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転生村  作者: もつ煮トリガー
転生者狩り
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3/11

歓迎

 あれからしばらくして、日は高く昇り始めていた。時計は8時を示す頃だろう。目を覚ました時既に近くにウーナはおらず、シュウ自身は地面の上に寝そべっていた。シュウは体を起こし、村の方を眺めながら座る。こういう時、彼は魔力探知を限界まで張り巡らせ、その上で自身の体表で魔力を細かく動かし続ける。いつの間にか身についていた習慣だが、これが彼の技術の一端を担っていることは言うまでもない。村の方はと言うと、レオの魔力によってわかりづらいが20人前後の人間がそれぞれ活動しているようで、声などはあまり聞こえない。ウーナのあの特徴的な魔力は今は感じられず、あの魔力はあえて見せていたものなのだと、誘い込まれたのだと気付いた。


 さらに1時間後、シュウは空腹を感じ携帯食料を取り出して食べた。棒状に加工された、乾燥した炭水化物とタンパク質の塊。一日4本が適正量として支給されており、残りは17本。帰りを考えれば滞在は長くて2日で、長期滞在をするなら節約の必要があるがシュウは気にせず適正量を摂取した。


 太陽が高く昇り、正午を迎えた時、どこからかウーナの声が聞こえた。


『昼飯ができたよ。シュウも来な。』


 声は目前にいるかのようにはっきりと聞こえるが、魔力は相変わらず感じられず姿も見えない。もはや疑問を浮かべるまでもなく、シュウはそれを自分の理解を超える物として無視し、指示に従って社に向かった。扉を開けた先には、建物よりも大きな空間が広がっていた。また転移させられたか、もしくはさらに別の異界異能(アルシア)だろう。そして気づくと、目の前には円卓があった。2、30人は座れそうな大きさだが、誰もいない。ただ1つ、椅子が置いてあるのみだった。


『座って。』


 単純な指示。迷うことも無くまた従う。椅子は柔らかく、シュウの知らない素材だった。


『じゃあ、始めるよ。』


 その一言と同時に、円卓に料理が、それを囲う席が、そこに座る人々が現れた。いつも通り張り巡らせていた魔力探知が、突然多数の魔力を補足したことによってシュウの体は反射的に緊張した。


「それではみんな!新入り歓迎会だよ!」


 ウーナは高く通る肉声でそう言った。円卓を囲む人々の半数程度はシュウにあまり興味を示していない様子だったが、もう半数は魔力探知をシュウに向けていたり、あるいは単純に視線を向けたりしていた。興味を示さない者の中には、目の前に現れた食事に既に手を付け始めている者や、ウーナに抗議をする者もいた。抗議の内容からして、彼らもシュウと同様不意に集められたようだとわかる。また、近づいたことでレオとウーナ以外の強い魔力の持ち主の姿とより詳細な魔力の性質が明らかになった。円卓の反対側の方にいる金髪の青年と、半透明の肉体を持つ桃色の髪の少女、の形をした魔物だった。


「災難だったな。」


 すぐ左隣から聞こえたそれは、小さめの低い声だった。魔力も筋肉量も並みに見えて、注意深く観察すれば一流の戦士ほどのそれが備わっていることがわかる。力自体よりもその隠し方から、彼もまた非凡な存在であるとシュウは感じていた。


「俺はウーナを殺そうとしたんだから、むしろ今生きていることが不思議だ。」


 その言葉に、男は薄く髭の生えた口角を上げた


「俺はザック。前世のことだが、俺も暗殺者をやっていた。その上で今こうやってのうのうと生きているのも同じだ。」


 ザックはそう言って、手を差し伸べた。シュウはその手を自然と取った。寸前までシュウは、自分はそれを躊躇うものだと思っていたが、そうはならなかった。言葉以前に、目か仕草か、ともかくどこかにそこはかとない親近感を感じた。そしてそれは、シュウが無意識のうちに、幽かに抱いていた強く恵まれた転生者の姿とは違っていた。


「シュウ、ザックとは合うと思うよ。」


 突然ウーナが口を挟んだ。


「ザックも、面倒見てやりなよ。シュウがオレのおもちゃになっちゃうのはいやでしょ?」


 彼はそう続け、シュウの肩に手を置いた。


「じゃあ、自己紹介でもする?みんなからしてもらう?」


 シュウの脳は後者を選んだ。そして自然と、自己紹介が始まった。円卓を囲む人々が、その席の順序に従って一人一人自分の名前や異界異能(アルシア)や過去や現在について語っていった。シュウはそのほとんど全てを聞き逃してしまい、最後にザックが自己紹介を終えたときにはもう記憶はほとんど残っていなかった。事前に情報を仕入れていたか、実体験と結びつく人物については辛うじて記憶が残っていた。例えばレオ、彼の異界異能(アルシア)は【過剰魔力(オーバード)】だ。魔王討伐については語っていなかったが、異界異能(アルシア)の性質が事前情報と一致した。明所で見ると、やはり彼の肉体はシュウが暗殺してきたどんな人間よりも強靭さを体現していた。トリア="クラシス"=リーパスはこの村の結界を維持し、昨晩シュウを空高く転移させた魔術師だ。異界異能(アルシア)については語らなかったが、事前情報に非戦闘員として記載があった。昨晩の異様に整列された魔力とは違い、今日はごく普通の、むしろ魔力操作が不得手そうな様子であった点に違和感が残った。リーラン="クラシス"=サーペンスは、名だけを名乗った。シュウよりも少し幼く見えるが、事前情報によれば400歳はくだらないはずであり、実際にその目つきは外見にそぐわない鋭さを秘めていた。そして最後のザック。争いを好まないと自称しており、異界異能(アルシア)は【隠れ蓑】という姿を隠すようなものらしい。


「じゃあこれで全員かな。後はボクが自己紹介すれば終わり。」


 ウーナがそう言って立ち上がる。


「ワタシはウーナ="クラシス"=ミュース。【神羅の器】であり最初の転生者、そして初代勇者であってこの村の長だ。ワタシはこの宇宙の全てが敵に回っても、敵対すら許さず消し去れる。だから、キミが生きている今この状況こそが、ボクがシュウに贈る最大の肯定だ。」


 その発言は、普通の人が言えば傲慢や過信そのものだ。しかし、ウーナに限ってはそうではない。シュウは直感でそのことを理解していた。

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