第11話
地球の保証された道と違い、凸凹した石畳の道。
その道を行き交う人々。
道の凸凹に足を取られる荷車の軋む音。
その道を端は露店が並び、威勢のいい呼び込みの声が響く。
「……」
思っていた以上に、人が多い。
建物も密集している。
露店の並び方、道幅、人の流れ。
どれを見ても、小さな村ではない。
(……地方都市、だな)
目的もなく、通りを進む。
露店が並ぶ一角。
野菜。干し肉。布。
値段を巡って言い合う声。
子どもが走り回り、母親が怒鳴る。
生活の匂いがある。
その一方で――通りの端。
武装した男たちが、静かに集まっている。
剣。槍。革鎧。
(……あっちは仕事中か)
視線を外す。
さらに歩くと通りが広くなる。
建物も変わる。
石造り。装飾のある扉。
行き交う人間の服も違う。
「……いい生地そうだな」
富裕層。
護衛を連れた者もいる。
(……分かれてるな。身分制度がありそうか?)
さらに奥にある路地に入る。
空気が変わる。
今まで見てきた建物よりも明らかに古い。
壁も雨や泥以外に、長年の仕様による油汚れ等で汚れている。
座り込む男。痩せた女。
視線だけが、こちらを追う。
(……下もある、か)
そのまま抜ける。
ふと、甘い匂いが鼻をかすめる。
横を見る。
薄暗い建物。
入口に立つ女と視線が合う。
「……どう?」
誘うような声。
咄嗟に視線を外す。
(……そういう場所もある、か)
こういった場所は必要悪と分かっていても近づきたくない。
早足でその場から離れ、さらに奥。
鎖の音。
足が、わずかに止まる。
柵で囲われた一角。
中にいるのは、人。
首輪。拘束具。値札。
「……」
並べられている。
商品として。
(……こういうのも、あるか)
眉をわずかにひそめる。
視線を流す。
一瞬、目が合う。
少女。
さらに二人。
三人。
妙に、印象に残る。
感情のない目だ。
だが、わずかに何かを諦めていない光があった。
「――いらっしゃいませ」
声がかかる。
店の男。たぶん奴隷商人というものだろう。
ラノベでよく描かれる、小太りで優しそうな風貌だ。
「どういった奴隷をご所望で?」
「……見てただけだ」
「相場だけでもどうです?」
「……聞くだけだ」
三人を示す。
「一人当たり、銀貨三枚から十枚ですかね」
「銅貨との違いは?」
「銅貨百枚で銀貨一枚です」
(三百から千……)
「三人なら?」
「お客様は両脚になりそうですので、多少サービスして、銀貨二十枚前後で、いかがでしょう?」
「……そうか」
少女と目が合う。
逸らさない。
「……また来る」
背を向ける。
(高いのか安いのか分からん……まずは稼ぐ手段だな)
足元を見る。
裸足。
「……靴も必要か」
露店の並ぶ通りに戻り適当に店を探す。
丈夫そうな革靴っぽい靴が銅貨八枚。
(日本で革靴買ったら1万円前後だよな…)
「……まとめて稼ぐか」
視線を巡らせると、それらしい建物が目に入る。
人の出入りが激しい建物。
武装した者が多い。
「……冒険者ギルド」
扉を押し開ける。
中は騒がしい。
酒。笑い声。怒鳴り声。
壁一面の依頼書。
一瞬、視線が集まる。
スーツ姿。裸足。
だがすぐに逸れる。
カウンターへ向かう。
「いらっしゃいませ」
柔らかい声。
受付の女性が微笑む。
「初めてのご利用でしょうか?」
「ああ。仕事を探してる」
「でしたら、まずは登録が必要になります」
「金は?」
「いえ、登録自体に費用はかかりません」
軽く首を振る。
「ただし、簡単な試験があります」
「試験?」
「はい。実力確認です」
「危険な依頼を避けるためのものですので」
「……なるほどな」
「受けますか?」
「お願いします」
「では、準備をしますね」
にこりと微笑む。
「本日は簡易試験になりますので、すぐにご案内できます」
「助かる」
頷く。
(……ちょうどいい)
金。経験。
まとめて手に入る。
「……やることは決まったな」
小さく呟く。
視線を上げる。
試験場へ向かう扉が、静かに開いた。
2026.04.04 文章を修正しました
2026.04.26 文章を修正しました




