↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/40

第三十三話「電磁長射程砲を護れ」

【9月25日 金曜日】


 偵察任務から帰還後、休息を終えたRAINBOW.Fの面々はブリーフィングルームに集められていた。

 ジェラルドはブリーフィングルームの演壇に立つと中央のホログラムモニターを起動させた。


「電磁長射程砲だ。今は遺跡群の遺跡に紛れて隠してある。これを起動させ、カナダにある敵軍港を砲撃する」


(遂に来たか〜)


 フィリップはそう思いながら腕を組んだ。


「だが、こんなモノを起動させれば、敵は黙ってない。必ず攻撃して来る筈だ。起動から砲撃までの間、この長射程砲を護るのが今回の任務だ」


 ブリーフィングルームに集まった者達は頷きながらホログラムモニターを見つめた。


「同時に、この長射程砲は我々が居るこの前線拠点とも距離が近い。前線拠点が攻撃される事も考慮し、隊を2つに分ける」


 そう言うとジェラルドはホログラムモニターに表示する情報を切り替えた。


「長射程砲守備をフィリップ・ピーターソン・ダニエルズの部隊。それとRAINBOW.FのグループB。前線拠点の守備を、俺とユージーン・マイケルの部隊。そしてRAINBOW.FのグループAにそれぞれ担当してもらう。デイビス・ワイミーの部隊には増援待機して貰う」


(総力戦だな)


 全員がそう思った。


(アメリカ軍だけあって軍備が凄まじいな。ヨーロッパよりパイロット数が多い)


 渕上は静かにそう思った。


「以上が作戦だ。質問は?」

「RAINBOW.Fはそれぞれジェラルド中佐・フィリップ大尉の指揮下に入る、と言う頭でいいですか?」


 組んでた腕を崩しながら渕上は訛りを感じさせない英語でジェラルドにそう尋ねた。


「いや、RAINBOW.Fの面々は各自の判断で動いて貰って構わない。遊撃部隊は遊撃部隊らしく、好きに動いてくれ」

「ラジャー」

「他の部隊に関しては、前線拠点守備隊は俺、長射程砲守備隊はフィリップの指揮下で動いてくれ。・・・他には?」


 ブリーフィングルームに沈黙が走った。ジェラルドは頷くとホログラムモニターを閉じた。


「作戦開始は2時間後だ。各自準備して、待機せよ。解散」





 出撃1時間前、渕上は何気ない気持ちで格納庫に向かうと万全の整備を終えたヴェヒターを見上げた。するとそこへ、1人の男性パイロットがやって来た。


「やぁ。はじめましてだな」

「貴方は確か、ピーターソン中尉」

「そうだ。宜しくな」

「渕上です。こちらこそよろしくお願いします」


 渕上はピーターソンに軽く頭を下げたのち再びヴェヒターの方を向いた。


「素晴らしい機体だな。名はなんだ?」

「ヴェヒターです」

「成る程。番人....守護者か」


 ピーターソンは腕を組むと手摺りに寄り掛かり、ヴェヒターを見上げた。


(渋い緑に少し派手なエンブレム。19歳の若造らしいデザインだな)


 そう思ったピーターソンは鼻を鳴らしながら表情を微かに緩めると細い息を吐いた。


「なんでも、あのガルムを1機で倒したらしいじゃないか」

「此奴の性能あってです」

「いや謙遜しなくて良い。機体性能を引き出すのも、パイロットの仕事だ」


 ピーターソンはそう言うとヴェヒターを見上げ、数回頷いた。


「スナイパーの名に恥じぬ機動性と中距離・近距離戦闘能力、期待してるぞ」


 手摺りから身体を起こしながらそう言ったピーターソンは渕上に背を向けると通路を歩き始めた。


「・・・」


(期待されてもな〜....敵は俺ばかり狙うから、なんとも言えんな....)


