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第一話『“RAINBOW.F”』

ハイライト・用語集を読んで頂ければ楽しめる内容に仕上げてます。是非ご覧下さい

 戦時中の最前線を照らすには相応しくない程晴れた空の下3機の小型輸送機とそれを取り囲む様に7機のリベラシオンが飛んでいた。

 【人類侵略的外来種 機械型生命体“イータ”】

 それに最も対抗出来る人類の叡智と努力の結晶【戦術機動歩行兵器“リベラシオン”】

 支援機1・近接特化型機2・可変機1・機動力特化型機1・汎用型機1・狙撃型機1の計7機からなるその部隊は大気を切り裂きながら空を進んで居た。

 右肩にはエースパイロットの証“異名”持ちを意味するエンブレム、左肩にはそれぞれがデザインしたエンブレムが刻まれて居た。

 だが刻まれてるのはそれだけではない。

 “最前線で戦う覚悟”・“仲間と壁を越える力”・“後ろにあるモノを護りたいという意志”・“パイロットとして積み重ねてきた経験”・“兵士としてのプライド”。様々なものが刻まれて居た。

 そして彼らはそれを“リベラシオン・ブレイド”と呼んだ。





「・・・」


 タブレット端末で“とある部隊”の戦歴を確認していたペーターは自分の元へ歩み寄る男の方を向いた。


「本当に来るのか?」

「ああ。来るみたいだぜゲオルク。俺達の支援要請に応えてくれた。あと3時間ほどで到着するそうだ」


 ゲオルクは鼻で笑うと彼らが来るであろう方角を向いた。


「面白ぇじゃん。少数精鋭の実力、見せて貰おうじゃねぇか」

「ああ。お手並み拝見だ」


 そう言うとペーターはタブレット端末の電源を落としたのちゲオルクの隣に立つと同じ方向を向いた。





【2153年 4月25日 土曜日】


 旅館やホテルへ粉にした珈琲の配達を終えた渕上の父であり元パイロットの昭弘は車から降りると胸ポケットから煙草を取り出し、一本摘み出すとそれを口に咥えたのち煙草を胸ポケットに仕舞うとポケットからライターを取り出し、咥えた煙草に火を付けた。

 明け方のひんやりとした空気が頬を撫でる中、昭弘はモクモクと煙草を吹かした。


(彼奴、上手くやってるかな?。周りは全員異名持ちと聞く。足を引っ張ってなけりゃ良いんだが....)


 渕上の事を辛口に評価する昭弘は僅かに口角を挙げると笑みを浮かべた。


「嫌ぁ、彼奴なら問題はねぇな」


 そう呟いた昭弘は煙草を咥えながら口から煙を吐いた。

 一方で渕上の叔父総一郎は開店前の最終確認を行っていた。


(和公が卒業して家を出てったのを機にモーニングを始めたが、思ったよりも反響が良くて忙しい....バイト、もう1人雇おうかな?)


 そんな事を思いながら珈琲豆の確認や食品チェック、コーヒーミルの点検を済ませた総一郎は長めに息を吐いた。


「和公の奴、ほぼ休み無しに動いてるらしいが、大丈夫かな?」


 思わず心の呟きを声に出した総一郎。そんな総一郎は天井を向くと渕上の健康を祈った。


「さて、俺は俺のやるべき事をやるか」


 そう呟いた総一郎はモーニング開店に向けて仕込みを始めた。





「漸く、隊長らしくなって来ましたね」


 中部方面隊第三守備隊副隊長の岩動は廊下を歩く隊長の神尾にそう言った。


「まだまだだよ。退役した石原隊長の様には振る舞えない」

「隊長は、隊長が思う様にやれば良いと思います」


 神尾は微かに笑みを浮かべると「かもな」と言ったのち待機室に入った。

 待機室では第三守備隊の新人隊員の石堂と片岡、そして新人オペレーターの神崎と隊員の虹羽田が楽しそうに話していた。だが隊長である神尾の入室に気が付くと話を辞めて立ち上がろうとしたが神尾をすぐ様それを止めた。


