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RPGG  作者: 針狸


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8/13

第8話 今日はロールアクション

 よくよく考えたら、この世界にはロールプレイングの対極の立場にあるとして一つの種類のゲームがある。


「今日は何?」


 今日の私は一味違う。

 ギャルゲは成功した、成長シミュレーションは少しよくわからないことになった。

 あれはまたやり直そう。

 ではそろそろまた大きいゲームに移っても良いのではないかと思う。

 これぞ人天堂が得意とするゲームの一つ!



「今日はアクション!!」



 今日も辻井はけなげにRPGGの説明書をめくっている。

 うむうむ、彼女が私の後を継ぐ日はいつか来るだろう。

 辻井なら許してやらなくもない。


「で、どうするの」


 説明書開いてたんじゃなかったんかい。

 たまには自分で理解しなさい。

 まぁ、しかし真面目な辻井助手のために少しは説明してやろう。


「通常普通に居る人を敵として、触ってしまうと一機失うことになる!」

「……あなたの体に不自然についているバッチがHPなわけね」

「これが全て無くなったとき、かの有名な『もうやめて! 私のライフはもうゼロよ!』となるわけだ」


 今回は小道具も用意して完璧である。


「ちなみに障害物も設定した!」

「何?」

「緑色のものを触ったらアウト!」

「あぁ、なんかクラッチバンディクーを思い出すわね」


 お前、やっぱりほんとはゲーオタだろう。

 なぜ知っている。


「で?」

「それだけ」

「今回は偉く簡単ね」

「ふふーん、だからこそアクションゲームは楽しいのだ!」


 盛り込まれたゲームも楽しいが、単純だからこそ楽しいこともある。

 同じ作業の繰り返しは作業ゲーといって詰まらないという人もいるがそういうところも愛してこそのゲーオタ! 作業ゲー最高!


「じゃあ私は今回関係ないのね」

「お、寂しいのか? 寂しいのか? 辻井」


 ニヤニヤと肩を叩く。


「寂しくはないけど……強いて言うなら今あなたは1機失ったわね」

「え?」


 そういえば、私の手は辻井の肩に触れている。


「し、しまった。辻井の罠にハメられるとは私としたことが……」

「私は何もしてないわよ」

「くっ、辻井め……! やりおるな! もう敵として頑張っておるわ!」

「だから何もしてないってば。あとなんであなたのほうが敵みたいな口調してるのよ」


 私としたことが……。

 胸についているバッチを一つ回収。


「回復アイテムはないの?」

「何か奢ってくれたら回復しそう」


 そんな人を蔑むような凄い目でこっちを見るんじゃない。

 ちょっぴり怖いじゃないか。


「じゃあ、邪魔にならないように私は私の研究をしてるから」


 む、今日はなんだか冷たいぞ辻井。

 ここ最近は熱っぽい目で私を見たり、多少くっついてきたりとなんだかんだ可愛いヤツめと思っていたのに。


「辻井ー、構ってー」

「触るわよ」


 おっと、そんなことをされたらライフが減ってしまう。

 むぅ、今日の辻井ちゃんはご機嫌斜めさんねっ。


「おっす、院生諸君」

「うぉっとぉ!」


 危ない!エロジジイが私の肩を叩こうとしていた!


「いくらタケとはいえそんな避けられ方されたら、さすがの俺も傷つくな……」

「あ、なんかごめん」

「なんかってなんだ」


 いやだってエロジジイのせいで妊娠……じゃなかった、1機失うなんて嫌だし。

 大体、近いんだよ、顔が。

 このセクハラ魔人め! 女子なら誰でもいいのか!


「佐々ー、今度はこいつなんなんだー?」

「今日はアクションゲームだそうですよ」

「懐かしいな~。俺も昔は家庭用ゲーム機でよくやったもんだ……」


 甘いな、教授。

 私は今でもやっている。


「つまり触ればタケが死亡して邪魔ものはいなくなるということだな」

「む」


 なんだと。

 私を邪魔もの扱いしたなエロジジイ。


「そういうことなら俺も尽力してお前に触ろうとしてやろう。ほれ、ほれほれ」

「ぎゃー! 変態ー! セクハラだセクハラー!」

「はーははは!」


 はっ、しまった!

 こんな風にエロジジイが私の腹に触るなんて辻井の機嫌が悪くなるんじゃないか!?

 いやいや、私とエロジジイの間に愛はない! 嫌悪しかない!

