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第六話「手向け」

【4月30日 木曜日】


 〜ドイツ戦線〜


 中世の騎士が持っていたであろう剣と酷似したブレイド“ラーミナナイトセイバー”を二刀流で構える1機のリベラシオンが同時に2機のイータ人型機動兵器を上下真っ二つに斬り裂くとそのリベラシオンは宙を舞ったのち、1機のイータ人型機動兵器を盾にしたのち自分を攻撃して来たそれのコクピットを貫いた。


「ッ!」


 そんなリベラシオンを操って居たのはペーターだった。司令官クラスになり、リベラシオンに乗る機会が減ったうえに、40代後半になるにも関わらず、その変幻自在のテクニックは、衰えを知らなかった。

 そんなペーターはヘルメットバイザーを挙げるとフゥーッと長めに息を吐いた。


「此処は片付いたか」

『中佐、お見事です』

「せいじは良い。・・・もう少し敵の戦力を削ぐぞ。日本に頼りっきりになる訳にかない」

『ハッ!』

「それに、これ以上戦線が下がる様な事があれば、あの世に行った部下に申し訳が立たん」


 引き連れた部下にそう返したペーターはヘルメットバイザーを降ろすと操縦桿を握り直したのちスラスターを吹かし、地上を高速で移動した。

 そして部下達と合流したペーターは引き摺った表情で微かに笑みを浮かべた。


(今日の戦果は責めてもの手向けだ。もっと敵の戦力を削がねば)


『前方より敵部隊』

「散開!」


 スラスターを吹かし、地面を滑りながら散開するペーターの部隊。

 ペーター機はイータの人型機動兵器の攻撃を華麗に避けると右手に構えるラーミナナイトセイバーでイータの人型機動兵器を斬り裂いたのち左手に構えるラーミナナイトセイバーでイータ人型機動兵器のコクピットを貫いた。


(戦果を手向けにしたいのはアンタだけじゃないんだよ)


 ペーターの戦いを見て居たゲオルクも気持ちは同じだった。

 ゲオルク機は右手に構えるラーミナナイトセイバーでイータ人型機動兵器を斬り裂いたのち左から迫るイータ人型機動兵器に100ミリサブマシンガンを喰らわせ、コクピットを蜂の巣にすると近接武器を構えながら自機に突っ込んで来るイータ人型機動兵器の近接武器を弾き飛ばすと100ミリマシンガンをコクピットにゼロ距離で喰らわした。

 それなりのペースでイータ人型機動兵器を仕留めていくゲオルクだったがペーターに付いて行けなかった。


(射撃武器なしで、どうやったらあれだけのキルペースが作れるんだ....)


『中佐、張り切ってますね』

『完全においてぼりだぜ』

「自国の力を見せつけたいんだろ。ほら、俺達も行くぞ」

『おう』


 スラスターを吹かし、ペーター機を追うゲオルク達。

その時、彼らは気が付かなかった。自分らを狙う影が、じっと見ている事に。

 そんな事に気が付く間もなく、ペーター達は自分らに襲い掛かったイータの人型機動兵器群を殲滅した。

 ペーターは隊列を組み直したのちスラスターを吹かすと地面の上を滑りながら高速移動した。


「この先に、イータの前線の拠点があるんだったな」

『ハッ!此処からでは、まだ距離がありますが』

「そこを叩けば、此処ら一帯の敵戦線を押し下げる事が出来るだろう」

『前線拠点か。かなりの抵抗が予想されますね』

「それを承知で、お前にも出て貰ってる」

『そうですかい』


 ペーターの回答に苦笑いを浮かべながらそう答えるゲオルク。

 次の瞬間、ペーター機のコクピット内にアラートが鳴り響いた。


「オッ?」

『敵強襲!左方向!』

『中佐!』

「ッ!」


(そう簡単に前線拠点に辿り着かせては貰えないか)


