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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第99話

鴨志田に調べてほしいことがあったものの、非番で出勤しない日なので、書類を片付ける。

何事もなく就業時間が終わり、家路を急ぐ。


(……帰ったら、ピレネだな)


仕事中にも頭を過ぎっていた。

今、ピレネを離れてもいいのか、と。

あの三人とアズラたちを残していいのかと。

ただ、今のピレネに縛られすぎて、後手後手に動く方がラグナードやピレネのためにならない気もする。


(……予定通り、サウスノーランドに向かおう)


部屋に着くと、エレナから着信が入るが、一日書類仕事で身体が悲鳴をあげている。

腰は痛いは、肩は凝るわ……

一人で晩酌するものいいかと、エレナからの誘いには丁重に断りを入れておく。

日本での一日を終え、目を覚ますとすっかり見慣れてしまった天幕の中で目覚める。

身体を起こすと、外では既にアズラの配下たちが朝から忙しく動いていた。


「……朝か」


外へ出ると、ノクスの面々のほか、サクレ、甲斐道はすっかり元気になっており、その隣には見慣れない黒髪の女の子が佇んでいる。


「旦那様、おはようさん!」

「……おはよう。その、お隣さんは誰だ?」

「うわ。それは言ったらあかんわ。契約したやん。ユウナさんやで」


サクレは相変わらず元気だが、ユウナという名前に聞き覚えはない。

アズラがこちらに近寄ってきて、「あの黒髪の人です」と耳打ちしてくれなければ、分からなかっただろう。

何でも、ユウナと甲斐道は昨日の夜に急激に状態が良くなったようで、今はリハビリをしているようだ。


「……身体、軽い」

「ボクも。同じ感覚だよ」


二人を見る感じ、身体の調子は良さそうに見える。

リハビリもそこまで時間はかからないだろう。


(……ダンジョンでのレベルアップの影響か。これならピレネを任せても問題ないかもな)


二人を眺めていると、アズラが他には聞こえないよう小声で話しかけてくる。


「お二人とも、十分動けるようになりました。これもゼロ様のスキルですかね」

「……まだ万全ではないかもしれないがな」

「それでも十分動けていますよ。私たちもできる限り支援しますね」

「……よろしく頼む」


とりあえず、ピレネを任せる三人を呼び、ノクスにも集合してもらい、今後の再確認を行う。

まず、ラグナードにはノクスと今から戻り、アステリアとの合流を優先する。

逆に、ピレネにはサクレとアズラたちで向かってもらい、ピレネを襲っている魔物への対処と囚われている冒険者の救出、叶うなら原因の究明をしてもらう。

それぞれの役割を確認した後、ピレネ組には再度念押しをする。


「まずはサクレ。叔母のことで焦るのは厳禁だ。メンバーの命が最優先。次に街を守りきること。それでも余力があるなら、この原因の究明をしてくれ」

「分かったで。無茶はせえへん」

「……加えて、黒スーツが現れたら逃げろ。避けれる戦いなら無理しないでいい」

「……(コクン)」


サクレはこの話の最中、ふざけることなく聞いていたので問題ないだろう。


「次、アズラ。力を貸してくれてありがとう。だが、三人だけでは戦力不足なところは否めない。部下と自身を最優先で構わないが、助力をお願いする」

「ええ。こちらとしても最善を尽くしますよ」


そして、甲斐道とユウナ。


「……二人はまだ万全ではないだろうが、無理のない範囲で行動してくれ。自己犠牲はしないこと。生きることを優先。いいな?」

「……了解」

「分かりました」


これで出発の準備は整った。

ここからは暫しの別行動。

次に会うのは、日本になるか。


「……よし。それぞれ、行動開始。ノクスはラグナードまで早急に帰るぞ。そっちは任せた」

「はい!」


そこからの行動は早かった。

アズラに用意してもらった早馬を使い、ラクナードへと急ぐ。

前回ここを通ったのは一日かかった道のりを早馬のお陰で、数時間で帰ってきてしまった。

今、目の前に見えるのは、懐かしのラグナード。

道中は魔物との遭遇もなく、危険らしい危険はなかった。

ラグナードに入ると、まずはギルドへと向かう。


(……確認したいことが山ほどある。が、ギルドもサウスノーランドに偵察を派遣していたはずだ。何かしら情報を得られたらいいのだが)


