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第二十話「渓谷の前線拠点を叩け」

【6月25日 木曜日】


 RAINBOW.Fの面々は再びドイツ戦線に居た。

 次なる派遣先に到着した渕上達は誘導員の指示に従いながら、機体を着地させた。

 今野は機体から降りると高木と合流したのち出迎えてくれた方面隊司令官の方へ歩いた。


(あの様子からして、かなりのやり手だな)


 高木がそう思う中、方面隊司令官は2人に気が付くと歩み寄って来た。


「第五独立遊撃部隊隊長の今野です」

「大隊長の、高木です」

「ドイツ戦線第五方面隊司令官のクラウスだ。宜しく」


 クラウスはタブレット端末を起動させると今野のタブレット端末にデータを送信した。


「第二方面隊に遅れを取らぬよう、此方も前線を押し上げたい。詳細は端末に送っておいた。確認を頼む」


 今野はタブレット端末を起動させると受信したデータを確認した。


「1時間以内に出撃を頼む。以上だ。質問は?」

「・・・敵守備戦力の規模は?」

「かなりのモノだろう。200以上はいる筈だ」

「....わかりました」


 今野はクラウスに一礼するとその場から立ち去った。


(かなり若いな。まっ、実力があるなら別に構わんが、な)


 クラウスはそう思いながら作戦司令室へ戻っていった。

 その頃、今野はいつものメンバーを集めると作戦の説明を開始した。


「敵の前線拠点を奇襲、攻略するわよ」


 そう言うと今野は全員のタブレット端末にデータを送信した。


「渓谷を抜けた先にあるこの前線拠点を叩くわよ。第一段階、渓谷を抜けて敵の前線拠点に侵入。第二段階、拠点内にある発電施設を叩いて敵電力を無力化。第三段階、残った機が前線拠点に侵入。敵防衛戦力を叩くと同時に敵施設を破壊する。以上が流れよ」


 今野は一通り説明すると顔を挙げて全員の方を向いた。


「第一段階と第二段階は、誰がやるんです?」


 渕上は今野に質問した。すると今野は渕上に目を合わせると目で訴えた。


「・・・まさか」

「そう。渕上リーダー、貴方よ」

「・・・」

「ヴェヒターが1番スラスター稼働音が静かだし、急制動も効く。レーダー網とサーチライトの網を突破するには1番向いている機体だわ」

「....」


 渕上は唸りながらタブレット端末に目を落とした。

 渓谷上空はレーダー網が張り巡らされており、奇襲を掛けるには渓谷内部を抜けるしか無い。だがその渓谷内にもサーチライトやレーダー網がある。抜けるのは至難の業だった。


(出来るのか、俺に....)


 いつもとは違い、悩む渕上。そんな渕上を見た加瀬は軽く溜息を吐いた。


「俺達の世界に、悩みは無用だ。やるか、やらないか。それだけだ」

「・・・了解。....やります」


 渋々とした様子で了承した渕上。それを観た那須と風間は微かに笑みを浮かべた。





「意外とだだっ広いな。こんな所を1人で飛ぶのか」

『渕上さん。高度を下げて下さい。此処からは、高度制限を行います』


 渕上は機体高度を下げて渓谷内に侵入するとレーダーとモニター、交互に見ながら渓谷内を飛んだ。


(サーチライトに気を取られてたらレーダーに。レーダーに気を取られてたらサーチライトに。厄介だな)


 渕上は僅かに操縦桿を握り直すと細い息を出しながら機体を飛ばした。モニターとレーダーを交互に見ながら渓谷内を飛んで居た渕上はある事に気が付いた。


(高度が低ければ低い程レーダー網の探知範囲が狭くなるのか....)