「そのまま、楽にしててくれ」


 そう言うと神尾は待機室の端へ行くと紙コップを取ったのち機械から濃いめのお茶を注ぐとそれを持ってテーブル席に座ったのち紙の小説を読み始めた。

 小説を読む為のデジタル端末が大きく普及した今でも、紙の小説の需要は無くなってはおらず本屋は今だに健在だった。

 そんな中、石堂と片岡は虹羽田と話す神崎の方を向いた。


「神崎さん、だいぶ明るくなりましたね」

「そうですね。一時期は渕上さんの事を引き摺ってる様子でしたが....」


 そう言った石堂はマイボトルを開けるとコーヒーを数口飲んだ。


「そういえば諏訪部さん、西島校長の推薦で教官補佐になれたので、かなり多忙な様ですよ」

「教官を補佐しながらスクランブル発進も熟す。少し心配ね」

「諏訪部さんなら問題ありませんよ。それより心配なのは....」

「ええ。・・・あの人達よね」

「全く休み無しで、ヨーロッパ戦線を駆け巡ってますからね」


 石堂はマイボトルの蓋を閉めるともう1人心配してる奴の事を思った。が、


「まぁ、彼なら大丈夫でしょう」

「?」

「鳥海少尉の事です」

「ああ」

「扱いは難しいですが、腕は確かですから」


 片岡は頷いて反応したのち前を向いた。

 一方で六角と話していた倉又紫恵楽は姉であり他部隊に異動した倉又由実の事を心配していた。


「お姉ちゃん、大丈夫かな?」

「無休でヨーロッパ戦線駆け巡ってるって話ですもんね。....けど、大丈夫ですよ」


 六角はそう言うと笑みを浮かべた。


「由実さんを信じましょう。私達が送り出したんです。信じましょう」

「そうね。....ただ、」

「?」

「お姉ちゃんのバイオリンを聴けなくなったのは、寂しいわね」

「確かに....」


 そう返した六角は神崎と虹羽田の方を向いた。倉又紫恵楽もまた、同じ方向を向いた。


「歳、近いですもんね」


 呟く様にそう言った六角に対して倉又紫恵楽は頷いて返した。





「レーダーではもう捉えてる。もう時期だろう」


 ペーターはそう言いながらタブレット端末を閉じると彼らが来る方に身体を向けた。ゲオルクもまた、ペーターの横に立つと、じっと見つめた。


「隊長。来ましたよ〜!」


 ペーターの部下が声を挙げるとペーターは視線を鋭くした。


(来たか。“RAINBOW.F”)


 ゲオルクがそう思うと同時に彼らの前に7機のリベラシオンと3機の小型輸送機が姿を現した。


「最新鋭機が、勢揃いだな」

「・・・なんだありゃ?」


 ペーターは目を見開くと渋めの緑でペイントされた1機のリベラシオンに目を止めた。


「あの狙撃型機、ワンオフ機か?」


 誘導員の指示に従って着陸するリベラシオン達。

 ペーターとゲオルクは、渋めの緑でペイントされた1機のワンオフ機から目が離せなかった。

 洋緑色・緑茶色・若竹色でペイントされ、更には左肩にはその渋さを打ち消す様な派手なエンブレムがあった。

 3本の白い爪痕、その爪痕から鎖を咥えた赤い番犬が姿を見せていた。

 ゲオルクは“3本の爪痕”と“鎖を咥えた赤い番犬”がそれぞれ何を意味するかなんとなく分かっていた。

 リベラシオンからそれぞれパイロットが降りる中、輸送機から降りて来た整備士の指示に従って補給活動が開始された。そんな中、1人の女性パイロットが先頭の輸送機から降りて来たガタイの良い中年男性と合流するとペーターらの方へ歩み寄って来た。