考え事をしていて難しい顔をしていたからか、ユズに袖を引かれ心配されてしまった。

ユズは別のことで悩んでいると思ったのか、「大丈夫ですよ。サクレさん達は」と励まされる始末。

いちいち訂正するものユズの気持ちを拒否するようで嫌だったので、軽く返す程度に留める。

そうこうしているうちにギルドに到着した。

中に入ると、アステリアの面々が待ち構えていたかのように揃っていた。


「ご主人様、お疲れ様です」

「……ああ。ありがとう。それで、どこまで聞いているんだ?」


こうしてアステリアが揃っているということは、日本である程度情報共有を済ませている証でもある。

エレナは聞いた話を簡潔にまとめ、次の行動方針を聞いてくる。


「……と、聞いていましたのでアステリアは出発の準備が整っています」

「……分かった。それで、ギルドの諜報部隊は?」


すると、近くで聞いていたデンネが話に加わる。


「ゼロ様がピレネに向かったすく後に編成して、サウスノーランドに向かわせています。が、現状、特に期待しているような突飛な情報らしい情報はなし、ですね」

「……それは部隊は無事で連絡は来ている、ということか?」

「はい。定時連絡はきちんと来ています。サウスノーランドの状況としては、魔王ボロスの侵攻を受けていますが、居合わせた高ランク冒険者の力を借りて何とか均衡を保っているようです」

「……その高ランク冒険者の名前は?」


そんな高ランクな冒険者がいたのか、と驚きはしたものの、興味をある。


「帝国内には何人か高ランク冒険者が滞在しているので、そのうちの誰かは特定できてないです。すみません」


とりあえず、サウスノーランドが堕とされたとかの話ではないことに安心する。

が、そこに巫女率いる何かが襲来するとしたら、状況は一変してしまうだろう。

その予想が正しいかは分からないが……


「とりあえず、アステリアを連れてサウスノーランドに向かおうと思う。ラグナードにはノクスを」

「……何かあったのですね。分かりました」


物分りのいいギルド長で助かる。

だが、ラグナードが再度襲われることになる可能性だけは潰しておきたい。

特に、ピレネよりもサウスノーランドに魔王軍がいるのであれば尚更だ。


「……エレナ、ミア、リリア、セラ、ルナ、フィア」

「はい」

「出発の準備、しておいてくれ」


デンネもその言葉に対応するように、手が空いている職員に対して指示を出してくれる。

ノクスはここまでピレネの関係で見えない疲れも溜まっているだろうから、まずは疲労を取ることを優先にするように指示を出す。

ディナが「疲れてねぇよ」とブツブツ言っていたが、今は緊張感から神経が張り詰めているだけの可能性もある。

その証拠に、キューリーやらアイリ、カリンはギルドの椅子に座り、疲れが見え始めている。


「……あとのことは、ユズ、頼んだ」

「かしこまりました。でも、命だいじに、ですね」

「……そうだ。よくわかっているな」


ノクスとの一時的な別れを済ませ、アステリアと共にぎるどの用意してくれた馬に跨る。

アステリアの準備は万全だったようで、既に馬に荷物が括り付けられている。


「……随分と準備がいいな」

「事態は急を要すると判断しました。行きましょう」


これから向かうはサウスノーランド。

これで三度目の魔王軍戦。

もしかしたら横槍が入るかもしれない予測不可能な戦場。

だが――


「ご主人様。私たちも頑張ります。気負わず、行きましょう」


まさかこっちが励まされるとは……

これからサウスノーランド、ラグナード、ピレネそれぞれでの作戦が始まる。

三つの街、三つの戦場。

そして、それぞれが守るべきものの戦いは、ここからが本番だった。

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