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第三十七話「出航」

【10月5日 月曜日】


 RAINBOW.Fの面々はアメリカ ポートランドへやって来て居た。


『巨大な輸送船だな』

『そりゃあんなにデカい長射程砲を運ぼうってんだ。デカくもなるだろ』

「ん?、あれは日本の護衛艦?」

『潜水艦紺碧に護衛艦高杉、紅玉....リベラシオン運用型護衛艦の信長まで居るぞ』

『・・・あれは最新鋭の大型護衛艦ヤマトタケル?』


 潜水艦1隻に護衛艦2隻、リベラシオン運用型護衛艦1隻に、最新鋭の大型護衛艦。RAINBOW.Fの面々は、これは単なる輸送任務でない事を察した。

 信長に着陸したRAINBOW.Fの面々は機内から降りると出迎えに上がって来た艦長の元へ歩み寄った。


「ようこそ諸君。信長艦長の陸奥だ。宜しく頼む」

「第五独立遊撃部隊隊長の今野です」

「噂は聞いている。共に戦えて光栄だ」

「何故、日本の護衛艦が?」


 渕上は思って居た疑問をまんまぶつけた。


「信長の護衛だよ。リベラシオン運用艦の数が足りなくてね」

「余程重要な作戦らしいですね」

「まっ、当然だろ。今回運搬する兵器は、イギリス奪還の足掛かりに成り得る兵器だからな」


 渕上は頷いて返すと信長の横に停泊するヤマトタケルを見た。


「数を出せない分、質で補う。ってね」


(途轍もない作戦だぞこりゃ)


「詳しい事は中で話そう。着いて来てくれ」





 信長艦内のブリーフィングルームに通された今野らパイロットとオペレーター、高木は作業台中央のメインモニターを見下ろした。陸奥はモニターを起動させると3Dホログラムを表示させた。


「おっと、失礼」


 ホログラムを切った陸奥はメインモニターに地図を表示させた。


「我々は輸送艦隊の左舷に展開する。要は盾だな。敵さんがやって来るとしたら、北以外にありえないからな」


 地図にイータの予測進路を表示させながら陸奥はそう言った。


「寧ろ俺達でやれるのは有難い。アメリカの連中は信用出来ないからな」


 冷たい声で加瀬はそう言った。加瀬の心境を察した渕上は敢えて何も言わなかった。


(?、なんかアメリカに恨みでもあるのか?)


