ハープという名の女性
「驚かせてしまいましたね。」
女性はそう言って申し訳なさそうに頭を下げた。
「あ、あの。なぜ貴方は私の名前を?」
「待っていたからです。」
「え、えーっと??」
質問の答えになっていないような事を言われて戸惑いを隠せない。
しかし、目覚めてから人間に会ったのは初めてだったため、この機会を逃すわけにはいかないと躍起になった。
私は意を決して尋ねてみる。
「あ、あの。私どうやら迷子、いや遭難というべきか、、兎にも角にも自分がいまどこにいるのか皆目検討もつかなくて、、」
「不安に感じるのも無理はありません。これから順を追って説明いたしますね。」
そう言って女性は話始める。
まず、、。そう言って女性は一呼吸置くと衝撃の事実を告げた。
「貴方は、雷に打たれて亡くなりました。」
「、、、え?」
思考が止まる。
そんな冗談言ってと笑い飛ばしたかったが、非現実的な現状が、女性の目が事実だと述べている気がした。
しかし、急に死んだなどと言われても、はいそうですかと納得できるわけがない。
「なんでですか?今だってこうして生きてて、、、」
「お忘れですか?貴方は医者にもう声が出せなくなるかもしれないと告げられたあの日、
雷に打たれて、、」
「いやっ!!」
突然全身に鋭い痛みが駆け抜けた。
私は思わず声を上げる。
痛くて頭が働かないはずなのに、私の記憶は鮮明に思い起こされていった。
そうだ、私はあの日、、。
「思い出したようですね」
女性は静かに告げた。
私は体を動かさぬまま、空を見上げてつぶやいた。
「私、最後まで迷惑かけちゃったんだ。両親になんの恩返しもできていないのに」
「残される者はもちろん、残していく方も辛いですよね」
女性はそう言い残して遠くを見つめた。その目は同情からか少し伏せられている。
「あ、あの。私もう戻れないんですか?あの場所に。」
思わず口走っていたそれに私自身が驚かされる。
生きる意味を失ったあの場所にもう一度戻りたいと思うなんて。
未練はないはずだった。だから生まれてこなければなんて口走った。
なのに、優しい両親言葉が恋しく。頭から離れない。
ありがとうもさよならも何も言えてない、、。
「、、ごめんなさい。それは不可能です。」
鼻の奥がツンと痛み涙が溢れ落ちる。
わかっていたことなのに。悔しくて、やるせなくて。
不甲斐なく感じた。
「百合さん、、」
女性は深く息を吸い、意を決して言った。
「貴方が大切に思っている両親は来年火事によって命を落とします。ですがもし、貴方がこれからいうことに了承してくださるのであれば、私はその未来を書き換えることができる。」
そう告げる女性の手は震えていた。
「やらせてください!」
考えるより先に言葉が出てきた。
私を育ててくれた両親に恩返しをしたい。
例えそこに私はいなかったとしても。
「恩にきます、、、。」
それから女性は話始めた。
まず、目の前にいる女性の名はハープと言うらしい。
ハープは元々アクアディーヴァという王国の住民だったのだが、魔王との戦いに敗れ戦死したらしい。
それから、この場所で一人過ごしていたら私に会ったという。
なぜ一人この場所で過ごしていたのかとか、先ほど告げたハープの待っていたからという言葉が気になったが、彼女は言及する気はないようで結局それらは分からずじまいだった。
そしてハープの話は続き、、、
「、、、つまり、私に異性界に行ってほしいと。そこで歌を歌って。傷を癒したり、敵を倒したり、住民を守る結界を作ってほしいと。」
「はい」
「しかもその世界には妖精がいて、魔法が使えると、、、、
どこのファンタジー漫画ですか??」
「ふふ、確かにファンタジー漫画みたいですね」
私の表現が可笑しかったのかハープはコロコロと笑った。
しかし、しばらくすると再び真剣な眼差しで私に問う。
「世界を救ってくれますか?」
と。




