第125話「第二戦場:監視塔下の庭」
第125話
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アーソン城下町の外れにそびえる監視塔は、
霧の都の中でもひときわ高く、
その足元には広い庭が広がっていた。
だが今夜、その庭は
“底の見えない白い沼”のように霧が溜まり、
地面すら見えないほど濃く沈んでいた。
深影第二班――6名。
任務は 監視塔を沈黙させること。
塔の警戒を無力化しなければ、
深影第三班の地下への潜入は露見する。
第一班の騎士団封じとも連動する重要任務だ。
6名は霧の中を滑るように進み、
庭の中央へと足を踏み入れた。
その瞬間――
空気が変わった。
「……止まれ」
班長の男が低く囁く。
深影の6名が一斉に動きを止める。
霧が揺れた。
風ではない。
獣の気配でもない。
“意図的な揺らぎ”。
深影の一人が、
霧の奥に微かな影を見た。
「……何かいる」
「気配は……薄い。
だが、確かにこちらを見ている」
深影は気配を読む術に長けている。
だが、この霧は気配を乱し、
音を吸い込み、
視界を奪う。
次の瞬間――
霧が裂けた。
5つの影が、
まるで霧から生まれたかのように現れた。
金色の瞳。
獣の耳。
しなやかな筋肉。
スエン直属の暗部――
影牙。
深影の一人が呟く。
「……獣人の暗部か」
影牙のひとりが一歩前に出る。
その動きは静かで、
しかし獣の威圧感を纏っていた。
「侵入者。
ここはサマヴァー獣人王国の領土。
覚悟はできているのだろうな」
深影の班長が刃を抜く。
「邪魔するなら――斬るまで」
霧が揺れた。
そして――
戦いが始まった。
・・・・・・・・・・
影牙の一人が、
獣の速度で深影へ飛びかかる。
深影は即座に反応し、
刃を横に払って受け止める。
金属音は鳴らない。
霧がすべてを吸い込む。
ただ、
衝撃だけが空気を震わせた。
深影の一人が魔道具を起動し、
淡い光が霧を照らす。
その一瞬だけ、
影牙の姿が浮かび上がる。
だが――
その姿はすでに次の動きへ移っていた。
「速い……!」
深影の一人が呟く間もなく、
影牙の爪が深影の肩を裂いた。
血が霧に溶ける。
深影は反撃に転じ、
刃を影牙の腹部へ突き立てる。
影牙は跳躍し、
霧の中へ姿を消す。
深影は気配を探るが――
何も感じない。
「……消えた?」
「いや、いる。
だが、気配が……読めない」
影牙は霧の中で“音を消す術”を使っていた。
深影の得意とする気配読みが通じない。
その瞬間――
背後から爪が走った。
深影の一人が喉を裂かれ、
霧の中に沈む。
「一人やられた!」
深影の隊員が叫ぶが、
声は霧に吸われ、
仲間に届かない。
影牙は霧の中を自在に動き、
深影の死角を突き続ける。
深影は連携で応じるが、
霧が視界を奪い、
音が消え、
気配が乱される。
影牙の一人が低く唸り、
深影の足元へ滑り込む。
深影は跳躍して避けるが――
上から別の影牙が襲いかかる。
「くっ……!」
深影の刃が影牙の腕を裂き、
影牙の爪が深影の胸を貫く。
互いに血を流しながら、
霧の中で倒れていく。
・・・・・・・・・・
深影の班長が叫ぶ。
「隊形を維持しろ!
霧に惑わされるな!」
だが――
その声も霧に飲まれた。
影牙の爪が班長の背中を裂き、
深影の刃が影牙の腹を貫く。
二人は同時に倒れた。
残る深影は3名。
影牙は4名。
深影の一人が魔道具を起動し、
光で霧を裂く。
その一瞬、
影牙の位置が見える。
「そこだ!」
深影が一斉に飛びかかる。
だが――
影牙は霧の中へ姿を消し、
次の瞬間には深影の背後に現れた。
「なっ……!」
爪が深影の背中を裂き、
血が霧に散る。
深影は反撃しようとするが、
影牙の動きは速すぎた。
二人、三人と倒れ、
深影第二班は――
全滅。
・・・・・・・・・・
影牙側も無傷ではない。
5名のうち3名が戦死し、
残る2名も深手を負っていた。
影牙のひとりが、
血に濡れた爪を見下ろしながら呟く。
「……侵入者、排除……
だが……代償は……大きい……」
もう一人の影牙が膝をつき、
荒い息を吐く。
「姫殿下に……報告を……」
霧が風に揺れ、
庭の血を静かに撫でていく。
監視塔の庭は、
静寂のまま血に染まった。
霧の都アーソンは、
ただ静かに、
影たちの死闘を飲み込んでいった。
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