第五話:クスイの朝
「チュンチュン・・・」
鳥のさえずりが聞こえる。仰向けに寝転がったまま瞼を開くと
「あれ~?」
そこには見たことのない天井があった。
数秒間見つめた後、自身が十八を迎えてゼイルと共に旅に出たことを思い出す。
「ゼイルさんの剣術、綺麗だったなぁ~」
メニイは上半身だけ起こして、トロンとした顔で呟く。
’トンッ トンッ ’
ノックされたドアの方にゆっくり顔を向けると返事をする。
「は~い・・・どなたですか~?」
「俺、ゼイルだけど。ごめん、まだ寝てた?」
そう尋ねられて、一気に彼女の目が覚める。
「あっ、ごめんなさい。すぐに用意して一階に行きます!」
「ああ、ゆっくりで大丈夫だよ。じゃあ、一階で待ってるね」
ゼイルはドア越しにそう答える。
そしてドアから遠ざかっていく足音が聞こえた。
メニイは溜息を吐いて時計を見ると、短針が七と八の間の位置にあった。
「起きるの遅かったかな?」
そう言うとベットから降りて着替え始めた。
十五分後。
「お待たせしました!・・・おはようございます」
メニイは昨日夕食を食べた席でくつろいでいたゼイルに、少し申し訳なさそうに挨拶する。
「うん、おはよう」
ゼイルは笑顔で返す。
「昨日は一日中歩いたから疲れたでしょ?」
「・・・でもそれは、ゼイルさんも一緒だし・・・」
そう言うと彼女は少し俯く。
するとゼイルは少し明るい声で
「いや、そこは俺は・・・学院でかなりしごかれてるからさ。前衛の戦士で、体力自慢だし。まあ今日はゆっくりでいいんじゃない?」
「・・・はい、ありがとうございます。でもこれからは体力もつけないといけませんね」
メニイはそう言うと両手でガッツポーズをとり、’フンッ ’っと鼻から短く息を吐いた。
「そうだね。でも頑張り過ぎてマッチョにならないようにしないとね?」
ゼイルはおどけて言う。
「もう、ゼイルさんたら」
彼女はそう言ったが、ゼイルの心の温かさを感じた。
二人はトーストと卵焼きにサラダというシンプルな朝食を済ませると
「今日も仕事の依頼を受けましょうか?」
「そうだね。店主に聞いてみよう」
頷き合ってカウンターへ向かう。
「マスター、ビギナー冒険者用の仕事を紹介して欲しいんだけど」
ゼイルはさっそく店主に声を掛ける。
「ビギナー冒険者用ね? ちょっと待ってて」
そういうと依頼表台帳を開いた。
「荷物運びにモンスターの討伐、あと明日ここを発つ商人の護衛があるけど、どれにする?」
「荷物運びは今回経験したし、モンスターの討伐なんてどうかな?」
ゼイルはメニイにそう尋ねる。
「そうですね。護衛もいいですが、明日ですからね」
メニイはそう言うと、女店主に質問した。
「モンスターの討伐依頼について、内容を教えていただけませんか?」
「この村から西に歩いて一時間程の所に洞窟があって、そこがゴブリンの巣になっているみたいでね。村はずれの農家も被害に遭っていて、困ってるみたいね。数は十数匹のようだね」
「ゴブリン十数匹か。まあ俺とメニイなら問題ない数だね」
「そうですね。じゃあ、依頼受けましょうか?」
そう言ってメニイは店主に冒険者証を提示する。
「マスター、モンスターの討伐依頼の受注手続きをお願いします」
「モンスター討伐の受付ね。・・・はいっ、じゃあお願いね。まだビギナーなんだから気を付けるんだよ」
酒場の店主に見送られながら二人の初心冒険者はモンスター討伐へと向かった。
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