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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第98話

ご主人様の部屋の前で、私はお弁当を両手で持ち、インターホンを押しました。

数秒後、玄関の扉が開きます。

ご主人様はいつも通りスーツ姿です。


「おはようございます、ご主人様」

「ああ、おはよう」


日本でのいつもの朝、いつものやり取り。

私は作ったお弁当を差し出します。


「本日のお弁当になります」

「ありがとう」


ご主人様は受け取りながら、小さく頷きました。

そして、ふと思い出したように口を開きます。


「……そういえば」

「はい?」

「新参者はこっちに来てるか?三人くらい……」


ご主人様としても確認しておきたかったようです。

今までの経験からすると、ご主人様と契約を結んだ者は必ず日本に転移しています。


「はい。今朝、ユズさんが確認に来られました。無事にこちらへ来られています」

「……そうか」


その一言だけでしたが、ご主人様が頭に手を当ててしまいます。

心配の種でもあったのか、大きなため息が漏れています。

この様子と先程の三人の言動から、原因はサクレさんと私は考えます。


「……分かった。ありがとう。今日は仕事だから俺は相手をしてやれない」


ご主人様が切り替えたように話し始めます。

今日もお仕事なのは知っていましたが、私たちの相手をしてあげれないことに、申し訳なさそうに苦笑します。


「悪いが、あとは任せてもいいか?特に新しく来た三人には気を配ってくれるとありがたい」

「もちろんです。ただ、甲斐道さんはこちらの人みたいなので、あまり心配いらないかもしれません」


私は朝、軽く三人とお話したことをご主人様に報告します。

ご主人様は頷いてくれ、最低限の情報共有を済ませます。


「サクレさんとユウナさんには、日本での生活を知っていただこうと思います」

「頼む。甲斐道の背格好はどうだ?幼い感じか?それとも、大人な感じか?」

「私たちと変わらないと背格好です。その部分は、本人としては諦めているようでした。それよりも自分の日本での立場を気にされていましたね」


ご主人様はチラリと腕時計を見ると、あまり時間がなかったのか、「あとは帰ってからか、メールで送ってくれ」と言われます。

確かにいつもよりも立ち話が過ぎました。

私はご主人様と同じエレベーターに乗り、一緒に玄関口まで見送ります。


「……それじゃ行ってくる。」

「はい」

「……くれぐれも無理だけはさせるな」

「承知しております」


ご主人様を見送りつつ、姿が見えなくなると自分の家に戻ります。

帰りにノクスの部屋に寄って、全員に声掛けをすべきか、それとも、アステリアだけで三人の相手をするか考えます。


(……甲斐道さんがいることで、日本での生活には早めに対応できそうですね)


とりあえず、アステリアの拠点に戻ってから、今日の行動を決めるとします。

アストラディアに戻れば作戦でまた戦いの日々になることでしょう。

それであれば――


(一日のんびりしても問題なさそうですね。今日は、新しい仲間とゆっくり話しましょう)


リビングへ戻ると、既に全員が集まっていました。

ユズが気を利かせたのか、アステリアとノクス、そして昨日新しく加わった三人が揃っていました。


「お!エレナさん。おかえり。旦那様は行ってもうたんか?」

「はい。お仕事へ向かわれました」

「そうなんや。仕事って大変やな。毎日、こんな大変な思いして、仕事してくるやろ?」


サクレさんはテレビに一瞬映った満員電車を指して言います。

私たちも満員電車は経験がないので、軽い同意だけ返します。


「慣れてしまうものなんですよ。仕事をしないと生活できませんから。ご主人様はどんなお仕事を?」


甲斐道さんは経験があるのか、補足の説明をしてくれました。


「……確か、警察と伺っています。アストラディアでいうところの衛兵ですかね」

「……前にご主人様の仕事に付き合ったことある。大変そうだった」


私は甲斐道さんの疑問に答えつつ、サクレさんやユウナさんにも分かる例えをします。

加えて、ミアも昔の話を付け加えますが、何とも説明不足です。


「さて、本日の予定ですが――」


そのような話をしていても埒が明かないので、話を進めてしまいます。


「それでは、改めて皆さんのご紹介しましょう」


自然と円になるように座ります。

まずはアステリアからそれぞれ自己紹介を済ませ、ノクスもそれに続きます。

それぞれの境遇やご主人様に出会った経緯も簡単ではありますが各々紹介してくれました。


(……これからは同じご主人様の仲間。仲良くなることは第一前提ですね)


