第十七話「過去の自分との違い」
キャンプの防衛隊を全滅させたイータ人型機動兵器群はコンテナを輸送する輸送隊を先行させた。するとイータは空中でコンテナを操作してハッチを開くと中から小型の四足歩行型ドローンをばら撒いた。
四足歩行型ドローンは地面に着地するとマシンガンを撃ちながら様々な物を破壊するか、人を殺していった。
丁度そこへ一筋の閃光が走り、1機のイータ人型機動兵器が破壊された。次に走った閃光はコンテナを貫き破壊した。イータ人型機動兵器は一気に散開すると迎撃体勢に移行した。
『チッ、遅かったか』
『避難民キャンプの人達は?』
「此処は任せる!」
『え?』
『ッ!』
渕上は加瀬と倉又にイータ人型機動兵器を任せると機体を降下させた。
「急げよ。ヴェヒター」
当然イータもそれを黙って見ていない。数機のイータ人型機動兵器が渕上機を追うと渕上機を攻撃がした。
渕上はそれを避けるとラーミナビームスナイパーライフルIIをライフルモードに切り替えるとそれらを全て撃墜した。
「これは....」
イータがばら撒いた四足歩行型ドローンにより殺戮行為をモニター越しに見た渕上の中で名古屋の惨劇がフラッシュバックする中、渕上は奥歯を噛み締めた。
「これが、コイツが、民間人にやる事か!」
渕上機はライフルを投げ捨てるとホルスターからラーミナビームピストルIIを引き抜き、ドローンを撃ち抜き破壊し始めた。
一方でそれを知った倉又と加瀬も怒りを隠せない。
「無人兵器による、虐殺行為....」
ラーミナツインビームサブマシンガンを撃ちながらラーミナビームブレイドを抜刀した倉又機はイータ人型機動兵器に斬り掛かった。
「自ら引き金を引こうとしないなんて、罪の意識を持つ気が無いの?。非道で下劣、許せない!」
ラーミナツインビームサブマシンガンでけん制射撃をしながらラーミナビームブレイドで次々とイータ人型機動兵器を斬り裂く倉又機。
当然加瀬機も負けてはいない。
「ラーミナツインレールガン、最大出力!」
ラーミナツインレールガンのレールガンから超高速で放たれる弾頭。3機撃墜した加瀬機はラーミナソードをソードモードにするとラーミナツインレールガン下部のスパイクブレイドで殴り叩いてからラーミナソードで斬ると言うオーバーキルをした。
ドローンをばら撒いた事で満足したのか、残ったイータ人型機動兵器は怒りを露わにする加瀬機と倉又機と交戦を避ける様に撤退した。
「逃す訳ないでしょ。罪、償って貰うわよ」
(お前らの罪を、数えろ)
普段は追撃しない彼らだが今日は違った。
そこへ芹沢ら第二陣が到着。彼らは追撃する加瀬と倉又を見て動揺した。
『なんの真似だ』
「コイツらだけは逃せねぇ。ドローンばら撒いてはいさようならなんて、させる訳ねぇだろ」
『成る程。遅かったって訳ね』
『そう言う事なら、了解』
状況を察した芹沢隊は撤退するイータ人型機動兵器群の前に立ちはだかるとイータ人型機動兵器に対して攻撃を開始した。
その頃、イータがばら撒いた四足歩行型ドローンを全て破壊した渕上は機体を着地させるとシートベルトを外した。
「加瀬、そっちは任せる。俺は生存者を探す」
『了解した』
渕上はショルダーホルスターを背負い込むと拳銃に初弾を装填したのち安全装着を掛け直すとホルスターにしまったのち機体ハッチを開けた。
「ウッ、」
ハッチを開けた瞬間、機内には血の匂いが充満した。渕上は僅かにそれに怯むがすぐさま我を取り戻した。
「パド、機体を頼む」
「リョーカイ・リョーカイ」
機体から降りた渕上は拳銃を構えたのちタクティカルライトを点灯させるとフランス語で辺りに呼び掛けた。
「誰か、居ませんか?誰か!」
