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第七話「進化を続けるということ」

(この状態で接近戦だと?)


 ほんの一瞬、僅かに固まる渕上。だが渕上は機体の声で我に帰る。


『(シールドバッシュだ!)』

「!」


 すぐさま渕上は行動を起こした。

 ライフルモードのラーミナビームスナイパーライフルIIを真上に投げたのち左肩部に装着されたバリアアサルトからラーミナビームシールドを展開した渕上機は斜め上から斬り掛かって来るイータ人型機動兵器にシールドバッシュを仕掛けると右腕に装着された腕部170ミリ単発砲をコクピットにゼロ距離射撃するとシールドバッシュで残骸を押し飛ばしたのち右斜め下から斬り掛かって来るイータ人型機動兵器に腕部170ミリ単発砲とアームラーミナビームサブマシンガンを同時に撃ち込み撃墜すると投てきしたライフルをキャッチしたのち再びラーミナビームでイータ人型機動兵器を撃墜し始めた。


(凄い....)


 防衛戦力の7割弱を1人で引き付けながらも全く退かない姿勢で交戦する渕上を見て居た倉又は、心の中でそう思った。


(私も負けてられない。渕上さんの為にも、いち早く進軍して、拠点を潰さないと)


 追い討ちを掛ける様にそう思った倉又はキルペースを挙げた。

 加瀬機が防衛設備を、渕上機が防衛戦力を引き付けてるのを好機に捉えた倉又だったが、そう簡単に基地への侵入を許してくれる程、イータは甘くはなかった。

 そんな中、ラーミナツインビームサブマシンガンで次々とイータ人型機動兵器を蜂の巣にする倉又機。機動力と近距離戦向け武装を武器にリベラシオンを自分の身体の様に操りながら立ち回るその姿は加瀬や渕上に遅れは取らないものだった。

 キルペースを上げるべく、ラーミナツインビームサブマシンガンと100ミリサブマシンガンを同時に構える倉又機だったがキルペースを挙げたのは倉又だけではなかった。


「ッ?」


 倉又機の前に出たペーター機。ラーミナナイトセイバーを二刀流で構えながら次々とイータ人型機動兵器を上下真っ二つにするペーター機。

 “あの世に逝った仲間への手向けとなる戦果を出したい”

 その考えに支配されて居たペーターは隊列ガン無視で戦闘を行った。


(私が道を開くまではまだ後ろに居て欲しかったんだけど....)


 内心混乱する倉又。だが戦局はそんな事は許してくれなかった。

 ペーター機を集中的に狙うイータ人型機動兵器。倉又機はスラスターを吹かすとペーター機の援護に回った。

 そんな中、加瀬機構える大型ツインレールガンから放たれた弾頭がゲート周りの対地兵器を破壊した事により突破口が出来、それによってペーター機は更に加速した。


『中佐を孤立させるな。進め、進め!』

『日本人に遅れるな!』

「ッ」


 倉又機はスラスターを吹かすと地面の上を滑りながら只管撃ちまくった。


「ペーター司令!下がって下さい。そのままでは孤立します!」


 倉又は叫んだ。だが、ペーター機は一向に下がらない。それどころかキルペースに凄みが増していった。


『これ以上日本に頼っては、顔向け出来ないんでな』

「そういう考え辞めませんか!。仲間に頼る事の、何が悪いんです!」


 必死に訴える倉又。だが彼らは下がらなかった。

 そうこうしているうちにペーターの部隊が遂に基地内部に突入した。


『敵機動兵器は俺がやる。お前達は基地設備を潰せ』

『『ハッ!』』


(こういう状況苦手なんだよな〜。まっ、やるだけやるか)


 内心溜息を吐いた加瀬はそう思いながらイータの前線拠点の設備を潰した。

 その頃、単騎でかなりの数のイータ人型機動兵器を引き付ける渕上は操縦桿を少し強めに握った。


(晴翔さんのチューンが入ったとは言え、本当に自分の身体の様に動かせる様になって来たな。・・・ガルディアン、お前に叩き込まれた事、漸く形になって来たぜ)


