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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第94話

野営地へ運び込まれた黒髪は、そのまま医療用の天幕へと運ばれた。

アズラの配下たちが慌ただしく動く。

極度の脱水、そして疲労。

ラグナードからの道のりを無事に歩いてきたのが不思議と言われても仕方がない状態だった。


「……こいつがエレナが言っていたやつか」


思わず呟く。

アズラが静かに頷いた。


「この方をご存知なのですか?」

「……ラグナードが数週間前にボロスの侵攻を受けたのは話しただろ?その時に救ったやつの一人らしい」

「そうですか。相当な距離を歩いてきたのですね」


馬車で二日の距離を歩いて、しかも、体調も万全でない状態で歩いていたのだ。

もし、遭遇せずにそのままピレネへ辿り着いていたとしたら、モンスターにやられていただろう。

ここまで無事に辿り着いただけでも奇跡と言える。

ここまでの街道も安全ではない。

低級な魔物はいたことだろう。


「……旦那様」


隣でサクレが小声で話しかけてくる。


「……なんだ?」

「あの、黒髪さん、待ってたんやろ?あの人がうちのパーティメンバーなん?」

「……候補ではあるな」

「そうなんや。うちの旦那様って紹介せな」

「……そもそも、そんな関係ではない」

「即答やん。ま、ええわ」


ノクスのメンバーはとりあえずアズラの部下のお手伝いが終わったのか、こちらに戻ってきた。

サクレとのやり取りを聞いて、ディナが吹き出した。


「サクレ、とりあえず頑張れよ!仲間割れだけはするなよ」

「せえへん。そもそも、見たら戦い慣れてるように見えるしな。頼りがいがあるわ」

「だな。結構、経験していそうだ」


そんなやり取りをしている間にも治療は続く。

しかし、ノクスの中に一人だけ、アイリだけが暗い顔のまま静かにしている。

まずはアズラ本人から話を聞かなければ進まない。

意識はあったようなので、まずは普通に会話できるまで数時間待つこととなった。

黒髪は助けられた時の記憶が残っていたのか、薄暗い天幕の中で、きちんと療養を受けていた。

アズラからは長時間の会話は身体に負担になるから、短時間でと念を押されている。


「……少しは気分が優れてきたか?」

「ありがとうございます。少しは落ち着きました」

「そうか。今の現状は理解出来ているか?」

「意識ははっきりとしています。僕を助けれくれたのは魔王、なんですね。ありがとうございます」


黒髪はまず、アズラに対してきちんとお礼をした。

アズラは「気にしないで」と手を振ってかえす。


「俺はゼロ。ベルナスからラグナードの危険をしり駆けつけた冒険者で、今はピレネの対処に来ていた」

「……そうなんですね……同じ黒髪……」

「髪か……なら、単刀直入に聞こう。名前は言えるか?」


黒髪は黙って周囲を見回す。

何かを警戒しているように見えるが、アイリを顔を見つけ一瞬視線が止まったように思える。

すると、黒髪は意を決して話してくれた。


「僕は、甲斐道あさり、です」

「……甲斐道」

「……信じてもらえるか分からないですけど、日本ってところから来ました」


言われた名前を理解するのに数秒を要した。

目の前にいるのが『甲斐道あさり』?

