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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第100話

旦那様たちが見えなくなるまで、うちはその場から動けんかった。

いや、うちがやらなあかんことをきちんと胸にしまい込む時間が欲しかったんや。


「……行ってもうたな」


これでもう、旦那様の助力は受けれん。

寂しさよか、それ以上にピレネを任された責任の方が重く感じよる。


「……さて」


アズラ様が穏やかな笑みを浮かべる。

このアズラとかいう魔王、全く魔王らしくあらへん。

魔王ってもっと怖いものじゃないか?


「――私たちも動きましょうか。ゼロ様を失望させる訳にはいきませんから、ね」

「……せやな」


うちは振り返り、ここに残った甲斐道、ユウナの顔色を伺う。

二人ともちゃんと頷き返してくれよった。

アズラ様は部下の人にも声を掛けて、連れていくメンバーを選別しはじめよる。

その間に、うちら三人はピレネに行くための準備を始める。

アズラ様の方も準備が整いよって、再びピレネへ向かって歩き始める。

街道を進み、裏道からピレネに向かいよったら、大きな岩山の陰から巨大な影が姿を現した。


「……岩龍様」


うちが立ち止まり、頭を下げる。

現れたんは、この地を見守る岩龍オルディス様や。

この前通った時はおらんかったのに、久々に見る岩龍様は緊張してまう。


「アズラ……あやつはいないのか?」

「あら、オルディス。ええ、ゼロ様ならラグナードに戻りましたよ。何でも、サウスノーランドの雲行きが怪しいからって」

「……サウスノーランドか」


アズラ様は岩龍様と仲良く話しよる。

ポカンとしとると、アズラ様が昔の知り合いやと教えてくれよった。

それにしても――


(……岩龍様。サウスノーランドで言い淀みよとったな。なんか知っとるのかもしらん)


せやけど、岩龍様はそれ以上話を続けんで、うちの方に視線を向けよった。


「……そこにいるのは、元巫女か。巫女の力はもうないようだが、何しに来た?」

「……お久しぶりです、岩龍様。うちはもう巫女やないけど、街を守りたいんや。せやから戻る」


うちは祈りのポーズを取りながら応える。


「……惜しい、な。さて、その奥にいる黒髪の。主からも面白い匂いがするな。さては、"騎士"の称号を持つものかの?だいぶ残り香だが……」

「……っ!!」


指された甲斐道さんは驚いたようやど、同じくらいアズラ様も驚いとる。

甲斐道さんはその"騎士"というものがなんなのか知りたいようやったけど、岩龍様は答えんかった。

逆にアズラ様が補足してくれはった。

なんでも、岩龍様に祈り力を貸してもらうんが巫女、岩龍様のピンチに駆けつけるんが騎士らしいわ。


「まあよい……街に戻るのであれば、我が眷族も助けてやってくれ」

「叔母様が……やっとんやな?」

「それだけなら我も怒らん。この街を守護するのは我の使命だからな。だが、この魔物の群れは何かおかしい。それを解決してくれ」


岩龍様はこの異変に何か違和感を感じてるみたいや。うちも真剣な表情で頷く。


「任しいや」


その返事を聞いた岩龍様は、再び岩山の奥へ姿を消していった。

ピレネへ戻って、まず向かったんは冒険者ギルド。

入った瞬間、ナーレが出迎えてくれよった。


「皆さん、お帰りなさい」

「戻ったで!」


うちはなるたけ元気に返事をした気やったんやけど、ナーレさんもうちらの表情を見るなり察したのか、奥の部屋へ案内してくれた。

机を囲み、それぞれ椅子へ腰を下ろす。

最初に口を開いたのはアズラやった。


「では、現状の整理をしましょう。今まで調べた中で分からないことが四つあります。サクレさんの叔母様の目的」

「……ノクスとアズラ様が見つけたんやったっけ?」

「それでしたら、そちらに保管してあります」


ナーレさんはノクスとアズラ様が押収してきたものを綺麗に保管していたっぽい。


「捕らえられた冒険者の安否。これはギルドとしても問題、でしたね?」

「……依頼がないので実質的な問題はありません」


ナーレさんは寂しそうな顔をしよる。

確かに依頼が貼られる掲示板には一つも依頼が貼られてへん。

でも、ギルドは人混みでワイワイしてる方がぽい。

活気がないギルドは寂しい気持ちになる。


「そして、ロックドラゴン達の状態。これはオルディスの頼みですね。サクレさんの叔母さんが対魔物で酷使しているらいしですからね」

「……ほんまに申し訳ない」

「こちらも解決するとしたら、冒険者の解放が必要になるでしょうね。もしくは、支配権を取り戻すか」

「……叔母がどんな命令をしよったかが分かれば、対応のしようもあるかもやけど……」


やっぱり叔母様の目的を知るんが早そうな気がする。

せやけど、どう調べるか……


「最後に、黒いスーツの男」


これについてはアズラ様の顔色が悪くなる。

一度負けとる相手らしいから、うちら程度じゃ相手にならへん可能性が高い。


(……黒スーツが出てきおったら、どないしよ?)