 辻井のほうをチラリと見ると、確かに不機嫌そうではある。

 辻井と教授ラブラブ作戦のためにこここれはなんとかせねば!


「そ、そうだ!」

「ん?」

「辻井、君を仲間にしようじゃないか!」

「は?」


 辻井の隣にささっと陣取ると、私は高らかに宣言した。



「辻井を私のパートナーに命ず!」



「……アクションでしょ?」


 うむ。

 しかしアクションだってみんな一人で戦っているわけではない。

 いわば辻井は私のヨッスィー、もしくはルゥーイ、あるいはもっとわかりやすく言えば馬。


「それらってパートナーというよりは乗り物じゃない」

「ルゥイージのほうが良かった?」

「なんにせよ嫌よ」


 む、光栄だと思いたまへ。


「と、いうわけで辻井にも触るんじゃないぞ! エロジジイ」

「へいへい」


 ん?


「?、……さ、触るんじゃないぞ?」

「わかったって言ってるだろ」


 え?

 あれ、触らないの?

「押すなよ? 押すなよ?」は「押せ」ってことだよね?

 つまり「辻井に触るなよ?」は「触れ」ってことですよ?

 臆したか教授!


「張り合いのない敵だな」

「お前な、自然に触れるならともかく佐々にセクハラしてみろ。抹殺されるぞ」

「聞こえてますよ、教授」


 抹殺……。

 ぞわぁ。

 おぉ、想像しただけで怖い。

 辻井は手加減というものを知らないからな。

 いやでもこのままでは辻井と教授の仲が進展しない。


「それでもあえて挑むのが漢違うんか!」

「なんで関西弁なんだ」


 くっ、これでもダメか。

 確かにダメ男な教授には今のは通じないな。

 ヒモになりたいがために女性の心を掴もうと勉強してきたヤツだ。

 私のように崇高なる研究者というわけではないのである。

 だがしかし、彼は年上の女性にしかモテないことに悩んでいる可哀想な子なのだ。

 年下である辻井と添い遂げることは彼にとっても救いになるだろう、うむ。

 たまには下々の者たちのために頑張るのも悪くないのう。


「わかった、主人公の座は辻井に譲渡しよう」

「要らない」

「ほんとは私がやりたかったがしょうがない」

「要らないってば」


 そのかわり、私はもっと高い位のものをやる!



「私は、悪の大魔王だ!」

「それ以前にやって失敗してなかった?」



 あれはRPGだから失敗したのだ、今回はアクションだからいいのだ。


「だんだん、あなたの中でもRPGGの基準が適当になってきてない?」

「そこは突っ込まないお約束だ! 辻井!」


 正直そろそろネタが尽きてきたというわけではない!

 むむ、やはりゲーム脳というからにはもっと私の脳をゲームっぽくなんとかしなければいけないのか。

 そういえば最近はRPGGにかまけて本当のゲームをしていない気がする。

 研究室で女の子と恋するラボプラスというゲームがまだできていないんだが……。

 まぁそれはさておき。


「さて、悪の魔王なんで全力で辻井にセクハラしに行こうじゃないか!」

「触るだけでいいのにセクハラする意味はあるのかしら」

「と、いうわけで手下の教授がGO!」

「おぉい俺かよ!」


 ふふふふふ。

 魔王である私と、下っ端役である教授。

 つまり私が命令をしたとなれば教授が辻井を触りにいくのは仕方がないというもの。


「まぁ嫌だがな」

「言うこと聞いてくださいよ、エロジジイ」

「それが人にものを頼む態度か」


 ちゃんと敬語でお願いしてやったというのに何が足りんというのだ、エロジジイ。


「まったく構ってられるか。俺は次授業あるからもう行くぞー」

「行ってらっしゃい」

「行ってらー」


 むぅ、結局教授が辻井に触ることなくいなくなってしまった。

 すまん辻井、私では役不足だったようだ。

 でも少し安心した。

 ……あれ、安心?


「タケ」

「ん?」

「ちょっとこっち来て」



 呼ばれて隣の椅子にすとんと座ると、いきなり腹を撫でられた。



「なっ、なにするだぁ!?」

「なんで訛ってるのよ」


 ちょっとドキっとしたじゃないか。

 これは辻井なりのお叱りか?

 つまりは辻井を敵にして不本意ながらもあの教授を主人公にすれば丸く収まったということだな?

