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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第95話

ノクスと別れた後、一人、雑木林のほうへと向かう。

誰かにダンジョンのことがバレても問題ないとは思うが、【ゼロ】を最大限使っての攻略となると、やはりソロで潜るのが一番効率がいい。

と、雑木林に向かう途中で、アズラから声をかけられた。


「ゼロ様。どこか行かれるのですか?」

「……少し、な」

「ふふふ。嘘が下手なのですね。今のゼロ様、張り詰めた雰囲気が纏わりついてますよ?」

「……今後、気を付ける」

「ですね。で、どこに行かれるので?」


ここでアズラに疑われるのは得策ではないし、ルクスの知り合いでもあるので話しても問題ないだろう。

アズラにはルクスからもらった”追憶のダンジョンの鍵”についてを話す。

すると、アズラはクスクスと笑いながら、「確かにそんなものを作ってましたね」と懐かしんでいた。


「私も多少は関わっているのですよ」

「……そうなのか。とりあえず、行ってくるからその間はよろしく頼む」

「分かりました。十分気を付けて挑んでくださいね。あ、そうそう。今は何階層まで行っているのですか?」

「……最高は四十一階層だったか?」

「ネロの部屋まで。それならゼロ様も魔王幹部クラスまでの実力はお持ちですね」


そう言いながら、アズラはどこからか酒とクッキーと取り出した。

「こちら、お持ちください」と渡されたが、何のことやらと呆然としていると、「ケーヒスとネロに渡してください」とのことらしい。

物を受け取ると、アズラは天幕のほうに歩き始めてしまう。


(……さて、行こうか)


周りに誰もいないことを確認し、鍵を取り出し回すと、現れるのは何度も見たダンジョンの入り口。

追憶のダンジョン。

今回も、また第一階層からの再出発だ。

序盤は特に問題がないため、それこそ【ゼロ】で一掃しながら先を急ぐ。

今回の目的は、サクレ、黒髪、甲斐道の三人の底上げ。

しかも、バランス的に見れば、黒髪と甲斐道は前線のため、サクレは必然的に後方となり、支援はもちろんのこと、回復や遊撃も努めなければならない。

サクレにかかる負担は大きなものになっている以上、前線のメンバーもできる限り大立ち回りできるぐらいの実力はほしいところだ。


(……となると、最低限、中級職にはしておきたいか。なら、ネロぐらいまでは行かないと、だな)


加えて、ダンジョンを進みながらアステリアとノクスのステータスも確認しておく。

ピレネにはアズラもいてくれるため、最悪の事態までは想定しなくても問題ないと考えているが、サウスノーランド、そして、ラグナードは強力な援軍は期待できない。


(……アステリアは問題ないと思うが、ノクスはもう少し底上げが必要だよな)


自身のスキルも確認し、できる準備を整えておく。

ステータスが全てと思っていないが、圧倒的な実力差の前でははなす術なく負けてしまう。


(……よし。一気に進むか)


そこからは迷いなくダンジョンの攻略を始める。

現れる魔物の種類は変わりなく、ただ油断することもなく進む。

それもーー


「【ゼロ】」


それだけで終わる。

単純な作業のようだが、階層を進むごとに魔物の強さも上がり、しかも連係プレイも見られるようになってくる。

油断することは命取り。

それを再度思い出させてくれる、そういった意味では戦いの原点となっている場所だ。

そして、目の前には四十階層の扉。


(……今回の疲労度も問題ないな。さて、久々の再開だな)


扉を開けるとそこには三つ首の蛇が威風堂々と待ち構えている。

来ることが分かっていたのか、開口一番、ケーヒスから挨拶された。


「よく来たな。久々ではないか。で、酒はあるのだろうな?」

「……ああ。今回は持ってきたよ」


アズラから手渡された酒を取り出し、ケーヒスに差し出す。

すると、ケーヒスは人型に変わり、嬉しそうにその酒を受け取る。


「うむ。今回は忘れていなかったようだな。と、言いたいところだが、これはアズラから渡すよう言われたものであろう?」

「……ダメか?」

「いや。この酒は我が好きな種類だからな。知っているのは、ルクス様配下の者か、我を知っている者に限られる。この酒に残っている魔力の残滓を辿れば、自ずと見れてくるものじゃ」