「まっ、あまり気を負わず、やる事やりましょう」


 そう言われながら渕上は松田に肩を叩かれた。


「確かに。やる事きっちりやるだけですからね」

「無駄に肩に力入れず、自然体でいきましょう」

「ですね」





 各隊がそれぞれ配置に付く中、渕上は微かに鋭い表情でモニター越しに外を見ていた。


『よし、起動させてくれ』


 遺跡群の中心部にある遺跡が爆破され、電磁長射程砲がゆっくり起動する中、レーダーがイータ人型機動兵器群を捉えた。


『北より敵機接近。数60』


(少ないな。偵察か?)


「俺が行く」

『頼む』


 渕上はペダルを踏み込み、圧縮したラーミナエネルギーを解放すると急加速しながら前へ出た。


(凄いな。あれだけの性能、スナイパーに持たせて良いのか?)


 ピーターソンがそんな事を思って居る事も知らず、渕上は機体を飛ばした。そしてコクピット天井からライフル型コントローラーを降ろすとそれを両手で構え、トリガーを引いた。放たれる閃光が次々とイータ人型機動兵器を貫く中、イータ人型機動兵器はなんの躊躇もなく渕上機に突っ込んだ。


「こっからは、中近距離戦だ」


 そう言いながらライフル型コントローラーを格納した渕上は両手で操縦桿を握ると機体を前に出した。

 ラーミナビームマシンガンを撃ちながらイータ人型機動兵器群に突っ込んだ渕上機はすれ違い際にイータ人型機動兵器をラーミナビームで撃ち抜いて撃墜していった。イータ人型機動兵器は渕上を包囲するが渕上機の回頭性能・旋回性能を前に次々と撃ち抜かれ、撃墜されていった。

 60機全てを撃墜した渕上は戦線に戻ろうと機体を旋回させた。だが、


『敵部隊本隊接近。数....400いえ、500近い』

『おいでなすったな〜』


 渕上は機体を回頭させるとモニター越しにその大群を目視した。


「近付く前に引き付けるぞ。加瀬・倉又。ある程度近付いたら2人も突っ込め」

『了解した』

『了解』


 渕上機はスラスターを吹かせ、イータの大群の中に突っ込むとラーミナビームを撃ち、何機か撃墜した。そんな渕上機に約150機のイータ人型機動兵器が喰らい付いた。


(もう少し引き付けたいな。が、欲をかいても始まらないか)


 渕上機は拡張スラスターのブースターポットとスラスターポットの恩恵をフルに活かしながら次々とイータ人型機動兵器を撃墜していった。


(これだけの大群。目を瞑っても当てられるぜ)


 そう思いながら只管トリガーを引く渕上。

 渕上機は普段よりも断然速いペースでイータ人型機動兵器を撃墜していった。それは大規模改装で生まれ変わった翼に身体が慣れて来た、というのもあるがその大規模改修で得た力を引き出せる様になったとも言えた。

 生まれ変わった翼を得た渕上は、まさに無敵だった。


『行くぞ倉又』

『はい』


 加瀬機と倉又機も突っ込んだ。

 そんな2機に100機のイータ人型機動兵器が喰らい付いた。


(3人係で半分かよ)


 そう思った加瀬は軽く舌打ちした。

 加瀬機は大型ラーミナツインレールガンのレールガンを撃ちながらイータ人型機動兵器を撃墜しつつ距離を詰めるとラーミナソードでイータ人型機動兵器を斬り裂いた。

 倉又機はラーミナツインビームサブマシンガンを撃ちながら距離を詰めると次々とイータ人型機動兵器を蜂の巣にしていった。小型且つ、高機動なのを活かし、次々とイータ人型機動兵器を撃墜する倉又。今日の倉又の調子は好調だった。





 長射程砲守備隊が交戦中の頃、前線拠点守備隊に緊張の空気が漂っていた。


『敵機南下中。数100』


 那須のオペレートが緊張を現実に変えた。


「グループA、行くわよ。続いて」


 今野機を先頭に4機のリベラシオンがイータ人型機動兵器群に突っ込む中、飛行形態に変形した風間機が今野機を追い抜かすとそのまま突っ込んだ。更に中井機が右側から、芹沢機が左側からイータ人型機動兵器群に突っ込んだ。


(流石。言わなくても分かってるわね)