 陸奥は首を傾げると作戦の内容説明を再開した。


「航海はおよそ4日。その間、輸送船を護るのが俺達の任務だ」


 そう言うと陸奥はメインモニターに新たな情報を表示させた。


「信長を旗艦に先頭に紺碧。右舷前方に高杉、左舷前方に紅玉。信長後方にヤマトタケルだ。以上が説明内容だが、質問は?」

「予想される敵の抵抗は?」

「未知数だ。敵がこの兵器をどれだけ危険視しているか、次第だな」

「アメリカ側の戦力は?」

「中井!」


 中井は一瞬表情を鋭くした。加瀬は何処か納得いかない表情で中井を見て居たがすぐに表情を元に戻し前を向いた。


「リベラシオン24機。潜水艦2隻、フリゲート艦3、ミサイル艦5、リベラシオン運用艦1だ」

「24⁉︎、それだけか?」

「完全に俺達頼みだな」


 今度は芹沢も突っ込んだ。陸奥は何処か申し訳なさそうな表情をしたのち表情を変えた。


「渕上少尉。君のお母さんから新装備を預かって来た。後で格納庫に行ってみてくれ」

「わかりました」

「他に質問はあるか?。・・・よし、高木大隊長だけ残ってくれ。解散」


 那須を先頭にブリーフィングルームから出て行く一行。高木は腕を組みながら壁に寄り掛かると静かに息を吐いた。


「妙にピリついてるな。何かあったか?」


 陸奥は高木にそう尋ねた。


「アメリカを警戒してる、と言うより、アメリカを嫌ってる。と言った方が正しいかもな」

「何があった?」


 高木はこの前の作戦の事を陸奥に話した。陸奥は息を吐くと壁に寄り掛かった。


「そんな事があったのか....」

「核を撃つような国とは作戦を共に出来ない。これが彼奴らの考えだろうよ」

「となると、今回の作戦、精神的にキツいだろうな。核を撃つ事なないだろうけど、な〜....」

「・・・」


 高木は息を吐きながら頭を抱えるとそのまま頭をクシャクシャとさせた。


「まぁでも、やるしかない。そこは割り切って貰わねばな」

「そうなんだがな〜。そう簡単に切り替えが出来る程、人間って器用じゃないからな〜」


 陸奥は口元に手を添えると厳しい表情を浮かべて唸った。





「コイツは....」


 信長の格納庫を訪れた渕上はアルファモデルに似た大型のラーミナビームスナイパーライフルIIを見上げた。


「アルファモデルチューン型ラーミナビームスナイパーライフルII。狙撃特化型のアルファモデルを更に大型化させ、長射程・高出力にしたスナイパーライフルです」


 渕上の元に歩み寄りながら松田は説明をした。


「ラーミナドライブとの併用を想定した一挺で、拡散モードで使用すれば複数の敵を同時に仕留める事が出来ます」

「拡散モード?、ビームが?」

「ビームだからこそ出来る事ですよ。目標手前でビームが拡散し、多方面に飛翔する仕組みになってます」


 渕上は頷きながらアルファモデルチューン型ラーミナビームスナイパーライフルIIを見上げた。


「但し、元がアルファモデルなので、二脚を使っての狙撃が前提で開発されてます」


 渕上は軽く数回頷いた。


(甲板上からの狙撃が前提のライフルか。まっ、海上任務には持って来いだな)


「ところで渕上」

「はい?」


 そう思って居たところに不意に松田から話しかけられた渕上は少し変な声で返事しながら松田の方を向いた。


「チーム内のピリついた空気。やはりアメリカと合同でですからか?」


 渕上は難しい表情を浮かべると軽く唸った。


「それもあると思いますよ。核を撃つ様な国と作戦を共には出来ない。気持ちはわかりますがね〜....」

「やはり、先日の作戦の件をまだ....」

「俺だってまだ切り替えられてませんよ。けど、やるしかないんです」

「ですね」


 難しい表情を浮かべながら渕上はアルファモデルチューン型ラーミナビームスナイパーライフルに背を向けると歩き出し、格納庫から出て行った。





「加瀬さん!」

「?」


 倉又の呼び掛けに答える様に加瀬は後ろを向いた。


「どうしたんですか?。ブリーフィングの時から様子が変ですよ」

「・・・」


 加瀬は無言でその場から立ち去ろうとした。だが倉又に肩を掴まれるや否や苛立ちを表に出したのちそれを振り解いた。


「加瀬さん!」

「アメリカとは二度と共に戦いたくなかった。ただそれだけだ」


 そう言うと加瀬は格納庫に向かって歩き始めた。


「・・・私にだって、そういう気持ちはあります。けど、これが任務なんです」

「・・・」


 溜息を吐く様に息を吐いた加瀬は倉又の方を向くと苛立ちを抑え、表情を元に戻した。


「わかってるさ。これが任務だ。割り切ってるよ。・・・色々と頭に来てるけどな」


 そう言うと加瀬は再び歩き始めた。そんな加瀬を呼び止めようとしたが、倉又は中井に肩を掴まれた。


「辞めておけ」

「でも、」

「彼奴は今は苛立ちを表に出してるが、任務には忠実だ。心配は要らねぇよ」


(けど初めてだな。彼奴がブリーフィングの時から苛立ちを表に出してるなんて)


 そう思った中井はもう一度倉又の肩を叩くと加瀬の後を追う様に格納庫へ向かった。


「・・・」


 一方の加瀬は苛立ちを抑えながら平常心を保とうして居たが、その表情には微かに苛立ちが見えた。


(練度の低い、使い物にならないパイロットが24人。戦力はほぼ俺達だけ。・・・一体どうやって輸送船を護れと?)


