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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第二十五章 八階層と近づく激突の足音

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第8話 はたして間に合うのか?

 三人が一斉に走り出すと、迷宮自身がまるで意思を持っているかのように動き始める。地面が盛り上がって波打ち始め、瑛士たちの行方を阻み始める。


「チッ……まるで意思を持っているような動き方をしやがる!」

「ほんと走りにくいったらありゃしないわ。一瞬でも止められたらいいんだけど」


 瑛士と音羽が揃って文句を口にすると、一緒に走っていたルリが口を開く。


「二人が言うことはよく分かるのじゃ……が、動きを止めるのはわらわをもってしても難しいからのう。まあ、別の箇所を破壊すれば、()()()()()()が移るから時間稼ぎにはなるが」

「それだ!」


 言葉を聞いた瑛士が大声で叫ぶと、ルリが驚いたように声を上げる。


「わ! ご主人、いきなり大声を出したらびっくりするのじゃ」

「ルリ、お前は本当に大したやつだ! なんでそんな事に気が付かなかったんだ!」

「へ? は? わらわが褒められておるのか?」


 突然称賛の声を向けられて、あっけにとられるルリ。しかし、すぐにいつものように胸を張って答え始める。


「ふふふ、当然なのじゃ! わらわはカリスマじゃからな!」

(ほんとコイツは単純だな……まあ、このままおだてて面倒なことをやらせれば……)


 心の中でほくそ笑む瑛士だったが次の瞬間、首元に冷たい感触が伝わってくる。慌てて視線を下に向けるが、特に何かを当てられた様子はなかった。


(な、何だ今の感触は……あからさまに首筋に刃物のような冷たさを感じたぞ……)


 恐怖を覚えた瑛士があたりを見渡すと、何故か笑顔でこちらを見つめていた音羽と視線が合う。


「あら? 瑛士くん、どうしたのかしら?」

「い、いや……なんか楽しそうだなと思っただけだが……」

「そう? そうそう、さっきなんか変なことを企んでいるような顔をしていた人がいたのよね」


 音羽から告げられた言葉を聞き、思わず黙り込む瑛士。そんな彼の様子など気にすることなく、音羽は話を続ける。


「まあ瑛士くんには関係ないとは思うけど……ルリちゃんのことを()()()おだてていた声が聞こえたのよね。まさか自分より年下の子に危険なことをやらせるつもりだったら、どんなお仕置きをしたら楽しいかなって考えていたの」


 笑顔を一切崩さず、淡々と話す姿を見て背筋が凍るような感覚に陥る瑛士。すると、音羽の目元が一気に鋭さを増す。


「まさかと思うけど、瑛士くん? ルリちゃんをおだてて自分は安全に進もうなんて……考えてないわよね?」


 再び首筋に冷たく鋭い刃物が当てられる感覚に陥り、呼吸がどんどん荒くなる。そして、瑛士が絞り出すように呟く。


「あ、当たり前じゃないか……」


 冷や汗を流しながら答える瑛士を見て、満足げな顔で音羽が話しかける。


「うんうん、そうよね。私の思い過ごしだったみたい。じゃあ、瑛士くん……これを渡しておくからあとはよろしくね」


 満面の笑みを浮かべた音羽が瑛士に追いつくと、走りながらある一冊の本を手渡す。その本を見た瑛士が不思議そうな顔で問いかける。


「な、なあ……渡された本なんだが……ゴシップしか載っていない週刊誌だぞ?」

「そうよ。さっき通路に落ちていたのを拾ったのよ。まあ、中身はほんとか嘘かわからないような炎上ネタが満載だったけど」

「いや、こんな本を渡されても……」


 返答を聞いた瑛士が困惑しながら答えると、音羽が不思議そうな顔で聞き返す。


「え? 何を言っているのかしら? 炎上ネタしか載っていない迷宮で拾った本、そして再生が進んでいるエリアは草木が生え始めているわ」

「あ、そういうことか……」


 意図を理解した瑛士が納得した表情で声を上げると、音羽が口角をつり上げて答える。


「そういうこと。迷宮には被害が相当拡大して申し訳ないけど、背に腹は変えられないからね。あと、その本は瑛士くんしか扱えないと思うの」

「は? 意味がわからんのだが……」


 彼女の言っている意図がさっぱりわからず、顔を傾げる瑛士。


「まあ細かいことは気にしない。さっさとやらないと……私たちのほうが先に排除されるわよ」


 音羽が前方に視線を動かすと、七階層の出口へ続く道が徐々に狭まり始めている様子が目に映った。


「チッ……少しの猶予も無いということか。音羽、ルリ、今すぐ出口めがけて全力で走れ!」


 怒号に似た瑛士の叫びを聞き、ルリが驚いて振り向きながら話しかける。


「ご、ご主人? どうしたんじゃ?」

「俺のことは気にするな! 前を向いてとにかく走れ!」

「わ、わかったのじゃ」


 再び瑛士の怒鳴り声が響き渡ると、大慌てで前を向いて加速するルリ。その姿を見た瑛士が、苦虫を噛み潰したような表情で手に持った本を握りしめる。


「本当は使いたくないが……今はそんなこと言っていられん。天を焦がし、地を溶かし、全てを灰へと帰せ――獄滅炎(インフェルノ)


 絞り出すように瑛士が詠唱を口にすると、本を握りしめた拳から数発の火が迷宮の反対方向へ向かって飛んでいく。一つの炎が再生途中の草木に着弾すると、熱風とともに一気に燃え上がる。そして、またたく間にいくつもの火柱が出現し、フロア内に熱風が立ち込め始める。


「げっ……ちょっとこれは想定外だぞ……」


 自分の想像を遥かに超えた威力を見て、瑛士が顔を引きつらせた時だった。背後で爆発が起き、彼に向かって爆風と炎が襲いかかる。


「マジかよ……ちょっとこれはまずいんじゃないのか?」


 迫りくる炎から逃れようと、瑛士がギアを上げて一気に出口を目指す。


「ご主人! こっちじゃ!」


 先に出口に飛び込んだルリと音羽が必死に声を上げる。

 はたして、瑛士はこのピンチを無事に乗り切ることができるのだろうか?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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