 舌打ちをするペーター。だがイータの人型機動兵器はなんの躊躇もなくペーターの部隊にライフルを撃ち込んだ。

 イータは内心こう思って居たであろう、

 “大将がノコノコ出て来るとは、戦法の基本がなってない”、と


『敵強襲!』

『中佐御下がり下さい』

「俺の心配良い。前線拠点に応援を要請しろ!」

『CP CP聞こえるか?。敵の強襲を受けた。至急応援部隊の派遣願う!。ダッ!』


 増援要請するパイロットの乗るリベラシオンに躊躇なくタックルするイータ人型機動兵器。そのイータはリベラシオンの斬撃を弾き返し、ラーミナナイトセイバーを跳ね飛ばしたのち100ミリサブマシンガンで弾幕を張るリベラシオンに追撃を仕掛けた。


「肩付きが2機、厄介だな」

『隊長機が2機係か。面倒ですね』


 ゲオルクの返答を前に引き摺った表情をするペーター。するとその肩付きに、支援要請をした部下が撃墜された。


「密集して居ては格好の的だ。一旦散開し、敵の包囲を分散させろ!」

『しかしそれでは中佐が!』

「俺に構うな。自分の命を最優先しろ!」


 これ以上部下を失いたくない一心で指示を出すペーター。だがイータはそんなペーターの思いを踏み躙る様に襲い掛かった。

 イータ人型機動兵器と鍔迫り合いになるゲオルク機。ペーターの援護に回りたいと思いつつも、イータはそれを許してはくれなかった。


『中佐を護れ!』

『中佐御下がり下さい!』

「ッ」


 ペーター機はラーミナナイトセイバーを二刀流を構えながら地面を滑ると左手に構えるラーミナナイトセイバーでイータ人型機動兵器の構えるライフルを破壊すると右手に構えるラーミナナイトセイバーでコクピットを貫いた。

 そんなペーター機の元に、イータの肩付きが襲い掛かった。


(やるしかないか)


 ペーター機はイータ隊長機のタックルを交わすとすぐさまラーミナナイトセイバーを振り下ろした。だがその斬撃はラーミナビームブレイドによって防がれ、2機は鍔迫り合い状態になった。すぐさま左手に構えるラーミナナイトセイバーで突きを繰り出すがライフルを捨てたイータ隊長機は左手にもラーミナビームブレイドを構えるとその斬撃を受け止めた。


(部が悪いな)


 ペーター機はスラスターを逆噴射させてイータ隊長機から距離を離すと、体勢を立て直したのちイータ隊長機に斬り掛かった。

 セイバーとブレイドを激しくぶつけ合う両者。その間にも別の肩付きによってペーターの部下が1人殺られた。


『肩付きは俺とペーターで抑え込む!他は自分の身を護りながら降り掛かる火の粉を祓え!』


 ゲオルクはそういうと機体をイータ隊長機に突っ込ませた。

 鍔迫り合いになる両者。だがゲオルクは全く退かなかった。相手の斬撃を弾き返したゲオルク機は素早い斬撃を繰り出し、只管攻めるとラーミナナイトセイバーを両手で構え直し、重たい一撃を喰らわせた。

 一方のペーター機は二刀のラーミナナイトセイバーを外側に振り下ろし、相手のラーミナビームブレイドを外側に弾くと左手に構えるラーミナナイトセイバーでコクピットを貫いた。


「増援到着はいつだ?」

『前線拠点も敵の襲撃を受けている模様。到着までには時間が掛かると』

「孤立無援か。敵ながら見事だな」


 操縦桿を微かに強く握ったペーターは表情を鋭く、険しくした。

 そんな中、隊長機を撃墜したゲオルクは次なるターゲットに目を向けて居た。


『肩付きを失った事で敵が乱れてる。ペーター、退くなら今だ!』

「・・・」


(拠点からの支援は期待出来ない。かと言って此処で退く訳にも行かない。・・・どうする?、手向けの戦果としては申し分ない筈だが....)