 イータ大戦前のアメリカは今は面影はなく防戦を貫くアメリカ軍のパイロット練度は日本やドイツ、フランスよりも低かった。加瀬は核の一件もあり、アメリカを毛嫌いして居た。

 そんな中、出航を知らせるベルが、艦内に鳴り響いた。





 出航して3時間が過ぎた頃だった。

 渕上はヴェヒターのコクピット内に居た。アルファモデルチューン型ラーミナビームスナイパーライフルIIの砲口を北に向けながらいつでも射撃出来る様、既にライフル型コントローラーはコクピット天井から降りた状態だった。


「〜♪」


 呑気に鼻歌を歌いながら背凭れに寄り掛かる渕上はイータが来ない事を祈って居た。


『随分と余裕ね』

「風間さん」

『こう言う緊迫した状況でもリラックス出来るのは良い事よ。私も見習いたいわ』

「実質戦力は日本国防軍だけ。アメリカは正直アテになりませんけどね」

『加瀬と同じ事思ってるのね』

「ドイツやフランスなら、心強かったですけどね」


 不満に近い愚痴を漏らす渕上。そんな渕上を現実に引き戻す様に通信アラートから機内に鳴り響いた。


(来たか)


 渕上はライフル型コントローラーを両手で構えた。


『北より敵部隊接近。数20』

「捉えた。随分と少ないな」

『交戦許可出ました。渕上さん』

「了解ッ」


 渕上はスコープ越しにイータ人型機動兵器を捉えるとトリガーを引いた。

 放たれた一筋のラーミナビームは途轍もない速さで飛翔すると8つに分裂したのちイータ人型機動兵器のコクピットを貫いた。


「フュ〜、此奴はスゲェ」


 渕上は次なる8機を捉えると再びトリガーを引き、8機同時に撃墜した。残った4機は散開すると全速力で信長に突っ込んだ。


「パド。ライフルを拡散モードから収束モードに」

「リョーカイ・リョーカイ」


 渕上はビームのモードが変わったのを確認するとトリガーを引き、あっという間に4機撃墜した。


「掃討完了。・・・今のは偵察か?」

『でしょうね。本気で攻めてる感じでは無かったわね』


 渕上はライフル型コントローラーから手を離し、背凭れに寄り掛かると長めに息を吐いた。


『出航してこんなにも早く偵察が来るなんて、先が思いやられるわね』

「でもまぁ、これで相手の出方はわかったでしょう。多分次に仕掛けてくるなら、海中からです」

『なんで?』

「今の狙撃を見たら、空中から仕掛けようとは思わないでしょう」


 そう言うと渕上は腕を組んで時が過ぎるのを待った。

 2時間後....


『ソナーに感!敵の輸送コンテナだ!』

『対潜戦闘及び対空戦闘用意!』

『コンテナより射出音、来るぞ』

「やっぱり水中から来たか」

『予想通り、流石ね』


 渕上はライフル型コントローラーを構えると目標を捉えた。


(水中を進んでくるか。だが丸見えだ!)


 渕上は水中を進むイータ人型機動兵器を捉えるとすぐさまトリガーを引いた。

 アルファモデルチューン型ラーミナビームスナイパーライフルIIから放たれる高出力なラーミナビームを前にイータ人型機動兵器は次々と海の藻屑とかした。すると剛を煮やしたイータ人型機動兵器は次々と海中から姿を表し、信長に突っ込んで来た。


『ッ』


 風間機は離陸すると渕上機を追い越し、イータ人型機動兵器群に突っ込んだ。100ミリロングレンジマシンガンのバースト射撃で次々とイータ人型機動兵器のコクピットに風穴を開ける風間機。


(このままじゃあ埒が開かないって事か)


 渕上はライフル型コントローラーを収納した。渕上機はアルファモデルチューン型ラーミナビームスナイパーライフルIIを甲板に置くとライフルモードのラーミナビームスナイパーライフルIIを構えると甲板から飛び上がり、イータ人型機動兵器群の中に突っ込んだ。拡張スラスターのブースターポット、スラスターポットの恩恵を生かし、次々とイータ人型機動兵器を撃墜して行く渕上機。

