第2話 爆発の正体
「どういうことだよ? 飯島自体が人の道から外れているのは、昔からとはいえ……」
音羽の言葉を聞いた瑛士が眉間にしわを寄せ、怪訝そうに聞き返す。すると彼女は落ち着いた様子で装置に目を向け、ゆっくりと口を開く。
「そうね。飯島が人の道を外れているのは、今に始まったことじゃないわ……だけど、今回の機械は常軌を逸しているとしか思えないの……設置したら最後、それを触った人間まで完全に抹消するようにできているから」
「は? 言っている意味が全く分からないんだが……」
彼女の口から告げられた言葉の意味が分からず、呆気にとられる瑛士。だらしなく口を開けたまま固まる彼を見た音羽が、口に手を当てて小さくため息を吐く。
「しまった……ちゃんと説明しないとわからないわよね。それじゃあ、実際に手に取ってもらったほうがいいわ」
言い終えると黒焦げになり、地面に転がっている機械の一つに近づく音羽。すると、驚いた瑛士とルリが口々に止めようとする。
「音羽、危ないから戻って来い! 黒焦げになっているとはいえ、何が起きるかわからないぞ!」
「音羽おねえちゃん、やめるのじゃ! ま、万が一、怪我でもしたらわらわは……」
慌てふためく二人を振り返ることなく、どんどん機械へ近づく音羽。迷うことなく機械を拾い上げると、小さく息を吐いてから二人に声をかける。
「心配してくれてありがとう。この機械は壊れちゃっているし、もう起動することはないから大丈夫よ。まあ……飯島に誤算があるとすれば、思ったよりも原型をとどめていることかしら? なぜか基盤とかが燃えずに残っているのよ」
表面についた煤を払い、燃えた骨組みを外すと中から無傷の基盤が姿を現した。丁寧に取り出すと、瑛士たちに向かって手招きをする。
「二人ともこっちに来てもらってもいい? かなりの大収穫だわ」
音羽の言っている意味が分からず、顔を見合わせる瑛士とルリ。お互いに眉間にしわを寄せて頷くと、しかめっ面で歩き始める。そして、彼女のもとにたどり着いても警戒を解かず、少し離れた位置から声をかける。
「本当に大丈夫なんだろうな? 飯島が作った怪しい機械だから、まだ罠がありそうで信用できないぞ」
「うむ……あれだけの被害を起こす機械なのじゃ……万が一を考えるとじゃのう……」
未だに信用しない二人を見て、思わず笑い出す音羽。
「あはは。まあ、二人が警戒するのも無理ないわ。でも冷静に考えてみて? 通電もしていない、配線も切れているただの基盤だから大丈夫よ」
「まあたしかにそうじゃのう」
音羽の言葉を聞き、少し警戒を緩めるルリ。彼女の持つ基盤をまじまじと見つめると、不思議そうな顔で問いかける。
「こんな板がそんなに重要なのじゃろうか? それにこんな部品だけ見ても何が危ないのかさっぱりわからんのじゃが……」
「そうね。確かに基盤だけじゃわからないと思う……だけど、これがつながっていた先をよく見てほしいの」
次に拾い上げたのは、黒焦げになった骨組みの箱だった。先ほどついていた場所に基盤を戻し、ある部分を指した時だった。何かに気が付いた瑛士が笑い声を上げる。
「はは……そういうことか! これならばどうあがいても助かるわけがない……」
「ご、ご主人? どうしたのじゃ?」
突然目に手を当てると顔を上げ、笑い始めた瑛士。そんな姿を見たルリが困惑した様子で声をかけると、彼は息を吐くと淡々と語り始める。
「ルリ、この機械の正体は小型爆弾だ……それも普通の威力じゃないものだろうな」
「な……なんでそんなものが落ちておったのじゃ!」
瑛士の言葉を聞いたルリが目を見開き、驚きの声を上げる。すると今度は音羽が口を開く。
「おそらく爆弾だと気が付いた人物が、何らかの細工をして起動しないようにしたようね……それでこの基盤は遠隔操作用のコントロールユニットってとこかしら。おそらく飯島が無理やり動かした結果……対になっていたもう一つの機械が作動して、そっちが爆発したようね」
「そ、そうなのじゃな……でも、なんでもう一つあるとわかったのじゃ?」
ルリが問いかけると、悲しそうな顔をした音羽が大穴が開いた部分に目を向ける。
「ルリちゃん、あの場所に見覚えはない?」
「はて……あ! もしかして遥香さんが倒れていた場所じゃなかろうか?」
「そうよ。おそらく賢治さんと遥香さんは別々に同じ機械を渡された。そして、この階層のモンスターにセットするよう指示を受け、作業を進めていた……そのタイミングで二人の間にトラブルが発生して、異変に気が付いたモンスターが激怒したってとこかしら? そして、飯島女史にとってイレギュラーだったのは、彼が異変に気が付いて機械に細工をしていたことじゃないかしら?」
「そのタイミングで俺たちが接触したため、自らの手で証拠隠滅を図ってモンスターもろとも吹き飛ばそうとした……そんなところか」
顔を背けた瑛士が肩を震わせ、拳を握り締める。その様子を見たルリが、何とも言えない表情で唇をかみしめながら言葉を絞り出す。
「な、なんということじゃ……あやつには人の血が流れておらんのじゃ……同じ人間のくせになんでこんなひどいことを……」
絞り出すようにルリが声を上げた時だった。黒焦げになって屍となっていたモンスターの一匹がかすかに動く。
はたして、三人はわずかな異変に気が付くのだろうか?
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