「皆んな....心置きなくやらせて貰うぜ」


 心の中の何かが外れた渕上は更にキレよく操縦桿を動かした。


『(いいぞ渕上。その調子でドンドン行け)』

「りょーかいッ」





〜フランス戦線〜


 秋山機は飛行形態から人型形態に変形すると抜刀したラーミナビームブレイドを構えながら急降下し、イータ人型機動兵器を2機同時に斬り裂いた。すぐさま飛行形態に変形し直した秋山機はラーミナツインビームサブマシンガンを撃ちながらイータ人型機動兵器群を只管撹乱していった。

 そんな秋山機の挙動によって散らばったイータの人型機動兵器を茅野機が次々と撃ち落としていった。そんな茅野に続く様に森川機・酒井機・畔木機も次々とイータの人型機動兵器を撃墜していった。


(ある程度形になって来たな。よし!)


 連携力向上を実感する秋山。

 秋山機は急降下しながら人型形態に変形するとラーミナツインビームサブマシンガンを超至近距離で撃ち込み1機撃墜すると再び飛行形態に変形し、急上昇するとラーミナツインビームサブマシンガンを乱射して2機のイータ人型機動兵器を撃墜した。

 ラーミナビームブレイドによる一撃離脱戦法を得意としていた秋山にとって、射撃武器の運用は以前まではサポート枠でしかなかった。それが今はメインウェポンとして扱う程にまで進化していた。

 “秋山が掻き乱し、他の4人が格好撃破する”

 そんな戦い方を基本とするPROJECT.F グループB。

 秋山機は飛行形態から人型形態に変形すると勢いよくラーミナビームブレイドを振り回し、4機のイータ人型機動兵器を撃墜すると、斜め上に居るイータ人型機動兵器にラーミナツインビームサブマシンガンを撃ち込むと撃墜した。


「全機フェイズ2!」


 秋山の号令のもと、戦術が切り替わった。

 茅野機は秋山機の後ろに、森川機は酒井機の後ろにそれぞれ着くと互いの背中を守り合いながら戦った。畔木は飛行形態に変形すると2組の死角をカバーする様に立ち回った。

 秋山はチームリーダーとしては既に渕上の上を行っていた。

 秋山も渕上に負けず、練度を挙げ、“進化”していた。





 渕上らが戦っている頃、夜中の日本海を駆け巡る機体があった。

 鳥海俊輔が操る翔鶴改はラーミナメイスブレイドを二刀流で構えながら両腕に取り付けてある腕部170ミリ単発砲をイータ人型機動兵器に撃ち込んで居た。


「・・・」


 鋭い瞳は無に近く、イータを討つ事に何も感じては居なかった。と言うよりも、鳥海にとっては一種の作業に近かった。

 スラスターを吹かした鳥海機は自慢の機動力でイータの人型機動兵器と距離を詰めると左手に構えるラーミナメイスブレイドでコクピットハッチを殴り飛ばすと右手に構えるラーミナメイスブレイドでコクピットを突き潰した。これがいつもの鳥海のやり方だ。確実且つ迅速に相手を潰す。特に今みたいな一対多の状況では、戦闘スタイルの単調さが目立つ。だが、その戦闘スタイルは面白みがなく単調だが無駄がなく隙が無かった。

 初めての実戦でいきなり11機のイータ人型機動兵器を撃墜した異色なパイロットだが、本人は特になんとも思ってなかった。

 “殺らなければ殺られる”・“殺られる前に殺る”