そういうとケーヒスは酒の飲み口の部分を手刀で切り、いつの間にか取り出したグラスに注いで飲み始める。

こちらとしてはさっさと先に進みたいところだが、飲み終わるのを待つしかなさそうだ。

すると、ケーヒスが一杯飲んだ後、こちらを見て首を傾げている。


「なぜまだここにいるのだ?」

「……いや、戦うんじゃ」

「前にも言ったであろう?お主はクリアじゃと。今回は忘れず酒も持ってきておるからな。フリーパスじゃ。我は酒を楽しみたいのでの。さっさと先に行くがよい」

「……いや、その。経験値とかは」

「そんなもん、辿り着いた時点で与えられておる。それとも、我と話したいことでもあるのかの?雰囲気的には急いでいるように感じるのじゃがな」


予想外な展開ではあったものの、ステータスを見ると確かに経験値はもらっているようだ。

頭に直接聞こえてくる言葉がいつしか面倒くさくなり、ラグナード戦辺りから聞こえないようにならないかと思っていたら、いつの間にか聞こえなくなっていた。

いちいち確認することになったのも、また面倒である。


「……なら、行かせてもらう」

「おう。次も酒を頼むぞ。できれば強いやつがよい」

「……分かった」


ケーヒスに手を振りながら次の階層に続く扉を開ける。

階段を下るとそこには更に扉が待ち構えている。


(……今度はネロ、だな。さっきはラッキーだったが、今回はどうなるか)


扉を開けると、そこは前と変わらない幻想的な景色が広がっている。

中央にある枯れ木に、月の光が照らされて、その根元には大柄な黒猫。

しかし、入ってきたところを一瞥しただけで、ネロは木の根元から動こうとしない。

しょうがなく木の根元まで歩くと、開口一番、ケーヒス同様に「甘いものは?」と問われた。


「……持ってきたぞ。これでいいか?」


アズラから預かったクッキーを渡すと、ネロも人型となり、指をパチンと鳴らすといつの間にかお茶会の用意が現れる。

受け取ったクッキーのバスケットを手に、ネロは嬉しそうに席に座り、飲み物片手にクッキーを楽しみ始める。


「うん。やっぱり甘いものはおいしいよね」

「……ネロ。お前って人型だと女性なんだな」

「え~、なんだと思ってたの?れっきとした女の子だよ?まあ、中性的ってルクス様にも言われてたけどさ。変装するにしても、忍び込むにしても、何にでも化けれるからやりやすいけどね」

「……で、今回は戦うのか?」

「ううん。必要ないかな。すでに経験値はあげてるよ。身体が鈍ってそうには見えないし、次に行っちゃおうよ」

「……そうか。いや、ありがとう」


ネロのところもフリーパスとなってしまった。

気合を入れて臨んだだけに、ここまで肩透かしを食らうと残念な気持ちになる。

しかし、次のネロの言葉に、今一度気を引き締められる。


「ケーヒスと僕を戦闘なしで突破だから、四十二階層は戦ってね。一応、事前情報としてはーー」

「……予定ならここまでだったんだが」

「う~ん。それでもいいけど、今の君に必要そうな経験になると思うよ。相手はマルセル。ルスク様の十指の中でも一番のオールラウンダー」

「……マルセル?」

「そ。君が戦ったことがないタイプ。元ヒューマン。さて、君はどう戦うのかな?」


ネロが楽しそうに笑っている。

しかし、黒スーツの件がある以上考えていたことでもある。

人族相手にどう戦うのかーー


(……本当にこのダンジョンは、色々と学ばせてくれる)


そんなことを思いながら、ネロに別れを告げ、扉を開けた。



ゼロ様が出発してから私は野営地でのんびりすごしていました。

サクレさんは私の部下のお仕事を手伝ってくれ、意欲的に働いてくれています。

するとーー


「……え?」


サクレさんがいきなり立ち止まります。

何があったのか聞き耳を立てていると、なんでも身体がどんどん軽くなっている感覚がするとのこと。


(ゼロ様ですね。なるほど。本当に規格外ですね。距離の概念すら無視して経験値を仲間に分けえ与えているのですね)


彼から聞いた”追憶のダンジョン”。

私の妹の夫であるルクスが作った、魔法のダンジョン。


(こういったことを予見していたのか、さすがはルクスですね)


彼は色々なものをこの世界に残しています。

その一つが、魔族の中でも人族と共に暮らそうとする穏健派。

ルクスがその考えを唱える前は、人族と魔族はいがみ合うばかりでした。

それを変えてくれたのが、ルクス。


(さて、彼はこの世界に何をもたらしてくれるのでしょうね……)


私の部下が治療中の黒髪さんたちの様子が急激によくなったと報告しにきました。

これから忙しくなりそうです。

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