現状は逃げるしか方法があらへん。

けど、逃げ切れるんか?

そないなことを考えよると甲斐道さんが提案してくれおった。


「アズラ様。まずは、優先順位を決めませんか?どれも並行して調べるには個々人の能力では対処できないと思います」

「……甲斐道さんの言うことも然り、ですね。手当たり次第に動いても成果は薄いかもですね。逆に、相手が強大だった場合は、各個撃破される可能性も否定できませんからね」


今のうちらはみんなして動くんが一番という話になった。

こればかりは弱いうちらが迷惑をかけとる。

でも、アズラ様はそんな雰囲気は一切出さへん。


「どれもそうやけど、うちの叔母様が関わっとんねやろ?叔母さんは居場所も分からへんけど、そこから調べるんがええんちゃう?」

「……どこを調べるのです?既に回収したメモはこちらにあって、別の場所となると社ですか?」


うちの考えに甲斐道さんが指摘する。

すると、ナーレが回収したものを机へ置く。


「あの時、ノクスとアズラ様が持ち帰られた叔母様のお部屋の書類です」


うちはあの時見た叔母のメモの紙を手に取る。

そこには、何か書いて黒く塗りつぶしたところと、読める文字は以前見た内容と変わらない文字が並んでいた。

何度読み返しても、新しい発見はない。


「……サウス、ノーランド」


ユウナがその文字だけを口にする。


「……周囲に書かれている文字からすると、確かにサウスノーランドに何かありそうですね」

「その何かが分からへん。それが分かればええんやけど」


うちはメモを机へ戻す。

アズラ様が静かに頷いて、「それなら――」と続ける。


「それを調べますか?」


しばらく沈黙が流れる。

調べるにしてもどこを?

社は基本、厳重にされとるはずや。

そない簡単に入れる場所やない。

やがて、ユウナが小さく口を開いた。


「……ロックドラゴン」


全員がユウナを見る。


「……確認するなら早い」


その一言で空気が変わった。

そうやった。

街はロックドラゴンに守られとる。

今の膠着状態を把握するんもええかもしらん。


「確認するだけなら出来そうやな」

「……魔物は正門?」

「そうですね。そこに行くまで見つからないようにしないといけませんね」


そこからはうちとナーレさんで経路を考える。

人通りの多そうな道は避けて、人目を避けながら城壁沿いを進む。

出発したのはお昼。

住人も衛兵もごはんの時間を狙って、城壁の外が見渡せる場所へ辿り着く。


「……あ」


思わず息を呑む。

城壁から少し離れた場所。

そこには数十体ものロックドラゴンが並んどる。

巨大な身体を地面へ伏せ、魔物が近付く度に立ち上がり迎撃する。

岩のような身体から強烈な攻撃が繰り出されとって、魔物たちは足止めされとる。

見ている限りやと、街へ侵入しようとする魔物は一匹たりとも通していない。


「……凄い」


甲斐道さんが思わず呟く。


「これだけの数で街を守っていたんだ」


アズラ様も静かに見つめる。


「……頑張って押しとどめていますね」


しかし、うちは苦虫を噛み潰したように歯を食いしばる。

これは――


「叔母さん……」


ロックドラゴンはようやっとる。

そんじょそこらの魔物やったら太刀打ちできひんから街を守らすんは分かる。

分かるけど――


(……こんな鈍い動きやなかった……これやと、ロックドラゴンが先に力尽きてまうやろ!明らか弱っとるやん!)


そうや。

ロックドラゴンの攻撃はこんな弱ない。

魔物の数が多すぎて、なんとか耐えとるようにしか見えへん。


「……次や。このままじゃ何も変わらへん」


うちの考えを読み取たんか、アズラ様が頷く。


「……サクレさんは気付いたのですね。この状況を変えるには、ピレネの街を守る戦力を増やさなければなりません」


サクレはゆっくり拳を握る。


「まずは冒険者のみんなを助けなあかん!」


その言葉に、誰一人異論はなかった。

次に狙う場所は、決まった。

☆祝☆100話 となりました。

最近は本業の方も忙しく、更新時間がバラバラになってしまい、申し訳ありません。

これからも継続していきますので、末永くよろしくお願い致します。

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