「お出迎えと行こうか」

「ああ」


 ペーターは数歩前に出ると女性パイロットと中年男性を出迎えた。2人はペーターに敬礼すると自己紹介を始めた。


「日本国防軍遠征隊所属、第五独立遊撃部隊隊長の今野秋日です。宜しくお願いします」

「大隊長の高木浩一です。宜しくお願いします」

「ドイツ戦線第二方面隊司令官のペーターだ。お会い出来て光栄だ」


 今野と高木はペーターと握手を交わした。

 そんな様子を遠巻きに見ていた1人の男性パイロット渕上和公は少し硬めな表情をしていた。そんな渕上の肩を、1人の男性整備士が叩いた。


「ッ?」

「表情が硬いぞ渕上」

「ァッ....」


 ヴェヒター整備士の松田晴翔は笑みを浮かべながら渕上にそう話しかけた。


「今だに分かりません」

「何がだ?」

「何故自分がグループリーダーなのか、です」


 松田は頷きながら渕上の肩をもう一度叩くと「いずれ分かるさ」と言ったのち渕上の元から立ち去るとヴェヒターの補給作業の点検へ戻った。


「渕上さんなら問題ありませんよ」


 表情を微かに和らげ、眉を挙げた渕上は自分に話しかけて来た倉又由実の方を向いた。


「私は渕上さんがグループリーダーで問題はないと思いますよ」

「倉又少尉....」

「リーダーがそんなんでどうする。もうちょっとシャキッとしてくれ」


 渕上と倉又は横から入り込む様に声を掛けて来た加瀬康政の方を向いた。


「パイロットとしての経験や技量では俺の方が上かもしれんが、リーダーとしての素質はお前の方が上だ」

「加瀬少尉....」

「お前の素質を見込んでリーダーの座を渡したんだ。もう少しシャキッとしてくれ」

「はい!」


 キレの良い返事を返した渕上だったがその表情にはまだ迷いと戸惑いがあった。


『全パイロット、集合』


 今野から無線で召集が掛かると渕上は静かに歩き始めた。そんな後ろ姿を見た加瀬は倉又に話しかけた。


「戦場では、いやコクピットの中ではかなりキレが良いんだが、コクピットの外ではイマイチだな。戸惑いと焦りを感じる」

「多分、まだ受け入れられてないんだと思います。けどそこは仕方ないですよ。訓練過程卒業したばかりのパイロットが、いきなりグループリーダーなんですから」


 加瀬は数回小さく頷くと倉又と共に渕上の後を追った。


(仕方ないで片付けて良い部分とダメな部分がある。部隊編成とコンセプト自体が前代未聞なんだ。彼奴にはとっとと慣れて貰わないとな)


 加瀬は頭の中で静かにそう思うと、渕上の頼りない背中を鋭い目で見た。

 ペーターから任務の説明を受け終えた今野は最後尾の加瀬が輪に入ったのを確認すると微かに表情を緩めた。


「全員集まったわね」


 集められたのは大隊長の高木、隊長の今野、グループBパイロットの渕上・倉又・加瀬とオペレーターの雨宮双葉とグループAパイロットの芹沢亮・中井竜次 ・風間亜澄・オペレーターの那須真緒の10名だった。

 今野は全員のタブレット端末にデータを送信すると全員の顔を見た。


「ペーター隊長からの要請は、“補給線の確保”よ」

「随分と大雑把だな」

「これから詳細を説明するわ」


 芹沢の言葉を受けたのちタブレット端末に数秒目を落とした今野は各隊員に情報を共有すると再び前を向いた。


「中継拠点、つまり此処ね。此処から前線拠点へ補給物質を運びたいのだけど、イータの襲撃に合い護衛部隊は全滅。補給部隊は撤退。これを3回繰り返してる状態よ」

「全滅?。補給部隊は?」

「無傷よ」


 今野からの返答に“ん?”とした表情をした渕上。そんな渕上を他所に今野は説明を続けた。


「私達の任務は、補給部隊を護衛し、補給線の安全を確保する事よ。質問は?」


 渕上は表情を鋭くすると静かに手を挙げた。


「渕上リーダー。どうしたの?」

「1つ、提案があります」

「言って」


 渕上の提案は筋は通っては居たが賭けに近い部分があった。当然反発する者も居たが、今野はその提案を採用した。


「よし、行って!」


 渕上・倉又・加瀬の3人は同時に頷くとタブレット端末の電源を落としたのち自分の機体へ走った。


「あれでこそ、ね」


 そう呟いた今野は長めに瞬きしたのち表情を変えると残ったメンバーに持ち場に着くように言った。

 渕上・倉又・加瀬の3人は機体を起動させると給油ポンプや充電回線が機体から切断されたのを確認するとスラスターを吹かして機体を飛ばした。

 それを鋭い表情で見て居たゲオルクは飛び上がる3機を見て不審に思った。


(3機が先に飛んだ?。何故だ?)