 それに気が付いた渕上は出来る限り高度を下げるとサーチライトを避けながら機体を飛ばした。


『渕上さん。下げ過ぎ注意です』

「高度が低ければ低い程レーダーの探知範囲が狭くなるらしい」

『それにしても下げ過ぎです。そこの渓谷は起伏の激しいエリアです。下げ過ぎると地面と激突する可能性があります』

「・・・了解だ」


 若干苛立ち気味に返した渕上。そんな渕上のバイタルはイエローゾーンに到達しようとして居た。


『(焦りは禁物だぞ。慌てず・急いで・正確に、だ)』

「わかってるよ」


 再び細い息を吐く渕上。

 渓谷の中程まで来るとサーチライトの数が一気に増えた。


『こっからは無線封鎖を行います。渕上さん、気をつけて』

「パド。無線封鎖開始」

「リョーカイ・リョーカイ」


 表情を険しくしながら再び細い息を吐く渕上。

 上下左右に動くサーチライトの動きを予測し、それを避けながらレーダー網を掻い潜るのは並大抵の技量では無理だった。


(クソッタレ)


 脳内で吐き捨てる様にそう言った渕上は正体不明の苛立ちにも襲われて居た。

 スラスター出力を調整しながら只管渓谷内を飛ぶ渕上。バイタルは既にイエローゾーンを指して居た。

 自分でも分かるぐらいに心拍数が上がっているのを感じ取った渕上は何度目かも分からない細い息を吐いた。


(まだ続くのか?。流石に嫌になって来たぞ)


 渕上はレーダーに目を落とすと渓谷がまだ続いている事を確認した。

 苛立ちと訳の分からない焦りに襲われる渕上。そんな中、渕上の元に、とある希望の光が見えて来た。


「サーチライトが少なくなった?」

『(近いぞ。あと一息だ)』


 表情を鋭くする渕上。操縦桿を強く握りしめ、慎重に操縦する中、パドから無線封鎖解除要請が来た。


「来たか。よし、無線封鎖解除」

「リョーカイ・リョーカイ」

『渕上さん!』

「やっと人の声が聞けたよ」


 渕上がそう言った瞬間、渕上機は渓谷を抜けるとイータの前線拠点に辿り着いた。


(発電所。アレか!)


 渕上機はライフルを構えると引き金を引き、閃光を撃ち出すと発電所と送電施設を破壊した。


『レーダー網消失確認!。全機、突入!』


 今野の合図でニ方向から突入するRAINBOW.F。渕上機はその間に格納庫内にラーミナビームを撃ち込むと中にある機体を破壊し、次々と誘爆させた。

 渕上機は次に物資庫に狙いを付けるとライフルをマウントラッチに携行させたのちラーミナビームピストルIIを引き抜くと物資庫にラーミナビームマグナムを撃ち込み、破壊した。

 爆炎と黒煙に包まれ始まる中、今野達も前線拠点に到着。破壊活動を開始した。それと同時にシェルター内からイータ人型機動兵器が出撃、渕上らを攻撃し始めた。


「漸くお出ましか。ったく遅ぇな」


 渕上機はイータ人型機動兵器に向かってラーミナビームマグナムを撃ち込んだ。

 そんな中、倉又機は地面に着地するとシェルターに向かってラーミナツインビームサブマシンガンを撃ち込みシェルター内でイータ人型機動兵器を爆散させた。


『北東より、敵増援接近』

『グループA、迎え撃つわよ。続いて』


 4機のリベラシオンが北東へ飛ぶと今野機は右手に構えるレールガンでイータ人型機動兵器を狙い撃ったのち左手に構えるレーザー砲で薙ぎ払った。

 今野機がレーザー砲とレールガンを交互に使い分ける中、芹沢機と中井機が前に出た。芹沢機は腕部170ミリ単発砲を撃ちながらイータ人型機動兵器と距離を詰めると右手に構えるラーミナバスターブレイドでイータ人型機動兵器を殴り斬ったのち別のイータ人型機動兵器のコクピットを貫くとワイヤークローを射出し、別のイータ人型機動兵器のコクピットを破壊した。