 今野機は戦術レーザー砲でイータ人型機動兵器を薙ぎ払う様に次々と撃墜していくとレーザーから逃れたイータ人型機動兵器をレールガンで狙い撃った。

 芹沢機はラーミナバスターブレイドでイータ人型機動兵器を次々と殴り斬ると腕部170ミリ単発砲でサイドから攻めて来るイータ人型機動兵器を狙い撃ち、更にはワイヤークローを射出するとイータ人型機動兵器のコクピットを貫いた。そして足元から迫るイータ人型機動兵器を爪先から展開したラーミナビームブレイドで斬り裂くとワイヤークローを回収した。

 中井機は腕部170ミリ単発砲を撃ちながらイータ人型機動兵器と距離を詰めるとラーミナ太刀でイータ人型機動兵器を斬り裂いたのち別機のコクピットを貫いた。その後、急接近して来たイータ人型機動兵器の右腕を斬り落とすと腕部170ミリ単発砲をゼロ距離でコクピットに喰らわせた。

 風間機は飛行形態から人型形態に変形するとマイクロミサイルとレールガンを同時発射して複数のイータ人型機動兵器を同時に仕留めると100ミリロングレンジマシンガンを単発で射撃し、1機1機を確実に仕留めていった。


『長射程、起動完了。チャージ開始』

『新たな敵機。機数80。・・・ッ、別動隊、機数200。守備隊に接近中』

『こっちは囮だったか....』





 渕上機は加瀬機や倉又機をスルーして守備隊に近付くイータ人型機動兵器群を追って居た。


(機数は150。なんとしても止めなくちゃな)


『敵、第二波接近。機数200』

「チッ、こんな時に」

『150機は我々でなんとかする。貴官は第二波を』

「ラジャー」


 渕上機は機体を急旋回させると北へ向かった。

 “1機でも多く引き付ける”

 そんな考えで渕上は頭が一杯だった。


『チャージ30%。射角調整開始』

『射角調整が始まったか....これで、無防備になるな』


 ピーターソンが少し心配そうな声でそう言う中、渕上は表情を鋭くした。


(見えた。200、流石に多いな。・・・少し、本気で行くか)


「(エンゲージ)」


「行くぞヴェヒター!」


 ヴェヒターは両眼カメラアイを一瞬発光させた。


「ついでにこれも使ってみるか。“デミオ・イェーガー”!」


 ヴェヒターは朱色光に包まれながら残像を引き連れて急加速した。渕上機はライフルをマウントラッチに携行するとホルスターからラーミナビームピストルIIを引き抜くと残像を引き連れてイータ人型機動兵器群の中に突っ込んだ。

 ラーミナビームピストルIIからラーミナビームブレイドを展開し、次々とイータ人型機動兵器を斬り裂く渕上機。その機動性はスナイパーには不似合いなモノだった。


「ヌッ!」


 だがその高機動性は渕上にも扱いきれない程のモノだった。それを機体と対話しながら少しずつ確実に自分のものにしていく渕上。そうしていくうちにイータは確実に数を減らしていった。

 イータは悟った。

 “此奴を仕留めなきゃ前に進めない”と

 渕上機はラーミナビームピストルIIからラーミナマグナムを撃ち出すとイータ人型機動兵器のコクピットに次々と風穴を開けていった。移動しながら斬撃を繰り出し、止まったかと思えば高出力のラーミナビームマグナムを降らせる。イータ人型機動兵器はほぼ一方的にやられた。


(ラインが見えた)


 渕上機は残像を引き連れながら高速移動しつつ、ラーミナビームピストルIIをホルスターに仕舞うとライフルモードのラーミナビームスナイパーライフルIIを構え、射撃を開始した。次々とイータ人型機動兵器を撃ち抜く渕上機。高速で移動する渕上機に攻撃を当てる事も出来ぬイータは号を煮やし、渕上機に突撃していった。


「デミオ・イェーガー、解除」


 元に戻った渕上機は突っ込んで来るイータ人型機動兵器を次々と撃ち落としていった。しかし、イータ人型機動兵器の数は凄まじく渕上機は瞬く間に包囲された。だが渕上機は拡張スラスターとラーミナエネルギーの恩恵をフルに活かしながら只管イータ人型機動兵器を撃ち落とした。


