かるかもしれないな」


この村の規模はそれほど大きくないようです。

どちらかというと農村に近いでしょう。

それでも雑貨屋とご飯処くらいは揃っているようなので、冒険者が立ち寄るには不自由しない施設は整っているようです。

夕方になるのに畑では農民が作業を続け、子どもたちは走り回って遊んでいます。

魔王軍の侵攻が始まっているとは思えないほど平和な雰囲気です。


「静かですね……」


セラが呟きます。

この風景だけを見れば、長閑な雰囲気溢れる平和な村で終わるところですが、今は戦時中。

逆に何も慌てていないのは不穏に感じます。


「……静かすぎる。何も知らないのかな?」


リリアも珍しく同意した。

ミアは腕を組みながら辺りを見渡す。


「……ラグナードも襲われた。北から来たとしたらこの街を通るはず……」

「……ラグナードの戦線は東門だったな。北から来たとは限らないかもしれないな」


ご主人様は当時の最前線にいたので、東側から魔王軍が侵攻してきたと考えてもいるようです。

が、ご主人様もこの雰囲気はおかしいとは思っているようで、私を見ると頷かれます。


(……注意はしておいた方がいいですね)


魔王軍の侵攻は既に周辺の村へは伝わっているはずです。

多くの冒険者が復興の支援をしてくれているので、噂が広まるのは早いはず。

――そう、あの戦いは現実です。

シャードッシという魔王ボロスに所属する魔族との死闘。

ご主人様だけではなく、私たちアステリアにとっても忘れられない戦い。

そのラグナードからほど近いこの村は、何かしら影響があって然るべき、なのです。

特に、流通の面でいえば、ベルナスからの支援物資のお陰で生活の余裕が見られます。

であれば、商人の一団ぐらいは来ていてもおかしくないのに……


(……商人の姿すら見えないですね)


私はみんなを見渡して頷き、細心の注意をはらいながら、村の入り口で馬を預けます。


「……まずは、少し話を聞いてみるか」


村人は私たちが外部の人間だからか、こちらを遠目に見るばかりで話しかけようとしてもその機会にすら恵まれません。

そうこうしていると、村の中でも一段と大きな家の前に着きました。

出てきたのは五十代ほどの男性です。


「タング村にようこそいらっしゃいませ。旅のお方ですかな?」

「……ここはタング村というのか。そちらは?」

「この村の村長を務めさせてもらっております」

「……こっちは冒険者なんだが、どこか泊まれる場所とかはないだろうか?」

「そういうことですか。あちらの家が空き家なので、お好きに使ってくださって構いませんよ。特に何もない村ですが、ゆっくりしていってください」


物腰の柔らかい村長です。

村の若者は大きな街、サウスノーランドかラグナードへ出稼ぎに行くものが多く、空き家も多いそうです。

泊まる場所を確保してもらいながら、ご主人様は何気ない調子で尋ねます。


「……そういえば、最近この辺りは物騒だと聞いていたんだが」

「物騒?」


村長はご主人様の言葉に首を傾げます。

村長の表情は、出会った頃からニコニコしています。

が、その表情は私がよく知るものに似ています。

セラの顔をチラッと見ると小さく頷き返されます。


(……あれは、作った笑顔、ですね)


人を欺こうとする、もしくは、隠し事がある人がよく見せる表情。

私が嫌いな、貴族社会で見たものと同じ――

村長は考える素振りを見せて、簡潔に答えます。


「特には聞きませんな」

「……そうか。ラグナードの話もか?」

「ラグナード?何かあったのですか?」

「……知らないようだな。では、サウスノーランドについては?」

「南の貿易都市ですな。確かに行商人の姿は少なくなりましたが、何かあったのですか?」

「……それを知りたくて聞いているんだが。知らないようだな」

「いやぁ、聞きませんねぇ」


村長は本当に知らないようです。

表の顔、としてはでしょうが。

この村長は何か知っている、もしくは関わっていると考えて問題ないでしょう。

ただ、何も証拠がないなかでこれ以上問い詰めるのは得策とはいえません。

ご主人様も無理に追求をせず、お礼を言って村長と別れます。

ご主人様が寝泊まりする家を見繕ったので、私たちも同じ家の部屋を使わせてもらいます。


(……家を見る感じ、本当に空き家のようですね)


家具は一通り揃っているものの、だいぶホコリを被っています。

ご主人様に断りを入れ、まずは私たちで掃除をしてしまいます。

その最中、エレナが小声で話しかけてくる。


「……エレナさん。どう思いましたか?」

「村長のことですか?」

「……あまり信じてはいけないように感じたのですがどうでしょう」


セラさんも同じように感じていることが確認できました。

そこにルナ、フィアも加わります。


「……村長、隠して、る」

「ですね。あと、この村、農村なのに害獣への対処が見受けられないですね」

「……セラ、この村はあるのですか?」

「村の名前までは覚えていませんが、デンネ様が言っていた途中の村の可能性はあるでしょう。これ以上北に村がなければですが」


デンネ様も村の情報までは知らないようでしたので、村に対する情報がなさすぎます。

みんなで家の片付けを済ませ、ご主人様と一緒に夕食を済ませ、それぞれ部屋で休もうとした頃だった。


「……エレナ」

「はい」

「……少し出てくる。あまり遅くならないように帰るから」


私はご主人様の顔を見る。

また一人で何かをされるのだなと分かりましたが、一人の時間も必要と判断します。


「お一人で、大丈夫ですか?」

「……ああ。危険なことはしないさ。ただ、今のままでは足りないことだらけだからな」


ご主人様としても何か準備をされたいんでしょう。

でしたら、お邪魔をするのは野暮です。

サウスノーランドで何が待っているか分からない以上は、今できる準備は万全にしてもらいましょう。


「……承知しました」

「悪いな」

「いいえ」


部屋を出ようとすると、リリアがご主人様の袖を引っ張って引き留めようとします。


「……どこ行くの?」

「……大丈夫だ。これからのための準備だから」

「……一人?」

「……できれば、な」

「……分かった」


それだけ言って、リリアはそれ以上聞きませんでしたが、心配しているのは伝わったでしょう。

ご主人様が出ていかれると、リリアがデンネからもらっていた地図を広げます。

ここからはアステリアとしても作戦会議です。

外は静かで明かりといえば、家から漏れる明かりのみです。

ただ、何か起こるなら夜だろうと予想していました。

空き家があって使ってもいいと言っていたこと、家から漏れる明かりでどこにいるのか分かりやすい。


(……家の外……いますね)


ミアが軽い準備運動を初めて、外にいる不審者に対抗できる準備を整えます。

ルナは指で外に何人いるかみんなに伝えます。


(……ざっと二十人くらいですか)


村の規模的にいえば多いと判断すべきでしょう。

それがこの家を取り囲んでいる、と

私たちは何時でも迎撃する準備を整えつつ、気づかれないように作戦会議も進めます。


(……さて、何が出てくるんでしょうか)


夜の静寂を裂くように、黒い影が、家へ向かって動き始めた。

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