 それが心情の彼には“確実に殺る”以外何もなかった。だがらこそ、彼にとってイータとの戦闘は作業に近かったのだ。


『相変わらずだな』

「?」


 鳥海はチラッと自分に接近する友軍機に視線を向けた。美濃関訓練学院所属、教官補佐の諏訪部龍臣だった。

 諏訪部機はスラスターを吹かすとラーミナソードをソードモードに切り替えると左手に構えるツインレールガンから弾頭を撃ち出すと2機のイータ人型機動兵器を撃墜した。


「・・・」

『援護する』

「じゃあお願い」


 鳥海機はスラスターを吹かして上昇すると低空の敵を諏訪部に任せた。イータ人型機動兵器をラーミナメイスブレイドで叩き殴ると腕部170ミリ単発砲を撃ち込んだのち残骸を殴り飛ばすとイータ人型機動兵器をクラッシュさせた。

 諏訪部機はラーミナソードでイータ人型機動兵器を上下真っ二つに斬り裂くとツインレールガン下部のスパイクブレイドをヒートモードにすると死角から迫るイータ人型機動兵器を殴り叩き、海上に叩き落とした。

 それぞれがそれぞれのやり方で戦う中、イータは形成不利と判断したのか撤退を開始した。


「逃す訳ないだろ」


 鳥海機はラーミナメイスブレイドをラッチに装着するとウェポンラックからラーミナ太刀を引き抜くとイータ人型機動兵器に斬り掛かった。


(そうだよ。“祢々切丸”なんだから太刀使え太刀)


 内心静かにそう思った諏訪部は苦笑いを浮かべると撤退する気のないイータ人型機動兵器に斬り掛かった。

 鳥海機はイータ人型機動兵器の右腕を肩ごと斬り落とすとコクピットを貫いたのち別方向から斬り掛かって来るイータ人型機動兵器のコクピットを振り向き際に斬り裂いたのち突いた。

 普段鳥海は隊長機との戦闘以外でラーミナ太刀を使う事はない。だが、ここ最近は相手が少数且つ空中戦闘の時にはラーミナ太刀を使う事が増えた。これは鳥海がラーミナ太刀の特性を学習した為とも言えた。

 渕上だけではない、鳥海も諏訪部も秋山も、皆進化していたのだ。


 そして進化を続ける事はパイロットとして最前線に立つ上で最低条件とも言えた。





〜ドイツ戦線〜


 100機以上居たイータ人型機動兵器を殲滅させた渕上はエンゲージタイムを解くと急降下しながら加瀬機の後ろに付くイータ人型機動兵器を撃墜した。


『流石だな』

「流石に来ますね。これは、」

『フンッ、あと一息だ。此処からは助け合いの精神で行こう』

「了解」


 渕上は操縦桿を握り直すと加瀬機にあった立ち回り方を行った。

 加瀬機が拠点破壊を進める中、渕上機は加瀬機に襲い掛かるイータ人型機動兵器を撃墜していった。加瀬機の大型ツインレールガンから放たれる弾頭とラーミナビームが次々と前線拠点を破壊していく中、イータ本隊も撤退を開始した。


「撤退するなら逃せ。各員追撃は禁止」


 渕上は落ち着いた声でそう言うとフゥーッと息を吐いた。


『弔いには、なったかな』

「・・・」

『拠点を潰して敵も撤退。・・・戻るとするか』


 加瀬は静かにそう言うと機体の向きを変え、友軍の前線拠点に舵を切った。


「戻ろう」


 渕上はそう言うと加瀬機に続いてイータの前線拠点跡地を後にした。そんな渕上らのもとに緊急通信が入る。


「ッ」

『前線拠点に再度敵部隊侵攻!』


 雨宮からの通信を受けた渕上は心の中で舌打ちをすると表情を鋭くした。


「加瀬・倉又。先に戻れ。俺もすぐに追う」

『了解した』

『了解です』


(こういう時、スラスター出力が無いのは痛いな)


 そう思いながら加瀬機と倉又機の背中を見守る渕上。ペーターの部隊もスラスターを吹かせながら地面を滑る中、渕上もスラスターを最大出力で吹かすが拡張スラスターあれど1つ1つの出力は低い為、高速移動出来る訳ではなかった。


(この辺も改良かな〜....)