 中井機はラーミナ太刀を構えるとイータ人型機動兵器のコクピットを貫いたのちラーミナ太刀を引き抜くと振り向き際にイータ人型機動兵器の頭部を斬り飛ばした。そして腕部170ミリ単発砲をゼロ距離でコクピットに撃ち込むと2機目を仕留めた。両腕の腕部170ミリ単発砲とアームラーミナビームサブマシンガンを撃ちながらイータ人型機動兵器を次々と蜂の巣にした中井機はラーミナビームブレイドを構えて突っ込んで来たイータ人型機動兵器の斬撃をひらりと交わすとコクピットを貫いた。


(中井さんと芹沢さん。アレが彼らの役割。けど私の役割は違う)


 風間機は芹沢機や中井機、今野機の攻撃を突破したイータ人型機動兵器にレールガンを撃ち込むと人型形態に変形したのち別の機体にレールガンを撃ち込むと新手のイータ人型機動兵器に100ミリロングレンジマシンガンを単発で1発1発丁寧に撃ち込むとコクピットを破壊し、撃墜していった。


「私の後ろには行かせない。それが私の役割」


 そう呟いた風間は1機ずつ丁寧に撃墜していった。

 一方で、

 シェルターから出撃したイータ人型機動兵器を撃墜しながら施設の破壊活動を行うグループB。

 渕上機は左手に構えるラーミナビームピストルIIを管制塔に向けると引き金を引き、ラーミナビームマグナムを撃ち込んだ。


(やはり出力が上がってる。ラーミナビームピストルを弄ったって話は聞いてないが....)


 微かな違和感を覚える渕上。

 管制塔を火だるまに変えた渕上は軽く目を見開いた。


『渕上さん。左側より隊長機接近』

「あのデカブツさんか」


 イータ隊長機は小型の何かを射出しながら渕上機に迫った。


「ファング?、いや違う」


 小型の何かはビームを放ちながら予測不能な動きをしながら渕上機に襲い掛かった。


(上等!)


 渕上機はビームを避けながら小型機の未来位置を予測してラーミナビームマグナムでそれを撃ち落としていった。するとその隙を突く様にイータ隊長機は爪先からラーミナビームブレイドを展開すると渕上機に斬り掛かった。渕上機はそれをひらりと交わすとラーミナビームピストルIIからラーミナビームブレイドを展開し、イータ隊長機の右脚を切断した。そして高度を下げながら小型機から放たれるビームを避けるとビームを撃ち尽くして突っ込んで来た小型機を全て撃ち落とした。


「ッ、しまった」


 渕上は僅かに反応が遅れた。地面に着地した瞬間、ラーミナバスターブレイドに似た大剣を振り上げたイータ隊長機が渕上機のすぐ側まで来て居た。

 渕上機はラーミナビームピストルIIでイータ隊長機が振り下ろした大剣を受け止めると2機は鍔迫り合い状態になった。


(あっぶねぇ〜。対ラーミナコーティング等が施されてなかったら、粉々だぜ)


 渕上機はスラスターを全開で吹かしたのちイータ隊長機の大剣を弾き返すとイータ隊長機の右肘を撃ち抜き吹き飛ばすとラーミナビームブレイドを展開してイータ隊長機に急接近した。イータ隊長機はスラスターを吹かして渕上機に急接近すると左手で渕上機の頭部ユニットを鷲掴みにした。すぐさま左腕を切断した渕上機はラーミナビームマグナムで左爪先を破壊するとラーミナビームブレイドでコクピットを貫いた。


「手強かったな」

『流石です渕上さん。残りも片付けちゃいましょう』

「ああ」


 倉又からの通信に返事を返した渕上はラーミナビームピストルIIを構えると飛び上がった。





「流石だな」

「拠点制圧率86%。たった7機でしかもこんな短時間で....」


 クラウスの横に居たユーリウスはRAINBOW.Fをクラウスと共に褒めた。


「これだけの戦果を出されてはな、頼りたくもなるな」

「自国の戦線ぐらい自国で、と言いたい所ですが....」


 クラウスは口元に手を添えると軽く唸った。


「ペーター中佐の考えも分からんでもない。だが頼れるもの、使えるものは使わんとな。言い方悪いが、利用させて貰うとしよう」


 クラウスは静かにそう言うと作戦司令室から外に出たのち自分の機体を見上げた。


(少しは、コイツを休ませられるかな?)