辺りを照らしながら只管生存者を探す渕上。だが見えるのは死体・死体・死体。原型を留めてるのもあれば、腕や脚が千切れてるものあり、中には頭の無い死体もあった。
生存者は絶望的と思ったその時、1人の鳴き声が聞こえた。
「ッ!」
渕上はすぐさま走った。そして瓦礫と化した鉄板をどかすと目を開けたまま息絶える死体を必死に譲る1人の男の子が居た。
「此方第五独立遊撃部隊渕上。至急至急、救護隊応援要請願いたい!」
『了解。到着まで5分』
渕上はタクティカルライトを消したのち拳銃をホルスターに戻すと少年の側にしゃがんだ。
「お母さん!お母さん!」
「・・・」
渕上は静かに少年の頭を撫でると母親の目をそっと閉じた。
「勇敢だよ。お母さんは君を護ったんだ。その命、無駄にしちゃダメだぞ」
少年にそう言った渕上はゆっくり立ち上がると再びホルスターから拳銃を引き抜き、タクティカルライトを点灯させた。
結局渕上は、少年含め3名の生存者を見つけ出した。
その後の救護隊の捜索により、新たに11名の生存者が発見された。
※
救護隊に後を任せた渕上は自分の機体に戻ると拳銃から弾倉を抜き、薬室を空にしたのち飛び出した実弾をキャッチするとその実弾を弾倉に押し込んだのちもう一度薬室が空か確認すると弾倉を戻し、拳銃をケースに戻した。
(酷い有様だったな。・・・)
渕上は長めに息を吐くと機体を離陸させたのち上空に待機してた倉又機・加瀬機と合流した。
「芹沢達は?」
『別動隊を叩きに行った』
「雨宮、俺達への任務は?」
『待ってください。・・・ッ、其方に接近する敵部隊を捉えました。迎撃に向かってください』
「了解した。・・・念の為、加瀬機は此処に残って救護隊の護衛に付け」
『了解した』
「倉又、行くぞ」
『はい!』
スラスターを吹かせ、機体を前進させる渕上。数秒後、渕上は「いっけねぇ」と呟いた。
(ライフル....仕方ない。ラーミナビームピストルIIでやるか)
ライフルを投げ捨てた事を思い出した渕上は内心舌打ちをするとそのまま機体を飛ばした。
数分後、イータ人型機動兵器群を捉えた渕上はすぐさま指示を出した。
「倉又は空を飛ぶ編隊を頼む。俺は陸を走る奴らをやる」
『了解』
渕上機は急降下するとホルスターからラーミナビームピストルIIを引き抜き、ラーミナビームマグナムの雨を降らせ、次々とイータ人型機動兵器を蜂の巣にするとイータ人型機動兵器群の前に着地したのちラーミナビームブレイドを展開するとイータ人型機動兵器群に突っ込んだ。
胴体部をコクピットごと斬り裂き、スラスターを吹かして次の獲物に斬り掛かるその様はスナイパーには不似合いだった。
「ッ」
左手に構えるラーミナビームピストルIIからラーミナビームブレイドを消失させた渕上は左側から迫るイータ人型機動兵器にラーミナビームマグナムを喰らわせた。そして再度ラーミナビームブレイドを展開するとイータ人型機動兵器に斬り掛かった。
(退く気はナシ、か....)
そう思った矢先、前と後ろからビームブレイドを構えて斬り掛かってくるイータ人型機動兵器を捉えた渕上は前方からの斬撃を受け止めたのち右腕に装着された腕部170ミリ単発砲をコクピットに撃ち込んだのち後方からの斬撃を受け止めると左手に構えるラーミナビームピストルIIの銃口を後ろに向けたのち肩部とブースターポットの間を撃ち抜き、イータ人型機動兵器を損傷させるとそのまま斬り裂いた。
丁度その頃、上空のイータ人型機動兵器群を掃討し終えた倉又は機体を降下させるが、渕上機の芸当を見るや否や息を飲んだ。
(後ろ向きでなんて正確な射撃。一方間違えれば自分の機体を傷付けるかもしれないのに....)