 機体を飛ばしながらそう思った渕上はボォーっと機体のチューン内容を考えていた。


(状況によってスラスター出力を変えられるレバー的な奴がいいよな。....って、俺は何を考えてるんだ。今は前線だ前線)


「ッ」


 何かを感覚的に捉えた渕上はすぐさまレーダーに目を落とした。


「ペーター中佐!左から来ます!」


 そう言いながら渕上は機体の操縦権をパドに預けるとコクピット天井から降りて来たライフル型コントローラーを両手で構えた。


『撤退した敵部隊が引き返して来たか?』

「もしくは、初めから潜伏していたか....」


 静かにそう返した渕上はトリガーを引くとペーターの部隊に迫るイータ人型機動兵器を狙い撃った。

 空中から降り注ぐ閃光に次々と貫かれるイータ人型機動兵器。だがそんな渕上機の無双を許すほど、イータは甘くなかった。


「チョクジョウチュウイ・チョクジョウチュウイ!」

「んだと⁉︎」


 渕上はライフル型コントローラーから手を離すと後ろを振り向いたのちすぐさま操縦桿を握ると左腕の腕部140ミリ連射砲とアームラーミナビームサブマシンガンを同時に撃った。


(急降下奇襲、秋山の真似か?。舐めた真似を!)


 急降下しながら斬り掛かって来るイータ人型機動兵器。渕上は弾幕を張りながらライフル型コントローラーを格納した。

 ラーミナビームスナイパーライフルIIをライフルモードにしたのちマウントラッチに携行した渕上は弾幕を掻い潜ったイータ人型機動兵器に右腕の腕部170ミリ単発砲を撃ち込み仕留めた。


『渕上さん!第二波来ます!』

「見えた!」


 渕上機はホルスターからラーミナビームピストルIIを引き抜くと腕部140ミリ連射砲、腕部170ミリ単発砲を撃ちながらイータ人型機動兵器群と距離を詰めたのちラーミナビームピストルIIからラーミナビームマグナムを撃ち出すとイータ人型機動兵器のコクピットに風穴を開けた。

 通常のラーミナビームとは違い短射程用のラーミナの塊を撃ち出すラーミナビームピストルII。ラーミナビームマグナムは短射程用ライフルにも採用されており近距離・至近距離ではラーミナビームの上を行く威力を発揮する。その為、近距離武器のラーミナビームピストルIIとは相性の良い兵器であった。


(違うんだよやり方が。見様見真似で出来る程、彼奴の戦術は甘く無い)


 腕部の実弾兵装とラーミナビームマグナムを使い分けながら急降下で襲って来たイータ人型機動兵器を次々と撃墜する渕上は内心そう思っていた。

 急降下奇襲して来たイータ人型機動兵器を殲滅した渕上はラーミナビームピストルIIをホルスターにしまうとモニター越しに下を見た。


(地上は片付いたか。流石だな、ペーター中佐)


 渕上機はマウントラッチからライフルモードのラーミナビームスナイパーライフルIIを構えるとスラスターを吹かし友軍の前線拠点を目指した。


『中佐、お見事です』

『これ以上足止めされる訳にはいかない。至急戻るぞ』

『ハッ!』

『敵の前線拠点を落としたのに、我が軍の前線拠点が陥落するのは洒落にならんし、あの世に逝った仲間に顔向出来ん』

「・・・心配は入りませんよ。前線拠点には、隊長や副隊長が居ます」

『そう言ってもらえると有り難いが、日本に頼りぱっなしだな』


(一言多いんだよ一言。俺達の事頼ってくれよ。その為に時差ボケと戦いながら此処に居るんだからさ....)


 静かにそう思った渕上は軽く溜息に近い息を吐くと静かに背凭れに寄り掛かったのち敵襲が無い事を祈った。

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