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第124話「第一戦場:街の屋根の上」

第124話

ご愛読いただきありがとうございます。

すでに、ブックマーク/星評価をつけてくださった皆様ありがとうございます!

霧の都アーソン。

夜の霧はさらに濃さを増し、

街全体が白い膜に覆われたように沈黙していた。


街の屋根の上を、8つの影が音もなく駆け抜けていく。


深影しんえい第一班。

任務は――騎士団の動きを封じること。


霧が濃く、視界は数メートル。

屋根から屋根へと跳び移るたび、

瓦がわずかに揺れるが、音は一切しない。

彼らは“影”そのものだった。


先頭を走る班長が、

霧の奥を鋭く見据えながら低く呟く。

「……この霧、濃すぎるな。

自然のものではない」

「アーソンの霧はいつも濃いとは聞いているが。

今日は……妙だ」

後方の隊員が応じる。

霧の流れが不規則で、

まるで何かが霧の中を動いているようだった。

深影は気配を読む術に長けている。

だが、この霧は気配を乱し、

音を吸い込み、

視界を奪う。

それでも、彼らは進む。

任務のために。


そのとき――

班長が突然、手を上げた。

「止まれ」

8つの影が一斉に動きを止める。

霧の中で、風すら止まったような静寂。

「……誰だ?」

班長の声は低く、しかし鋭かった。

返答はない。


ただ、霧の奥で――

金色の瞳 が光った。

獣のような、

しかし獣以上の知性を宿した光。


次の瞬間――

霧が裂けた。

影牙えいがの一人が、

獣のような速度で深影に飛びかかった。

「来るぞ!」

深影は即座に反応し、

刃を抜き、無音で受け止める。


刃と爪が霧の奥で交差し、

深影の魔道具が放つ淡い光が一瞬だけ戦いの軌跡を浮かび上がらせる。

獣人の爪が空気を裂くたび、

霧がわずかに震えた。


霧が光を飲み込み、

音を吸い込み、

ただ衝撃だけが空気を震わせる。


深影の男が低く呟く。

「……獣人か」

影牙は答えない。

ただ、獣のような低い唸り声を上げた。

その声は、

霧の中で反響し、

深影の耳に不気味な振動として届く。


班長が短く命じる。

「散開。囲め」

深影の八名が一斉に動く。

霧の中で影が分裂し、

影牙を包囲するように配置につく。

だが――

影牙はすでに動いていた。

霧の中から、

さらに4つの影が現れる。


影牙5名。

全員が金色の瞳を光らせ、

深影を取り囲んでいた。

「……待ち伏せか」

深影の一人が呟く。

影牙のひとりが霧の奥から声を発した。

「侵入者よ。

ここはサマヴァー獣人王国の領土。

覚悟はできているのでしょうね」


深影の第一班班長が応じる。

「我らの任務を貴様らが邪魔をするなら――斬る」

霧が揺れた。

影と影が再び音もなくぶつかり合う。


・・・・・・・・・・


屋根の上で、

霧の中で、

刃と爪が交差し続けた。

深影は連携を重視する。

影牙は獣の勘で動く。

深影は静かに、

影牙は獰猛に。

深影は冷静に、

影牙は本能で。

互いに声を発さず、

ただ技と殺意だけが交差する。

深影の一人が影牙の背後を取り、

刃を振り下ろす。

だが――

影牙は獣の反射速度で身を翻し、

深影の腕を爪で裂いた。

血が霧に溶ける。

別の深影が影牙の足元へ滑り込み、

短剣を突き上げる。

影牙は跳躍し、

深影の頭上を飛び越え、

背後から喉元を狙う。

深影は振り返りざまに刃を構えるが――

間に合わない。

爪が深影の喉を裂いた。

霧が赤く染まる。

「一人……!」

深影の隊員が叫びかけたが、

声は霧に吸われ、

誰にも届かない。

影牙は獣のように動き続ける。

霧の中で姿を消し、

次の瞬間には別の深影の背後に現れる。

深影は冷静に反撃するが、

影牙の身体能力は圧倒的だった。

二人、三人と倒れ、

深影の影が霧の中に沈んでいく。

班長が叫ぶ。

「退くな! 包囲を維持しろ!」

だが――

その声も霧に飲まれた。

影牙の爪が班長の背中を裂き、

深影の刃が影牙の腹を貫く。

互いに血を流しながら、

霧の中で倒れていく。


・・・・・・・・・・


やがて――

霧の中に動く影は、

わずかに二つだけになった。


影牙の2名。

どちらも深手を負い、

息は荒い。


深影第一班は――

8名全員が倒れていた。

影牙の一人が、

血に濡れた爪を見下ろしながら呟く。

「……侵入者、排除……」

もう一人が膝をつき、

荒い息を吐く。

「だが……代償は……大きい……」

霧が風に揺れ、

屋根の上の血を静かに撫でていく。


霧の都アーソンは、

ただ静かに、

影たちの死闘を飲み込んでいった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

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よろしくお願いいたしますm(__)m

つけてくれると、嬉しいです。

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