人のことは言えないが、話では女性だったはずだ。

しかも、れっきとした社会人……

しかし、目の前にいるのはどう見ても中学生ぐらいの凹凸のない身体のヒューマン……


「……本当に甲斐道あさりなのか?」

「はい?」

「いや、こちらも素性を明かそう。俺は小澤。警視庁捜査一課に所属する刑事だ。君のことは調べていたのだが、女性だったと思うのだが……」

「……こちらの世界に来て、幼くなってしまったんです。そこにいるアイリとは、昔馴染みというか知り合いなので、分かってくれると思います」


アイリの方を見ると、口の前を手で覆い、また会えたことに感動しているように見える。


「カイドウさんなんですね?」

「久しぶり、アイリ」

「アイリ、この人が甲斐道で間違いないんだな?」

「はい。その壁に立てかけてある剣。それが何よりの証拠です」


アイリが青い剣を指さして説明する。

甲斐道が寝ているベットの脇には青色の剣が鎮座されている。

見るからに凄そうな剣ではある。


「あれは僕の剣なんです。スキルっていうか、なんて言うか。他の人には扱えないみたいですが」

「……そうか」

「それで、あの。僕はどうなるのでしょうか?」


甲斐道は日本人に会えたことに安心してきたのか、これからどうなるのか、怯えることなく聞いてくる。

色々と想定外の状況ではあるが、話を進めていくしかない。


「……俺はこれからラグナードに戻って、サウスノーランドという街に向かう必要がある。が、ピレネも未だ危険な状態だ。そこで、力を貸してほしい」

「……なるほど」

「……俺の能力には仲間を強くするスキルもある。こちらの世界に来てから酷い目に合ってきたと思う。だが、仲間になってくれないだろうか?」


精一杯の頭を下げてお願いするほかない。

甲斐道がどういう判断を下すにしても、まずは誠心誠意を見せなければ……

すると、甲斐道は少しだけ考え、ボソリと言葉を吐き出す。


「……アイリちゃんは、小澤さんの仲間ですか?」

「そうだ」

「……アイリちゃん、大丈夫?」

「うん!今はご主人様に出会ってから、戦える力ももらって、冒険者として活動してるよ」

「そっか」


静かな声だった。

言葉の端々から、精神年齢は社会人だなと感じる部分がある。

ずっと頭を下げ続けていると、甲斐道は「頭をあげてください」と言ってきた。


「仲間に、なります。が、僕は――」

「能力、スキルを奪われているんだろう?」

「……知っていましたか」

「詳しいことは別途話すが、そこは大丈夫だ」

「あと、アイリちゃんの手の甲。奴隷紋に見えるのですが……」

「……俺のスキルは仲間を強く、スキルを強化することもできる。が、指示に従えない危ないヤツを仲間にすると、世界に影響を与えかねないからな。奴隷契約で規制している」


よく見ているものだ。

目で得られる情報を少しずつ整理し、現状の理解を深めようとしている。

それだけでも対応力が優れているのが分かる。


「……分かりました。小澤さんを信じます。僕に力をください」

「……奴隷のこともいいのか?」

「もう僕はこっちの世界の住人です。これから仕事を探そうにも、今のままじゃ死ぬだけです。なら、守ってくれる"ご主人様"がいるなら、頼るべきでしょ?」

「……今、わざと"ご主人様"を強調したな?」


甲斐道はわざとらしく舌を出して笑っている。

そういったところは社会人ぽくない。

これでピレネを守るためのパーティもある程度は目処がたったと言っていい。

安心していると、アズラがニコニコとしながら、肩に手を置いてきた。


「話がまとまったようですね。とはいえ、甲斐道さんのお身体はまだ休養が必要なので、そろそろ」

「……分かった」

「すみません。それで?僕は何をすればいいの?」


甲斐道との話はひとまず終わったものの、これ以上は一度別日にした方がいいと判断された。

とはいえ、甲斐道との奴隷契約だけは早々にしておきたいのと、甲斐道としても聞いておきたいことがあるので、それだけ済まさせてくれと頼み込む。

アズラはやれやれ、と言った雰囲気を出されたが、快く引き受けてくれたので、先に甲斐道への返答してしまう。


「……アイリは既にノクスというパーティメンバーなんだ。だから、甲斐道には、このサクレのパーティに加入してもらい、ピレネの救助にあたってもらいたい」

「……サクレさんの?」

「さっき説明したように、それぞれが別行動になる。ピレネにはアズラも残ってもらう。決して見捨てる訳ではない。が、そんな感じのスキルだと今は思っておいてくれ。スキルの詳細はまた別途時間を用意する。だが、これ以上ここで話をしているというアズラに怒られる……」

「そのようですね。では、契約を済ませてしまいましょう。これからお願いしますね、ご主人様」


契約を済ませると、アズラは病人なんだからご退場願いますと言わんばかりに天幕から追い出される。

夜空を見上げると既に日は暮れ、もう時期夜になる時間のようだ。


「ご主人様。で、どうするだい?」

「……何がだ?」

「三人のレベルアップは必須事項です。何か案があるのですか?」


ディナとユズから質問されてしまう。

しかし、ここでダンジョンの話をすると着いてくると言いかねないので、ノクスには周辺の魔物を倒しておくように命令を出す。


「ご主人様は一人で何かをする気なんですね?」


別れ際、キューリーに茶化されたが、それでも従ってくれるところを見ると、信用されているようだ。

アイリ、サーシャ、カリンからも小言を言われ、微妙な反応しか返すことができない。

ただ、それでも――


(――メンバーは最低限。あとは、レベルアップを)


ピレネを守るための戦力は確実に揃い始めていた。

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