『(後ろ。次90°左)』


 ヴェヒターの言う通りに操縦桿を動かす渕上。

 機体と対話し、変幻自在に戦う渕上を前にイータは突っ込もうが射撃しようが、渕上機の餌食となっていった。





『敵大群!』

『中佐御下がり下さい』

「俺の心配は良い。とにかく敵の数を減らすぞ」


 ジェラルド機は170ミリマシンガンをぶっ放しながらイータ人型機動兵器群に突っ込むと空中戦に持ち込んだのち、次々とイータ人型機動兵器を撃ち落としていった。


『中佐に遅れるな。行け!行け!行け!』


 指揮官機に負けじとイータ人型機動兵器に突っ込むアメリカ軍。その勢いは凄まじく、200居たイータ人型機動兵器を次々と食い尽くしていった。

 だがイータも負けじと撃ち返す。一進一退の攻防戦になる中、ジェラルド機はラーミナナイトセイバーを二刀流で構えると次々とイータ人型機動兵器を上下真っ二つに斬り裂いて行った。何処か力任せにも見える戦い方だったが、その動きは素早く、無駄が無かった。だが戦局はアメリカ軍優勢とまではいかなかった。


『マイケル隊長がやられた』

『指揮系統は?誰の指揮下に入れば良い?』

「マイケル指揮下だった各機はユージーンの指揮下に入れ。ワイミー・デイビス、出撃しろ!」

『『了解』』


 まさに一進一退。アメリカ軍は優勢を掴み取れなかった。

 ジェラルド機はラーミナナイトセイバーを納刀すると170ミリマシンガンを構え、撃ちまくった。


『ワイミー隊、現着』

「ワイミー」

『はい?』

「北西から来る敵を食い止めろ」

『了解』

「各隊フォーメーションを組み直せ。このまま押し返すぞ」


 マイケルを失いながらもワイミーとデイビスが来た事でなんとかイータ人型機動兵器群を押し返そうとするジェラルド。数で押すしか能がないイータ人型機動兵器群を前にジェラルドはなんとか立ち回ろうとして居た。





『ピーターソンがやられた。畜生』

「ッ、戻ってくるのが遅かったか」


 加瀬は軽く舌打ちをすると大型ツインレールガンからレールガンを撃ちながらイータ人型機動兵器群の背後を攻撃するとそのまま斬りかかった。


『新たな敵。数120。北東から来ます』

「倉又。此処を抑えろ。俺は足止めに向かう」

『了解』


 加瀬機はスラスターを吹かすと北東へ向かった。


『チャージ80%。射角固定』

「あと少しか」


 加瀬は操縦桿を握り直すとイータ人型機動兵器群に突っ込んだ。ラーミナビームマシンガンを撃ちながらイータ人型機動兵器群に突入し、ラーミナソードで次々とイータ人型機動兵器を撃墜していく加瀬機。120機のイータ人型機動兵器は前進する事なく、加瀬機へと群がった。


(そうだそれで良い。もっと来い)


 拡張スラスターの恩恵から来る機動力で次々とイータ人型機動兵器を上下真っ二つに斬り裂いていく加瀬機。イータ人型機動兵器の中にはライフルを捨てて近接格闘戦を挑もうとするものも居たが加瀬機の前では自殺行為だった。

 死角から迫るイータ人型機動兵器をスパイクブレイドで叩き殴るとそれを蹴り飛ばし、別のイータ人型機動兵器とクラッシュさせると加瀬は拡張スラスターを逆噴射させながらラーミナビームマシンガンを撃ちまくるとイータ人型機動兵器が密集したのを機に、全スラスターを全開で吹かし、前に出ると勢いよく、次々とイータ人型機動兵器をすれ違い際に斬り裂いた。


 犠牲は出ながらもアメリカ軍及びRAINBOW.F優勢に傾こうとする中、長射程砲に搭載された砲弾の正体を知る者は居なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。