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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間㉖

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閑話㉖-1 ルナと翠の作戦会議⑩

 瑛士たちが八階層の異様な光景に戸惑っている中、少し離れた位置で冷静に状況を把握しようとする影があった。


「ふむ……異様な光景だが、ヤツラが何の考えもなしに徒党を組むとは考えにくい。それに何かを守るというよりは……」

「ふぁーここはすごく寝心地が良くて最高だね」


 真剣な顔でフロアを見渡すルナの隣で、気持ちよさそうなあくびをしながら話しかける翠。その声を聞き、ずっこけそうになりながらツッコミを入れる。


「翠! 人が真剣に状況分析をしている時に水を差すな!」

「へ? じょーきょーぶんせき? なにそれ、美味しいの?」


 苛立った表情で声を上げるルナに対し、顔を傾げて不思議そうに問いかける。そんな翠の態度を見て、こめかみに青筋を浮かべながら答える。


「あのな……自分たちがどんな状況に置かれているのかわかっているか? ご主人の目的でもある八階層で、モンスターが円陣を組んでいる()()()()()があるんだぞ!」

「モンスターがエンジンを組む? なにそれ! モノ作りできるの! めっちゃ見てみたいんだけど!」

「なんでモノ作りになるんだよ! 何も作ってないだろうが!」


 噛み合わない会話に呆れたルナが大きなため息を吐くと、翠が不思議そうな顔で覗き込む。


「ルナさん、どうしちゃったの? そんなに大声を上げるとみんながビックリしちゃうよ?」

「誰のせいで苛立っているんだよ!」


 後ろ足を勢いよく地面に叩きつけ、苛立ちを露わにする。しかし、そんなルナの様子を気にすることなく、大きなあくびをしながら翠が話しかける。


「もールナさん、大きな声を出さないでよ。せっかくのお昼寝タイムなのに目が覚めちゃうじゃん」

「いや、お前な……なんでこの状況で寝られるんだよ……」


 後ろ足で器用に顔を掻き、毛づくろいまで始める様子を見て呆然と立ち尽くすルナ。先程までの怒りなどどこへ吹き飛び、呆れ果てていた時だった。突然、翠の動きが止まると鋭い視線をモンスターの方へ向ける。


「ど、どうしたんだ? 急に顔つきが怖くなったけど……」

「んーお昼寝の邪魔をする侵入者が、こっちに向かってきている気がするんだよね……どうしようかな? 罠だけでも仕掛けておこうか……でも、下手なことをしてご主人様たちに気が付かれると嫌だし……」


 目を細めながら独り言をつぶやく翠を見て、理解が追いつかないルナ。


(は? 侵入者だと? どこにそんな気配があるんだよ……見える範囲はモンスターと倒れた人間が二人、そしてご主人たちだけしかいないぞ)


「あ、ルナさん。ちょっと()()()()()()()ことがあるんだけどいいかな?」


 呆然と正面を見ていたルナに対し、しかめっ面をした翠が急に話しかける。


「お、おう! どうしたんだ? 何を手伝えばいいんだ?」

「今すぐじゃないんだけどね……侵入者がご主人様たちにちょっかいを掛けてくると思うんだ。だから……その隙にちょっといたずらを仕掛けようと思ってね」

「は? いたずらだと?」


 言っている意味がわからず、目を丸くして固まるルナ。その姿を見た翠は、怪しげな笑みを浮かべてさらに声を上げる。


「そうそう。予想通りなら侵入者の正体は、ルナさんも因縁があるアイツだよ」

「な……そういうことか……」


 翠の口から飛び出した予想を聞き、一気に目が鋭くなるルナ。その姿を見た翠の笑みが怪しさを増していく。


「そうなんだよね……ご主人様たちはきっと怒り狂うだろうし、冷静に判断できなくなると思う。だけど、それは相手も一緒……何もできないとたかを括っているから……一泡吹かせてやろうかなって」

「お前ってやつは……最高じゃねーか! アイツ等には恨みしか無いからな……」


 ルナの全身から怒りに似たオーラが溢れ始めると、翠が畳み掛けるように煽り始める。


「でしょ? どうせなら派手にやって打ち負かしてやろうと思ったんだけど……」

「それは不可能だって結論になったんだろ?」

「ど、どうしてわかったの?」


 考えていたことを読み当てられ、目を丸くして驚く翠。そんな様子を見て、勝ち誇ったような表情でルナが胸を張って答える。


「お前の考えることはお見通しさ。俺はあの忌々しい研究所に少し長くいたからな……あの女は尋常ではない警戒心の持ち主だ。ほんと閉鎖空間であろうが一切の隙がない……」

「やっぱりそうか……ちょっと痛い目に合わせたかったけど、驚かすことが精一杯かな?」


 悔しそうな表情で話す翠を見て、ルナは感心したように考えを巡らす。


(何も考えてなさそうなくせにとんでもないことをやろうとするな……ほんと怖いもの知らずって言葉がぴったりだ)


 目を細めながらルナが考えていると、翠が少し困ったような顔で話しかける。


「うーん、ルナさん。ちょっと聞きたいんだけど、もし相手のガードが固すぎる場合はどうしたらいいと思う?」

「ガードが固すぎる場合か……そうだな……」


 二匹の作戦会議は瑛士が賢治の存在に気がつくまで続いていた。


 はたしてルナと翠の考えた作戦はどんなものなのか?

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