 そんな中、1発の弾頭が渕上機を狙うイータ人型機動兵器のコクピットを撃ち抜いた。


「ッ?」

『援護する』


 バイポットを展開し、甲板上から大型ラーミナツインレールガンを撃つ加瀬機。それを見た渕上は「普通逆だろ」と呟いた。


(俺が援護で加瀬が突っ込んだ方がいい気もするが....まぁ此処は加瀬に援護を頼むか)


 そう判断した渕上はイータ人型機動兵器の未来位置を予測し、トリガーを引くと、確実にイータ人型機動兵器のコクピットを撃ち抜いて行った。

 そんな中、今野機も起動すると大型伸縮式レールガンでイータ人型機動兵器を狙い撃った。


「今野隊長。援護頼みます。加瀬、援護は今野に任せて前へ上がれ、右翼の敵を叩け」

『了解した』


 加瀬機はバイポットを収納すると甲板上から飛び上がり、ラーミナソードの刃を展開し、ソードモードにするとイータ人型機動兵器群に突っ込んだ。


『援護って、どこ撃てば良いんだ?』

『護衛艦は第二波に備えて下さい。此処は私達に任せて下さい』

『了解だ。頼むぞ』


 今野の提案を素直に聞き入れた護衛艦艦長達。そんな中、4機係でイータ人型機動兵器を斬り裂き、撃ち落とす、一行。そんななか、残った3機も離陸しようとしたが、今野はそれを止めた。


『芹沢・中井・倉又は第二陣に備えて待機』

「来るとすれば、直上か」


 そう予測しながらイータ人型機動兵器を撃ち落とした渕上は周囲にイータが居ない事を確認した。


『俺、突っ込んだ意味ナシかな?』

『そんな事ありませんよ。助かりました』


 渕上は息を吐くと信長へと戻った。だがこれで終わりでは無かった。


『敵機直上!。狙いは高杉です!』

「何、高杉だと⁉︎」


 信長を狙うと思っていた渕上の予想は外れた。すぐさま渕上機は圧縮したラーミナエネルギーを解放すると急加速しながら急上昇した。そのあとを追う様に加瀬機・風間機も急加速した。


『この状況で高杉を狙うなんて』

「絶対可笑しいな。多分本当の狙いは信長。高杉に気を取られてる間に狙うって魂胆だろう」


 新たな予測をした渕上はイータ人型機動兵器を捉えるとトリガーを引いた。


『敵第三陣確認。信長の直上です』

「やっぱりな」


 芹沢機・中井機・倉又機が離陸すると直上から迫るイータ人型機動兵器に殴り掛かった。

 芹沢機はラーミナバスターブレイドで次々とイータ人型機動兵器を殴り斬り、腕部170ミリ単発砲で通過しようとするイータ人型機動兵器を撃ち抜いた。

 中井機は腕部170ミリ単発砲を撃ちながらイータ人型機動兵器と距離を詰めるとラーミナ太刀でイータ人型機動兵器を斬り裂き、コクピットを貫いた。

 倉又機は2機が仕留め損ねたイータ人型機動兵器をラーミナツインビームサブマシンガンで蜂の巣にした。


『船の上に落とさないでくれよ。残骸含めてだ』

『無茶言ってくれるぜ』


 ポツリと芹沢はそう呟いた。今野機は高杉を襲うイータ人型機動兵器をレールガンで撃ち抜いて居た。だが支援するのは今野機だけではない。


『対空戦闘。艦対空誘導弾、1番から10番、発射用意!』


 左舷前方を護っていた紅玉が艦対空誘導弾を発射しようとしていた。VLSのハッチが開くとセルから10発の艦対空誘導弾が発射された。半分は高杉直上へ、もう半分は信長直上へと飛翔し、イータを撃墜した。

 高杉を狙った部隊が6割、信長を狙った部隊が半数撃墜された頃、イータは形成不利を読んだのか、撤退を始めた。


『逃げるなら逃して。追撃は禁止』


 渕上は撤退するイータ人型機動兵器を見送ると背凭れに寄り掛かった。


「妙な撤退の仕方だな」

『少し嫌な予感がするわね。総員コクピット内で待機。補給と整備を受けて』


 イータが撤退しても尚、緊迫した空気は消えなかった。

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