 そう思うゲオルクを他所に、残った4機も離陸した。4機は補給部隊と合流するとそのまま直掩に付き、補給部隊と共に進み始めた。


「先行した3機は別動隊か?。一体何の意味が?」

「さぁな。奴らなりに考えがあるんだろ」


 ペーターはそう答えると作戦指令室に入った。

 グループAの4機と補給部隊を見送ったゲオルクも作戦指令室へ入った。





 渕上率いるグループBは補給部隊及びグループAの左翼前方に展開していた。7人中4人が思って居た。“何故固まって守備しないのか”と。

 そんな事を気にしない渕上は操縦桿を握りながらぐるりとあたりを見渡した。スナイパー機でありながら全天周囲モニターを採用したヴェヒターのコクピットは全方位を見渡すことが出来た。


(さぁ、どう来る?)


 渕上がそう思っていると機内にコクピットアラートが鳴り響いた。


『グループBへ。10時の方向より、イータの人型機動兵器が多数接近中』


 雨宮のオペレートを前に深く息を吐いた渕上は表情を鋭くした。


「了解。迎撃に向かう」

『お前さんの予測が当たったってところか?』

「そんなところです」


 加瀬から投げられた言葉にそう返した渕上は操縦桿を操作して機体を旋回させるとそのままスラスター吹かせ、加速させた。

 倉又機・加瀬機もそれを追った。


「倉又は右から、加瀬は下からそれぞれ仕掛けろ。俺が狙撃で援護する」

『了解です』

『了解した』


 コクピットの中で操縦桿を握ってる時、渕上は人が変わる。呼び捨て・タメ口は当たり前。まるで火が付いたかのようだった。


「パド。機体制御任せるぞ」

「リョーカイ・リョーカイ」


 球体型AIサポートロボのパドに操縦桿を預けた渕上はコクピット天井から降りて来たライフル型コントローラーを両手で構えるストック部分に肩を付けた。そしてスコープでイータの人型機動兵器を捉えた渕上は躊躇なく、トリガーを引いた。

 ラーミナビームスナイパーライフルIIから放たれた一筋の閃光がイータの人型機動兵器のコクピット部分を貫き、爆散した。早速1機撃墜である。

 渕上は波に乗ったかのように次々と獲物を捉え、トリガーを引き、1.5秒の間に4機撃墜した。

 だが他の2人も負けてなかった。

 加瀬機は地面スレスレの超低空からイータの人型機動兵器編隊の真下に回り込むとスラスターを吹かせ急上昇した。そして左手に構える大型ツインレールガン上部砲身のレールガンから弾頭を3発撃ち出すと2機のイータを撃墜した。その後右手に装着されたラーミナソードの刃を展開し、ソードモードにすると巨大な刃を構え、すれ違い際に4機のイータ人型機動兵器を上下真っ二つに斬り裂いた。

 倉又機も負けては居ない。

 右手に構えるラーミナツインビームサブマシンガンを短距離でイータの人型機動兵器に撃ち込むと蜂の巣にして1機撃墜。機動力を駆使して次々とイータの人型機動兵器を蜂の巣にしていく倉又機は左から急接近するイータの人型機動兵器を捉えるとホルスターから実弾兵器の100ミリサブマシンガンを引き抜くと急接近して来たイータの人型機動兵器に撃ち込むとそのまま蜂の巣にした。

 渕上が狙撃で、加瀬が斬撃で、倉又が短距離射撃でイータの人型機動兵器の数を減らす中、イータは思った。

 “何故たったの3機に”と

 イータがそんな事思ってる事も知らず、3人はそれぞれのやり方でイータの数を減らした。

 そんな中、渕上は静かに、微かに口角を挙げた。

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