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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間㉗

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閑話㉗ー6  裏切りの末路――斎藤 賢治の場合 後悔編――

 遥香が薄暗い通路を歩いているころ、同じように真っ暗な通路を歩く人影があった。


「さっきの面談では強がって見せたが……はたしてそんなにうまくいくのだろうか?」


 顎に手を当てると立ち止まり、その場で考え込んでいたのは紀元と面談を終えた賢治だった。休憩室を出た彼は、指示されたように明るい通路から一本入った真っ暗な場所を歩いていた。そこは自分が閉じ込められていたような空間と似ていたが、ところどころに電源の入ったモニターが設置されていた。そこには迷宮の各階層の様子が一定間隔で流れ、どんな雰囲気か知ることができた。


「ふむ……俺にこんなものを見せるとはどういうつもりなんだろうな。他の探索者と鉢合わせになるとは言っていたが……どこを見てもそれらしい人物は映っていないぞ」


 設置されたモニターを覗き込むと思わず呟く賢治。そこに映し出されていたのはかつて自分たちが調査していた三階層の様子だった。自分たちがいた時と変わらず、岩山に囲まれたフロアには幸せそうな顔をしたモンスターが昼寝をしているようだった。


「……くそっ……こっちは()()()()()()()あっているというのに……」


 賢治の心にどす黒い感情が込み上げ始めると、徐々に悔しさが顔ににじむ。行き場のない苛立ちを抑えきれず、右手の拳を思いっきり壁に向かって打ち付ける。何度か殴り続けて血がにじんだ拳を見つめると、急に冷静さを取り戻す。


「……俺はいったい何をしているんだ……すべて自分が招いた結果だろうが……」


 どうしようもない喪失感に襲われ、その場に膝をついて項垂れる賢治。


「どれだけ後悔してももう遅い……今は、依頼された任務をこなさないといけないんだ……」


 苦虫をかみつぶしたような表情になり、肩を震わせて後悔する賢治。しかし、彼の叫びは暗闇が広がる空間に響くだけで、誰も声をかけることはなかった。大粒の涙が瞳から零れ落ちると、何を振り払うように勢いよく顔を左右に振る。そして、両手で勢いよく頬を叩き、気合を入れなおす。


「よし……ちょっと気持ちの整理ができた……悔やんでいるのはここまでだ。絶対この任務を成功させて、迷宮から脱出することだけを考えよう」


 言葉を口にした賢治の目から先ほどまでの迷いは消え、何かを決意したような光が宿っていた。そして、あたりを見渡すと並んでいるモニターを一つずつ凝視し始める。


「画面に映し出されているのは迷宮の各フロアの様子だな……そうなると、どこかに俺が今から向かう八階層の様子がわかるものがあるはずだ!」


 呟くと同時に今まで並んでいたモニターを一つずつ確認し始める賢治。しかし、どこを探しても該当するフロアの様子が映ったものは見当たらない。


「クソッ! こんなにモニターが並んでいて、なんで映ってないんだよ!」


 モニターを覗き込んできた賢治が感情を爆発させ、力任せに目の前にある画面を殴りつける。


「び、びくともしないだと……クソッ、俺が殴りつけることも想定済みだってことかよ!」


 渾身の力を込めて殴りつけたはずなのに、画面にはひび割れるどころか殴った跡すらついていなかった。その姿を見て思わず声を上げて笑い始める。


「ふはは! ここまで人をバカにしてくれるとは……やるじゃねーか!」


 不気味な笑い声がフロアに響き渡ると、目の前にあるモニターが切り替わる。そこに映し出された映像を見て、思わず声を失った。


「ど、どこだこれは……が、画面に映っているのはもしかして?」


 映っていたのは真っ暗な通路を歩く遥香の姿だった。以前、自分と一緒に行動していたような明るさは消え、醜くゆがんだ笑みを浮かべて一心不乱にどこかへ向かっているようだった。モニターを凝視していた賢治は、彼女のあまりの変わりようを信じられないといった表情を浮かべている。


「は、遥香だよな……あんな顔は見たことがないぞ? いったい何があったんだ……」


 呆然と立ち尽くす彼の脳裏にある人物の顔が映し出される。


「まさか……アイツが話していた相手が飯島だったのか? もしそうであれば……あの豹変ぶりも納得できる……ヤツの言葉を聞いた人間は、何かにとりつかれたように()()()()という噂は本当だったんだ……」


 裏社会でまことしやかに流れていた噂、それは飯島と接触したものは人が変わったように狂人になってしまうという話だ。薬物を盛られるわけでもなく、ただ話しただけ……それなのに、根本から人の性格まで変えてしまう何かがある故、一部では悪魔ではないかと噂されていた。


「アイツがどこに向かっているかは知らんが……もし同じ階層であれば、最悪の事態を招く前に止めないといけない……」


 モニターから顔を上げ、暗闇の先を見つめて呟く。


「八階層の調査もだが、あんな狂人を世に放たれたら……何が起こるかわからん。何とかして止め、話をしなければ……俺が言えた立場ではないが」


 両手の拳を握り締め、無言で暗闇の先に向かって歩き始める。賢治の姿が暗闇に消えると、遥香を映していたモニターの画面が切り替わる。そして、不気味な赤文字が浮かび上がる。


「ターゲット洗脳完了……これよりプランCを実行します……用済みは速やかに処分を……」

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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