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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第二十五章 八階層と近づく激突の足音

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閑話㉕-3 飯島博士の意外な弱点?

「はいはい、開いているわよ」


 モニタールームをノックする音を聞き、気だるそうに返事を返す飯島。紀元が訪ねてきたと思い、すっかり気を抜いて椅子にもたれかかり、背筋を伸ばした時だった。


「失礼します。飯島博士、頼まれていた取材の件で……」

「へ? 紀元じゃない……って、わ、ちょっと待って!」


 訪ねてきた人物の顔を見ると、大慌てで姿勢を正そうとした飯島。しかし、思いっきり後ろに体重をかけていたため、バランスを崩してしまう。そのままのけ反るように後ろに倒れ、床に思いっきり頭をぶつけてしまった。


「は、博士! だ、大丈夫ですか? ああ、どうしよう……救急車を呼ばないと!」

「いたた……って、そんな大げさにしなくても大丈夫よ。私が油断していただけだから、ね? 雫ちゃん」


 モニタールームを訪ねてきたのは雫だった。彼女は迷宮各所の取材などを行っており、飯島に確認と相談をしようとしていたのだ。


「でも、思いっきり床に打ち付けていましたし……念のために大学病院をはじめ、最先端医療が受けられる施設を予約したほうが……」

「ちょっと待って! そこまで大ごとにするようなことじゃないから! 本当に大丈夫だからね」

「博士がそこまでおっしゃるなら……いや、でも飯島博士の天才的な頭脳に万が一のことがあったら……」

「本当に大丈夫だから! ……病院だけは行きたくないの……」


 ドンドン暴走を始める雫を何とか止めようとする飯島。ここまで必死になるのは、彼女が大の病院嫌いだからである。特に注射に関しては、幼少期の体験がトラウマとなっていた。


「博士……なんかすごく嫌がっておられますね? まさか……」


 尋常ではない取り乱し方を見て、雫が思わず呟く。すると飯島の額から滝のような冷や汗が流れ始める。


(や、ヤバい……もしかして病院、いえ、注射が怖いのがばれた? な、何とかごまかさなければ、私の威厳に関わるし……紀元に知られてしまったら、間違いなくネタにされる……それに絶対今年は予防接種に連行されてしまう)


 何とかして最悪の事態を回避しようと、頭をフル回転させる飯島。何か言葉を発しなくてはという衝動に駆られ、口を開こうとした時だった。彼女より早く雫が声をかける。


「博士、わかりました……病院の予約は取りやめます。博士のお気持ちがよくわかりました」

(え……バレた?)


 飯島の顔から血の気が引き始めた時、雫の口から予想外の言葉が飛び出す。


「飯島博士のような権威あるお方が、一般市民と同じ病院に行くわけがないですもんね!」

「へ?」

「そりゃそうですよね。飯島博士が病院の待合室にいたら、大騒ぎになるに決まっています。それに下手な医者に見せて症状が悪化してはいけません」

「あ、うん、そうね! 間違いないわ!」

「きっと()()()()()()()()がいらっしゃるはずですし、万が一の事態が起こる前にきっと駆け付けるはず……だからこそ、博士は大丈夫とおっしゃったんですよね?」

「そ、そうよ! 私の健康こそ宝なんだしね!」

(なんかすごい勘違いしているわ……そもそも専属の医療チームなんていないけど……ここは話を合わせておきましょ)


 腕を組み、深く頷きながら一人で勝手に納得する雫。なんだかよくわからないが、命拾いした飯島はゆっくり立ち上がると胸を張って口を開く。


「雫ちゃん、心配してくれてありがとう。あなたのように慕ってくれる部下を持てて、私は幸せよ」

「そんな……博士の為なら当然じゃないですか……」


 飯島から投げかけられた感謝の言葉を聞き、恍惚とした表情を浮かべている雫。


(なんか話がおかしな方向にずれちゃったけど……雫ちゃんも納得しているみたいだから結果オーライよね?)


 自分に言い聞かせるように心の中で唱える飯島。何とも言えない異様な空気がモニタールームを支配し始めた時、最初に雫が訪ねてきた時のことを思い出して問いかける。


「そういえば雫ちゃん? 私に何か相談したいことがあったんじゃないの?」

「え、今名前で呼んでいただけた? ああ、もう今日は何という日なの……もしかして、夢でも見ているのかしら?」


 名前を呼ばれたことに感激し、意識が飛びかける雫。寸でのところで何とか意識を繋ぎとめ、いたって冷静だとアピールするように答える。


「どうされたのでしょうか? 飯島博士」

「いや、聞いているのはこっちなんだけど……」

「申し訳ありません。ちょっと意識が別時空へ飛びかけていただけですから、気になさらないでください」

「は? それはダメなヤツじゃないの? ねえ、大丈夫?」

「はい、もう戻ってこられたので大丈夫です。以前より思考もクリアになっております」

「そ、そう……それならいいけど……」


 真剣な表情で答える雫を見て、顔を引きつらせる飯島。小さく息を吐くと改めて彼女に問いかける。


「私に相談したいことがあるって言っていたけど、何か問題でも起きた?」

「いえ、問題というほどでもありませんが……」


 雫が少し困った表情で口を開こうとした時、再びモニタールームの入口をノックする音が聞こえる。

 彼女に続き、今度は誰が訪ねてきたのだろうか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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