 ふっ、私もまだまだ勉強が足らないな。

 自分よりも頭の悪い人間から物を教わるなど、奢った人間の失敗じゃないか。

 もっと自らの気を引き締めなければ。


「……ちょっと太ってきてない?」

「失礼なことを言うヤツだな」


 そんなことは断じてないぞ。

 強いて言うならちょっぴり筋肉が減ってそのかわりにお肉がついてきただけだ。


「しかしあれだな辻井」

「何?」

「辻井自ら私に触るということはライフを無駄にしてるようなものかと思うのだけど」

「あぁそうね」


 いや、あぁそうね、じゃなくて。

 すすっと辻井から距離をとる。


「……なんで距離をとるわけ?」

「え?」


 特に意味はないけど……。

 でもほら、私魔王だし。


「タケって自分からスキンシップとるくせに人から触られるのは嫌がるわよね」

「え? そう?」


 そんなことはないと思うけど。

 松ちゃんなんかはよく私の背中に飛びついてくるし、それは甘んじて受け入れている。

 あれは松ちゃんなりのコミュニケーションなのだ。


「じゃあ……私だけ? いや、でも……」

「辻井よ、何をブツクサ言うとるんだ」


 辻井はひとしきり考え込むと、チラリとこちらを見た。

 お、おぉう、なんだなんだ。


「そうよね、最近になってからよね」

「だから、何が?」


 辻井よ。確かに私は天才だがテレパシー能力はないのだよ。

 わかりやすく掻い摘んで説明したまえ。

 辻井は少しだけ躊躇ったあと、深呼吸をしてから口を開いた。



「あなた、もしかして私のこと意識してない?」



 意識。

 意識……?

 いしきー?


「意識って?」

「例えばだけど、最近私が近寄ると妙に構えるわよね」

「それは辻井が近すぎるからでしょうが」

「そう?」


 辻井は少し首をかしげた後、私の顔に顔を近づけた。

 ちょ、近い!

 な、なんだかRPGGを始めたときのことを思い出すよ!?

 いや、あれは思い出しちゃいけない!

 慌ててブンブン首を振る。


「なんで慌てるのよ」

「誰だって慌てるって!」

「それにしたって異常よ」

「んなことない!」


 この距離で喋るな!

 息がかかる!


「……赤いわよ?」

「何が!」

「気付いてないの?」

「だから、何が!?」


 辻井は少しきょとんとした後、ちょっとだけ離れてくれた。



「タケ、顔真っ赤よ」



 え。

 いや、誰だってあの距離なら。

 ……そうだよね?


「変な顔」


 失礼な!


「さっき、教授とも同じくらいの距離だったと思うけど?」


 さっき?

 あぁ、セクハラされてたとき。

 確かに顔は近かったけど、それだって嫌がってたじゃないか。

 何が言いたいんだ辻井。

 だからいくら天才な私でもテレパシー能力はないのだよ。


「……いつからかしら」

「は?」


 な、何が?

 辻井は私のことなんて知らんぷりだ。

 さっきから一人で考え込んで一人で納得したりしている。


「辻井はさっきから何がしたいんだ?」

「私は……」


 辻井はふむ、と一人頷くと私をまっすぐに見た。



「タケが、私のことを好きなんじゃないかと思って」



 そんな、まさか。



 -secret stage-



 タケはしばらく茫然としたあと、顔を真っ赤にして出て行ってしまった。


「……怒らせたかしら」


 まぁこういうのって私が指摘するものじゃないわよね。

 つい、言っちゃったけど。

 確信はなかったけど、でも最近のタケの態度はあまりにも……。


 やけにベタベタ触ってくるくせに、私から触られるとあからさまに動揺する。


 これが意識してなくてなんだと言うんだろう。

 他の人は平気で、私が近いと顔を赤くする。

 その度に私は違和感を覚えた。


「もしかして、言うべきじゃなかった……?」


 ちゃんと待ってあげるべきだった?

 でも確証があったわけではないし、だってまさか本人が気付いてないと思わないし。

 あの様子だと、もしそうだったとしてもタケ自身は気付いてない。


「いっそあのままキスしてやれば良かったかしら」


 腹いせのようなものだけど。

 あぁ、明日どんな顔をしてタケに会えばいいだろう。

 私の顔が赤かったことにも気付いてくれればよかったのに。


「そうだ、せっかくならこのまま押してみようかな」


 何度も何度も、私のことが好きだと言い聞かしてみるとか。

 それだけで真っ赤になるタケが見ることができたら、楽しいかもしれない。

 報われるか報われないかわからないなら、少しでも楽しんだもの勝ちだ。


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