 一方で、

 軽めの仮眠から目覚めた松田は戦闘が行われてるであろう方を向いた。


「あっ、松田さん。起きてたんですね」

「ん?、ああ桑原さん」


 松田は桑原の方を向いた。桑原は若干疲れた様な顔をして居た。松田同様に軽めの仮眠しか取れてないのだ。


「1時間半ぐらい、ですかね。寝たの」

「そうですね。本当はもう少しぐっすり寝たかったんですが、どうも気になってしまって....」


 松田は頷きながら再び戦闘が行われてるであろう方を向いた。


「渕上、戦い辛い思いをしてるかもしれませんね」

「え?、どうしてですか?」

「ラーミナビームピストルIIのデータが欲しいから、積極的に使ってくれって言ったんです。多分ライフルで戦った方がやり易いところも、ピストル使ってると思いますよ」

「そう、ですか....」


 桑原は一瞬俯くと松田同様に戦闘が行われてるであろう方を向いた。


「渕上さんなら、大丈夫ですよ」

「ですね」

「....」

「・・・」


(どうしよう。会話が続かない)


 桑原は心にあるモヤモヤをどうにかしたくて仕方なかった。





 左手に構えるラーミナビームピストルIIを左に向け、左側から攻撃してくるイータ人型機動兵器を仕留めた渕上。

 当然、加瀬も負けては居ない。

 今まで施設破壊を優先して居た加瀬機はラーミナソードをソードモードにするとイータ人型機動兵器に斬り掛かった。

 機動力と加速力を活かしてすれ違い際に次々とイータ人型機動兵器を上下真っ二つに斬り裂いていく加瀬機。ツインレールガンのレールガンで中距離のイータ人型機動兵器を仕留め、ツインレールガンのラーミナビームマシンガンで近距離のイータ人型機動兵器を仕留め、至近距離にはラーミナソードで斬りかかるその様は機動力に特化しながら全距離に対応した加瀬らしい戦いだった。


「まだ出てくるか?」

『シェルター内にまだ複数居る模様です』

「成る程。だったら、」


 雨宮の報告にそう返した加瀬はスラスターを吹かすとツインレールガンのラーミナビームマシンガンを撃ちながらイータ人型機動兵器が湧いて出てくるシェルターの中に突っ込んだ。


(内部も破壊させて貰う)


 シェルター内で待機して居たイータ人型機動兵器をラーミナソードで次々と斬り裂き、設備らしきものをツインレールガンのレールガンで破壊していく加瀬機。獲物を素早く正確に斬り裂く様は小烏丸の異名に相応しい立ち振る舞いだった。


(この規模だと、前線拠点を完全に無力化するには、バンカーバスターが居るな)


 表情を鋭くする加瀬。

 加瀬機はツインレールガンのレールガンとラーミナビームマシンガンを同時に撃ちながら破壊の限りを尽くすが無力化には程遠かった。


 結局、イータ人型機動兵器を全て破壊した加瀬はシェルター内の完全破壊を断念。黒煙と共にシェルターから出ると渕上と今野に状況を報告した。


「前線拠点の完全無力化には地中貫通爆弾による攻撃が必要です」

『了解。目標達成率は97%ってところね。一旦引き上げて、クラウス司令に相談してみましょ』


 増援を蹴散らしたグループAはグループBと合流すると黒煙だらけのイータ前線拠点より離脱した。


『渕上さん』

「?、雨宮か。どうした?」

『渓谷を飛んでる時、バイタルがイエローゾーンになりました。・・・危ないところです』

「....通りでイライラしてた訳だ。俺もまだまだだな」

『いえ、バイタルはともかく、あそこを飛び抜けた事は誇っていいわ』

「隊長....」

『貴方の技量は、いえ、この部隊全員の技量は、計り知れないわ。これからも期待させて貰うわよ』


(西日本最強のカリスマが何言ってんだか)


 そう思った渕上は静かに苦笑いを浮かべた。

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