一回りしたところで、新しいメンバーの紹介タイムとなります。

まず最初に立ち上がったのはサクレさんでした。


「うちはサクレ!ノクスのメンバーは知ってるんやけど元巫女や。ピレネで色々巻き込まれてもうて、能力の大半を失ってもうた。けど、旦那様に助けてもろうて。よろしゅう」


ディナさんが苦笑します。


「まだ旦那様って言ってんのか……ライバルに宣戦布告か?」

「やろな。けど、負けへんで」

「「……」」


サクレさんは笑って流します。

その様子に部屋の空気も自然と和らぎました。

ま、私とセラさんはその宣戦布告をきちんと受け取りましたが……

続いて、甲斐道さん。


「ボクは甲斐道あさりです。元々は日本で働いていました。元教師です」

「……甲斐道さん、よかったです」

「アイリちゃん……これからよろしくね。そういえば、みなさん、ゼロ様のことをご主人様って呼ぶんですね」


その事については、ユズさんが説明してくれました。

こちらの世界では"小澤"、あちらの世界では"ゼロ"と名乗っているので、呼び方を変えるのも混乱してしまうので、"ご主人様"で統一していると。


「そういうことですか。あ、でも、この世界でのことで聞きたいことがあったら教えますから、気軽に聞いてください」

「……甲斐道さんは、ルクス様、知ってる?」


甲斐道さんが自己紹介を終えようとしたところで、リリアがすかさず質問します。

私たちが知っている異世界への行き方は、ルクス様が持っている本のみです。

他の邪道な方法も存在すると聞きましたが、この人に限ってその方法を使っているとは思えませんでした。


「……ルクス、様?」

「……教会、管理、してる」

「身に覚えがないですね……」


甲斐道さんは昔を思い出していたようですが、ルナの言葉にも引っかかる部分はなかったようです。

と、なると、本以外の転移が存在することになりますが――


「本とか、もらいませんでした?」

「……本?もしかして、生徒から没収した本かな?確かにあの本を没収した日に転移したかも、だけど」


どうやら、他人から渡された本が切っ掛けだったようです。

それで、あちらの世界に転移して、一人奮闘していたと――

その道中、アイリさんと出会い、その後魔王軍に捕まり、実験の材料として扱われていたとのこと。


「……もう、お身体は大丈夫ですか?」

「何故か、ご主人様と出会った夜には、だいぶ身体も動かせるようになってて。これもご主人様の能力なの?」

「……それについては、また別途説明があると思いますが、概ねそうです」

「ご主人様って凄いのね」


ご主人様の能力はそれだけではないのですが、それはおいおい知ることになるでしょう。

今は、甲斐道さんが日本でこれからどうしたいかも確認が必要です。


「……私、若返っているみたいだから。今までの甲斐道あさりとしては生きていけないでしょうね。それでも、色々調べたいことはあるのだけど」


それは主に前に住んでいた場所であったり、持ち物であったりとのこと。

私としても、その"本"には興味があります。


(……それはいずれ見つけたいものですね)


最後にユウナさん。


「……ユウナです」


ペコリとお辞儀をしたと思ったら、自己紹介はそれだけのようです。

淡白すぎる自己紹介だったため、各々でユウナさんに質問します。

とりあえず分かったのは、転移者の血を引き、その転移者から剣の指導を受けていたので、ある程度のオリジナル剣技が使えるということ。

そして、転移者は既に亡くなっているということ。


「……その方からも話を伺ってみたかったですね」

「何を聞きたかったんの?」

「それは――」


私が一つ疑問に思っていることは、転移者が現れる場所に何か特徴はないか、というもの。

ご主人様とはベルナスで出会いましたが、甲斐道さんは帝国のピレネ付近の村。

他にもアストラディアに転移者がいるとしたら、探すための手がかりになると思っていたのです。


「……私には分からないわね」


甲斐道さんは他の転移者の話すら聞いたことがなかったとのこと。

こうなると、一度ルクス様に話を聞きに行くことも検討しなければなりません。


(とりあえず、一通り、終わりましたね)


「さて、では、お出かけしながら、この世界を紹介しますね」


皆さんを外に連れ出しつつ、時間があればルクス様を尋ねてもいいかと予定を立てるのでした。

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