「もう少し敵を叩くぞ。失った2人の借り、利子を付けてしっかりと返すぞ」

『ハッ!』

『正気かペーター⁉︎』


 ペーターは表情を鋭くした。迷いがないと言えば嘘になるが、ペーターは自分がやるべきだと判断した事をやると決めた。

 すぐさまペーター機は退かないイータの人型機動兵器に斬り掛かった。

 ゲオルクは呆れながらもそれに続いた。





 自分らを襲撃したイータ人型機動兵器群を殲滅したのち新たに襲い掛かって来たイータ人型機動兵器群を撃退したペーター達。機体を地面の上で滑らせる中、ペーターは表情を鋭くした。


(更に2機失って4機損出か。・・・これは相手の前線拠点を叩かないと割に合わない損出だな)


 “手向け”に拘るがあまり我を失いかけているペーター。そんなペーターは自機に迫る閃光に気が付かなかった。


『ペーター!』

「ッ!」


 ゲオルクの呼び掛けで我に帰るペーター。するとペーターは直感的に左を向いた。その瞬間、ペーターの機体は何かに押し飛ばされた。


「ガッ!」


 ペーター機を押し飛ばしたのはゲオルク機だった。

 ゲオルク機はペーター機が居た位置に立つとペーター機が受ける筈の攻撃をコクピットに喰らった。


「ッ!、ゲオルク!」

『前方から、敵部隊接近!』

「ゲオルク!ゲオルク!」

『中佐!』

「ッ!」


 前方から押し寄せるイータ人型機動兵器群は動揺するペーターの機体にライフルの銃口を向けた。

 だがそのイータ人型機動兵器群は空中からの閃光に次々と射抜かれた。


「ッ」

『なんだ?』


 イータの人型機動兵器群を次々と撃ち抜くのは渕上が操るヴェヒターだった。

 ヴェヒターはゲオルク機を撃墜したイータのスナイパーを仕留めると地面に着地した。

 突然の援軍に形勢不利と判断したイータ人型機動兵器群は反転し、撤退を始めた。


『ッ、渕上!』

「逃す訳ないだr」

『ゲオルク!ゲオルク!』

「ッ!」


 渕上は目を見開くとモニター越しにコクピットを貫かれて大破したリベラシオンを見た。

 そんな渕上の脳裏にゲオルクとのやりとりが蘇った。


『・・・』

『....』


 加瀬は険しい表情で無言になり、倉又は静かに冥福を祈った。


「ペーター司令....」

『・・・失った仲間の分まで生き、戦う。その為にも、この先にある前線拠点を潰す』

「無茶だ。貴方方は既に戦力の半数を失ってる。前線拠点だって、いつまた襲撃されるか分からないのに」

『渕上リーダーの言う事に賛成です。此処は一旦退きましょう』


 渕上の提案を後押しする倉又。だがペーターも退かなかった。


『此処で退く訳には行かない。此処で退けば、仲間は犬死にだった事になる。そんな事、許す訳にはいかない』

「・・・」


 渕上の目にもペーターが正気を失っているのは見えて居た。だが、そんなペーターを無理矢理下げる材料を、渕上は知らなかった。


(こういうタイプって精神論言っても伝わらないんだよな〜。どーすっかな〜....)


