第115話「黒翼の来訪2」
第115話
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影の回廊に静寂が戻ったのは、
ゴシファーが黒翼を畳み、再び執事の姿へと戻った後だった。
だが、その静けさは“安堵”ではない。
むしろ、精鋭たちの背筋を凍らせるような緊張が満ちていた。
「……案内していただけますか、ガルド殿」
ゴシファーは白手袋の指先で胸元の時計チェーンを整えながら、
まるで宮廷の廊下を歩くかのような優雅さで言った。
ガルドは短く頷く。
「ついて来い。
……おまえたちは、周囲の警戒を続けろ」
「はっ!」
精鋭たちが散開し、
ガルドとゴシファーは影の回廊を進み始めた。
・・・・・・・・・・
ゴシファーが歩くたびに、空気が変わった。
燕尾服の裾が揺れるたび、
影がわずかに震え、
光苔の光が呼吸するように明滅する。
魔力は抑えられている。
だが――
“質”が違う。
ヴァルノクスの者たちは皆、
彼がただの執事ではないことを、
肌で理解していた。
「……あれが、七公爵……?」
「信じられん……魔力を抑えてあの圧……」
「ガルド様が認めたのだ。間違いない」
影の回廊の奥から、家長たちが次々と姿を現した。
ノクティカーナ家のエヴァンジェリナ。
オルドホン家のマグダレナ。
ネレアーク家のリュシアンナ。
ヴェルホニア家のアドラステウス。
そして、ホルヴァルガ家のラザロ。
長老たちも続々と集まってくる。
彼らは皆、ゴシファーの姿を見て息を呑んだ。
「……執事……?」
「いや……違う……」
「この魔力の質……まさか……」
ガルドが静かに言った。
「傲慢のゴシファーだ。
龍魔王七公爵筆頭――本物だ」
影議の間にざわめきが走った。
ゴシファーは微笑み、
優雅に一礼した。
「ご挨拶が遅れました。
いえ、お久しぶりと言った方がいいですかね、ふふふ」
その声は柔らかい。
だが、空気を震わせるほどの重みを持っていた。
・・・・・・・・・・
影議の間。
天井の光苔が星のように瞬き、
黒石の円卓が静かに鎮座している。
家長たちが席につき、
ガルドが中央に立つ。
ゴシファーは円卓の前に立ち、
白手袋の手を背に組んだ。
「さて、ゴシファー。
お前がここを訪れた理由を聞こう」
ガルドの声は低く、
だが揺るぎない。
ゴシファーはゆっくりと頷いた。
「では、単刀直入に申し上げます。
――龍魔王ヴィオデス様が転生されました」
影議の間が凍りついた。
「……っ!」
「まさか……!」
「ラザロの感知は……本物だったのか……!」
エヴァンジェリナが震える声で言った。
「……転生先は……どこなのですか?」
ゴシファーは静かに答えた。
「ムツート連合国。
シロンドルフ王家の第3王子――
マサヴェイ・シロンドルフ殿下です」
家長たちが一斉に息を呑む。
「王族に……?」
「そんな偶然が……」
「いや……ヴィオデス様ならあり得る……
あの方は“器”を選ぶ……」
ガルドは深く息をついた。
「……ラザロが感じ取った“微かな波動”……
あれは本物だったのだな」
「ええ。
ラザロ殿の感知能力は、私が思っていた以上に鋭い」
ゴシファーはわずかに微笑んだ。
「彼の角は……本当に優秀だ」
エヴァンジェリナが続けた。
「……殿下は、ヴィオデス様としての記憶を?」
「まだ完全ではありません。
ですが……“魂の質”は紛れもなくヴィオデス様のものです」
影議の間に重い沈黙が落ちた。
・・・・・・・・・・
「そして――もう一つ」
ゴシファーの声が、空気をさらに重くした。
「龍海将ブルイドンが目覚めました」
家長たちがざわめく。
「ブルイドン……!?
ヴィオデス様の弟……!」
「海軍を率いた“蒼海の将”……!」
「なぜ今……?」
ゴシファーは静かに言った。
「大陸の魔力の流れが変わったのです。
エゾモンの台頭。
ヴィオデス様の転生。
そして……ブルイドンの覚醒」
ガルドが低く呟く。
「……3勢力が動き始めた、ということか」
「はい」
ゴシファーは淡々と続けた。
「新魔王エゾモン。
龍海将ブルイドン。
そして――龍魔王ヴィオデス様」
エヴァンジェリナが息を呑む。
「……大陸が……乱れる……」
「避けられません」
ゴシファーは静かに言った。
「だからこそ、私はここへ来たのです」
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