不思議な空間
、、、、。
、、、ハッ!
私、何してたんだっけ、、?
気づけば身ひとつでこの場所にいた。
しまった。スマホを持っていない。現代の悪い癖だ。
スマホに頼りっぱなしで、スマホがないと現在地すらわからない。
せめて何をしていたのかさえ分かれば対応できたかもしれないのに、、、。
「まあ、考えても分からないのなら仕方がない。散策してみるか」
運がよければ人に道を聞けるかもしれない。
そう思ったのだがその期待はすぐに裏切られる。
進めど進めど、同じ景色が続いている。
それなりに時間も経ったはずだが、太陽は昇ったままで降ちる気配もない。
「流石に疲れた」
歌手ということもありそれなりに体力トレーニングは行っており、体力には自信があったのだが、
見慣れない場所ということもあり緊張しているのかいつもより疲れるのが早い気がした。
ちょっと休憩と近くにある岩に腰を下ろす。
「改めて見てみるといい景色だな。」
そう呟いて辺りを見渡した。
晴天で目の前に広がる湖はそんな空を反射して青く煌いている。
草木も生い茂っていて。百合の花がちらほらと見える。
これだけ綺麗な場所だと、絶景スポットとかで紹介されてそうだが私の記憶にはなかった。
「まるで御伽話に迷い込んだみたいだな。あの木の後ろからプリンセスが出てきて歌い出したりしてね。、、なんて」
程よい温度の風が吹いていて。辺りの草木を優しく撫でた。
そしてその風に乗って聞こえてきた気がした。
ついに幻聴が現れ始めたか。
「ーーー♪」
どうやら本当に聞こえるようだ。
微かに女性の声が聞こえる。
透き通るように美しく儚い。
私はその声に誘われるように湖の向こうの森へ入っていった。
「この辺のはずなんだけど、、、。」
私は歌の主を探そうと辺りを見渡すが、一向に見つかる気配がない。
それどころか頼みの歌が止み風に揺れる草木の音が目立つようになった。
それにしても美しく、そして胸が締め付けられるような音色だったな。
そうこんな、、。
「ーーー♪」
私は思い出しながら口の中で転がすように歌う。
すると、草木をかき分けるような音が後ろで聞こえた。
「誰かいるの!」
それはまるで御伽話に出てくるプリンセスのような美しい女性が姿を現した。
声の特徴からしてこの人が歌の主なのだろう。
女性は私を見つけると、驚いたような表情をした。
「百合さん、ですね」
「え、、」
「お待ちしていました。」
女性は続けてそう言うと、少し寂しそうに笑った。