 渕上は行き詰まった。本来なら後退すべき状況だがペーターの考えや思いを無碍にも出来ない。


「雨宮。敵前線拠点までの距離は?」

『えっ、えーと。・・・近いです。北に2キロです』

「本隊が再度敵襲を受ける可能性は?」

『30%程かと』

「・・・」


 判断材料欲しさに雨宮に情報を尋ねる渕上。だが渕上が決断するにはまだ少なかった。


『なら尚の事進むべきだろ』

「....」


 退かないペーター。渕上は両眼を強く瞑ると半ば判断不能になった。


『雨宮。お前の意見は?』

「ッ」

『え?』

『既存戦力で、前線拠点は潰せるのか?。オペレーターの意見を聞かせろ』

「加瀬少尉.....」


 雨宮もまた無線の向こう側で固まった。すると渕上は勢いよく目を見開いた。


「雨宮。敵前線拠点の規模は?。既存の戦力で損出を出さずに攻略出来るか?」

『・・・』


 血の気を引かせ、表情を強張らせる雨宮。だがそれが見えてない渕上は更に追い討ちを掛ける。


「俺達の手元にあるデータじゃ限界がある。そっちが捉えてるデータと雨宮の判断を聞かせてくれ!」

『・・・、ッ!』


 雨宮は覚悟を決めた。


『前線拠点はかなりの規模で守備戦力もかなり居ます。ペーター司令の部隊だけでは無理ですが、渕上さんのチームと連携してであれば、不可能ではないかと!』

「了解だ。・・・これよりRAINBOW.FグループBは、ペーター中佐の部隊と合同で敵前線拠点を叩く!」


 自分の中から湧き上がる感情を押し殺しながらそう言った渕上は倉又・加瀬からの了承の返答を聞くと機体をジャンプさせ、空を飛んだ。


「俺と加瀬で先に突っ込んむ。倉又はペーターの部隊の進軍路を切り拓け」

『了解だ』

『了解しました』


 渕上は機体を少し進ませると操縦権をパドに託したのちコクピット天井から降りて来たライフル型コントローラーを構えた。

 ヴェヒターの狙撃でイータ前線拠点に奇襲を掛けたところを、別方向から加瀬機がツインレールガン上部砲身のレールガンを撃ちながらイータ前線拠点に距離を詰めた。


「俺が敵を引き付ける。加瀬は拠点防衛兵器を叩け」

『了解した』


 狙撃である程度数を減らした渕上機はラーミナビームスナイパーライフルIIをライフルモードにすると、スラスターを最大出力を吹かしながらすれ違い際にイータ人型機動兵器を何機も撃ち落とすとライフル下部のラーミナビームマシンガンを闇雲に撃ちながら上昇すると自機を追って上昇してくるイータ人型機動兵器群に砲口を向けた。

 その数、100は超えて居た。


「おいでなすったな〜」


 ラーミナビームマシンガンを撃ちながらイータ人型機動兵器群と距離を詰める渕上。

 渕上のビームの避け方は加瀬や中井らとは違った。

 渕上の場合は“経験”がまだ浅い。では光の速さで飛翔するラーミナビームをどう交わしているのか?。

 それは“機体の声”だった。

 渕上含めた一部のパイロットが使える“エンゲージタイム”。これは機体とパイロットの対話が成立して初めて出来る現象だ。渕上は機体の声を通して機体と一体となる事によって機体が捉えたものを自分の身体の様に回避出来るのだ。

 勿論エンゲージタイムを使ってない状態ではその能力は著しく低下する。が、渕上程のパイロットでも“どの機体が撃ってくるか”ぐらいは分かる。相手が100機以上居ようが一度に全機が撃ってくるわけではない。

 そこから来る“予測”と“機体の助言”。これらが合わさる事によって、渕上は相手のラーミナビームやライフルから放たれる砲弾を避けているのだ。


『渕上。こっちは良い。本気でやって来い!』

「了解ッ。じゃあ遠慮なく」


「(エンゲージ)」


 ほんの一瞬僅かに目を見開いた渕上は100機以上居るイータ人型機動兵器群に突っ込んだ。


「行くぞヴェヒター!」

『(おう!)』


 ほんの一瞬両眼のカメラアイを発光させるヴェヒター。渕上とヴェヒターの本気モードが始まった。

 渕上機は何機か撃墜しながらイータ人型機動兵器群の中に突っ込むと拡張スラスターの恩恵をフルに生かし、機体を回頭・旋回させながら只管にイータ人型機動兵器を撃墜していった。


『(後ろだ渕上)』


 渕上機は振り返る事なく即座にライフルの砲口を向けると前を向いたまま後ろのイータ人型機動兵器を撃墜したのち片手撃ちでイータ人型機動兵器を撃墜しながら機体を回頭させ、後ろに機体を回頭させたのちライフルを両手で構えると素早く5機撃墜した。


(流石は晴翔さん。良い仕上がりだ。これなら遠慮なく行ける)


 チューニングの成果を実感する渕上。ギアを挙げ、確実に数を減らす渕上。だが相手は100機以上の大群。同士討ちすら躊躇わなくなったイータの人型機動兵器群を前に、エンゲージタイム状態の渕上でも、全方位をカバーしきれなかった。


「ッ!」


 渕上はフタ方向から同時に格闘近接攻撃を受けた。

 仲間の攻撃すら受ける覚悟のイータ人型機動兵器はラーミナビームブレイドを構えると渕上機に襲い掛かった。

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