倉又がそう思ってる間に地上部隊も掃討が完了。渕上機はスラスターを吹かしてジャンプすると倉又機と合流した。
「雨宮。他に敵部隊は?」
『反応ありません。前線拠点からも帰還命令が出てます』
「了解。加瀬にも伝えてくれ。・・・帰還するぞ」
※
機体を格納庫に収めた渕上は通路の手摺りに寄り掛かるとヘルメットを外した。
「ライフル。紛失させたみたいですね」
「すみません。俺が未熟でした」
「いえいえ。丁度ラーミナビームピストルIIの運用データが欲しかったので、構いませんよ。デルタモデル、換装させておきますね」
「頼みます。ついでに腕部ロケット砲も140ミリ砲に戻しておいて貰えますか?」
「了解しました」
松田は早速機体のメンテナンスに取り掛かった。そんなヴェヒターを見ながら渕上はさっき見た惨劇と去年の7月に見た名古屋の惨劇を照らし合わせた。
(名古屋の時は跪いて絶望するしか出来なかったが....俺も少しは強くなったのかな?)
過去の自分との違いを思い出す渕上。
名古屋の時も生存者捜索の為にコクピット外へ降りた。だがその時はあまりの光景を前にその場に跪き、唖然とするしかなかった。
だが今回はちゃんと生存者を発見出来た。
過去との違いを実感した渕上はゆっくりと通路を歩き始めた。
(まっ、今回はライフル捨てちまったけどな....な〜んで今回は投げ捨てたかな....)
そう思いながら苦笑いを浮かべた渕上は廊下を歩くと報告のため、今野隊長の元を訪れた。
何処か重たい表情で廊下を歩いていた渕上は高木と今野が一緒に居るところを見つけると声を掛け、報告を始めた。
「そう....生存者の捜索と発見、御苦労様」
今野は渕上にそう言うと険しい表情を浮かべた。それを見た高木は今野と渕上の肩に手を添えた。
「難しい事考えず、休めるうちに休め」
高木は2人の肩をもう一度叩くとその場から立ち去った。
「・・・」
「ポジティブに考えろ。って事ですかね?」
「そうかもしれないわね。・・・間に合わなかったのは事実でも、救えた命はあったのだから、ね」
何処か濁した様にそう言う今野は渕上に「報告御苦労様。ゆっくり休んで」と言うとその場から立ち去った。
「・・・」
※
【5月29日 金曜日】
渕上含め多くの者が誕生日を海外で迎えたが、戦況は悪くなる一方だった。
幾つかのルートでドーバー海峡含めた海域の強行偵察を行ったが、その度に3隻以上のオンブル・ア・ベットが立ちはだかり、現在確認されているだけでも25隻のオンブル・ア・ベットが確認されていると言う状態だった。
「参ったものだな。この状況は」
「イギリス奪還、かなり厳しいですね」
「そもそもガルム・ウォードックだって居る。無闇には動けんさ」
高木と木曾はそんな話をしながら廊下を歩いていた。
戦況が戦況。パイロットだけでなく、大隊長も頭を抱えていた。
「イギリス奪還の援護の為に派遣されたってのに、これじゃあ....」
「手詰まり、どうにもならんな」
そう言うと高木は木曾と別れると自室へ向かった。すると高木は後ろから声を掛けられた。
「高木大隊長」
「?。雨宮、どうした?」
高木は雨宮の方を向くと雨宮と顔を合わせた。雨宮は高木の前に立つとその場で俯いた。
「私、渕上さん達の役に立ててるんでしょうか?」
「ん?、どうしてそう思う?」
「・・・渕上さんの技量と判断力なら、私のオペレートなんて必要ないんじゃ....と、思う時が多々あるんです」
「・・・渕上から何か言われたか?」
「いえ。....ただ、」
俯く雨宮を前に高木は鼻を鳴らすと軽く笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。君のオペレートは彼らの役に立ってるよ」
