第5話 光の正体とルリの不敵な笑み
渋い顔をしている音羽を見て、瑛士が笑いながら話しかける。
「おいおい、どうした? すでに光の道筋はついているし、ご丁寧にモンスターが導いてくれたんだぞ?」
「それはそうなんだけど……瑛士くんは不自然に光っているあの光景を見て、何も感じないの?」
眉間にしわを寄せて話す音羽を見て、瑛士が一瞬怯む。しかし、すぐに笑みを浮かべると、彼女の肩を叩きながら声をかける。
「まあ、たしかにおかしな光景だが……ここは迷宮だぜ? 現実ではありえないことが起こるなんて普通なんだから、気にしてもしょうがないぞ」
「まあ、そうなんだけど……」
楽観視する瑛士の姿を見て、困ったような顔で何も言えなくなる音羽。すると、怪しげな笑みを浮かべたルリが近づきながら声をかける。
「どうしたんじゃ? ずいぶん楽しそうな話をしているようじゃな」
「おお、ルリか。せっかく目的のものが見つかったかもしれないのに、音羽がやけに慎重になっていてな。だから俺が取ってきてやろうと思ってさ」
「ほうほう。それはありがたい話じゃのう。それで音羽お姉ちゃんは、どうしてそんなに慎重になっているか聞いたのか?」
「うーん、聞いたと言えば聞いたな。あの光が不自然だと言っているが……気にしすぎだろ」
腕を組んで大きく頷きながら語る瑛士に対し、額に手を当てて呆れ返ったようにため息を吐く音羽。対照的な二人を交互に見ると、目を細めたルリが声を上げる。
「ふむ……なんとなく状況はわかったのじゃ。それじゃあ、ご主人……そんなに自信があるようじゃから、さっさと回収してきてはどうじゃ?」
思いもよらぬルリの提案を聞き、驚いた音羽が焦ったような声を上げる。
「ルリちゃん、正気なの? さっきモンスターもあの光の前でなぜか息絶えたし、絶対罠が仕掛けられているに違いないわよ!」
必死に訴える音羽の声を聞き、ルリが片目を閉じながら声を出さずに口だけ動かして答える。
(そんなことわかっておるのじゃ。大丈夫、ご主人はそこまでたどり着けないから心配いらないのじゃ……とな?)
口の動きから言葉を読み取った音羽は、意図を理解するとすぐに落ち着きを取り戻す。同じように口を動かし始めると、すぐにルリは笑みを浮かべて頷く。
(ルリちゃん、わかったわ。それじゃあ瑛士くんに向かわせるように仕向けるわ……ということなのね。さすがルリちゃん、理解が早くて助かるわ)
満足げな顔で頷いているルリを見て、何もわかっていない瑛士が不思議そうに問いかける。
「ルリ、なんかすごく楽しそうだが……なにかあったのか?」
「ん? 別に大したことではないのじゃ。それよりもご主人、早く回収にいかなくても良いのかのう?」
口元を吊り上げ、怪しげに笑いながら声をかけるルリ。その姿を見て一瞬嫌な予感が頭をよぎるが、すぐに顔を左右に振って答える瑛士。
「なんかその含み笑いに怪しさを感じるが……まあ、さっさと回収してこれば済む話だ。それじゃあちょっと行ってくるぞ」
意気揚々と光を放つ場所に向かって歩き始める瑛士。
「おお、ご主人。頑張ってくるのじゃぞ」
「まったく大げさなやつだな。そんなに頑張る必要はないと思うぞ」
笑顔で手を振って見送るルリに対し、少し呆れたような顔で答える瑛士。すると心配そうな表情をした音羽が後ろから話しかけてくる。
「ルリちゃん、笑顔で送り出したけど……本当に大丈夫なの? さっきモンスターの断末魔が響いた時、あの光が一瞬強くなったのよ? それに掘り返していた場所だって、今見えている位置よりも手前の方だったし……」
「ふむ。それは最初からわかっておるのじゃ。ご主人が見ている景色自体が幻のようなものじゃしな」
「は? 幻ですって? どういうことなの?」
話を聞いていた音羽が思わず大声を上げると、ルリが慌てて両手で口を塞ぐように飛びかかる。
「ん? 音羽、今なにか叫ばなかったか?」
「な、なんでもないのじゃよ! ちょっと話していたら音羽お姉ちゃんが驚いただけじゃ」
「そうなのか? そんな驚くようなことって気になるな……」
振り返った瑛士が顎に手を当てて顔を傾げていると、ルリが焦ったような声を上げる。
「ご、ご主人! 女の子同士の話を盗み聞きするのは感心しないのじゃ! 男なら気にせず前を進むのじゃ! 某有名な塾長も言っておるじゃろ? どんな障害があろうともひたすら真っすぐ進めと」
「いや、そのマンガは知っているが……それは違うというか……」
「細かいことなんぞどうでもいいのじゃ! 男なら死ねいなのじゃ!」
「そんな無茶苦茶な……そもそも都合の良いときだけそのネタをぶち込むのはやめろ……」
ルリの無茶振りを聞き、呆れたような顔で答える瑛士。渋々と言った様子で再び前を向いて歩き出す様子を見て、ルリは胸をなでおろす。
「むー! むむむー!」
「あ、忘れておったのじゃ!」
口を塞がれて顔を真っ赤にした音羽が声を張り上げると、慌てて手を離すルリ。
「ぷっはー! めちゃくちゃ苦しかった……」
「ごめんなさいなのじゃ……ご主人もなんとかごまかせたし、まあ良かったのじゃ」
「そうね。私もビックリして大声を出したから……それで、さっき言っていた話なんだけど、見えているのが幻ってどういうことなの?」
息を整えた音羽が問いかけると、怪しげな笑みを浮かべるルリ。
彼女はいったい何を知っているのだろうか?
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