「ですが、」
「信用していない人間に、判断を委ねたり意見を聞いたりはしないよ。もっと自信を持つべきだ」
「・・・」
「オペレーターがそんなんじゃダメだな〜。オペレーターがふらついてたら、パイロットは前線で何を信じれば良い?」
「....」
「オペレーターなら、自分に自信持ってシャキッとしろ!」
高木はそう言うと軽く微笑んだのちその場から立ち去った。
雨宮は高木の言う事を全ては受け入れる事が出来ずゆっくりと歩き始めた。
気が付けば雨宮は格納庫に来ていた。
「やはり前線で出来るメンテには限界ありますね」
「設備はそれなりに整ってそうですが?」
「いや、やはり国産は母国メンテに限ります。確かに野外整備よりはメンテナンス出来ますが....早く母国に帰りたいですね」
渕上と松田は同時に機体の方を向いた。
設備があるとは言え此処は外国。日本製のリベラシオンをメンテナンスするには限界があった。
そんな中、渕上は雨宮の方を向くと軽く会釈した。
「渕上さん....」
「?、どうかしましたか?」
「私、あなた方の役に立ててるんでしょうか?」
「・・・?」
渕上は松田と顔を合わせると呆れ笑みを浮かべたのち雨宮の元に歩み寄った。
「何馬鹿な事言ってるんですか?」
「え?」
「役に立ってない訳ないじゃないですか?。大助かりですよ」
「ですが、」
渕上は溜息に近い息を吐くと微かに笑みを浮かべた。
「一昔前の自分を見てる気分です。自分に自信が持てず、自分を過小評価してしまう。・・・雨宮さんは、かなり凄い事やってのけてますよ」
「そうでしょうか?。私なんかより、渕上さんの方が、」
「他人と比べてどうするんです?」
「え?」
「これは俺の教官が言っていた言葉です。“他人と比べるな。過去の自分と比べろ”ってね」
「渕上さん....」
雨宮は高木に言われた事を思い出したのちハッとした表情を浮かべると表情を微かに鋭くした。
「渕上さん、私は、....私は、貴方に貰ってばかりで、何も返せてない気がします」
「そんな事はないと思いますが....」
雨宮は鋭くもシャキッとした表情を浮かべると拳を握った。
「これからも、渕上さんの役に立てる様に頑張ります!」
「お、おう....俺だけじゃなくて、倉又少尉や加瀬少尉の事も忘れずにな」
「はい!。ありがとうございます」
「・・・」
(俺なんか変な事言ったかな?。なんか凄い勢いで立ち直ったけど....)
その場から立ち去る雨宮を見て渕上は首を傾げた。それを見た松田は微かに笑みを浮かべた。
(あれ、絶対にスイッチ入ったよな)
そう思った松田はデータ端末を手にするとヴェヒターの再点検を始めた。
そんな中、雨宮と入れ違いで格納庫を訪れた倉又は渕上に声を掛けた。
「倉又少尉。どうかしましたか?」
「本当、貴方の戦いを支えるモノってなんなのかしらね」
「・・・過去の自分と異名に恥じぬ戦いをしたい。ただそれだけなんですがね」
「貴方は常に前を向いてる様な気がするわ」
「そんな事ありませんよ。この前だって、倉又少尉に励まして貰いましたし....ただ、成る可く人前では前を向こうとしてはいます」
そう言うと渕上は手摺りから身体を起こすと倉又の元に歩み寄った。
「ポジティブな時はこんな事言えますが、ね....」
渕上はぼそっとそう呟くと通路を歩き格納庫から出て行った。
「彼奴も未成年だ。不安定な所は多い。そこをどう支えるかが、俺達の仕事でもありますよ」
松田はデータ端末を操作しながら倉又にそう言った。倉又は軽く拳を握ると渕上の背中を見送った。
(まだまだ、遠いな....)




